「岩手競馬ルネッサンス」の一環かどうかわかりませんが、盛岡開催になってからレースの中継映像のなかに、向正面の馬群を正面から捉えた映像が流されるようになりましたね。あれ?以前もありましたっけ? 私の記憶違いでなければ、今までは審議があった際に公開されるだけだったと思うのですが。
正面から望遠で撮影した映像は、実際より遠近感が圧縮されて見えるという特徴があります。これは競馬の場合どうなるかというと、直線をまっすぐこちらに向かってくる馬群の中で進路変更をした馬がいると、実際には十分な距離をとっていても画面上では後続馬の鼻先をカットしたように見えかねないということ。これを恐れて、従来パトロールカメラの映像は審議のときにも場内に流さなかったのですが、これが昨年あたりから公開されるようになり、そして今年は通常の中継の中でも数秒間だけですが映るようになりました。あるものを使おう!と組合の方が思ったのかどうかはわかりませんが、せっかくの迫力ある構図をファンのみなさんに見せないのは勿体ないですよね。
ところで、先日ちょっと小耳に挟んだのですが、一連のコスト削減の流れの中で“誘導馬”が廃止されるかもしれません。
現在、組合ではなんとか削れるところはないかと懸命に頭をひねっているところですから、「廃止反対!」と声を挙げるつもりはありません。ですが馬好きのひとりとして、そして一度きりとはいえ誘導を経験した者としては、もし廃止になったらとても寂しいでしょうね…
しかし誘導馬のいない競馬場ってあるんでしょうか? “見た目として格好がつかない”というのはおいといても、誘導する馬がいなければ先頭の出走馬自身が行進を先導することになるわけで、それって馬によっては結構な負担になるんではないですかね。
私が乗馬を習っていたときの話ですが、2〜3頭が隊列を組んで歩く練習がありました。自分が後にいて前の馬についていくとき、馬はスムーズに指示に従い楽々と動いてくれるのですが、先頭を交代したとたんに私の乗った馬は歩くスピードが落ち、進行方向も定まらなくなってしまいました。もちろんこれは私が下手だからなのですが、考えてみればもともと馬は群れで行動する草食動物。ごく限られたリーダー格以外の個体は、ただ前についていくという性質なのです。元騎手の某調教師も「誘導馬がいてくれて何度も助けられた」と語っていました。
存廃は今週の競馬会議で決められるそうです。別にアメリカの競馬場みたいに出走馬ごとに各1頭の誘導馬がいるわけじゃないんだから、と思ってしまいますが…そういう問題じゃないんでしょうね。
(文/写真・佐藤 到)