いわて競馬マガジン「テシオ」を創刊したのは1997年7月だった。「テシオ」とはイタリアの天才馬産家フェデリコ・テシオにあやかってのもの。
競馬の主流であるイギリス、フランスから見れば辺境の地・イタリアでネアルコを生産。現在のサイアーラインの90%以上を占める大種牡馬ネアルコを生産したことは、ある意味で奇跡に近かった。もちろんテシオは生産理論の確信があったのだが、ネアルコによって競馬の潮流は完全に変わった。
雑誌「テシオ」も岩手を発信源に競馬の流れに一石を投じたい。そんな気負いをこめて命名した。
もうひとつの理由は少人数でも『手塩』にかけていい雑誌を発行したかったから。年にわずか4回(一時はデータブックも発行したので5回)だったが、全力投球で雑誌を作り上げた。
「テシオ杯ジュニアグランプリ」は今年で15回目を迎える。当時、競馬組合から冠協賛の声がかかり、いくつかの候補があったが、迷わずこのレースを選ばせてもらった。
地方競馬で唯一の芝がある盛岡競馬場=OROパーク。間違いなくジュニアグランプリは発展をとげていくだろうと思ったし、しかもカテゴリーは2歳。芝適性を試した先には中央競馬がある。さらにはヨーロッパ、世界にも通じる。
現在、地方と中央の格差が広がる一方。1999年、メイセイオペラがフェブラリーステークスを制したのを頂点だとしたら、今は隔世の感。片や凱旋門賞優勝が現実のものとなる可能性が高いが、岩手競馬は2度の存亡危機を経て何とか継続できているのみ。本当の意味での再生には相当の時間とパワーを要する。
しかし、こう断言する。継続こそ力なり、と。継続の延長線上に必ず光が見えてくる。そう信じている。
テシオ杯ジュニアグランプリは2003年から全国交流となった。当初は地の利も生かして岩手勢が優勢だったが、ここ5年のうち4度は北海道勢が優勝。層の厚さ、レベル差がはっきり出ている。
今年も強烈なプレイアンドリアルが参戦する。北海道競馬開幕とブリーダーズゴールドカップ当日に行われる「スーパーフレッシュチャレンジ」に出走。わずか2レースのみの一戦をほぼ馬なりで圧勝。柴田大知騎手をわざわざ指名するのだから陣営の期待も相当だったと思うが、期待どおりに勝ち上がった。
わずか1戦のみで初芝、長距離輸送など普通の馬ならこたえると思うが、スパルタで知られるビッグレッド軍団。そんなことなど問題にしないと判断した。
しかし陣営に手抜かりはない。前日土曜日(21日)にパドック、芝でスクーリングを敢行。コスモバルクのときもそうだったが、万難を排して臨む。あとはスケールどおりの結果を出せるか。非常に楽しみだ。
逆転候補は地の利も加味してライズライン、ターントゥタイドとした。ライズラインは前走・若鮎賞3着。ターントゥタイドに完敗を喫したが、終始、外にもたれて4コーナーで一瞬、下がる不利。それでも直線で盛り返し、敗れて強しの一戦だった。今回はコース2度目だし、外にもたれる馬が1枠は願ってもない枠順。今度こそエンジン全開といきたい。
ターントゥタイドはデビューから無敗3連勝。若鮎賞は逃げから一転して4番手インに控える競馬だったが、まったくひるむことなく直線抜け出しを決めた。こちらは最後で内にササっていたが、まだ余裕を残してのゴール。小柄な牝馬だが、思った以上にたくましさがある。
ダマスクインゴットはデビュー2戦目を逃げ切り、続く1000m戦では4番手外を追走。道中、反応一息だったが、ゴールでの伸びがすばらしかった。結果2着だが、あの脚なら芝は歓迎のはず。
社台ファーム生産、オーナーが吉田照哉氏はエイブルインレース、ボヘミアン、スクランブルエッグと計3度、テシオ杯ジュニアグランプリを優勝。芝で勝算ありと踏んだに違いない。
ナデシコスピリッツは7戦1勝。ほかもすべて入着を果たしている。祖母は南関東クラシック・羽田盃を制したカシワズプリンセス。それにサンデーサイレンスを掛け合わせたのは期待が高かったことの裏づけだろう。
カカリアはデビュー2戦目1着。距離延長がどう影響するか未知数だが、父ヨハネスブルグは2歳時7戦7勝でヨーロッパ、アメリカのGⅠを制した逸材。あっさりあって不思議はない。
◎(2)プレイアンドリアル
○(1)ライズライン
▲(6)ターントゥタイド
△(11)ダマスクインゴット
△(3)ナデシコスピリッツ
△(10)カカリア
<お奨めの1頭>
4R コミュニティ
母ミチノクレットは岩手デビューで通算8勝。中央未勝利から転入後、すべてワンサイドで圧勝と強さけた違い。C2ではモノが違いすぎる
今週21日から舞台は盛岡。11月11日までの約2ヶ月(4開催)にわたって芝ダートで雌雄を決する。最大の見どころは10月14日、マイルチャンピオンシップ南部杯。
現時点での情報だが、3度目の優勝を目指すエスポワールシチー、かしわ記念、帝王賞を含め目下5連勝中のホッコータルマエ、ジャパンダートダービー、今年のフェブラリーステークスを制したグレープブランデーなど話題馬が名乗りをあげている。秋のダートGⅠ戦線はこの南部杯がスタート。その日が待ち遠しい。
21日(土)メイン11レースは新設の3歳重賞「第1回イーハトーブマイル」(盛岡ダート1600m)。発走は17時5分。月曜日を除いて基本、メインは11レースに組まれ、発走時刻も先週より5分早くなっていますので、お間違いのないようお願いします。
主軸はロックハンドパワー。昨年、重賞2勝。2歳最優秀馬の座はブリリアントロビンに譲ったが、今シーズンの開幕初戦・スプリングカップを快勝。そのまま王道を突っ走るかと思ったが、脚部不安のためやまびこ賞4着後、無念のリタイア。
春から夏にかけての重賞を棒に振ったが、無理をしなかったのが奏功。じっくり4ヶ月の休養を取り、9月1日に復帰。獲得賞金から古馬A級に編入したが、4着に善戦。久々の実戦を割り引いても実り多い一戦だった。
今回は3歳馬同士の戦いでメンバーが大幅に緩和。また休み明けを叩かれた良化が顕著で、追い切りも2本消化して態勢万全。
思い切って休ませたのは不来方賞、ダービーグランプリが控えているから。秋のビッグレースに向けても今回は格好の舞台。強いロックハンドパワーが見られそうだ。
相手筆頭はマンセイグレネード。若鮎賞(芝1600m)を含めて2勝マーク後、冬場にJRAへ転籍。さすがに相手が強かったが、その中でも5着確保などの実績を残して岩手へ再転入。初戦を2着にまとめ、JRAで揉まれてきたのはダテでなかったことを証明した。タイプ的にも1600mがベスト。自慢の粘りが冴え渡るか。
テンショウリバイヴは気性難がネック。恵まれた馬体を持て余していたが、前走はB2戦で6馬身差の圧勝劇。デビュー以来、ようやく2勝目を飾り、これまでのうっ憤を一気に晴らした。
昨年、南部駒賞でロックハンドパワーに先着4着、今年の岩手ダービー・ダイヤモンドカップ3着などで素質の高さを垣間見せたが、今回の勝利で吹っ切れたか。今回が真価問われる一戦と言える。
ヴェルシュナイダーもテンショウリバイヴと同じクチ。特に今年はズブさが出て後方のままに終わるケースもあったが、1000m戦・ハヤテスプリント3着でメドが立った印象。前走も3着にまとめ、得意の盛岡に替わったのも心強い。
ラブソングは7月28日、ひまわり賞以来の実戦だが、仕上がりには苦労しない牝馬。シャープな切れを身上とし、前が競り合うようなら牡馬をなで斬りのシーンまで。あとは地力アップが明らかサクラタイシも押さえが必要。
◎(9)ロックハンドパワー
○(3)マンセイグレネード
▲(2)テンショウリバイヴ
△(8)ヴェルシュナイダー
△(5)ラブソング
△(10)サクラタイシ
<お奨めの1頭>
8R シャイニータキオン
ここにきて上限も見え隠れするが、それは早計。状態ももう一息だった。芝は6戦前の1600m戦1着で適性を証明済み。1700m延長でも信頼度は高い
9月16日の水沢競馬は「秋の水沢競馬」最終日。秋の、といってもここに来て暑い日もあって、あんまり秋っぽくはならなかったですね。
今日も台風18号の影響で水沢競馬場は朝から雨と強い風。この原稿を書いている時点で16日の水沢競馬は平常通り開催予定ですが、特に後半の方、台風がより接近する頃はさらに天候が悪化する可能性があります。開催情報には十分ご注意ください。
本命は、ここは素直に(8)コスモフィナンシェとしました。重賞ごとに勝馬が変わる今季にあってみちのく大賞典・すずらん賞と二つの重賞を制している貴重な存在。もちろんその力量も他を一歩リードしていると思います。
水沢マイルは条件級の頃に経験しただけですが、前走のすずらん賞が非常に強い内容だった事で分かるとおりこの馬はマイルあたりが本来ベストでしょう。雨の影響が残る不良馬場になっても特に問題ないでしょうし、ここでも主力の一角になる・勝ち負けになると考えるのが自然です。
対抗は(6)ダノンボルケーノ、ひと叩きされて上昇明らかなこの馬を採ったのですが、脚質あるいは展開面・コース状態との相性面でちょっと不利な局面が生まれるかもしれない。それを気にするなら、自力で前に行ける(3)ロッソコルサや(1)カミノヌヴォーに重きを置いてみてもいいかもしれません。
そして穴っぽく狙ってみるなら(5)ディアーウィッシュはどうでしょうか?真っ向勝負だと一線級にはちょっと足りませんが、恐らく軽い馬場向きの先行馬。天候やコース状態を味方につけて上位に食い込んでくるかもしれません。
差し馬の(4)トーホクキングや(10)ドリームクラフトも面白そうな存在ですが、今の馬場だと差し馬、特に外枠のそれは非常に不利。重賞勝ちの経験を持つ馬たちですが今回は無印という事にします。
●11Rの買い目
馬単(8)=(6)、(8)=(3)、(8)=(1)、(8)→(5)、(3)→(1)
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先週7日の2歳重賞「第31回ビギナーズカップ」はラブバレットが圧勝した。2着シグラップロードに5馬身差をつけ、走破タイムが1分27秒4。
今開催から最終レースにメインが組まれているが、その前の10レースが同じ水沢1400mで行われたB1戦。エクセランが逃げ切ったが、メンバーは少頭数ながら実質オープン級。1着タイムが1分26秒9。
単純な計算だが、ラブバレットはすでに古馬B1以上の実力と見て間違いない。なぜなら過去、水沢1400mで行われたビギナーズカップの最高タイムは2008年、ワタリシンセイキの1分29秒9。ラブバレットはレースレコードを2秒6も短縮した。
次の目標は10月21日、盛岡ダート1600mで行われる若駒賞。「若鮎賞の敗因は芝だったと思います。今回はいいレースをしてくれたのでこれからも楽しみ。ただ一戦ごとに体重が減り気味なので若駒賞へ直行するかも。いずれ馬の状態を見て決めたい」と菅原勲調教師。ダート2歳に新星が誕生した。
15日(日)メインはC1「夏油賞」(水沢1400m)。フルゲート12頭で行われ、好調馬もズラリ。白熱したレースを期待できる。
本命はワタリラッシュ。今季始動は6月末までずれ込んだが、じっくり休養をとったのが功を奏し、叩かれながら迫力が増す一方。休み明け2戦目の3歳ダート1000mの新設重賞・ハヤテスプリントでリュウノタケシツウの2着確保。そして前走は非の打ちどころのないレースで完勝した。3歳馬が本格化。これは追いかける一手だ。
ラブヘリテージは展開に注文がつくタイプだが、前走・田瀬湖賞は勝負どころの3、4コーナーで一旦下がりながらも直線で鋭く伸びて快勝。味のあるレースを披露した。距離が1400mへ短縮だが、逆に歓迎。過去、水沢1400m戦で2勝2着4回の実績を残し、特別2連勝のシーンまで。
スパイクラベンダーは祖父がキングマンボでミスプロ3×3のインブリードを持つ。日本輸入後、最初につけたのがディープインパクト。牧場の期待も相当大きい。中央未勝利から岩手転入後、2勝2着2回とマズマズの成績。前走は4着に終わったが、盛岡芝が合わなかったか。地元に戻って反撃に転じる。
タケデンエビスは田瀬湖賞2着。スッと2番手につけ、4角先頭。最後はラブヘリテージの強襲に遭ったが、水沢適性を改めて証明した。暑い夏が終わり、さらに気配アップした。
アルカイクスマイルは8歳牝馬だが、かつてはB1へ在籍。今季は取りこぼしも多いが、前回は待機策から鮮やかなマクリを決めて快勝。健在を誇示した。引き続き好気配をキープ。
他にもスイートジョリ、転入2連勝マダムシュガー、距離短縮は好材料デルマアグリッピナなど伏兵も多く波乱の要素もたっぷり。当日の気配にも注意を払ってほしい。
◎(5)ワタリラッシュ
○(9)ラブヘリテージ
▲(12)スパイクラベンダー
△(6)タケデンエビス
△(10)アルカイクスマイル
<お奨めの1頭>
6R ベシュテルング
前走は大器エノテカが相手では2着も仕方なし。しかし0秒1差まで詰め寄り、地力の高さを改めて証明した。ここは負けられない一戦
今週3日間(14~16日)で水沢開催がひとまず終了。次週から盛岡開催へと替わるが、4月6日から岩手競馬の仲間入りしていた千田洋騎手も期間限定騎乗を終える。
当初、7月中旬までの騎乗予定だったが、本人自ら延長を希望。先週9月9日終了時点で335戦16勝2着29回。詳しくはテシオ特集(tesio.jp)をご覧になってほしいが、残り3日間で勝ち星を伸ばすことができるか。期待を込めて見守りたい。
なお最終16日には同騎手のお別れセレモニーがあります。騎乗の合間となるので月曜日の確定後に発表されますので、岩手競馬公式ホームページでご確認をお願いします。
14日(土)メイン11レースは水沢1300mを舞台に行われる新設の牝馬重賞「第1回ヴィーナススプリント」。相次いで出走を見送り、7頭立ての少頭数。俄然、ミキノウインクには有利な条件がそろった。
ミキノウインクは昨年6月に中央未勝利から転入。岩手版オークス・ひまわり賞を圧勝。その後、南関東へ移籍して2勝マークし、今年7月に岩手再転入した。
初戦にビューチフル・ドリーマーカップのトライアル・フェアリーカップを選び、2着に1秒5差をつけて圧勝。続いて牡馬相手のA級一組に駒を進め、トーホクキング以下に大差をつけ、2連勝で本番に臨んだ。
しかし全国の強豪牝馬の壁は厚く、シャイニングサヤカがレコードを大幅更新で優勝。以下、4着までを遠征馬が独占。ミキノウインクは5着に終わったが、従来の水沢1900mレコードに0秒1差の2分ジャストで駆け抜け、自身の能力は十分出し切った。
今回は地元同士に加え、牝馬が相手。距離が1900mから1300mへ短縮されたが、同条件2戦1勝2着1回。走破タイム1分21秒1もレコードに0秒7差と優秀。水沢は盛岡に比べて反応ひと息という話だが、それでも実力の違いは明白。ほぼ死角なしの大本命となった。
相手に若干迷ったが、筆頭はコンプリート。中央500万下から転入2戦目の水沢マイル重賞・赤松杯を逃げ切って優勝。好配当を演出した。以降は凡走の連続だが、典型的な逃げ馬のため仕方なしの結果。少頭数、好枠を生かして逃げ残りをもくろむ。
カーリーネイトはビューチフルDCでミキノウインクに次ぐ6着。元々、折り合いに難しい面があり、距離短縮は基本歓迎。南関東時代に短距離実績もあり、2着争いは必至だろう。
評価に迷うのがブリリアントロビン。昨年、北海道2勝から転入。2戦目の牝馬交流・プリンセスカップを制し、明け3歳の根幹重賞・金杯も制覇。重賞2勝馬ロックハンドパワーをアッサリ退けた。
今季も牝馬・あやめ賞を順当勝ち。地元の期待を一身に背負って留守杯日高賞へ駒を進めたが、見せ場なく9着。直後に北海道へ戻って立て直しを図り、7月に岩手へ戻ってきた。
カギは当然だが、4ヵ月半ぶりの実戦がどこまで影響するか。能力はミキノウインクに次ぐが、復調度合いがカギ。当日のパドックの気配と馬体重をしっかりとチェックしてほしい。
アラマサコマンダーは中央1勝を芝2000mでマーク。芝中距離以上をメインに使われ、ダートも短距離も未経験。果たしてスピードについていけるか不安はあるが、実績的には通用して不思議はない。
◎(5)ミキノウインク
○(2)コンプリート
▲(7)カーリーネイト
△(4)ブリリアントロビン
△(1)アラマサコマンダー
<お奨めの1頭>
5R トゥビーウィズユー
転入初戦は4ヵ月半ぶりの実戦も影響したのか、大きく出遅れ。致命傷とも言える不利があったが、直線で一気に突っ込んで2着。ひと叩きされ、今度は首位奪取に出て当然