ばんえい競馬情報局とは?

ばんえい競馬の最新情報を提供します。重賞を中心に予想や回顧のほか、ばんえい競馬に関するコラムなどもご覧いただけます。
カレンダー
リンク
おすすめコンテンツ

« 今週の見どころ(1/16~1/18) | メイン | 今週の見どころ(1/23~1/25) »

やっぱり馬が好き(第60回) 旋丸 巴

小さな巨人・カネサブラック

 NARグランプリ2009の「ばんえい最優秀馬」にカネサブラックが選出されて、そりゃそうでしょう、何たって昨今のブラックの活躍は凄いもんね。と言いつつ、この黒馬の成績を改めて調べてみたら......。

100119-1.jpg
(写真提供:斎藤友香氏)

 昨年の通算成績12戦8勝! 勝率、何と66.7%、連対率なら実に83.3%! しかも、これが常に一線級で戦いながらの戦績なのだから、びっくり仰天。

 体重1040キロ前後という、決して大きくない体躯で、第2障害にかじりつくような、這いつくばるような、あの姿を思い浮かべると、この成績は感動的。

     *     *     *

 という訳で、そんな怪物的強さを発揮しているカネサブラックのことが、もっと知りたくなったから、デビュー時から手綱を取っていた大河原騎手に、カネサブラックの話を聞きに行った。

 「あの馬の生まれた牧場が旭川競馬場の近くにあってね。だから、生まれて何日も経たないうちに見に行ったんだけど、生まれた時から小さかったね。小さかったけど、いい皮膚してたし、目に力があったから、これはいい馬になると思ったよ」

 目に現われていた精神力の強さは調教を始めた当初から発揮された、という。

 「好奇心が凄く旺盛な馬でね、1度教えたら、次の日、同じことを繰り返す必要がなかったね。それだけ教えやすい馬だったってことさぁ」

 そんなカネサブラックが、しかし、第1回の能力試験は不合格。

 「小さい頃は無理をさせない、っていうのが、うちの先生(服部調教師)の方針だから、体の小さいブラックには1回目の能力試験は『コースを見せる』だけだったんだわ」

 その能試の日、周囲から『今年のテスト馬の中で、どの馬が一番強い?』と尋ねられた大河原騎手は、即座にカネサブラックの名前をあげたという。テスト不合格、しかも、体の小さなカネサブラックだったから、この言葉を聞いた人たちは一様に苦笑。中には、「何で、あんなドサンコみたいな馬が?」と嘲笑をあらわにした人もいた。

 「あの馬のこと誉めたのは勝堤(鈴木勝堤騎手)だけかな(笑)。調教で、ちょっと乗ったんだけど『この馬、良くなるなぁ』って。背は低かったけど、全体のバランスが抜群。千代の富士みたいだった、って言えばわかるかなぁ」

 2人の名騎手の予言通り、2回目の能力試験を難なく突破すると、デビュー戦を皮切りに、どんどん勝ち星を重ねたカネサブラック。イレネー記念の出走を辞退して、じっくり育てられたことも今日の強さに繋がった。

 カネサブラックの転厩で、今はライバル馬の手綱を取る大河原騎手だけれど、

 「今、一番強いのはこの馬だろうね」と、カネサブラックの能力を絶賛する。ただし、それだけ、この馬の資質を知る大河原さんであれば、口にこそ出さないけれど、ばんえい記念での打倒ブラックの秘策を着々と練っているに違いなく......。

     *     *     *

 「とにかく一生懸命な馬だからね。だから、小さな体でも、あれだけのことが出来るのさ」という大河原騎手の言葉を紹介するまでもなく、ばんえいファンなら、どんな重量を課せられても懸命に坂を登るカネサブラックの、あの健気で真面目な姿に感動されているはず。

 という訳で、カネサブラック感動物語で本編を終えようと思ったのだけど、そこは「つむじ曲がりの旋丸」。ちょっとお茶目なブラックの姿も、ご紹介しておくのである。

 一昨年の秋以降、ブラックが所属しているのは名門・松井厩舎。私は、この厩舎にちょくちょくお邪魔するので、時間があれば必ずブラック君にも御挨拶申し上げるのだけれど、額に流星どころか小さな星さえもない「真っ黒クロ介」の彼は、厩舎の暗闇におとなしく佇んで......、しかし、彼の馬房を訪問すると、やおら近寄って、私の顔をくんくんと臭うのである。そうして、次の瞬間、真っ黒な唇を盛大にめくりあげてフレーメンをする。

100119-2.jpg

 フレーメンというのは、牡馬が牝馬の匂いをかいだ時の発情反応。私の魅力は、人のみならず、ブラック君の心まで妖しく乱して......なーんて言うことがあるはずもなく、ブラックは、性別、人相を問わず、訪問する人であれば誰であれ彼であれ、顔の匂いをかいではフレーメンをする。そうしておいて、さして興奮する訳でもなく、ただ、顔の匂いをかいではフレーメン。即ち、これ、彼の癖であり、彼の得意技であるそうな。

 私の魅力にブラック君が誘惑されたんじゃないのか、ちぇっ、と残念無念ではあるけれど、厩舎では人の顔の匂いをくんくんかいでは上唇をめくりあげている小さな真っ黒クロ介君が、しかし、一旦、レースに臨めば、一回りも二回りも大きなライバルを向こうに廻して、白星を重ねまくる。

 そんな小さな巨人・カネサブラックに惚れた~!!

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

Copyright (C) OddsPark Banei Management Corp. All Rights Reserved.