今年はダートグレードで地方馬がなかなかに活躍している。昨年、南関東のカジノフォンテンやミューチャリーがJpnIを制したようなハデな活躍ではないものの、オッズパーク対象競馬場のダートグレード競走、特に古馬戦線では地方馬が堅実に馬券圏内に好走している。
今年、ここまで(7月末現在)にオッズパーク対象場で行われた古馬のダートグレードは5レース。2月8日の佐賀記念(佐賀)こそ地元佐賀のグレイトパールの4着が最先着だったが、3月10日の名古屋大賞典(名古屋)では、兵庫のジンギが5番人気で3着。3月16日の黒船賞(高知)でも兵庫のイグナイターが3番人気で勝ってダートグレード初勝利。3着にも6番人気ながら地元高知の10歳馬ダノングッドが入った。さらにイグナイターは、5月3日のかきつばた記念(名古屋)でも、黒船賞同様、中央のヘリオスを1馬身差でしりぞけて連勝した。
さらに7月18日のマーキュリーカップ(盛岡)では、地元のヴァケーションが10番人気ながら1番人気のケイアイパープルとの3着争いでハナ差先着して馬券圏内を確保したのには驚かされた。
たしかにヴァケーションは、2歳時にはJpnIの全日本2歳優駿を制し、3歳時には名古屋に遠征して秋の鞍を制したが、その後南関東のオープンクラスでは頭打ちという成績。今年岩手に移籍して、初戦の赤松杯(1600m)は2着も、2戦目のシアンモア記念(1600m)を勝利。一條記念みちのく大賞典(2000m)が3着で、マーキュリーカップは中央の一線級が相手で、しかも適距離とはいえない2000mではさすがに厳しいだろうと思われた。
有力勢に先行馬が多いメンバーで、前半ハイペースとなっての先行勢総崩れという展開に恵まれた面はあったが、結果的に中団にいた1、2着馬のうしろを追走し、2000mの距離を乗り切れる脚を残していた。
これら馬券圏内に好走した地方馬たちは、いずれも人気より上の着順。黒船賞を勝っていたかきつばた記念のイグナイターですら、ヘリオス、ラプタスという同じような馬が相手でも2番人気だった。
ダートグレードでは、地方馬によほどの実績馬でもいない限り中央馬に人気が集まるのが常だが、ときにある程度実績がある地方馬でも意外に人気にならないことがある。
たしかに中央馬は強いのだが、ダートグレードになると多くの中央ファンが馬券に参加するため、実力以上に中央馬に人気が集中するということがある。ときにそうしたところに、地方馬においしい配当が転がっていることがある。
さて、8月に行われるダートグレードで、そのような地方馬はいないだろうか。
8月16日にクラスターカップ(盛岡1200m)が行われる岩手では、キラットダイヤが早池峰スーパースプリント(水沢850m)、岩鷲賞(盛岡1200m)を昨年に続いて圧倒的な強さで連覇。岩鷲賞の勝ちタイム1分10秒1(良)は、中央相手でも通用する好タイム。しかしながら秋に備えて夏は休養となるようだ。今年は盛岡がJBCの舞台となるだけに、そこへの期待となるのかどうか。
8月25日にサマーチャンピオン(1400m)が行われる佐賀には期待の転入馬がいる。7月24日の吉野ヶ里記念を制して佐賀3連勝としたリュウノシンゲンだ。昨年の岩手二冠馬で、川崎を経由して転入した。
サマーチャンピオンでは、2018年に兵庫のエイシンバランサーが制したのをはじめ、他地区の地方馬はたびたび馬券圏内の好走はあるが、地元佐賀所属馬の馬券圏内は2010年3着のマンオブパーサー以来遠ざかっている。さて今年、好配当をもたらす地元馬は出てくるかどうか。
地方競馬では多くの主催者で協賛レースを募集していて、人気となっているのはご存知だろうか。
1万円〜5万円程度の協賛金で、『○○さん誕生日記念』とか『○○さん・○○さん結婚記念』とか『○○○○来場記念』などとレースに名前がつけられるもの。
協賛レースの特典は主催者によってさまざまだが、観覧席が用意されたり、勝ち馬の関係者との口取り写真の撮影、表彰式のプレゼンターができたりする。ただ残念ながら現在は、コロナ感染防止対策で、これらの特典を休止しているところも少なくないので、注意が必要だ。
オッズパーク関連競馬場で実施されている協賛レース(主に個人協賛)の概要をまとめてみた(2022年6月現在)。
●ばんえい帯広
・協賛金:1口1万円として1口以上
・出走表や勝馬投票券にレース名を掲載
・レース中継でレース名を紹介
・表彰式プレゼンター、関係者と記念撮影(コロナ対策のため当面の間休止)
・ふるさと納税を利用しての協賛も可
●岩手
※企業協賛のみ(個人協賛はなし)
●金沢
・費用:個人は1万円分の商品券(騎手への副賞)/企業・団体は1万円分の商品券×2(調教師、騎手への副賞)
・出走表、各種媒体への掲載
・勝利騎手のサイン色紙プレゼント
・レース映像プレゼント
・大型映像装置でのメッセージ放映
●笠松
・協賛金:1口1万円で、個人は1口以上、企業は5口以上
・出走表・専門紙へのレース名記載
・協賛エピソードの紹介
・勝利騎手との記念撮影(当面の間中止)
●名古屋
・協賛費用:2万5千円
・出走表、勝馬投票券、スポーツ紙等にレース名を掲載
・優勝馬、優勝騎手との記念撮影
・優勝騎手のサイン入り色紙プレゼント
・冠レース名を印刷したゼッケンを1枚プレゼント
●そのだ・ひめじ
※コロナ感染拡大防止の為、現在は休止
・協賛費用:個人5万円/企業10万円
●高知
・協賛負担金:1万円
・出馬表に協賛名、競走名、協賛コメントを掲載。競馬新聞にも協賛名、競走名を掲載
・馬券に競走名を印字
・来賓室、特別観覧席へご案内
・ゴール写真プレゼント
●佐賀
・費用(法人):副賞として当該競走の1着賞金の5%以上の物品を用意
・費用(個人):副賞として1万円以上の物品を用意
※個人協賛はSagakeiba Supporters Club(SSC)に入会する必要あり。勝利騎手等に表彰を行うことができるが、レース名を付けることはできない(レース名が付けられるのは法人の協賛のみ)。
コロナ感染対策の制限があるのは残念だが、自分が競馬場に行くタイミングに合わせて協賛レースを申し込んだり、友人・知人のお祝いなどでサプライズとして協賛レースを企画するなど、いかがだろうか。
レース名に「第○回」と付けて毎年同じレース名で協賛レースを行っているファンや、開催ごとに協賛レースしている、いわば常連のファンもいる。
さて、ここまでは(長過ぎる)前置きで、ここからが本題。ばんえい競馬では、8月14日のばんえいグランプリ当日に新設される特別競走のレース名を募集している。
ばんえいグランプリはフルゲート10頭のうち7頭がファン投票の上位馬から選ばれるが、新設の特別競走は、ばんえいグランプリ出走馬を除いたファン投票上位馬によって争われる。いわば"残念"ばんえいグランプリ。
スポンサーはオッズパークで、『オッズパーク杯 第1回○○○○○○○○』というレース名になる(レース名は13文字以内)。
"第1回"というからには、おそらく第2回、第3回・・・と続くのだろう。あなたや、あなたや、あなたが考えたレース名が毎年、特別競走のレース名として使われるのだ。
大賞に選ばれた1作品がそのレース名となり、賞品として食べ比べステーキセットがもらえる。また、準大賞や佳作でも十勝の食材がもらえる。
応募はこちらから。募集期間は6月20日21時までとなっている。
岩手競馬の小西重征調教師が、5月22日の水沢第7レースで勝利。地方競馬通算1915勝とし、岩手所属調教師の通算勝利数記録を更新した。
岩手競馬では昭和40年代まで繋駕(けいが)速歩競走が行われており、それも含めた勝利数で故・阿部時男調教師の1914勝が岩手所属調教師では最多となっていたが、小西調教師は平地競馬のみでその記録を更新した。
小西調教師は1979年4月の初出走から今年で44年目の79歳。一昨年が43勝、昨年が39勝という成績なので、このペースであれば来年、もしくは再来年には通算2000勝となるだろうか。
小西重征調教師といえば、思い出されるのがトウケイニセイだ。
デビューから18連勝、通算43戦39勝。シアンモア記念、みちのく大賞典、南部杯、北上川大賞典、桐花賞という当時の岩手の主要古馬重賞をすべて制したほか、東北3県交流の東北サラブレッド大賞典も制した。
トウケイニセイは1989年9月の2歳時(馬齢はすべて現在の表記)にデビュー戦を勝利。しかし2戦目となったのは1年7カ月も後の4歳4月。屈腱炎を克服しての復活だったが、その不安は引退までつきまとった。
小西調教師は、この度の記録更新の際に、「自分の厩舎は馬を大事に使う馬主さんが多くて、できる限りレースを・・・という馬が多い。」とコメントしているが、1年7カ月もの休養ののちに岩手の頂点に上り詰めたトウケイニセイがその象徴といえるだろう。
ぼくが初めてトウケイニセイを生で見たのは、1994年の7歳時、12月5日に水沢で行われたフレンドリーカップだったと記憶する。『交流元年』と言われ中央・地方の交流が広まったのは翌95年のこと。当時交流レースはごく限られており、フレンドリーカップはこの年初めて行われた、岩手オープンと中央900万下(現・2勝クラス)の交流戦だった。出走10頭で岩手6頭、中央4頭。トウケイニセイが勝ち、上位6着までを地元岩手が独占した。
翌95年にも行われたフレンドリーカップは、前年の結果から中央馬は準オープンにクラスを上げられた。それでもトウケイニセイが勝って岩手勢が3着まで独占。当時中央のダート馬はたしかに層が厚くはなかったが、それにしても当時の岩手オープン馬は中央のオープンとも互角に戦えるほどレベルが高いものだった。
出世が遅れたトウケイニセイが重賞戦線を使われるようになったのは93年の6歳時から。以降、生涯のライバルとなったのが2歳下のモリユウプリンスで、2頭によるワンツー決着はじつに10回。モリユウプリンスがトウケイニセイに先着したのはわずかに2回あったのだが、それが94、95年、旧・盛岡競馬場でのみちのく大賞典。モリユウプリンスは、トウケイニセイ不在の北上川大賞典(旧・盛岡2500m)でも95、96年に連覇を果たしており、起伏の激しい旧盛岡競馬場の長距離戦で強さを発揮した。
巡り巡っていま僕の手元にあるゼッケン。トウケイニセイは94年桐花賞を勝ったときのもの、モリユウプリンスは95年みちのく大賞典を勝ったときのもの
トウケイニセイが全国から注目を集めたのは、マイルチャンピオンシップ南部杯が初めて中央との交流として行われた95年。フェブラリーステークス(当時GII)や帝王賞などダート重賞5連勝中だった中央のライブリマウントとの対決で戦前から盛り上がりを見せた。
このときは東京近郊からも多くのファンが水沢競馬場に押し寄せ、東北新幹線・水沢江刺駅ではタクシーがまったく足りなくなってしまった。水沢競馬場で開門前に行列ができたのもおそらく初めてのことで、昼前には専門紙が売り切れてしまい、そのあとは専門紙のコピーが配布された。
勝ったのは1番人気に支持されたライブリマウント。2着にも大井のヨシノキングが入り、トウケイニセイは生涯初、そして唯一の3着に敗れた。すでに8歳になっていたトウケイニセイは、その次走、大晦日の桐花賞を勝って引退となるのだが、「(能力が)ピークのときに対戦したかった」という菅原勲騎手の言葉が印象的だった。
種牡馬となったトウケイニセイは、初年度こそ24頭と交配して20頭の産駒が血統登録されたが、8年間の種牡馬生活で残した産駒は35頭。残念ながらこれといった活躍馬は出せなかった。
種牡馬引退後は、生まれ故郷である北海道えりも町で余生を過ごし、その後は岩手県滝沢市の馬っこパーク・いわてに移された。
しかし2012年3月6日、25歳で急死。横隔膜破裂による呼吸不全が直接の死因と診断された。
3月18日には馬っこパーク・いわてで『トウケイニセイを偲ぶ会』が行われた。
そして競走馬としてはめずらしいことなのだが、トウケイニセイは解剖が行われ、右前後肢の骨や蹄などが奥州市の牛の博物館に展示された。また、ホルマリン漬けにされた心臓は馬っこパーク・いわてに保管されている。
偲ぶ会で出席者に配布されたトウケイニセイのたてがみ
地方競馬では今年も5月28日の九州ダービー栄城賞(佐賀)から全国で『ダービーシリーズ』がはじまる。そこで、今回は地区ごとに3歳戦線の有力馬を紹介する。
【岩手】
岩手の3歳戦線は、一冠目が5月1日のダイヤモンドカップ(水沢1600m)で、二冠目が6月14日の東北優駿(水沢2000m)。
4月3日に行われた前哨戦のスプリングカップを4馬身差で圧勝したのがクロールキックで、2歳時の寒菊賞に続く重賞2勝目。冬季に移籍していた南関東では不運な除外のあと、1戦(12着)したのみで結果を残せなかったが、レースを使われる過程で確実に力をつけてきた。そのスプリングカップで、直線単独先頭に立っていたものの2着だったのがグットクレンジング。門別デビューで高知の金の鞍賞2着から大井を経由しての岩手転入初戦。一冠目のダイヤモンドカップはクロールキックが回避となって、グットクレンジングを巡る争いとなりそう。
牝馬では、スプリングカップ5着だったマルルットゥが、4月17日の3歳牝馬重賞・あやめ賞で重賞初制覇。そのあやめ賞では1番人気に支持されるも半馬身差2着だったボサノヴァは、2歳時に金沢シンデレラカップを制した実績。ともに5月15日の留守杯日高賞で地元の期待となりそうだ。
【金沢】
金沢は、一冠目が5月24日の北日本新聞杯(1700m)で、二冠目が6月21日の石川ダービー(2000m)。
金沢のこの世代は、令和3年の表彰で最優秀2歳馬に選定された牝馬のエムティアンジェが断然の成績を残している。門別で未勝利戦を勝って9月に転入。金沢所属となってからの2歳時は重賞のみ5戦して4勝、2着1回。地元では金沢プリンセスカップ、金沢ヤングチャンピオンを制し、笠松に遠征してラブミーチャン記念、ライデンリーダー記念を制した。唯一2着に負けた兼六園ジュニアカップは、先着されたのが門別の2歳オープン勝ち馬だった。そして3歳初戦となった4月17日の3歳A1特別では、岩手から転入初戦のリュウノガルシアと3コーナーから一騎打ちとなり、これをクビ差でしりぞけ勝利。相手は、岩手で冬休み明け2戦しての転入だったのに対し、エムティアンジェは年末のライデンリーダー記念以来の3歳初戦だったことを考えれば、着差以上に強い内容だった。
また、金沢シンデレラカップで4着だったスーパーバンタムは、年末の準重賞・あての木賞を6馬身差で圧勝。冬休み明け後に3歳A1特別を2連勝と好調持続。
この牝馬2頭の成績が目立つが、金沢では中央未勝利や1勝からの転入馬が勢力図を一気に塗り替えることもあるので、転入馬にも注意しておきたい。
【東海】
東海地区は、5月4日の駿蹄賞(名古屋2000m)が一冠目で、二冠目の東海ダービー(名古屋2000m)は6月7日に行われる。
東海地区もこの世代は牝馬が強い。秋に岩手から名古屋に転入したアップテンペストは、ライデンリーダー記念2着、新春ペガサスカップ2着と、あと一息だったが、2月1日の梅桜賞では、2歳時にゴールドウィング賞を制していたドミニク(笠松)に8馬身差をつけての圧勝。さらに2月15日、牡馬相手のスプリングカップも逃げ切って見せた。そして4月21日の東海クイーンカップでは1番人気に期待されたが、逃げ馬をぴたりとマークして進んだものの、3コーナーで一杯になってしまい12頭立ての11着に沈んだ。駿蹄賞に向けて立て直してくるかどうか。
1月の新春ペガサスカップでアップテンペストに7馬身差をつけて勝ったのがレイジーウォリアー(名古屋)。その後は、3月1日の若草賞で高知・アンティキティラの2着、南関東からの遠征馬のワンツーだった東海クイーンカップでは4着。この世代は他地区からの遠征馬の活躍が目立っているだけに混戦といえそう。
牡馬ではリンクスターツ(名古屋)が4月7日の笠松・新緑賞を重賞初挑戦で勝利。秋に北海道から移籍後、9戦5勝、2着2回と、今後の活躍も期待できそう。
【兵庫】
兵庫では、2歳時5戦全勝で令和3年の最優秀2歳馬に選出されたガリバーストームが残念ながら戦線離脱。一冠目の菊水賞(園田1700m)が4月7日に行われた。
笠松・ゴールドジュニアから園田・兵庫ユースカップをともに圧勝し、断然人気に支持されたバウチェイサーは直線を向いて先頭にたったものの、後続2頭に交わされて3着。勝ったのはベルレフォーンで、後方追走からのロングスパートが決まり、「目いっぱいの仕上げで、展開も向いた」と新子雅司調教師。3着に負けたバウチェイサーも新子調教師の管理馬で、「初めての1700mもあったし、重め残りだった」とのこと。両馬揃って二冠目の兵庫チャンピオンシップ(JpnII・園田1870m)に挑戦を予定している。
牝馬では、1月20日の園田・兵庫クイーンセレクションでハナ差の接戦を演じた2頭に注目。勝ったニネンビーグミは、菊水賞では6着だったものの牝馬最先着。惜しくも2着だったニフティスマイルは、4月10日の佐賀・ル・プランタン賞に遠征して2着。5月12日ののじぎく賞(園田1700m)では他地区勢を迎え撃つことになる。
【高知】
高知では2歳時、圧倒的な強さで地元4戦4勝、全日本2歳優駿(JpnI・川崎)にも挑戦(13着)したマリンスカイが断然の存在だった。3歳初戦となった3月21日の土佐春花賞も制したが、4月9日の仙台屋桜特別では直線失速してまさかの6着。勝ったのは、中団からロングスパートでまくってきたガルボマンボだった。
一方で、牝馬のアンティキティラは、1月23日の佐賀・花吹雪賞、3月1日の名古屋・若草賞と遠征して重賞を連勝し、北海道所属時からの連勝を6に伸ばした。当初はグランダム・ジャパン2歳シーズンを使っていくとのことだったが、地元の三冠路線に軌道修正。同じく牝馬のヴェレノは、土佐春花賞がマリンスカイの2着で、仙台屋桜特別でもガルボマンボの2着と好走。
5月1日の高知一冠目・黒潮皐月賞(1400m)は、この4頭の争いとなりそう。そして二冠目の高知優駿(6月20日)は、1900mへ一気の距離延長に対応できるかどうかもポイントになる。
【佐賀】
佐賀では一冠目の佐賀皐月賞(1800m)が5月8日、二冠目の九州ダービー栄城賞(2000m)は中2週で5月29日に行われる。
佐賀もこの世代は牝馬が強く、2歳時に九州ジュニアチャンピオンを制したムーンオブザクインが3月6日の飛燕賞も制した。そして1月23日の花吹雪賞では高知のアンティキティラに屈して2着だったザビッグレディーは飛燕賞でも2着。3月20日の佐賀皐月賞トライアルでムーンオブザクインを2着に下したのも牝馬のブルーデイジーだった。
牡馬では、古馬B級に編入されての特別戦では苦戦しているものの、2月20日の古伊万里賞(1750m)、3月5日の波戸岬特選(1800m)と連勝したイカニカンが中距離での能力の高さを見せるかどうか。
また佐賀では、飛燕賞から、昨年新設された7月3日の佐賀ユースカップという、1400mで争われる3歳の短距離路線もある。
名古屋市港区にあり、その地名から"土古(どんこ)"とも呼ばれ親しまれた名古屋競馬場が3月11日で開催を終えた。年度が変わっての4月8日からは、これまでトレーニングセンターとして使用されてきた弥富市の施設が新・名古屋競馬場となって開催が始まる。
愛知県の競馬場の歴史をみると、大正時代末期には、岡崎、豊川、一宮、豊橋と4カ所で競馬が行われていたが、昭和2(1927)年に公布された地方競馬規則のもと、新たに組織された名古屋競馬倶楽部に、岡崎、豊川の倶楽部が合併する形となって、西春日井郡川中村(現・萩野村)に名古屋競馬場が新設された。
その後、昭和6(1931)年に名古屋市南区稲永新田(現・港区稲永新田)に移転、さらに昭和11(1936)年には丹羽郡岩倉町(現・岩倉市)に移転し、昭和13(1937)年まで開催されたが、昭和14(1938)年には戦時体制となって名古屋競馬場は廃止。岡崎競馬場が鍛錬競馬場となって、昭和18(1943)年まで軍用保護馬の鍛錬競走が行われた。
そして戦後、昭和23(1948)年に新たな競馬法が施行されると、昭和24(1949)年4月1日に愛知県と名古屋市で名古屋競馬場管理組合が組織され、同年6月に完成したのが"土古"の名古屋競馬場。以来、73年間に渡って開催が行われてきた。
旧・名古屋競馬場で行われた最後のレースの直線
旧競馬場の開催最終日となった3月11日には4220名のファンが入場。最終レース終了後にはスタンド前で閉場式が行われ、愛知県競馬組合の管理者である大村秀章愛知県知事が挨拶。跡地は「都市開発の拠点となる」という話があった。
その旧競馬場は3月18日から『サンアール名古屋』と名称を変え、2号・3号スタンドで引き続き場外発売が行われている。2024年にはコースの2コーナーあたりに新たな場外発売施設が完成予定となっており、順次、スタンドが解体され、その跡地はショッピング施設になるとのこと。コースの一部は学校や公園になり、また2026年に開催される第20回アジア競技大会の選手村としても使用される。
一方、トレーニングセンターから姿を変えた新・名古屋競馬場では、3月22日に模擬レースと開場式が行われ、24日にはナイターでの模擬レースも行われた。
旧競馬場は1周が1100mで、ゴールまでの直線は現存する地方競馬でもっとも短い194mだったのに対して、新競馬場は1周1180mで、ゴールまでの直線は240mと長くなった。1周距離は80m長くなっただけだが、旧競馬場に比べてかなり大きく見えるのは、幅員が23mから30mと広いコースになったためと思われる。
設定距離は、900、920、1500、1700、2000、2100m。これにともない、従来から行われてきた重賞などの距離も変更される。ダートグレード競走として最長距離の2500mで争われてきた名古屋グランプリが2100mになってしまうのはちょっと残念ではある。
ゴールまでの直線240mは、西日本の地方競馬ではもっとも長い
特徴は、3〜4コーナーのスパイラルカーブ。地方競馬では船橋競馬場でも採用されているが、コーナーの半径が入口の3コーナーでは大きく、出口の4コーナーに向けて徐々に小さくなるため、スピードに乗ったままコーナーを回ることができる。
旧競馬場は1周1100mでも直線が短いぶん、コーナーがゆったりしていて、小回りのわりには3コーナーあたりからまくってくるようなレースが見られたが、新競馬場では勝負どころでのまくりから、さらに直線での追い込みがスリリングなものになりそうだ。
トレーニングセンターとしてつくられた場所だけに、公共交通機関での便は決していいとはいえない。最寄り駅でも、近鉄蟹江駅または近鉄・JR弥富駅から約10km。開催日には、名古屋駅(名鉄バスセンター)、サンアール名古屋(旧競馬場)、近鉄蟹江駅から無料シャトルバスが運行される。
すでにバスの時刻表も発表されていて、たとえば昼間開催時は、名古屋駅(名鉄バスセンター)から競馬場へは午前中に2本のみだが、近鉄蟹江駅からは10時から15時台まで5本が運行される。
遠方からの遠征の場合、名古屋駅で近鉄に乗り換えれば近鉄蟹江駅までは8分ほど。行きは近鉄蟹江駅からの無料バスに乗って、帰りは最終レース後、名古屋駅行きのバスを利用するというのが便利そうだ。ただしバスの所要時間は、競馬場ー近鉄蟹江駅間は約25分、競馬場ー名古屋駅間は約40分となっている。
競馬場の近くにあるのは、大規模な倉庫と思われる建物だけで、民家などはまったくない。それゆえナイター開催も問題がなかったのだろう。ただしナイター開催は他場との競合を避け、1〜2月の冬期間を中心に、2022年度は26日間を予定。
周辺に配慮するような施設がなく、他場との競合を避けるということであれば、他競技ではすでに行われている、無観客による競馬初のミッドナイト開催という可能性はどうなのだろう(あくまでも個人的な希望です)。
オッズパーク的には、競輪、オートだけでなく、競馬にもミッドナイトがあればいいと思うのだが。
スタンドは、1階屋外席312席、2階屋内席229席。ほかに1〜6名用の個室もある