地方競馬では今年も5月28日の九州ダービー栄城賞(佐賀)から全国で『ダービーシリーズ』がはじまる。そこで、今回は地区ごとに3歳戦線の有力馬を紹介する。
【岩手】
岩手の3歳戦線は、一冠目が5月1日のダイヤモンドカップ(水沢1600m)で、二冠目が6月14日の東北優駿(水沢2000m)。
4月3日に行われた前哨戦のスプリングカップを4馬身差で圧勝したのがクロールキックで、2歳時の寒菊賞に続く重賞2勝目。冬季に移籍していた南関東では不運な除外のあと、1戦(12着)したのみで結果を残せなかったが、レースを使われる過程で確実に力をつけてきた。そのスプリングカップで、直線単独先頭に立っていたものの2着だったのがグットクレンジング。門別デビューで高知の金の鞍賞2着から大井を経由しての岩手転入初戦。一冠目のダイヤモンドカップはクロールキックが回避となって、グットクレンジングを巡る争いとなりそう。
牝馬では、スプリングカップ5着だったマルルットゥが、4月17日の3歳牝馬重賞・あやめ賞で重賞初制覇。そのあやめ賞では1番人気に支持されるも半馬身差2着だったボサノヴァは、2歳時に金沢シンデレラカップを制した実績。ともに5月15日の留守杯日高賞で地元の期待となりそうだ。
【金沢】
金沢は、一冠目が5月24日の北日本新聞杯(1700m)で、二冠目が6月21日の石川ダービー(2000m)。
金沢のこの世代は、令和3年の表彰で最優秀2歳馬に選定された牝馬のエムティアンジェが断然の成績を残している。門別で未勝利戦を勝って9月に転入。金沢所属となってからの2歳時は重賞のみ5戦して4勝、2着1回。地元では金沢プリンセスカップ、金沢ヤングチャンピオンを制し、笠松に遠征してラブミーチャン記念、ライデンリーダー記念を制した。唯一2着に負けた兼六園ジュニアカップは、先着されたのが門別の2歳オープン勝ち馬だった。そして3歳初戦となった4月17日の3歳A1特別では、岩手から転入初戦のリュウノガルシアと3コーナーから一騎打ちとなり、これをクビ差でしりぞけ勝利。相手は、岩手で冬休み明け2戦しての転入だったのに対し、エムティアンジェは年末のライデンリーダー記念以来の3歳初戦だったことを考えれば、着差以上に強い内容だった。
また、金沢シンデレラカップで4着だったスーパーバンタムは、年末の準重賞・あての木賞を6馬身差で圧勝。冬休み明け後に3歳A1特別を2連勝と好調持続。
この牝馬2頭の成績が目立つが、金沢では中央未勝利や1勝からの転入馬が勢力図を一気に塗り替えることもあるので、転入馬にも注意しておきたい。
【東海】
東海地区は、5月4日の駿蹄賞(名古屋2000m)が一冠目で、二冠目の東海ダービー(名古屋2000m)は6月7日に行われる。
東海地区もこの世代は牝馬が強い。秋に岩手から名古屋に転入したアップテンペストは、ライデンリーダー記念2着、新春ペガサスカップ2着と、あと一息だったが、2月1日の梅桜賞では、2歳時にゴールドウィング賞を制していたドミニク(笠松)に8馬身差をつけての圧勝。さらに2月15日、牡馬相手のスプリングカップも逃げ切って見せた。そして4月21日の東海クイーンカップでは1番人気に期待されたが、逃げ馬をぴたりとマークして進んだものの、3コーナーで一杯になってしまい12頭立ての11着に沈んだ。駿蹄賞に向けて立て直してくるかどうか。
1月の新春ペガサスカップでアップテンペストに7馬身差をつけて勝ったのがレイジーウォリアー(名古屋)。その後は、3月1日の若草賞で高知・アンティキティラの2着、南関東からの遠征馬のワンツーだった東海クイーンカップでは4着。この世代は他地区からの遠征馬の活躍が目立っているだけに混戦といえそう。
牡馬ではリンクスターツ(名古屋)が4月7日の笠松・新緑賞を重賞初挑戦で勝利。秋に北海道から移籍後、9戦5勝、2着2回と、今後の活躍も期待できそう。
【兵庫】
兵庫では、2歳時5戦全勝で令和3年の最優秀2歳馬に選出されたガリバーストームが残念ながら戦線離脱。一冠目の菊水賞(園田1700m)が4月7日に行われた。
笠松・ゴールドジュニアから園田・兵庫ユースカップをともに圧勝し、断然人気に支持されたバウチェイサーは直線を向いて先頭にたったものの、後続2頭に交わされて3着。勝ったのはベルレフォーンで、後方追走からのロングスパートが決まり、「目いっぱいの仕上げで、展開も向いた」と新子雅司調教師。3着に負けたバウチェイサーも新子調教師の管理馬で、「初めての1700mもあったし、重め残りだった」とのこと。両馬揃って二冠目の兵庫チャンピオンシップ(JpnII・園田1870m)に挑戦を予定している。
牝馬では、1月20日の園田・兵庫クイーンセレクションでハナ差の接戦を演じた2頭に注目。勝ったニネンビーグミは、菊水賞では6着だったものの牝馬最先着。惜しくも2着だったニフティスマイルは、4月10日の佐賀・ル・プランタン賞に遠征して2着。5月12日ののじぎく賞(園田1700m)では他地区勢を迎え撃つことになる。
【高知】
高知では2歳時、圧倒的な強さで地元4戦4勝、全日本2歳優駿(JpnI・川崎)にも挑戦(13着)したマリンスカイが断然の存在だった。3歳初戦となった3月21日の土佐春花賞も制したが、4月9日の仙台屋桜特別では直線失速してまさかの6着。勝ったのは、中団からロングスパートでまくってきたガルボマンボだった。
一方で、牝馬のアンティキティラは、1月23日の佐賀・花吹雪賞、3月1日の名古屋・若草賞と遠征して重賞を連勝し、北海道所属時からの連勝を6に伸ばした。当初はグランダム・ジャパン2歳シーズンを使っていくとのことだったが、地元の三冠路線に軌道修正。同じく牝馬のヴェレノは、土佐春花賞がマリンスカイの2着で、仙台屋桜特別でもガルボマンボの2着と好走。
5月1日の高知一冠目・黒潮皐月賞(1400m)は、この4頭の争いとなりそう。そして二冠目の高知優駿(6月20日)は、1900mへ一気の距離延長に対応できるかどうかもポイントになる。
【佐賀】
佐賀では一冠目の佐賀皐月賞(1800m)が5月8日、二冠目の九州ダービー栄城賞(2000m)は中2週で5月29日に行われる。
佐賀もこの世代は牝馬が強く、2歳時に九州ジュニアチャンピオンを制したムーンオブザクインが3月6日の飛燕賞も制した。そして1月23日の花吹雪賞では高知のアンティキティラに屈して2着だったザビッグレディーは飛燕賞でも2着。3月20日の佐賀皐月賞トライアルでムーンオブザクインを2着に下したのも牝馬のブルーデイジーだった。
牡馬では、古馬B級に編入されての特別戦では苦戦しているものの、2月20日の古伊万里賞(1750m)、3月5日の波戸岬特選(1800m)と連勝したイカニカンが中距離での能力の高さを見せるかどうか。
また佐賀では、飛燕賞から、昨年新設された7月3日の佐賀ユースカップという、1400mで争われる3歳の短距離路線もある。