今年の岩手オープン戦線はサバイバル模様を呈している。昨年、岩手三冠を制した上、桐花賞も優勝し、世代交代を完了させたロックハンドスターだったが、コスモバルク記念以降も復調の兆しがうかがえず、さらに悲劇が待っていた。東京競馬場開催の南部杯でスタート直後に上腕骨を骨折。帰らぬ馬となった。
そのロックハンドスター相手に6月、岩手伝統のみちのく大賞典を圧勝したのがコアレスレーサーだった。秘めた素質は重賞レベルと評価を受けながら、なかなかビッグタイトルに手が届かなかったが、ついに悲願の重賞制覇を果たし、地元の期待を一身に背負ってマーキュリーカップへ臨む予定だった。
ところがマーキュリーCを目前に控え、脚部不安が発生。陣営は苦渋の選択をし、北上川大賞典に照準を変更。完全休養に入り、秋から復帰に向けて調整を進めてきたが、回復に手間取り、出走を断念。来期に復活を賭ける運びとなった。
この2頭不在の重特路線で、岩手競馬の看板を背負ってきたのがゴールドマインだった。ロックハンドスタートいっしょにコスモバルク記念から今季始動。ところが輸送がこたえて30キロも体重が減り、結果も7着。
これで暗雲が立ちこめた印象もあったが、見事に払拭。帰郷初戦の早池峰賞を3着にまとめ、続くみちのく大賞典でコアレスレーサーの2着を死守。以降、マーキュリーカップ6着、すずらん賞優勝、クラスターカップ6着、青藍賞優勝と一貫して王道を歩み続け、結果も出してきた。
そして東京競馬場での開催となった南部杯へも岩手代表で参戦。あまりにも強力なメンバーがそろって12着に終わったが、帰郷後、その反動もなく至って順調。万全の態勢で北上川大賞典を迎える。
過去、同レースに09年、10年と連続出走して2、3着。マイラーのイメージが強いが折り合いに苦労するタイプではないので距離も大丈夫。父がダンスインザダークなら納得だろう。
単不動。焦点は2着争いに絞られ、マヨノエンゼルを抜擢してみたい。一昨年の年度代表馬だが、昨年はずっとスランプ状態に陥り、自問自答の日々を送っていた。ようやく復調の兆しをうかがわせたのが暮になってから。白嶺賞、桐花賞2着、トウケイニセイ記念3着で本来のシャープさを取り戻した。
今年こそ開幕からエンジン全開を期待されたが、東日本大震災の影響で調整に狂いが生じて6ヵ月半休養。すずらん賞でようやく戦列に復帰したが、まったく精彩がなく凡走。これで終わりかと思ったが、前走0秒2差3着で復活のメドが立った。
北上川大賞典は09年に出走して3着。ゴールドマインの後じんを拝したが、長丁場も問題ないのは証明済みだ。仮にここで好走すれば終盤でも目が離せない存在となり、是非とも復活劇を見たいところだ。
マイネルビスタは中央1勝、名古屋を経て転入。岩手初戦、そして前回と2勝マーク。いずれも1800m戦でレース運びのうまさが目についた。過去、最長距離はその1800mまでだが、そこは百戦錬磨の菅原勲騎手がカバー。スローの流れでも掛かることがないのが強みとなる。
サクラマジェスティは逃げ、もしくは2番手が打てそう。展開はいかにも向きそうだ。ただ昨年、ロックハンドスターを破り、桐花賞でも2着確保したが、今年は2着1回が最高。精彩を欠いているのは否定できない。父がサクラローレル、母父コマンダーインチーフなら2500m歓迎だろうが、現状は連下止まりに落ち着く。
ツルマルヤマトにも同じことが言える。こちらがハナに立ち主導権を握る可能性も高そう。またスパッと切れる脚ではなく、いわゆるジリ脚タイプで距離延長は素直に考えれば望むところ。しかし弱い相手にも取りこぼし多いのが気になり、押さえが妥当だろう。
◎(6)ゴールドマイン
○(7)マヨノエンゼル
▲(5)マイネルビスタ
△(3)サクラマジェスティ
△(4)ツルマルヤマト
3連単は6を1着固定に7、5相手が本線。あとは3、4を押さえ
馬複は 6-7、5-6、3-6、4-6
<お奨めの1頭>
2R ベルウッドショット
転入初戦は出遅れが痛かったが、直線で鋭く伸びて2着。走法にセンスがきらり。最内1枠が若干気になるが、持てる能力で突き抜ける
今年ほど芝レースが多かった年はない。東日本大震災の影響で水沢開催が休止したことにより、盛岡競馬場1場での開催がその理由。幸い各方面に支援により12月10日から水沢競馬が再開するが、芝レースは評判がいい。最近では新設重賞・第1回OROターフスプリント(芝1000m)は手に汗を握る大激戦。3歳牝馬ラブミープラチナが一躍脚光を浴びた。
昨年までは水沢開催中に芝の復旧ができたが、今年はさすがに芝をずっと使っているため、痛みは結構激しい。それでもしっかり管理され、レースには支障ないようだ。
5日メイン「五葉山賞」も盛岡芝1700mが舞台。芝を求めてフルゲート12頭。しかもC2からも3頭が挑戦し、おもしろさを倍加。人気はメリーポピンズに集中するだろうが、各馬にチャンス十分の一戦となった。
メリーポピンズは父がネオユニヴァースの良血馬。中央0勝に終わったが、中山芝1800m(3歳未勝利)で0秒3差3着のほか、芝を専門にソコソコの結果を出していた。転入初戦の心配はダート。過去に名古屋の交流戦で一度使われて2秒8差7着に惨敗。はたしてダートをこなせるか半信半疑だったが、2番手から直線地から強く抜け出して2馬身半差で完勝。陣営も喜びを隠せなかった。
そのレースを叩いて五葉山賞は当初の予定どおり。盛岡芝は1周1400mでコーナーがきついが、それにさえ戸惑わなければ連勝濃厚。内枠を引き当てたことも勝利を後押しする。
逆転はチェリッシュライン、バクソクトレインの2頭。チェリッシュラインは中央4戦0勝ながら転入直前の札幌未勝利戦(芝1800m)で2着。4角で早め先頭に立ち、そのまま押し切るかと思ったが、タイム差なしで惜敗。
この実績があれば逆転の可能性は高いが、ひとつ気になるのが体重減。岩手初戦2着だったが、マイナス10キロ。「繊細な牝馬で食いが細い」(村上昌幸調教師)とのこと。さらに体重が減っているようだと割り引きが必要だが、5キロ内までなら能力を出せると踏んだ。
バクソクトレインはパワーのいる馬場よりも脚抜きのいい芝、ダートなら速いタイム決着向き。盛岡芝は過去4回使って2着2回。逃げ、差しで連対を果たし、どんな展開にも対応できることを証明済みだし、JRA相手の交流戦4着、3歳芝特別・サファイア賞(芝2400m)でも僅差4着。コース経験の差を生かして大勢逆転を狙っている。
プリンクンは派手さはないが、思った以上に力をつけている。前々走は1本被りのクールダンス相手に快勝し、前走もロードクリスタルに最後まで食らいついて2着を死守。盛岡芝でも3着の実績が光る。
センリライズはここにきて立ち直り気配をうかがわせている。今年は凡走を繰り返しているが、2歳時に芝1000mで直線一気を決めて周囲の度肝を抜いたこともあり、復活なるか注目に値する。
他にも目下3連勝中と上昇一途ホッカイナシュア、2歳新馬(中山芝1600m)で3着ルシエルクレールは初戦凡走だったが、芝で一変の可能性もある。
◎(4)メリーポピンズ
○(10)チェリッシュライン
▲(1)バクソクトレイン
△(8)プリンクン
△(7)センリライズ
△(12)ホッカイナシュア
3連単は4、10の1、2着折り返しから1、8。あとは8、7、12を3着押さえ
馬複は 4-10、1-4、4-8、4-7
<お奨めの1頭>
5R トーホクアロー
ウイングアロー産駒だが、前走の芝で同厩エトセトラをキッチリ交わして快勝。成長振りが目覚しい。ダートに戻ってさらに信頼度を増す
今回は競馬ネタだけども競馬場を離れたお話を。
27日の木曜日、岩手県北部の軽米町にある晴山小・中学校を内田利雄騎手が訪問しました。
内田騎手は小学校時代の一時期を軽米町で過ごした事があり、今でも年に一二度は軽米にやってきてかつての級友たちと旧交を温めるとか。09年には内田騎手が在学した同町の観音林小で"臨時授業"を行った事もあります。その観音林小が統合されて生まれたのが晴山小。当然観音林小時代の知己も移ってきているわけで、そんな縁もあって今回の訪問が実現したとの事。
30日メインは盛岡1400mを舞台に行われるB1特別「ひいらぎ賞」、12頭立て。主軸はラブルビー。実質オープンレベルのメンバーがそろったが、距離を味方にB1も突破すると踏んだ。
ラブルビーは中央から再転入後、最下級C2からスタート。かつて在籍したときに1勝2着2回の実績を残し、初戦から注目だったが、なんと強いこと強いこと。ほぼワンサイドで9連勝を飾り、今では1800mも克服してB2卒業。勢いはとどまることを知らない。
ただ不安点がない訳ではない。これまで一つ一つ課題をクリアーしてきたが、先ほども記したように今回はA級と言ってもおかしくない面々。決して楽な競馬はできないだろうし、先輩たちがてぐすねを引いて待っている印象。
まず逆転一番手にあげたオウシュウサンクスは3歳重賞路線を歩んできた実力馬。今年はオープンへ殴り込みをかけ、当初は後半開催の重賞・北上川大賞典が最大目標に据えていた。
それだけの能力を秘めているし、今季10戦すべて1番人気がその裏付けだが、取りこぼしが多かった。ここ2戦も2、3着に敗れ、なかなか軌道に乗れないのが歯がゆいばかりだ。
何故、取りこぼしが多いのか。理由ははっきりしている。自分の型に持ち込むと抜群の破壊力を披露する半面、相手のペースになると脆さをだすからだ。JRA相手に負けているのもそれが理由。全能力を出し切れないで終わっている感じだった。
ならば1400mの忙しい競馬が合わないのではと思うかもしれないが、以外に適性がある。要は自分の型に持ち込むことができるか、できないか。それに尽きる。
アドマイヤサムライも順調なシーズン入りを果たしたかに見えたが、自慢の切れが不発。折り合いを欠いて暴走したり、途中でレースを投げたりする連続だったが、6戦目に待望の白星。これで軌道に乗ったかと思ったが、2着に敗れた後も8、3着。
乗っている村上忍騎手「いきなり掛かったり、手応えがいいと思ったら意外に伸びなかったりして常識にかからない」と語っていたのがアドマイヤサムライの特徴だ。
ただ前走は1800mが長すぎたが、それでも3着を確保し調子落ちはまったくない。今回は折り合いを気にしなくていい1400mは絶好の条件。中間の追い切りでも11秒台を連発し、首位を奪回して不思議はない。
ゲイリークインは今季、馬券対象から外れたのは2度のみ。一度目は1000m戦の忙しい競馬の反動が出たときと前走、1800mの距離が長すぎたためと敗因がはっきり。それ以外の10戦すべて3着以上と抜群の安定感。こちらも1400mは望むところ。
サクラアーバンは3着最高と詰めの甘さが目につくが、相手も強かったのも事実。前走からB1へ降格し、さっそく3着。1400m戦でハイペース必至のメンバーだけにしまい確かな脚が生きてくる。
◎(7)ラブルビー
○(9)オウシュウサンクス
▲(3)アドマイヤサムライ
△(8)ゲイリークイン
△(11)サクラアーバン
3連単は7、9の1、2着折り返しから3、8、10流し
馬複は 7-9、3-7、7-8、7-11
<お奨めの1頭>
1R フェルマグリオ
前走、クビ差の接戦を制し、勝負強さも証明。自身の連勝を4に伸ばすのみ。相手はホウショウキング。4-7一点
29日メインは2歳馬による岩手、北海道の交流特別「知床賞」(盛岡ダート1400m)。この交流戦は2008年からスタートし、門別開催は「岩手山特別」、岩手開催の場合は「知床賞」の名称で実施。過去3回は北海道2勝、岩手1勝。それぞれ地元開催の馬が優勝している。
今回は岩手開催で輸送のない地元有利は動かし難い。やはり2歳馬に長距離輸送は相当こたえ、よほど精神的にタフでないと大きなハンデを背負うことになる。何度となく輸送で失敗したというコメントを聞いてきたことか。
しかも今年の岩手勢はアスペクトというケタ違いの馬がいる。通算成績9戦5勝。4度の敗戦は適性のない芝で3回。母アプローズフラワーもダートでは無類の強さを誇っていたが、条件も悪かったが芝はまったくダメだった。さらに追い討ちをかけるのが父ティンバーカントリー。改めて血統の不思議さを再認識させられた。
あと1回の敗戦は札幌遠征・2歳500万下。ダート1000mも確かに合わなかったが、輸送で激しくイレ込んでレース前に終わっていたと担当厩務員。先ほど2歳馬の輸送に触れたが、アスペクトも例外ではなかった。
その分と言うわけでもないが、自分の庭・盛岡ダートは5戦すべてワンサイドで圧勝。前走・若駒賞でも同厩エスプレッソを子供扱いにして10馬身差の大差でブッチ切り、2歳王者の座を確定させたばかり。たとえ北海道勢が遠征してきても軽く一蹴するに違いない。
相手は若駒賞でアスペクトに1秒6差もつけられたが、2着確保エスプレッソ。この同厩ラインは、かなり強力と見ていい。若駒賞で勝ちに行ったのも離された理由。レース前は両馬とも盛岡ダート戦で無敗を誇り、鞍上・斎藤騎手は4コーナーでアスペクトを捕らえにかかり、それで脚を使ったのが大きかった。
おそらく今回は無理に競りかけることもないだろうから、2着は譲れないところ。現時点ではともかく、将来性を考えればエスプレッソも相当レベルと解釈している。斎藤騎手「追い出すと重心を低くし、その時のスピードは本当にすばらしい」と絶賛する。
ファイトホーマーは昨年の最優秀2歳馬ベストマイヒーローの弟で、デビュー前から注目を集めていた1頭。ただ実馬を見て驚いた。兄と体型がまったく違った。ベストマイヒーローは胸前と後肢の肉付きが見事。それがスピードの源だと思うが、一方でバランスは決していい訳ではない。
それに対しファイトホーマーは流線型の形をしてタイプはまったく別。父がサクラプレジデントからタイキシャトルに替わってこうも違うのかとビックリ。それは菅原勲騎手も同じ意見だった。
レースにもそれが現れ、ベストマイヒーローは天性のスピードが身上。しかしファイトホーマーはデビュー戦で出遅れながら、いい脚を長く使って快勝。「距離が伸びれば伸びた方がいい。まだ体は弱いが、将来性はありそう」と菅原勲騎手。
2戦目は順調さを欠いた上、アスペクトが相手で2秒4も離されたが、2着を確保した点は評価に値する。今回は乗り込みも万全で、昇り目ということで言えばファイトホーマーが一番。どのようなレースをするのか、ちょっと楽しみだ。
北海道勢ではリュウノスピリットが筆頭か。4戦未勝利だが、2着2回3着1回。詰めの甘さに課題を抱えているが、層の厚い北海道でこの成績はマズマズの部類。門別1200m1分14秒9も遠征4頭の内でも一番。輸送さえクリアーできれば身上の堅実さを発揮するだろう。
あと侮れないのがイルドフランス。デビュー2戦は仕上がり途上で4、5着止まりだったが、1ヵ月半の間隔を開けて臨んだ前走・芝1600m戦を快勝。ひと皮むけたレースを披露した。陣営は芝よりもダートが合うと見ており、今後につながる競馬を期待したい。
◎(7)アスペクト
○(2)エスプレッソ
▲(6)ファイトホーマー
△(9)リュウノスピリット
△(3)イルドフランス
3連単は7を1着固定に2、6、9を2着。3着に3、11
馬複は 2-7、6-7、7-9、3-7
<お奨めの1頭>
6R クイーンザリッチ
前走はフェルマグリオが圧倒的な1番人気だったが、逃げてクビ差まで粘って見せ場十分。強豪抜けた今回は首位を譲れない