8月25日(金)、村上昌幸元調教師が逝去された。70歳だった。村上昌幸さんは1970年、父親でもある村上初男(故人)きゅう舎から騎手デビュー。3年目の1972年、187勝をマークしてリーディングジョッキーの座を獲得。これは菅原勲元騎手(現調教師)に破られるまで29年間にわたって岩手最多勝記録だった。
以降、1981年まで10年連続でリーディングジョッキーに君臨。10年連続の記録は現在も岩手競馬記録として残っている。1987年に騎手引退するまで岩手通算1783勝。この数字にばらつきがあるのはデビュー当時、浦和競馬に修行。昔、本人にも確認したが、何勝かしたとコメント。ひとまず公式に沿って1783勝を今回は記した。
1988年からきゅう舎を開業。今年3月19日(日)、調教師通算1500勝を達成。騎手、調教師で1500勝以上は村上昌幸さん一人のみ。岩手競馬の多大な貢献を果たし続けてきた。
騎手時代、人は"天才"と称したが、実際は努力の人。人一倍研究熱心だった。かつて雑誌テシオで取材をお願いした時、「当時のリーディングジョッキーだった(小西)重征さんにしつこいほど話を聞いたし、いろいろ技術を盗んだ。浦和へ行ったのも騎乗技術をあげるため。その頃は他場で騎乗できるチャンスはほとんどなかった」と。村上昌幸さんは我々のヒーローでした。ありがとうございました。安らかにお眠りください。
続いて重賞報告。27日(日)、水沢2000mを舞台に"GRANDAME-JAPAN2023"古馬シーズン「第49回ビューチフルドリーマーカップ」が行われ、1番人気に支持されたノーブルシルエットが逃げ切りを決めて3馬身差で完勝。中央ダート4勝オープンから南関東移籍3戦目で初重賞を手にした。
笹川翼騎手「行っても良かったし、2番手でも良かったが、前回(フリオーソレジェンドカップ10着)のことがあったから行ければ行こうと思っていた。スローだったが、息が入らなかったのでペース以上に展開は楽ではなかった。でもこれで負けるようでは次はないと思ってレースを進めた。3コーナーで2番手の馬を離したので、前回よりも走り切れると思った。今回、勝ってくれたが、実績を考えると物足りない。まだ伸びしろがあると思うし、地方ダートの方が向き。矢野さんから重大なバトンを受けましたから、その分もしっかり取り組んでいきたいと思っています」
佐野謙二調教師「名古屋(秋桜賞1700m)も考えたが、2000mの方がいいとビューチフルドリーマーカップを選択した。レース間隔は詰まったが、小回り水沢も合ったと思う。次走はレディスプレリュード。そこでもいい競馬を期待しています」
今、最も勢いがあるシニスターミニスター産駒、ノーブルシルエットの今後に注目したい。
今週の岩手競馬
9月3日(日) 「第55回不来方賞」(3歳 水沢2000m)
9月4日(月) 「夢・希望・未来へ前進」(B1級 水沢1400m)
9月5日(火) 「ブラッドストーン賞」(B1級一組 水沢1600m)
8月27日に行われた古馬牝馬の地方競馬全国交流重賞『ビューチフルドリーマーカップ』。7頭立て、遠征馬6頭と地元馬1頭の構図で行われたこのレースは1番人気の大井・ノーブルシルエットが優勝。自身初の重賞タイトルを獲得しました。
主導権を握ろうとした馬たちが序盤から雁行の形になり「遅いペースの割には必ずしも楽な展開ではなかった」と振り返った鞍上・笹川騎手でしたが「ここで勝てないようでは次はない」と腹をくくって強気のレースを挑みます。パートナーもそれに応えて後続を引き離しての3馬身差快勝、ここからまだまだ盛り上がっていく牝馬重賞戦線にむけて強くアピールして見せました。
8月29日のメインレースは12Rに行われる古馬マイルの準重賞『すずらん賞』。3着馬までに青藍賞の有線出走権が与えられるトライアルレースですが、その本番まで中一週ということもあり、顔ぶれとしてはこの先に向けての手応えを探るような馬たちが多いように感じます。それだけにいわゆる"どの馬にもチャンスがある"一戦とも言えそう。
すずらん賞の本命は(6)ハクシンパーソナルを狙います。
今年春に転入してきてB1スタートからA級に上がってきて4戦を経たところという同馬。重賞・準重賞は初挑戦になりますが、ここまでの内容、特にA級に上がってからの走りは今回のメンバーであれば互角にやれて良いものだと感じます。コースの左右は問わず馬場の変化にもそれほど影響されない。ちょっと気難しいところがあるようで"勝ちパターン"に持ち込むには展開の助けも少し必要になるようですが、ここは周りが強い分ある程度の流れ・動きを期待できるでしょう。
対抗は(4)フレイムウィングスを。マーキュリーカップ以来になりますが過去の戦績を見る限りポン駆けは効くタイプ。使い込んでいったあとよりはフレッシュな方が良さそうです。岩手転入後は未勝利ですがここ3戦は重賞で上位に入ってきており、戦いの質は着順の数字以上と見るべき。ベストは広い盛岡コースでしょうがこの頭数なら水沢でも。
三番手は(1)マイネルアストリア。今季はここまで4戦、これが5戦目。昨季に比べると大事に慎重に使われている印象です。みちのく大賞典では大敗を喫しましたがA級戦ではまだまだ上位を争える力量健在。好枠も味方になるでしょう。
以下はこの頭数でも混戦になれば・・・でまず(7)ゼットセントラル。ベストは1400mかなという印象ですがマイルも守備範囲。差しタイプゆえにまずは展開が向くかどうか?ですが、少頭数の外枠からなら全く動けないという事はないはず。そして(2)ボウトロイ。今週の水沢は良馬場の割に時計が速めで、そういう馬場はイマイチかもしれませんが、前走のような競り合いの形、タフさが活きる形になればチャンスも・・・とみます。
●12Rの買い目
馬単(6)=(4)、(6)=(1)、(4)=(1)、(6)→(7)、(6)→(2)
岩手競馬の全レース予想を公開中!「岩手競馬・勝ちそーチャンネル」へ
28日メインはオープン「スプリント特別」(水沢850m)。岩手の短距離路線は8月15日、JpnIII・クラスターカップで区切り。あとは芝1000mを舞台に行われる地方競馬全国交流・OROターフスプリントが控えているが、こちらは芝なので別路線。今回はダート短距離馬による850m戦。決して多くはないレースだけに、各馬ともチャンスをしっかりモノにしたいところだろう。
アップテンペストは2歳時、5勝。重賞・ビギナーズカップ2着、牝馬交流・プリンセスカップ3着後、名古屋へ移籍。梅桜賞、スプリングカップと重賞2連勝を飾った。3歳夏、再び岩手へ戻り、ひまわり賞(オークス)5着から重賞・やまびこ賞を優勝し、OROオータムティアラ2着。今度は笠松へ転籍して3戦を使って里帰り。
初戦の早池峰スーパースプリントはデビュー戦以来の水沢850mだったが、2番手をキープしてキラットダイヤの2着を確保。陣営は短距離が合うと判断して以降はスプリント路線を歩むことを決断した。
続く岩鷲賞(盛岡1200m)でも2番手を追走したが、直線失速9着。この時は内有利の馬場で外を回った馬は苦戦。大本命キラットダイヤも3着に沈むほど。馬場に泣いた一戦だった。
以降は2戦連続で2着と短距離適性を改めて証明し、JpnIII・クラスターカップへ挑戦。戦前の予想どおりドンフランキーが逃げの手に出たが、2番枠を引き当てたアップテンペストも積極的に攻めて半馬身差2番手を主張。さすがに相手が強く3コーナーで一杯となったが、見せ場は作った。
3走前、盛岡1000m戦でアヴェントゥリストに0秒3差の完敗2着だったが、あえて本命にしたのは早池峰SS、クラスターCのパフォーマンス。十分逆転できると見た。
アヴェントゥリストは浦和から帰郷当初は精彩を欠いていたが、徐々に立ち直り気配をうかがわせて目下2連勝中。完全復活を遂げた。しかも水沢850mは6勝2着4回。つまり水沢の好走はすべて同条件であげたもの。自信の条件を迎えて3連勝に王手をかけた。
カッチャオも水沢850m5勝2着3回3着3回。春当時の勢いが薄れているのは否定できないが、ベストの850mで巻き返しに転じる。
エイシンハルニレは4度目の岩手転入。3歳時に芝・オパールカップ、ハヤテスプリントと交流2連勝を飾った。昨年8月以降、白星から遠ざかり、850mも未経験。不確定要素は少なくないが、実績は一番といえる。
フミタツティンクルは船橋2戦から再転入。初戦の盛岡1000m3着で高配当を演出したが、以降は鳴りを潜めているが、決め手一目。先行馬が崩れた際に浮上。
◎⑥アップテンペスト
〇⑤アヴェントゥリスト
▲②カッチャオ
△④エイシンハルニレ
△⑦フミタツティンクル
<お奨めの1頭>
4R ココリアイランド
ダート未経験だが、一連の走破タイムが優秀。格付けに恵まれて初戦からいける
27日メインは"GRANDAME-JAPAN2023"古馬シーズン第7弾「第49回ビューチフルドリーマーカップ」(水沢2000m)。遠征馬6頭に対し、岩手はミツカネラクリスの1頭のみ。正直、拍子抜けの印象があるのは否定できないが、出走見送りには背景がある。
ビューチフルドリーマーカップがグランダムジャパンに指定されたのが2010年。同年は地元代表マイネベリンダが逃げ切って優勝したが、以降は12年連続で遠征馬が優勝。北海道7勝、南関東5勝。近年は4年連続で南関東代表馬が制している。対して岩手勢は2018年以降は1着から3着まで遠征馬が上位を独占。2020年に至っては1着から6着まで。つまり遠征馬がすべて上位を占めたこともある。
岩手勢が馬券対象となったのは2017年、スパンコール2着、3着ミラクルフラワー。北海道代表ジュエルクイーンが2年連続(最終的に3連覇)で優勝したが、以降は馬券対象すらなし、と惨たんたる結果。
仮にトライアル・フェアリーカップを圧勝し、復活宣言したゴールデンヒーラーなら互角以上の競馬ができると思うが、現時点でのローテーションは青藍賞2連覇、南部杯を予定。陣営はマイルがベストの舞台と判断している。
以上のことから今年も遠征馬の天下。主軸はノーブルシルエットで異論はないだろう。中央ダート1800m4勝、ダート1600m1勝、オープンに在籍した。今年7月、4カ月の休養を挟んで南関東入り。初戦のスパーキングレディーカップ(JpnIII)で逃げ粘って5着。実力に片りんを垣間見せた。
しかし2戦目・フリオーソレジェンドカップ10着。崩れないのを身上としていたが、生涯2度目の二けた着順に沈んだ。敗因は先行馬が総崩れの流れと逃げた馬と3番手外を追走した間に入り、息の抜けない展開となったため。今回は7頭立てに少頭数に加えてメンバーも有利。チャンスをしっかりとつかみ、今後に弾みをつけたいところだろう。
レスペディーザは中央ダート1700m~1800mで1勝2着2回3着2回から今年5月に門別へ移籍。初戦はニシケンボブの2着に終わったが、2戦目から連勝。牝馬交流・ノースクイーンカップを0秒4差で完勝した。中央1勝クラスで格比較で見劣るが、地方ダートで素質開花したと解釈。過去、ビューチフルドリーマーカップを3度制した実績を誇る田中淳司きゅう舎が自信を持って送り込んでくる。
サルサレイアは中央ダート2勝2着7回3着5回。安定した取り口を披露して南関東へトレード。1勝のみながらJpnIII・クイーン賞3着。ほかのレースでも大崩れなく入着回数も多々。勝ち味に遅いのがネックで一昨年のBドリーマーカップも4着止まり。ただ常に一線級と戦ってきたことも事実。仮に優勝できればサルサディオーネと姉妹連覇の偉業がかかっている。
ティーズハクアは北海道1勝2着1回3着3回から南関東入り。2勝2着7回と堅実さを発揮し、浦和・桜花賞2着、ロジータ記念2着。兵庫サマークイーンは0秒9差5着だったが、2000m以上では4戦して2着3回。唯一連対を外したのはJpnII・関東オークス(9着)のみ。距離を味方にアッサリまで。
トップザビルは中央2勝クラスから南関東移籍後も1勝マーク。東京シンデレラマイルでスピーディキックの2着の実績も光る。
◎⑥ノーブルシルエット
〇⑤レスペディーザ
▲④サルサレイア
△①ティーズハクア
△③トップザビル
<お奨めの1頭>
4R ボンバーキャット
南関東C3から転入後、3戦連続で2着。ここでは前走タイムでは抜けており、勝機到来
先週から舞台は水沢競馬場に替わった。コース替わりのときは頭数減少の傾向があるが、特に先週は顕著だった。理由は暑さ。ニュース、天気情報などでご存じの方も多いと思うが、今年の北日本、岩手は異常な猛暑。24日(木)、岩手県県北・岩泉町で36・4度を記録したが、県内6か所で35度を超す猛暑日。
岩手ではお盆が過ぎると朝晩の気温が下がり、最高気温も徐々に下がっていくのだが、今年は明らかに異常気象。競馬にも影響しないわけがなかった。ただでさえ暑さに弱いのがサラブレッド。全身を毛で覆われているため、人間以上に暑さがこたえる。
ただ今週はフルゲートとは言えないが、頭数増加にホッとした次第。もちろん油断はできない。自分のも言い聞かせているが、何とか猛暑を無事に乗り越えてほしい。
先週は2歳重賞「第41回ビギナーズカップ」(水沢1400m)が行われ、単勝100円元返し、圧倒的1番人気にこたえてフジユージーンが2馬身半差で完勝。デビュー後、無敗3連勝を飾った。
レースはリトルカリッジが逃げ、2番手にシングルモルト、3番手外にコンバットスプーン。フジユージーンは初めて控える競馬を試みたが、陣営の予定どおり。あとは3コーナーから徐々に進出に入れ、4コーナーでリトルカリッジに馬体を併せる。ダート2連勝リトルカリッジも渋太く粘ったが、直線で力強く抜け出して2馬身半差。世代ダートでトップを確定させた。
村上忍騎手「元々、スタートダッシュがいいタイプではない。こういう(控える)競馬にもいい感じで対応できた。新馬戦で水沢850mを圧勝したが、1周する今回の水沢1400mを乗ってみると、広い盛岡コースの方が合うと思う。距離が伸びても問題ないので、今後も非常に楽しみです」
瀬戸幸一調教師「デビュー戦で能力の高さを確信していたので、予定どおりの勝利。控える競馬にも対応して、うまく勝ってくれた。去年、フジラプンツェルが使い詰めでしたからね。フジユージーンはレース間隔を開けて行こうと決めていた。次走はネクストスター盛岡へ直行します」
今年のビギナーズカップは5年ぶりの水沢1400m戦。過去4回は盛岡ダート1400mが舞台だったので単純なタイム比較はできないが、1分28秒6は優秀。水沢1400m戦のレースレコードは2013年、ラブバレットの1分27秒3だが、同馬は後に短距離ダートグレードで大活躍した。
加えて前走比プラス9キロの体重増も影響した印象がない訳ではなく、まずは順当に重賞獲得を喜びたい。新設の1000万レース・ネクストスター盛岡は盛岡ダート1400mが舞台。村上忍騎手のコメントどおりでもあるし、跳びが大きくコース広い盛岡向きは明らか。次走・ネクストスター盛岡に注目してほしい。
最後に山本聡哉騎手の近況報告。ご安心ください。無事手術は成功。除去部分に他箇所から細胞を取り、補充した。あとは回復を待つのみだそうです。
今週の岩手競馬
8月27日(日) 「第49回ビューチフルドリーマーカップ」(牝馬地方競馬前項交流 水沢2000m)
8月28日(月) 「スプリント特別」(オープン 水沢850m)
8月29日(火) 「第46回すずらん賞」(準重賞 水沢1600m)