岩手で行われる3つのグレードレースのうち、2つ目が終わりました。JRAの強豪を真正面からねじ伏せたのは、船橋のプライドキム。クラスターカップ史上2頭目の地方競馬所属勝馬となりました。
レース評などは各所で語られるでしょうからここでは書きませんが、じつは私、プライドキムを目にしたのは今回が2度目。前回は川崎で行われた2004年の全日本2歳優駿のときで、当時中央所属だったプライドキムは、4馬身差の圧勝劇で2歳チャンピオンの座についたのでした。といっても、本当のところ私の遠征目的は翌日の報知オールスターカップのほう。こちらはウツミジョーダン&小林俊彦騎手が、南関馬を蹴散らし見事勝利したレースだったのですが、せっかくだからと予定を1日早めて川崎入りしGIレースを撮影していたのです。
そのときの勝馬が長いスランプを経て地方馬として復活したわけですが、まさか南関所属となって初めての遠征で岩手にやってきて、私の目の前で再びグレードウイナーに輝くとは! そういえばレース前の装鞍所で、プライドキムが私の方をじっと見つめていたっけなぁ……「お、久しぶりだね。今日は頑張ってきっと勝つから単勝馬券でも買っておいてよ。」……おっとっと、妄想モードに入ってしまいました。
ティーンエイジャー川島正太郎騎手の笑顔と、プライドキムの瞳が印象に残る今年のクラスターカップでありました。
8月18日 第13回クラスターカップ(Jpn? 水沢1400m)
1着 プライドキム
「ゲートをでたら気合いをつけて前へ行け」(川島調教師)の指示どおり、逃げたタイセイアトム、2番手ディープサマーの直後3番手外を追走。12秒前後のハイラップを楽に追走し勝負どころの3コーナーからスパート。4コーナー手前でディープサマーを交わし、タイセイアトムに並ぶやラスト200m過ぎに先頭。外を回ってフェラーリピサがジワジワ接近してきたが、直線半ばで再び突き放して1馬身半差で完勝。
06年、オリエントボスがマークした水沢1400mを1秒も短縮、1分24秒3のレコードを樹立した。
「初騎乗だったので、追い切りでまたがらせてもらったがスピード、パワーとも物凄かった。実際のレースでも道中折り合いがついて非常に乗りやすくて3コーナーあたりから仕掛けたら反応が抜群。4コーナーで内田さん(タイセイアトム)に並んだ時、これならいけると思ってがむしゃらに追った。このようなチャンスをいただいたオーナー、調教師に感謝したい」と川島正太郎騎手。
プライドキムはJRAデビュー2戦目から2連勝を飾り、一戦置いて兵庫ジュニアグランプリ(G?・当時)、全日本2歳優駿(G?)を連勝。しかし、その後は頭打ちのレースを繰り返し07年1月、船橋・川島正行厩舎へトレード。前走比プラス24キロと大幅増だったにもかかわらず、いきなり初戦・船橋記念(1000m)を快勝し続く報知グランプリカップも優勝。
復活を遂げたと思った矢先、11ヵ月の長期休養。08年1月、ひとまず復帰を果たしたが、なかなか勝ち切れず京成盃グランドマイラーズ大差12着後、2ヶ月の休養を挟んでこのクラスターCへ駒を進めた。
「脚元が弱く使い込めなかったが、今回は最終追い切りで抜群の反応だったので秘かに期待していた。レース間隔を開けたのも良かったかもしれない」と川島調教師。
前走比マイナス16キロの503キロと大幅減で臨んだが、中央時代は最高でも494キロで使われてきた馬。レース前はこれも不安材料だったが、まったく関係なかった。次走以降は未定だそうだが、「このような競馬ができるのなら、JBCスプリントに挑戦してもおもしろいかも」と川島調教師。
2着 フェラーリピサ
前半は中団に位置し、向正面から早めにスパートをかけて徐々に先陣グループに肉薄。「4コーナーで射程圏に入れたと思ったが、切れがなかった」(岩田騎手)ため、直線入り口でプライドキムに最接近したが、その後はジワジワ離されてしまった。「58キロの負担重量が影響したのか前に行ける脚がなくなったかも」と岩田騎手。
3着 トーセンブライト
先行4騎を見る形でレースを進め、各馬がスパートをかけた3コーナーで追走に手こずる。その遅れが致命傷となり、直線で一杯となったタイセイアトムを交わして3着確保がやっとだった。「小回りすぎた」と藤田騎手。
4着 タイセイアトム
12頭立て11番枠に入ったのは痛かったが、馬なりで先手を奪う。ハロン12秒前後の絶妙のペースで逃げたが、プライドキムのマークがきつく直線入り口で交わされてしまっては如何ともし難かった。「このペースで逃げて負けたら仕方ない」(内田博幸騎手)
7着 メイショウバトラー
スタートは決して悪くはなかったが、外から被せられて1コーナーで折り合いを欠き鞍上が1コーナーで立ち上がる。その後は4番手インを追走したが、各馬にスパートをかけられても反応ひと息。ほとんど見せ場を作れず7着に沈んだ。「枠順(1枠)がつらかった。最内だと1コーナーでブレーキをかけるしかなかった」と武幸四郎騎手。
ダート1400mのグレードレース・クラスターC。今年で13回目を数える真夏のスプリント戦は今回もJRA勢が中心になりそうです。
例年に比べると実績が抜けた馬や明らかな短距離巧者がおらず、よく言って実力接近、悪く言って一長一短なメンバー。軸選びには悩まされます。
とはいえ、岩手勢はトライアル重賞を勝った馬が取り消してしまった上、本来なら大将格の昨年の3着馬・テンショウボスも2月以来の実戦のうえ中間順調さを欠き気味。昨年10着だったヤマニンエグザルトがどこまで踏ん張ってくれるか・・・という状況。
他地区勢も臨戦過程からして掲示板程度までの期待、というところ。やはり上位争いをするのはJRA勢、という事になるでしょう。
対抗はフェラーリピサ。昨冬以降は順調に走り続けて9戦2勝、近3走に限れば2勝2着1回の好調ぶり。陣営のコメントではそろそろ上積みも無くなってきたとの事ですが、最近の走りは3歳時の勢いを取り戻しつつあるように思えます。58kgを嫌って対抗に留めましたが、カンカン泣きはしないタイプ。首位争いでしょう。
昨年の覇者メイショウバトラーは3番手に。重賞3連勝で挑んできた昨年ほどの爆発力には欠ける現状。とはいえ先行すればしぶとい馬。前に行ってしまえば普通に上位争いに加わってくると見るべきでしょう。
これらの馬が先行馬だけれども逃げ馬ではない、という事からすると、逃げ馬タイセイアトムにもチャンスがありそう。休み明けを叩いて3戦目、芝まで使って勢いをつけてきたのがいかにも不気味。ダイワメンフィスあたりも行きたいのでしょうが、そちらが内枠の馬を牽制してくれればタイセイアトムにも好都合。逃げ切りには要警戒。
地方馬ではコアレスデジタルを押さえてみたいですね。一昨年ほどの状態にはないのかもしれませんが、地方小回り向きの短距離馬、2ヶ月くらい開けて走るのは昔からだし、それで結果も出しているから気にしなくていいでしょう。
このレースはJRA勢4頭が中心。あとは頭の選び方と配分だけという事になるのでは。
◆買い目
馬単 2=7、2=1、7=1、2=11、2→6
◆お奨めこの一頭
8R:ニシネホウジュ
レース内容が安定し、ここでも見劣りしなくなった。そろそろ夏も終わり。牝馬は夏のウチに狙っておこう。
18日(月)、水沢1400mを舞台に行われるJpn?「第13回マーキュリーカップ」(第9レース 発走16時10分)の枠順が確定した。
? メイショウバトラー(JRA) 55 武幸四郎
? トーセンブライト(JRA) 57 藤田伸二
? ダイワメンフィス(北海道) 56 山口竜一
? ヤマニンエグザルト(岩手) 56 板垣吉則
? ディープサマー(船橋) 57 戸崎圭太
? コアレスデジタル(船橋) 56 左海誠二
? フェラーリピサ(JRA) 58 岩田康誠
? トーホウライデン(岩手) 56 高橋悠里
? プライドキム(船橋) 56 川島正太郎
? テンショウボス(岩手) 56 小林俊彦
? タイセイアトム(JRA) 57 内田博幸
? マンジュデンコウベ(岩手) 56 菅原勲
17日(日)メイン9レース(発走16時10分)はC1級「仙台市ミックスベジタブル杯 第2回風鈴賞」(水沢1800m)、10頭立て。
好調馬がそろって激戦必至だが、強烈な差し脚を武器に岩手で6勝マークのサンワードグローから入りたい。2度の4着は左回り盛岡に戸惑ったもので、その後2連勝でコース克服。地元に戻った前走、いきなり2500mの夏油賞だったが、ヒシリーガルにハナ差2着。本当に惜しいところで勝利を逃がした。
今回も予断の許せないメンバーとなったが、一連の走破タイムからサンワードグローの主軸視が妥当だろう。
相手筆頭はケイジーウィザード。中央0勝、南関東0勝から今年転入。最下級に編入し、相手に恵まれてアッサリ初勝利。これで弾みがついて現在まで5勝2着5回3着3回と毎回勝ち負けを演じている。サンワードグローとの直接対決でも4戦して3度先着(1度はサンワードグロー1着、ケイジーウィザード2着)の実績を考えれば逆転の目も十分にある。
タイキサファリは名古屋オープンからの転入でC1へ格付け。芝で7着に沈んだが、他では格上の実力を見せている。前回3着は距離が長すぎたと解釈でき、守備範囲の1800mに加え、絶好の1枠を引き当てたからには巻き返しに転じて不思議はない。
パラダイスオピウムは岩手5戦4勝2着1回。園田・金沢で1勝のみが信じられない充実ぶりだ。前々走、唯一の敗戦にしてもカヤドーブランとの直線叩き合いの末、ハナ差負けたもので勝ちに等しい内容。これまでとはメンバーが違うが、勢いでは決してヒケを取らず挑戦が見モノとなる。
他ではペース速くなればクードゥフードル、格上マツリダカレーが台頭の可能性がある。
◎ ?サンワードグロー
○ ?ケイジーウィザード
▲ ?タイキサファリ
△ ?パラダイスオピウム
△ ?クードゥフードル
△ ?マツリダカレー
3連単は2、10、1の3点ボックスが本線。あとは2を1着固定に10、1折り返しから4、7、3へ3着流し
馬複は2−10、1−2、1−10、2−4、2−7
<お奨めの1頭>
8レース ブラーボウッズ
マーキュリーCは相手が強すぎて10着に終わったが、地元同士なら役者が違う
16日(土)メイン9レースは今年の岩手競馬CMキャラクター&スポークスマン・東幹久さんの冠レース「東幹久杯 第2回種山高原賞」。C2級1600mを舞台に、フルゲート12頭立てで東幹久杯の栄冠を競い合う。
ちなみにこの日は東幹久さん一色。地元TV局・めんこいテレビの情報番組「あなろぐ」へ生出演。6レース終了後にはトークショー、抽選によるミニサイン会、そしてメイン9レースの騎乗命令、レース後の表彰式プレゼンターなどを務めることになっている。
主軸はマンハッタンナイト。中央4戦0勝後、笠松へ移籍。3戦2勝3着1回の成績をあげて再び中央入り。結果は3戦着外に終わり、岩手へ新天地を求めてきたのだが、それがズバリはまった。6月28日、初戦C2戦でほぼ持ったままで2着に1・4秒差をつけて圧勝。周囲はこの強さに驚きを隠せなかった。
2戦目は当然、圧倒的な1番人気に指示されたが、伏兵に脚元をすくわれてクビ差2着。そのうっ憤を晴らすかのように、前々走は的場文男騎手を背に4角先頭の横綱相撲で完勝した。これで吹っ切れたかに見えたが、前回は先行馬が総崩れの展開に巻き込まれ、2番手から直線一杯4着。
なかなか軌道に乗れないでいるが、実力の証は一連の走破タイム。敗れた2戦ともハイタイムでの決着で、いわゆる巡り会わせの問題。普通ならば圧勝のケースだったが、大駆けに遭ったのは運が悪かったとしか言いようがない。
前回4着ながら水沢1400m1分30秒8は抜けており、馬場差を考慮しても今回のメンバーではちょっと出せないタイム。今日こそスッキリ勝って次走以降に弾みをつけたいところだ。
軸はすんなり確定したが、2着争いが非常に難解。好調度を重視するか、過去実績を重視するかなどで迷うところだが、アッパージーンをピックアップしてみたい。ここ2戦とも着外が気になるところだが、実は両レースとも前が総崩れの展開。逃げたアッパージーンは執拗なマークに遭い、直線で失速7、8着に敗れたもの。この中間の降雨も味方にして巻き返しに転じる。
レオジュリアンは一戦置きに好、凡走を繰り返し今回は『凡』の順番だが、ここ一番では格がモノを言う。水沢1600m2勝2着3回の実績も見逃せず、巧みなレース運びで上位争いを演じてくれるに違いない。
コース替わってウインドアースは安定感をグッと増してきた。いい脚を長く使えるのが持ち味でスローに落とされない限り、確実に直線で台頭する。
以下、反撃に意欲十分ケイアイノーブル、マイルは守備範囲アッパーヤードを連下押さえ。
◎ ?マンハッタンナイト
○ ?アッパージーン
▲ ?レオジュリアン
△ ?ウインドアース
△ ?ケイアイノーブル
△ ?アッパーヤード
3連単は8を1着固定に9、1、11、10流し
馬複は8−9、1−8、8−11、8−10、7−8
<お奨めの1頭>
11レース グレートアドミラル
岩手転入後、一度7着に沈んだ以外はすべて白星。前回もパーフェクトの内容で完勝した