22日朝、水沢競馬場で同一厩舎から3頭が馬インフルエンザの陽性反応を確認。県競馬組合はこの3頭を検疫厩舎に隔離し、また同じ厩舎には他の17頭がいたが、厩舎内にとどめて他の馬と接触しないように処置。また水沢の全厩舎にも防疫を徹底させる意味で消毒を施した。
この感染を受けて岩手県競馬組合では今週、開催するか否かを検討に入ったが、農水省からの指示“出走前に馬体検査を実施する”、“発熱などの発症の疑いがある馬は競走から除外する”ことを前提に、今週末25日から27日の開催に踏み切った。
しかし全国で猛威を振るい、強い感染力がある馬インフルエンザであるだけに、感染には細心の注意を払い、万全の態勢で開催に臨まなければならないだろう。
さて本題。25日(土)メインは3歳以上オープン馬による「第30回すずらん賞」(水沢1600m)。このレースはJpn?・南部杯へと繋がる道で1、2着馬には重賞・青藍賞(9月9日 盛岡ダート1600m)への優先出走権が与えられる。
当初、このすずらん賞には13頭の登録があったが、6頭が回避した。これは馬インフルエンザの影響ではなく、Jpn?・クラスターカップ(8月15日)からレース間隔がなかったこと、今年の猛暑で想定どおりの調整ができなかったため無理をさせたくなかったから。
結果、7頭立てと少頭数になってしまったが、上位3頭の争いは非常に興味深い。その3頭とはローランボスコ、コスモスパーブ、トーホウライデン(格付け順)だが、ここはトーホウライデンの勢いに託してみたい。
(トーホウライデン・8/16エクセレント競走優勝時 写真/佐藤到)
冬期休養明けの特別開催(3月24日)・エクセレント競走では、馬体重が大幅に減少して449キロ(休み前は467キロで出走)。見た目にも馬体が寂しく見えて結果も5着。続くA2・岩手日報杯ではさらに3キロ減ったものの、ひとまず底力の違いで優勝したが、体重減の反動がない訳がなく、以降の3戦は2、2、6着と不本意な成績に終わっていた。
しかしトーホウライデンは見事に復調した。A2降格初戦の盛岡戦(6月17日)で馬体重が464キロまで回復するや2着に1秒差もつけ、同クラスの特別・ねむの木賞も0・9秒差の圧勝劇。そして浦和遠征・龍泉洞特別(浦和条件交流)も直線鋭く抜け出しを決め、前回も当然のように完勝と目下4連勝中。今や飛ぶ鳥を落とす勢いでこのすずらん賞に臨んできた。
今回、いきなり初の一線級を相手に、果たして突破できるか。これが焦点となるだろうが、走破タイム、レースぶりはまさしくオープン級。加えて父ブライアンズタイム、母父ミスタープロスペクターという超良血馬。その素質が全面開花した今なら、ここも十分突破が可能だろう。
コスモスパーブは岩手転入後、アッサリ2連勝をマークした。3走前・みちのく大賞典は名古屋代表で参戦して11着に敗れたが、長距離輸送のハンデ、相手強化が敗因と見れば2連勝も納得。しかもレース内容がすばらしく初戦(盛岡)は2番手抜け出し、前回は中団から豪快にまくって2着ローランボスコ以下を完封と文句なしだった。ここを勝てば、今後オープンの台風の目になれるかも知れない。
実績では前記2頭を上回るのがローランボスコだ。このすずらん賞は3年連続で出走となり一昨年1着、昨年は2着。また同距離のまんさく賞(06年4月)も制し、マイル特別で2勝。水沢マイルは鬼といっても過言ではない。
気になるのは前々走でコスモスパーブに完敗を喫したことだが、約2ヶ月レース間隔が開いたことも敗因。この一戦だけで力負けだと判断するのは早計だろう。
以上、3頭の三つ巴模様と見たが、競り合いに持ち込まれたならブラーボウッズの差し脚、今季は精彩を欠いているが、昨年の覇者ミサキノハンターも得意の舞台で巻き返しに転じることも考えておきたい。
◎ ?トーホウライデン
○ ?コスモスパーブ
▲ ?ローランボスコ
△ ?ブラーボウッズ
△ ?ミサキノハンター
3連単は1、6、7のボックスが本線だが、配当が低ければ1を1着固定に6、7を本線。あとは3を押さえ少々
馬複は1−6、1−7、6−7、1−3
<お奨めの1頭>
7レース ヘンリーズフォーク
転入初戦は自らハイペースを形成しながら、2着に1・2秒差の圧勝劇。これは強い!
2週間ぶりのご無沙汰でした。
この間、競馬界はインフルエンザ問題で大激震となり、ついにこちらでも感染馬が発見されてしまいました。岩手ではJRAからの第一報があった直後に、中央から転入してきたばかりの競走馬を検査(結果は陰性)。もちろんその後の馬の転入・転出を凍結するなどの自衛をしていましたが、しかしそれでも完璧な防疫というのは難しいのだと思います。
もうみなさんも良く知っていると思いますが、馬インフルエンザは極めて感染力の強いウィルス性呼吸器系疾患で、現在では全ての競走馬と多くの乗用馬がワクチン接種を受けています。しかしこのウィルスは変異型が発生しやすく、今回流行したウィルスとはワクチンの型が合わなかった模様。また型が合ったとしても4割程は感染してしまうという報告もあり、相当やっかいなものです。
馬インフルエンザウィルスは、発症馬の死亡率は0.1%程度と死に至ることは少ない反面、潜伏期間は1〜3日と短く爆発的な感染力を持ち、発症した馬の治療には2〜3週間を要するそうです。また最近の報道では空気感染すると言われていますが、学術書によると飛沫感染、つまり唾液や鼻水の飛散により伝染するとされています。とはいえおそらくは呼気中の水分だけでも伝搬されるでしょうから、競走馬の厩舎のような密集した状態では同じ空気を吸っているだけでもうつると思った方が良いのかも知れません。
今週末の岩手競馬は、出走馬に対する検査・陽性馬隔離などの対策を施した上で開催されることになりました。いまはただ、全ての関係者が適切な対応をし、岩手競馬や他全国の中央・地方競馬場で一日も早い終息宣言が出されることを祈るのみです。
8月15日に行われたクラスターカップ、今思えばJRAから馬インフルエンザの発生報告がされるまさに前日におこなわれ、普通に開催されたのは“滑り込みセーフ”といったところでしたね。レースを圧勝した武豊騎手は水沢グレード競走初勝利。これに気を良くしたわけではないでしょうが、たくさんファンサービスをしてくれました。この日競馬場を訪れ、武騎手の笑顔に魅了されたファンも多かったのではないでしょうか。
武騎手も、「こっちは(前日に騎乗した)佐賀より暑いですね。このところ岩手からは明るいニュースが聞こえて来ませんでしたが、ファンも熱く、とてもいい競馬場だと思います。本当に頑張って欲しいですね」とのコメントを残していきました。「今ある日本の競馬場は全て騎乗した」と言う武豊騎手。芸能人並みの扱いを受ける中央のスター騎手でありながら、どんな小さな地方の競馬場でも乗鞍があれば飛んでいき、行かないときでも気に掛けているとは、さすがですね。
全国にはこのように岩手を気に掛けていてくれる騎手や関係者、そしてファンの皆様がたくさんいるのだということを肝に銘じ、私も頑張って生きたいと思います。
(文/写真・佐藤 到)
※参考文献・獣医感染症カラーアトラス 文永堂出版(株)
<次走へのメモ>
8月15日 第12回クラスターカップ(水沢1400m Jpn?)
(写真・佐藤到)
1着 メイショウバトラー
好スタートを切ったが、アグネスジェダイがハナに立とうとしたので、無理せずに2番手を追走。これは武豊騎手がイメージしたとおりの展開となり、2コーナーからアグネスジェダイがペースを上げたが、楽に追走。むしろ逃げたアグネスジェダイの方が終始つつかれる苦しい流れとなってラスト100m、内で必死に粘るアグネスジェダイを楽に交わすと、あとは余裕残してゴール。結局、3馬身差の完勝劇を演じ、Jpn?4連勝を飾った。
「2頭ともお手馬なので同じレースで走ってほしくなかった(笑)。アグネスジェダイの強さは分かっていたので離されないように心がけた。いいスタートを切れたし、道中の手応えも抜群。1400mのピッタリだったし、コースも合うと思っていたが、それにしても今回は強かった。牝馬だが、体調もいいので次はG?を狙いたい」と武豊騎手。
2着 アグネスジェダイ
他の馬をけん制しながら、11番枠からハナに立つ。前半3ハロンが12秒6―25秒2―38秒1と交流重賞では決して速くはないラップだったが、4ハロン目=2コーナーから11秒台に一気に加速。これでメイショウバトラーを突き放しにかかり後続はどんどん離される一方だったが、メイショウバトラーは馬なりで追走。これではアグネスジェダイもさすがに苦しく、我慢できたのは直線半ばまで。メイショウバトラーにアッサリ交わされてしまった。
「もっと他の馬に行ってほしかったが、押し出される感じで逃げることになった。こんなにマークされればきついし、一騎打ちになると3キロの斤量差ではこの結果も仕方がない」と小牧騎手。
このコメントのとおり展開もあったが、今回はメイショウバトラーが強すぎた。次は同ハンデで戦わせてみたい。
3着 テンショウボス
6番手外を追走し、1コーナー過ぎまでは手応えも良かった。しかし2コーナーから前の2頭が後続を離し、遅れまいと小林騎手も早めスパートをかけて3コーナーでは単独3番手まで進出。それでも2頭の差は詰まらず、逆に離される一方。アグネスジェダイからも9馬身差がついたが、これは力の差。ここは地方最先着を死守した点を素直に評価すべき。
8月19日 第39回不来方賞(水沢2000m 3歳オープン)
(写真・佐藤到)
1着 セイントセーリング
「内枠だったので逃げられるか心配だったが、いいスタートを決めることができた」と菅原勲騎手がレース後に語ったとおり、外から被せられて包まれると苦しい競馬になっただろうが、好ダッシュからスンナリ逃げる。あとはマイペースに持ち込み、直線でも二の脚を駆使し、阿久利黒賞、ダイヤモンドカップ、そして今回の不来方賞と地元重賞三冠を達成。
今回の勝因はマイペースで逃げれたこと、2000mの距離を経験していたこと、古馬との対戦によって鍛えられたこと、そして開幕からの調子を維持できたことなどがあげられるが、最大の勝因はセイントセーリングの実力である。
2着 マツリダワルツ
スローの流れと判断するや、南郷騎手が4、5番手追走の積極策に出る。向正面から鞍上の手は動いていたが、インからジワジワ進出。「反応は悪くなかった。ただ3コーナーで前が壁になる不利が痛かった」(南郷騎手)そうで、直線で外に持ち出して鋭く伸びてきたが、1馬身半差までにとどまる。
それでもダイヤモンドカップに続いてセイントセーリングの2着を死守し、改めてレベルの高さを証明した。
3着 ボスアミーゴ
道中は後方3番手に待機し、向正面から仕掛けるとシャープに反応。3〜4コーナーではアッと言う間に2番手まで進出したが、そのあとの伸びがもう一つ。ラスト100mで一杯となり、2000mの距離に泣いた印象だった。
馬インフルエンザのために大変な事になっていますね。この原稿を書いている時点でJRAに続き大井競馬も取り止めになり、影響はJRAにとどまらず地方競馬も巻き込んできました。岩手では今のところ発症した馬がいるという話は聞こえませんが、例え岩手で発症馬が出なくても、この問題は当分いろいろなところに影響するのではないでしょうか。
18日(土)メインは今年第二弾の2歳特別「第25回ビギナーズカップ」(水沢1400m)、9頭立て。同条件、水沢1400mを経験した馬はバトルアイ、ビューティドリームのわずか2頭。コース適性、ダートへの対応力も未知数の馬が多く、意外に難しい一戦となった。
(リザルト 写真・佐藤到)
ひとまずリザルトを主軸に推してみたい。ご存知、パラダイスフラワー(父ティンバーカントリー)の半妹で、こちらはマイネルラヴがお父さん。デビュー戦を姉譲りのスピードで逃げ切り、芝1000m59秒1の好タイムで圧勝。当然のように2戦目(盛岡ダート1200m)は圧倒的な1番人気に支持されたが、スタートで大きく出遅れた不利が響いて3着。推定だが5馬身以上も遅れたため、この結果も仕方なしだった。
そして前走・若鮎賞では4番手を追走して4コーナーで早くも2番手に進出。そのまま楽勝パターンかと思ったが、外からジェベルロバーツ、最内からアシュワーが鋭く突っ込んでゴールまでもつれ込んだが、勝負根性を発揮してアタマ、クビ差の接戦を制して2勝目をマークした。
今回は初輸送、初コースのハンデを抱えているが、前回の1着を素直に評価すべきだろう。
ジェベルロバーツはデビュー戦芝1000mでミラクルジョンコの0・1秒差2着、前回・若鮎賞はタイム差なし2着と惜しいところで白星を逃がしているが、レース内容は決して悪くない。しかも今回は地元水沢に戻り、しかも待ちに待ったダート戦。姉ジェベルリーヴァ、ネバーオブライトも活躍の場はダートがメインで、前記リザルトとは逆に条件はベストと見て間違いないだろう。
セイントアスリートはデビュー戦で痛い出遅れを喫しながらもスケール大きく快勝。走破タイムこそ芝1000m1分ジャストは平凡だったが、それ以上にレース内容の良さが際立っていた。マイネルラヴ、母父アジュディケーティングの血統も魅力の一つで、ここもアッサリ勝てば将来のオープン候補の期待が集まる。
完成度で一歩リードしているのがバトルアイ。若鮎賞は逃げて4着に沈んだが、前回、水沢1400mをアッサリ逃げ切って快勝。この経験が大きくモノを言うだろうし、メンバー中一番の3勝マーク。前回の大幅な体重減が気になるところだが、レース運びのうまさで大勢逆転を狙っている。
その他にもデビュー戦を好タイムで快勝テンショウベスト、ダート戦で巻き返し期待ミラクルジョンコも侮れず、どの馬が勝っても不思議なしの一戦となった。
◎ ?リザルト
○ ?ジェベルロバーツ
▲ ?セイントアスリート
△ ?バトルアイ
△ ?テンショウベスト
△ ?ミラクルジョンコ
3連単は9、4、3のボックスが中心。あとは8、6、2を3着押さえ
馬複は4−9、3−9、3−4、8−9、6−9
<お奨めの1頭>
8レース セイントプラウド
前回はハナケンロマンの逃げ切りにしてやられて3着だったが、実力負けとは思えない。ここは巻き返し必至と見るべき