今年の紅葉はちょっと遅いようですね。例年なら盛岡開催の最後のあたりは真っ赤な山々に彩られているのですが、今年はまだ緑が残っているうちにラストを迎えてしまいました。
というわけで、またこの季節が巡って来てしまいました。「今シーズンの」盛岡開催終了、とカギカッコ内を強調して言わなければなりません。私個人の意見は昨年同時期ここに書いたとおり、岩手には競馬が存在するべきだということで変わってはいませんが、しかし去年はあれから土俵際まで寄り切られそうになり、なんとか持ちこたえたもののその後も相変わらず苦しい状況。まったく暗いニュースばかりでみなさんも気が滅入ることしばしばでしょう。
その一方、このところの岩手競馬は外部から明るい話題がもたらされていますよね。コスモバルク、タイガーマスク、スタリオンシリーズ、オッズパークグランプリなど、どれも本当に有り難いことです。これらの期待に応えるために自分は何をすればよいのか?私の貧弱な頭脳では良案浮かばず非常に歯痒い思いがするのですが、でもせめて私の周囲やネットで私の話を聞いてくれる方々に、岩手の競馬はいいよ、面白いよ、ということを伝えていきたいと思います。
話は変わりますが何年か前のシーズン終了後、岩手競馬ファンが集うある組織が、その年のベストレースを投票で決定したことがありました。そのときの一位は、ウツミジョーダンとトニージェントが死闘を演じた北上川大賞典。
さてシーズン途中ですが、今年度ここまでで、後にベストレースに推されるようなレースはと考えると、すぐには思いつかないという感じでした。もちろんいいレースはたくさんあって、例えばサイレントエクセルの活躍やマツリダワルツの末脚、豪雨のダービーグランプリなどが頭に浮かぶのですが、04年の北上川大賞典のような強烈な印象のレースというと、ちょっと物足りないかなと。ところがここ最近は大変見応えのあるレースが続いているように思うんですよね。サイレントエクセルが不利を跳ね返してゴール直前差し切った桂樹杯や、牝馬クルセイズの意外な粘りをボスアミーゴが捉えたきんもくせい賞、4歳どうしのライバルが4コーナーからデッドヒートを見せた赤松杯など。メインレース以外でも大逃げや思い切った後方待機策をとる騎手がしばしば見られています。先ほどは外から活気が注ぎ込まれているということを書きましたが、これは騎手や厩舎関係者など、岩手の現場の人間たちが良いレースを見せようと頑張っている現れなのではないでしょうか?
岩手の危機を身近に感じ、手を差し伸べてくれる外部の人々。賞金が下がり、先行きも不透明で不安と戦いながらも頑張っている現場の人々。私も些細ながら出来ることをやらねばと感じます。あとは“お上”が真剣になってくれると良いのですが…
(文/写真・佐藤 到)
10月28日 第1回きんもくせい賞(3歳以上オープン 盛岡芝2400m)
(写真・佐藤到)
1着 ボスアミーゴ
大外からナイキアヘッドが果敢に逃げ、終始3馬身ほどのリード。芝2400m戦にしては珍しくペースが速く、ボスアミーゴは他の様子を見ながら中団インにつける。ラスト1000mから次第にピッチが上がり、ボスアミーゴも徐々にスパートをかけ、4コーナーでは大外を回って4番手まで進出。ラスト200mで先頭に立ったものの、さすがにゴール前の脚色は怪しくなったが、最後は気力を振り絞ってギリギリ粘る。
「この馬には距離が長いと思っていたので前半は折り合いに気をつけて乗った。3コーナーあたりから流れが速くなって自分もついていったが、早めに仕掛けた分、終いが苦しくなった。よく我慢してくれた」と菅原勲騎手。
菅原勲騎手のコメントどおり未知の2400mがカギだったが、「以前は掛かっていたが、今は折り合いがつくようになった」精神面の成長が大きく、ひとまず距離の壁を乗り越えた。このきんもくせい賞で今季のオープン芝競走が終了するため、今後、適距離(マイル前後)のレースがあればJRAへ積極的に挑戦したいという。
2着 サイレントグリーン
前半はセーブ気味に後方4番手に待機し、勝負どころの3コーナーでスパートをかけようと板垣騎手の手が激しく動いていたが、反応が一息。ラスト100mではボスアミーゴの完勝ムードだったが、直線を向いて外ガッサンカーネギーと馬体を併せて大外を強襲。前回・パンジー賞の再現かと思ったが、わずかアタマ差届かず2着に敗れた。
「今回はエンジンのかかりが遅かった。馬場が荒れていた上にやや重だったせいか、内を通った分、伸びを欠いたのかも。最後はいい感じで伸びてきたんだけど…」と板垣騎手。
3着 ガッサンカーネギー
あおり気味のスタートもあって後方からの競馬。サイレントグリーンの直後のポジションからスパートをかけ、大外からメンバー中一番の上がりを駆使したもののハナ差の3着。前回・パンジー賞も同条件で行われ、結果は6着ながらも0・3秒差。サイレントグリーンに次ぐ上がりタイムをマークしていた。
岩手転入2戦はダート戦で大敗を喫していたが、前走、そして今回と芝で巻き返しに転じた。やはり中央芝2600mで2勝、芝2000mで1勝した実績はダテではなかった。
4着 クルセイズ
終始3番手をキープし、直線は最内を突いて一旦抜け出すシーンもあったが、あとひと踏ん張りが足りなかった。「距離が長いかも」と阿部騎手。
10月29日 第33回赤松杯(3歳以上オープン 盛岡ダート2000m)
(写真・佐藤到)
1着 テンショウボス
予想どおり1枠からセイントセーリングが逃げたが、1周目スタンド前では最後方にいたダイワフォーチュンが1コーナーで一気にまくって先頭。しかし有力馬はこれに惑わされず所定のポジションをキープ。テンショウボスは一貫して5番手外を追走し、3コーナー過ぎから徐々に前に進出。4コーナーで早くも馬なりで先頭集団に並びかけ、ラスト200mでは内サイレントエクセルとのマッチレースに持ち込む。2頭の叩き合いは100m以上に及んだが、テンショウボスがジワジワと抜け出してゴールでは2馬身差をつける完勝となった。
「折り合いがつくタイプですし、いいところにつけられるので競馬がしやすかった。盛岡なら2000m前後が合いますし、手応えもずっと良かった」と小林騎手。
次走は11月12日、1着賞金1000万円「オッズパークグランプリ」(水沢1600m)と佐々木修一調教師。
2着 サイレントエクセル
終始3、4番手をキープしたが、いつもなら勝負どころから馬なりで伸びていくのだが、板垣騎手の手が動いて反応がひと息。それでも直線入り口で先頭に立ったニシノグレイシャを交わし、テンショウボスとの叩き合いに持ち込んだが、最後が甘くなる。2000mもこの馬には若干長いが、それ以上に道中の手応えひと息だったことが敗因だろう。参考までにサイレントエクセルの勝ちパターンは勝負どころから馬なりで先行に取り付けた場合が多い。
3着 ニシノグレイシャ
スタンド前は2番手、向正面は3番手外につけ、絶好の手応え。テンショウボス、サイレントエクセルがスパートしたのを見て4コーナーで早め先頭に立ち、内で必死に粘っていたが、最後は底力の差。それでもこのメンバーで3着なら上々。転入初戦の圧勝劇、そして今回の好走と岩手の重特でも勝ち負けできるメドが立った。
早いもので今シーズンのOROパーク開催も月曜日で終わり。今年は水沢→盛岡→水沢→盛岡と2ヶ月ずつ交互に開催されたせいか例年と感覚が違っていて、今週で終わりと言われると“えっ、もう!?”と思ってしまいます。
盛岡がラストという事は芝もラストという事で、残念ながらメインレースは芝ではないのですが、5・6・7Rの芝レースでじっくりお楽しみください。
◇お奨めこの一頭
9R・オッズパーク賞/キレアジサイコウ
盛岡では好走しつつも結果につながらず。しかし状態はここのところずっと良く、なんとかなりそうな気配に満ちる。盛岡初勝利なるか!?
28日メインは社台スタリオンステーション協賛・ネオユニヴァース賞「第1回きんもくせい賞」(3歳以上オープン 盛岡芝2400m)、13頭立て。
当初、笠松からコパノアグリグロ、オグリホットの登録があったが、前者は遠征を自重。オグリホットはJBCスプリントへ選出されたためにそちらへと回り、地元同士の戦いとなった。
(せきれい賞ゴール・サイレントグリーン 写真・佐藤到)
そうなると焦点はサイレントグリーン、ボスアミーゴの戦いに絞られる。サイレントグリーンはご存知、盛岡芝2400mの鬼。過去、同条件では9戦7勝2着1回3着1回と怖ろしいまでの数字を残してきた。また今シーズンも芝2400m戦は3戦3勝。特にトライアル・パンジー賞では4コーナーで前がふさがれる不利をこうむり、誰もが終わったと思った。しかし直線大外を矢のように伸びてきて1着をもぎ取り、周囲の度肝を抜いた。
改めてレースを振り返ってみる。サイレントグリーンは7番手インからレースを進めて3、4コーナーでも前に馬がいたため無理をせずに追走。直線を向いてスパートをかけようと思った矢先、ジョリーズジョーに進路を塞がれて最後方近くまで下がるアクシデント。板垣騎手、千葉博調教師もさすがに観念したそうだが、サイレントグリーンは態勢を立て直して大外に進路変更したら、そこからの末脚がけた違い。1頭だけ別次元のように伸びて他の馬をごぼう抜き。ゴール寸前でついには先頭に立って1番人気に応えた。
サイレントグリーンは芝の鬼とはいっても1600m、1700mの忙しい競馬では届かないケースが多いが、芝2400mには絶対の自信というより、神がかり的な強さを誇っている。
では死角はないのか。今年のサイレントグリーンが芝2400mに出ればどの馬も敵わない印象があるが、唯一不安点は前回の激走の反動がないか、どうか。現在7歳馬でも、まったく衰え知らずだが、前回の疲れが残っていないことを祈りたい。
一方、ボスアミーゴは昨年、ジュニアグランプリ(盛岡芝1600m)を快勝後、積極的にJRAに遠征を試み、4着が最高だったが、マズマズの成績を収めてシーズンを終了。今季初戦にG?・ニュージーランドトロフィーを選んで16頭立て13着。初めて二ケタ着順に沈んだが、タイム差は0・8秒差。直線の伸びは中央馬に決して見劣らなかった。
帰郷2戦の特別2連勝を飾り、JRA福島・白河特別は5着。その後は地元1本に絞ってオパールカップ1着、不来方賞3着、桂樹杯2着、そして前走・OROカップはコスモバルクの2着。すでに古馬相手にも互角以上の戦いを繰り広げてきた。
ボスアミーゴの不安点は距離2400m。血統的にも本質はマイラー、もしくはスプリンターで末脚勝負の持ち込んだ時に最も能力を発揮するタイプ。その意味でも2400mの距離は長いのだが、鞍上が折り合いに苦労した場面はほとんど見たことがない。
おそらく前半はスローで流れ、ラスト1000mからの勝負になるだろうから2400mもアッサリ克服できるに違いない。
以下は大きく離されたが、せきれい賞2着、パンジー賞3着コスモダーク、オープンでも通用の実績クルセイズ、あとは長い距離が合うワイルドシャトー、そして半年ぶりでも昨年の最優秀ターフホース・ジェーピーバトルにも敬意を評したい。
◎ ?サイレントグリーン
○ ?ボスアミーゴ
▲ ?コスモダーク
△ ?クルセイズ
△ ?ワイルドシャトー
△ ?ジェーピーバトル
3連単は11、1の1、2着折り返しから4、9本線。あとは2を押さえ少々
馬複は1−11、4−11、9−11、1−4
<お奨めの1頭>
11レース ガッサンアポロ
自慢の末脚が冴え渡り、3戦連続で連対。展開構わずに直線で確実に台頭する
27日メインはC1級・芝1700m戦「第9回岩木山賞」、10頭立て。勝敗のカギはもちろん盛岡芝の適性度だが、有力馬の実力が拮抗。どれを主軸にするか迷うところだが、ペルターブレスを狙ってみたい。
(ペルターブレス 写真・佐藤到)
ペルターブレスは昨年8月以降、白星から遠ざかっているが、今季2着3回のうち2回は芝1600mが舞台。ダートでは頭打ちのレースを繰り返しているが、芝に替わるとグッと安定感が増す。特に5走前のC1芝1600m戦ではタイキランデヴーの2着に入ったが、そのタイキランデヴーはB3昇級後も勝ち負けを演じ、それに0・3秒差2着ならここでも実力上位と見て間違いない。
ジョイフルモンジは今年7月、南関東1勝から転入し、当初格付けが最下級のC3。初戦こそ初コースに戸惑ったのか8着に沈んだが、以降は4勝2着2回と6戦連続で連対。前走はB3級との混合戦で5着に敗れたものの、今回は自己の条件C1戦。しかも3走前、C2芝1700mでは前半後方に待機し、向正面から一気にまくって3角で先頭。そのままゴールまで押し切って快勝。非常に強いレース内容だった。
オジジアンリョーコは詰めに課題があるが、相手なりに駆ける堅実さが身上。芝も今年から使い始めて2着1回3着2回と安定した成績を残してきた。直線で着実に台頭できるタイプで、よほどのスローにならない限り、勝ち負けに持ち込めるはずだ。
コスモアテナはC2からの挑戦だが、芝で2戦2着の適性を見込んで挑戦してきた。3走前には逃げてクールテイストの2着に粘り、ここでも先行策を取りたいところ。加えてメンバー中最軽量となる53キロの負担重量で出走できるのも強味だろう。
以下はタイム劣るが芝で切れる末脚を発揮するオートマーチ、初体験の芝だが、父がモンジューならむしろ合うローランモンジューもマークが欠かせない。
◎ ?ペルターブレス
○ ?ジョイフルモンジ
▲ ?オジジアンリョーコ
△ ?コスモアテナ
△ ?オートマーチ
△ ?ローランモンジュー
3連単は2、3の1、2着折り返しから4、7を厚め。あと8、9も押さえが必要
馬複は2−3、2−4、2−7、3−4、2−8
<お奨めの1頭>
8レース ウエスタンフォルス
1800m戦に実績がないのが若干気になるが、目下9戦連続で連対中。その勢いで克服できる