平塚競輪場で行われた第77回日本選手権競輪で頂点に輝いた岐阜の山口拳矢選手(岐阜117期)。ダービー王になった喜びの声を伺いました。
大津:第77回日本選手権競輪優勝おめでとうございます。
山口:ありがとうございます。
大津:ダービー王に輝きました。
山口:全然そんな「僕が日本一だ!」みたいな感じはなくて展開に恵まれただけです。
大津:レース後に感情が追いつかないと話していたのが印象的でした。
山口:そうですね、驚きのほうが大きくてフワフワしてました。「フワァ」って感じで衝撃が大きかったです。
大津:実感はまだないですか。
山口:周りの方から沢山連絡をいただいたので、その辺で実感はわきました。
大津:かなり反響もあったんじゃないですか。
山口:そうですね、200件近くメールがあったので返信するのが大変でしたね。
大津:優勝してから少しはゆっくりする時間はありましたか。
山口:うーん、次の次の日くらいから練習を始めてっていう感じです。
大津:GIを優勝した後くらいゆっくりしようって気持ちにはならないんですか。
山口:僕もそう思ったんですけど、結局やることもないですし練習してないと不安なんで。
大津:2011年に山口幸二さん(岐阜:引退)が優勝された平塚グランプリを現地で観てたんですか。
山口:そうです、家族で観に行ってました。
大津:その時のことははっきりと覚えてますか。
山口:覚えてます。他の選手の家族の方たちと一緒の部屋だったので、あまり騒がないようにしようねって言ってたんですが、ゴール前はめちゃくちゃ叫んでました。「お父さん、いけぇ!!!」って(笑)
大津:今回はお父さんが同じように叫んでたかもしれませんね。
山口:アッハッハッハ、そうかもしれません。
大津:その辺りはお父さんとは話はしましたか。
山口:いや、ずっと「ダービーかぁ、ダービーかぁ。」って同じことを言ってました。
大津:お父さんがグランプリを獲った平塚の地で、今回は僕が獲ったのかぁなんて特別な感情が芽生えたりはしましたか。
山口:あの時はバンクの外から見てたので、また違う景色に映りました。
インタビューで「あそこから見とったんやぞ。」って言われた時に、「確かにそうやったなぁ。」って思い出しました。レースの時は思い出す余裕もなかったです。
大津:今シリーズを迎えるにあたって状態面はいかがでしたか。
山口:その前の富山も福井も連続で優勝出来ていたので良かったです。
練習は特に変わらずって感じでしたけど、めちゃめちゃ調子良いかって言われたらそうでもなく、なんなら練習の感じは悪かったくらいです。
レースでは良いんですけど、練習だと重くて感じが良いなぁって思うことは少なかったです。
大津:実践の時のほうが山口選手は結果が出るってタイプなんですか。
山口:そうですね、練習では僕より強い選手がいっぱいいるので、そういった選手がレースで結果が出るようになれば、今後より楽しくなってくると思います。
来期からS級の選手も増えるので皆で頑張っていきたいですね。
大津:今節は2日目に初戦を迎えました。
山口:初日に合わせていってるので走りたかったなっていうのはあったんですが、終わってみれば2走して休みで2走してって感じだったので良い日程だったかもしれません。
大津:ライン上位独占と幸先の良いスタートを切られました。
山口:すんなり中団だったので展開が良かったってのもありますが、ワンツースリーだったので本当に良かったです。
大津:シリーズ全体を通して印象に残っているレースはありますか。
山口:二次予選ですかね。動かなかったんです、眞杉君(眞杉匠選手・栃木113期)の後ろから。もう、そこで勝負だなって思って。
セオリーでいけば赤板のところで僕が動いて眞杉君の先行を呼び込むのが普通なんですが、僕にその脚はないし、他の選手が僕を切らせてくれるかも分からないですし、こういう状況になった時に「敢えて切らないのも面白いですかね。」って作戦会議の時に先輩と話してて、中団勝負で行きますってなったのでこだわりました。
大津:6日間の長丁場を戦う上で大切にしていることはありますか。
山口:僕はずっと寝てますね。レースも後ろのほうだったら昼まで寝てたりするので、睡眠ですかね。
スッキリするまで寝るのが一番です。後はリラックスするために漫画を読んだりしています。
大津:決勝戦の前夜はいつもと同じように眠れましたか。
山口:絶対に寝れんくなるって思ったんですけど意外と眠れました。良い状態で決勝戦を迎えました。
大津:僕なんか緊張で押しつぶされそうになって絶対眠れない気がします。
山口:緊張はもちろんしましたけど、2021年の共同通信社杯のほうが緊張したと思います。地元だったんで。
大津:発走機に着いた時は平常心でいられましたか。
山口:いや、めちゃめちゃ緊張してました。自分を落ち着けるために深呼吸したり色々してました。号砲が鳴ったら気になりませんでした。
大津:決勝戦は別ラインもかなり強力な選手が揃いました。
山口:僕に優勝のチャンスはあるのかなって正直思いました。全然自分が勝つ姿が見えなかったです。
大津:ただ、その中で優勝されました。
山口:自分が思い描いてたレースの中で一番良い展開になりました。
犬伏君(犬伏湧也選手・徳島119期)が先行して、新山さん(新山響平選手・青森107期)が中団にいて脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)が後方で、清水さん(清水裕友選手・山口105期)が番手捲りにいって。
本当にその通りにすすんでくれたので、犬伏君ラインの後ろに僕がいれば最悪でも3着はあるなって思ってました。
大津:まさにイメージ通りとなったわけなのですが、その時の心境はいかがでしたか。
山口:赤板から犬伏君がすごいスピードだったんで正直考える余裕もなかったです。周りを見る余裕も一切なかったので、前しか見てなかったです。
大津:最後の手応えはどうでしたか。
山口:踏み込んだときにけっこう脚が残ってたので「あっ、これイケるかも。」って感じたんですが、そこで慎太郎さん(佐藤慎太郎選手・福島78期)に当たられてちょっとヤバいと思ったんですが、直線だけだったので最後まで無我夢中で踏んだ感じですね。
大津:佐藤選手の動きを耐えて、そこからの優勝ですもんね。
山口:いやぁ、たまたま踏んだコースが加速したっていう感じです。
大津:ゴールした瞬間は覚えていますか。
山口:清水さんと1/8車輪差だったので確信が持てなかったのですが、慎太郎さんが「拳矢か!」って言ってくださって「多分!」みたいなやり取りをしたのを覚えています。
で、ビジョン観たら自分が映ってたのでガッツポーズしちゃおうみたいな感じでした。
大津:共同通信社杯も新田祐大選手(福島90期)の上を越えて、今回も清水選手の上を越えて本当に強い勝ち方だったように思います。
山口:全然そんなことないです。展開がハマったなってだけかなって、僕だけ脚を使ってなかったんで。
大津:以前オッズパークのインタビューで外併走になったとしても堪えて伸びる練習もしていると仰ってました。
山口:そうですね、どこで踏めば一着まで届くってのは練習で意識したりしているので、この位置ならっていう距離感は分かっている気がします。
大津:ここからグランプリへ向けてどのように過ごしていきたいですか。
山口:まだグランプリまでは半年以上もあるので意識はせずに、目の前のレースに集中してやっていきたいです。後は怪我をせずにって感じで頑張りたいです。
大津:共同通信社杯を優勝した時は時計を買われたと言っていましたが、今回は何か買われたんでしょうか。
山口:今回はなにも考えてないですね。1億稼いでしまって、これからどうなるんだってなんか逆に不安しかないです(笑)
大津:デビューして3年で1億円プレーヤーって想像してましたか。
山口:いやいやいや、全然想像なんかしてなかったです。早めにタイトルが獲れたらいいなぁってくらいで。
今回も走る前に橋本君(橋本優己選手・岐阜117期)と話してて「どうする、もし俺が優勝したら?」って、優己は「良いじゃないですか、優勝してくださいよ。」なんて言ってましたけど。それくらいなんか優勝するイメージがなかったですもん。
大津:実際に優勝賞金を手にした時はどんな気持ちだったんですか。
山口:紙袋に入ってるんですが、重かったです。お金の重さってすごいんですね。
「本物!?」みたいな感じで実感もなかったです。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
山口:来年からS級S班になるんですが、赤いパンツのプレッシャーに負けないように目の前の一戦一戦をしっかり走っていきたいと思いますので応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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『第77回日本選手権競輪(GI)』の3日目に『ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ』が行われます。
このコレクションは1月のトライアルレースで結果を出した選手が出場できます。いわき平競輪場のトライアルレースで決勝2着になり、初めてのコレクション出場を決めた野口諭実可選手(大分102期)にコレクションへ向けての意気込みと近況の振り返りを伺いました。
山口:いよいよ初めてのガールズケイリンコレクションが近づいてきました。今のお気持ちはいかがですか?
野口:初めてなのですごく緊張しています。今はまだどう戦えばいいのか迷っています。
山口:4月前半の別府では決勝で落車がありました。体調面はいかがですか?
野口:落車の影響はありません。前回の小倉2日目は怪我ではない体調不良で欠場になってしまったのですが、今は問題ありません。
山口:練習の状況はいかがですか?
野口:しっかりやりました。今はレースへ向けて調整をしています。
山口:初めてで緊張もあると思いますが、コレクションで楽しみにしていることはどんなところですか?
野口:GIでの大きいレースへ途中から参加するので、男子の有名選手もたくさんいます。その選手たちに会えるのも楽しみです。雰囲気など楽しみたいです。
山口:では1月のトライアルレースを振り返ります。去年、優勝を含めて結果が出てきてのトライアルレース出場でした。入る前はいかがでしたか?
野口:参加したメンバーが強力なので、まずは決勝戦へ進むことを目標にしていました。戦い方もどうするか迷ったんですが、いつも通り頑張ろうと思っていきました。
山口:予選1は先行の2番手で並走し、最終Bから捲り上げました。振り返っていかがですか?
野口:前々の戦いを最近は心掛けていて、それが成績に結びついています。なので2番手にはまってからも「行けるところからいこう」と決めていました。後ろの鈴木美教選手(静岡112期)に追い込まれましたが、それは警戒していた点でした。
山口:予選2は中団からの組み立てでしたが、いかがでしたか?
野口:打鐘で前へ仕掛けようと思っていたところに、下条未悠選手(富山118期)が仕掛けていったのでそれに乗っていきました。そこからもうまく流れにのれました。
山口:決勝はどんな気持ちで臨んだんですか?
野口:まさか決勝に上がれるとは思わなかったんですが、コレクションの権利は2着でしたけど、それを狙うというよりまずは確定版(3着以内)を目指していました。
山口:正攻法からのレースでした。残り1周で一気に4人動きましたね。
野口:「誰かは仕掛けてくるだろう」とは思っていたんです。最初に動いてきた坂口楓華選手(京都112期)には、坂口選手のダッシュが良すぎて飛びつけませんでした。その後たまたま、小林優香選手(福岡106期)が私の前に入ったので、運が良かったです。
山口:狙ったというよりは、流れの中でだったんですね。その後の判断はいかがでしたか?
野口:「小林選手についていけば、もしかしたらコレクションの権利が取れるかもしれない」と思いました。そこからは必死に追走しました。
山口:ゴール前は後ろから、鈴木奈央選手(静岡110期)も迫ってきていましたね。
野口:小林選手の後ろを取れた段階で、大丈夫かなと思っていたのでなんとか2着が取れて良かったです。
山口:見事コレクション出場の権利を勝ち取りました。ご自身で勝ち取ったのはすごく価値があるのではないでしょうか。
野口:そうですね。今までトライアルレース出場は2度あるのですが、どちらも繰り上がりでの出場でした。でも今年は選考順位が18位で出場できたんです。それで、今まで以上に頑張ろうと思えました。
山口:この取材もそうですし、先日はYouTubeのオッズパークLIVEにも出演がありました。前検日もメディア取材などもたくさんあるかと思います。雰囲気などどう感じていますか?
野口:オッズパークLIVEは楽しめました。私はコレクションも出場が初めてですし、競輪祭のトライアルレースにも出場したことがないので、GIの雰囲気を今回初めて味わいます。それがとても楽しみです。
山口:出場メンバーの印象はいかがですか?
野口:強い選手が集まるレースは何がおきるかわからないので、私は誰を気にするでもなく、いつも通りの戦い方をしたいです。自在に走れれば良いですね。
山口:ありがとうございます。ではここからは練習環境などのお話を伺いたいです。群馬から大分に2018年に移籍をされましたが、何がきっかけだったんですか?
野口:2017年に元競輪選手の川野信一郎さんという方に、京王閣でお会いしたんです。川野さんのところへ出稽古に行った選手たちが150人くらいいて、その選手たちがみんな強くなったというのを聞いて「私も強くなりたい」と思い、練習に行かせてもらいました。
今まで自分がやったことのない練習をたくさんして、きつかったですが楽しかったです。
山口:最初は出稽古だったんですね。そこから移籍しようと思ったのはどうしてですか?
野口:大分は縁も特にない土地だったので移籍するのはためらっていて、1年間は群馬から出稽古という形でお世話になっていました。でも競輪に集中したくて移籍を決断しました。
山口:大きな決断でしたね。
野口:そうですね。移籍をしたことは後悔していませんし、結果に結びついて良かったです。大分の選手の皆さんとも仲良くやっていけていると思います。
山口:ご自身の意識も移籍してから変わりましたか?
野口:競輪が強くなって変わったと思います。生活面では一人暮らしを始めたので、自立ができました。
山口:初優勝が2021年でしたが、その結果が出るまではどう思っていましたか?
野口:3年間は結果には結びつかなくて「諦めて群馬に帰ろう」と思ったこともありました。でも川野さんの知り合いの方から「今、群馬に帰ったら元の生活に戻ってしまうし、競輪は強くなることはないですよ」と喝を入れてもらい、今は我慢だと練習へ打ち込みました。
山口:そこで堪えて頑張ったんですね。2021年の初優勝から2022年は2回、今年も1回優勝があり、コレクションへも出場が決まりました。今年の目標は何ですか?
野口:今年は3つのGIが新設されたのですが、その3つ、全てに出場することです。
山口:6月『パールカップ(岸和田)』には出場が決まりましたね!おめでとうございます。
野口:ありがとうございます!とにかく嬉しいです。今は10月に開催される『オールガールズクラシック(松戸)』の選考期間なんですが、賞金ランキングで上位にいられているので、このまま頑張りたいです。
山口:目標の一つを達成ですね。
野口:そうですね。GIの新設が発表されるまでは、7月の『ガールズケイリンフェスティバル(函館)』の出場権を狙っていたので、6月も出場できて嬉しいです。フェスティバルの選考期間は4月で終わり、結果はこれからなんです。
山口:今の強化ポイントは何ですか?
野口:今は捲りの回数が増えてきたので、今度は先行を増やしていきたいです。
山口:より自力へいきたいんですね。どういう理由でしょうか?
野口:特に33バンクでは、先行はとても有利なので先行でも勝てるようにしたいです。あとは戦法の幅を広げたいというのもありますね。いろいろ試したいです。
山口:練習と休みのバランスはどのような感じですか?
野口:オフの日は決めて、それ以外は基本的に自転車、ウェイトトレーニングはしっかりやっています。ウェイトメインでやる時は100kg以上の重りを上げることもありますよ。
山口:そうなんですね。それはすごいです。ではオフの日はどうすごしていますか?
野口:整体へ行ったり温泉に行ったりしています。
山口:大分はたくさんありますもんね。
野口:はい、あちこちにあるので、それで疲れを取ってリフレッシュしています。
山口:ありがとうございます。では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
野口:いつも応援ありがとうございます。ビッグレースは初めてなので緊張しますが、確定版を目指して頑張ります。応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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『第77回日本選手権競輪(GI)』の3日目に『ガールズケイリンコレクション2023平塚ステージ』が行われます。
このコレクションは1月のトライアルレースで結果を出した選手が出場できます。伊東温泉競輪場のトライアルレースを優勝した久米詩選手(静岡116期)にコレクションへ向けての意気込みと近況の振り返りを伺いました。
山口:西武園、四日市(4日制)と連続完全優勝おめでとうございます。
久米:ありがとうございます。
山口:この成績をご自身で振り返っていかがですか?
久米:今年に入り調子があがっていたので、結果が出せて良かったです。
山口:四日市は4日制で、全て「B」をつけていましたね。
久米:「B」を取るのはそこまで意識はしていなかったです。自然と積極的に動けるようになってきたので、もがける距離が伸びているのかなと思います。
山口:最近のレースでは以前より先行も多いように思いました。今の話だとご自身では特に意識はしていないんですね。
久米:そうですね。基本的にはレースの流れに乗って走る、というのを大切にしているので、レースの中で「特にこれを意識する」というのはないです。
山口:それではガールズケイリンコレクションへのお話を伺います。まずはトライアルレースについて。
トライアルレースは伊東温泉が最後の開催でした。選考順位などである程度の狙いはあったと思いますが、どのようなことを意識して入りましたか?
久米:トライアルレースの前はあまり調子が良くなかったですし、入った時も不安でした。でも試したことがうまくハマったので、日に日に調子が良くなっていった気がします。
山口:初日は大外を乗り越える捲りで1着でしたが、調子はそこまで良くなかったんですね。
久米:そうですね。初日に走って感じが良くなる雰囲気がありました。
山口:初日の1着で100勝目でしたね。
久米:それは特に気にしていませんでした。通過点という感じです。
山口:予選2は前で奥井迪選手(東京106期)と山口真未選手(静岡120期)が踏み合うところ、久米選手も更に仕掛けてという形でした。踏み合いを様子を見ようという考えはなかったですか?
久米:見てしまうと仕掛けが遅くなり後方になるかなと思ったので、それよりは少し早くても仕掛けて前にいった方が良いかなと思い仕掛けました。
山口:見ていて、「そこで行くんだ!」とかっこよかったです。
久米:ありがとうございます。
山口:決勝も圧巻のレースでした!最終ホームで一気に石井貴子選手(東京104期)の上をかまして先行体制へ入りました。あの判断はどういう思いでしたか?
久米:一度は石井選手の2番手に入ろうかとも思ったのですが、勢いのまま行きたかったので先行する形になりました。
山口:その後は後ろを離していくスピードでしたが、それは確認していましたか?
久米:いえ、まったくわかりませんでした。最後の最後まで気づかなかったです。
山口:そうでしたか。優勝を確信した時のお気持ちはいかがでしたか?
久米:純粋に嬉しかったです。
山口:強い勝ち方でしたね。
久米:結果としてはそうなりましたが、少しずつですが力が付いていっていると思います。
山口:久米選手は最初に出場したコレクションも、トライアルレースで勝ち抜いた2年前のものでした。コレクションへ向けての思いはいかがですか?
久米:一戦一戦大切にしているのは昔も今も変わりはないですが、以前よりは力もついていると思うので、「優勝はできないかもな・・・」と思わなくなってきました。優勝ができる力はあると思うので、狙っていきたいです。
山口:メンバーの印象はいかがですか?
久米:コレクションへ出場する選手たちなので、皆さん力はあります。でも普段一緒に戦う選手ばかりではないので、どんな展開になるかは想像が難しいです。でもそれも含めて楽しみです。
山口:平塚バンクのイメージはいかがですか?
久米:良くも悪くもないですね。比較的走りやすいバンクだと思います。
山口:今年はGIが新設されたことで、単発レースがなくなりそうですが、久米選手は勝ち上がりトーナメントと単発レースだとどちらが走りやすい、などはありますか?
久米:トーナメントの方が調整はしやすいかもしれません。
山口:メンタルの調整も必要ですか?
久米:「コレクションだから」という気持ちは、少しはあります。でも普段から一戦一戦を大事に走ることを心掛けているので、それは変わりませんね。
山口:以前からそう仰っていましたね。それは変わらないんですね。
久米:そうですね。
山口:今年の目標は何ですか?
久米:GIも新設され、ガールズグランプリのチャンスが増えました。出場を目指して頑張りたいです。
山口:GIができる、と聞いた時はいかがでしたか?
久米:出場するみんなにグランプリ出場のチャンスがあるので、1年間通してのモチベーションは保ちやすいかなと思います。
山口:まずは6月『パールカップ(岸和田)』ですね。東西対抗という形ですが印象はいかがですか?
(注・インタビュー時は確定ではなかったですが、その後久米選手の出場が発表されました)
久米:ガールズは特に東西に分けても、そこまで変わらないと思いますね。男子はライン戦がありますが、ガールズは影響がなさそうかなという印象です。
山口:その次が10月『オールガールズクラシック(松戸)』で、こちらの選考は賞金上位です。10位以内に入っていますが、ランキングは気にしますか?
久米:それも特に気にしません。日々のレースの先にGIがあるという感じです。
山口:特に今年はGIが新設されたことで、ナショナルチームの選手たちはグランプリ出場の権利を獲得しようと奮闘が予想されます。その辺りはどうですか?
久米:私は普段、ナショナルチームの選手たちと一緒に練習をさせてもらっているので、強さもわかっています。でも私は私のできることをするだけかなと思います。
山口:今の練習環境ですが、ナショナルメンバーと一緒に自転車に乗って練習することもあるんですか?
久米:そうですね。実際に走ってスピード感なども感じています。
山口:ご自身への変化は感じますか?
久米:最初の頃よりは私の力もついているので、ついていける距離が長くなったりしています。ただ前で走る力はまだないので、そこも見習っていきたいです。
山口:今の課題や意識する部分は何ですか?
久米:レースについては、流れに沿って走ることです。課題は、一言でいうと底上げですね。トップスピードや持久力などをあげていって、レースの流れにあわせて動き結果を出したいです。
山口:ありがとうございます。
それではコレクションの話に戻りますが、5月のコレクションは日本選手権競輪の3日目にレースがあります。以前、コレクションを走った時はどう感じましたか?
久米:楽しむのに精いっぱいでしたね。
山口:今年はその時の経験がいかされますか?
久米:そうですね、いかしていきたいです。
山口:ゴールデンウイークですから、お客様もたくさん入りそうですね。
久米:平塚はいつもお客さんがたくさんいらっしゃるイメージなので、その中で走るのは楽しみです。
山口:ご声援は聞こえますか?
久米:発走をしてしまうとわからないんですが、レース前やゴールした後はしっかり届いています。
山口:では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
久米:優勝だけを目指して、自分ができることをやりたいと思います。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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先日、地元四日市で行われたGIII万博協賛競輪を制した浅井康太選手(三重90期)。このGIIIでの優勝は実に1年7か月ぶり。かなり間隔が空きました。常に新しいスタイルを求めて進化を模索するトップレーサーが抱える葛藤とはどんなものなのか。競輪選手としてではない「人間・浅井康太」の一面に深く迫ってみました。
橋本:まず、直前の地元GIIIを優勝されまして、非常に嬉しそうな表情と、ヘルメットを投げ入れたりっていう喜びの表現が印象的でした。
浅井:そうですね。やっぱり一年七か月ぶりの優勝ってことだったんで、だいぶ間隔が空いたなっていう思いです。最近の中部勢の中でラインの層の薄さを感じることが多くて、なかなか決勝で勝ち切ることができないとか、決勝戦に乗っても勝てないとか、決勝にそもそも乗れないとか、色々あったんで、このところは厳しい中で戦ってるなという実感がありましたね。
橋本:今回は別地区の嘉永選手(嘉永泰斗選手・熊本113期)と決勝で連携しました。
浅井:そうですね。今回の決勝は嘉永くんとライン組んで共に戦って、改めてラインっていうのは凄く大切なんだなっていうのを感じ取れた開催でしたね。
橋本:元々ラインの大事さっていうのは理解はされてたと思うんですけど、それにも増してということですか?
浅井:やっぱそうですね。嘉永くんとラインを組んだ理由というのも色々あって。別の地区なんですけど、ライン組む人間同士の信頼関係ですね。その中でお互いの持ち味を生かし、ラインの良さを出すということの大切さを感じました。
橋本:高校時代の嘉永選手が浅井選手にサインを貰ったというニュースを拝見しました。
浅井:「熊本競輪場で僕、学生時代に浅井さんにサインを貰いました」って話を初日のレースが終わってクールダウンの時にしたんですけど、いきなりそんな話になった訳ではなくて、嘉永が「自転車なんかちょっと駄目なんです。調子悪いんです」みたいな感じで話しかけてきて、それなら「こうした方がいいんちゃうか」みたいな話をしていたら「実は僕・・・・」みたいな感じになったんです。で、その前段階に遡るんですけど、共同通信社杯(2022年9月17日、名古屋12R二次予選A)の時に、僕が単騎っていうコメント出して、その単騎ってコメントを出した後、瓜生(瓜生崇智選手・熊本109期)と嘉永が僕のところに来て「浅井さん、こいつに付いたってくださいよ~」みたいな事があったんですよ。
とはいえ「もう俺もコメント出したで~」ってなりまして、まぁやっぱり中部の自力選手として後輩たちもいることやし「ここはしっかり単騎でやるわ」と返して、申し出を断っているんですよ。で、また何か機会があった時は、しっかり考えて付かせてもらうかもしれないって話をしていたというのがあったんです。で、それがたまたま今回の四日市GIIIの決勝戦で、十夢さん(渡辺十夢選手・福井85期)とみたいな感じになった中で、嘉永が単騎になるかもしれないっていう状況だったんですよね。
で、記者さんには「浅井つくの?どうするの?」みたいになっている時に、嘉永が「浅井さん、ついてください」って話しに来たんです。そんなの、なかなか先行選手が「ついてください」ってないじゃないですか。それも、この前の共同の事があって、嘉永の中では、その共同の時、次にこういう機会があったら「自分から浅井さんに言いに行こうと思ってました」らしく、僕としても、そこまでの気持ちがあるなら「つかせてもらうわ。よろしくね」ってなったんですけど、僕が地元だからといって、無理に仕掛けるとかじゃなくて「絶対取るレースしろよ」って。もうそれこそ何回も何回も「絶対取れよ。絶対取れよ。絶対の絶対に取れよ!そしたら自然に俺もチャンスあるから、絶対に優勝狙えよ(笑)」と伝えて、全部嘉永の作戦で、嘉永があの走りになりました。
橋本:色んな事が伏線になっていたんですね。本当にいい話です。
浅井:そうですね。なんか本当にうまく繋がったって感じになってますよね。それがほんとに学生時代にサイン貰ったってところから始まって、一緒にライン組めて、それで地元GIIIで優勝できて、それもワンツーで決まって。それがGIとかGPとかだったら、もっといいんだろうけど。でもやっぱり、地元GIIIってところでも大きいですよね。
橋本:かつてサインした少年と一緒に戦えた、そんな浅井さんの嬉しさがとてもよく伝わってきます。
浅井:サインを貰いにいった様な憧れの選手と走る事って僕も経験あるんですけど、実は僕の場合、神山さん(神山雄一郎選手・栃木61期)なんです。印象に強く残っているそのレースで、僕はブロックされたんです。これは捲れると思っていったんですけど、その捲りがブロックされて、止められて。凄いなぁって肌でその凄さを感じて、嬉しさもあり悔しさもあり。でも、その時、そこを乗り越えることができたら、いつかタイトルを取れるかもな、と考えたのがいい経験になったというのはありますね。だから、今回は僕が優勝しましたけど、次は「40手前のおじさんにもう抜かれないぞ!」という気持ちでね(笑)今後やってもらえたら、すぐにタイトル取れるんじゃないかな。と思います。
橋本:これは長いこと超一流のポジションにいないと、味わうことのできない思いですね。浅井選手が長年そういうポジションに居続ける事ができたから、いや、できているからこそです。
浅井:それはあるかもしれないですね。ただ、やっぱりそういう風に憧れてましたって言われても、弱くなると結局は「なんだ~昔は強かったけどな」みたいなのって嫌じゃないですか。やっぱり憧れられているという思いに応えたい。だからこそ、今の状態を維持しないといけないというか。なので、逆に言うと本当にそのことが僕を支えてもらってるんだなっていうのはありますよね
橋本:その気持ちっていうのは、例えば同県の後輩から「弟子にしてください」みたいな憧れとは受け止め方は違うんですか?
浅井:全然違いますね。結局同じ地区とか、もしくは同県とかってなってくると、身近に感じすぎることの弊害というのかな。それはあると思いますね。元々は自由に練習して「これやっとけよ~」みたいな感じでやってたんですけど、仲間の成績が落ちてきた時期に、ちょっとグループとしてまとまってないなぁ。と思ったので、みんな良くなるために、こうした方がいいんじゃないかなと、アドバイスみたいな事をしたんですが、なかなかうまく伝わらなくて、それが悪い方向へいってしまうというか。良かれと思って言ったことが悪い方向へ行ってしまうので、それならもう言わない方がいいのかな、という。
橋本:これはもう対人コミュニケーションの本当に難しいところですよね。
浅井:だから基本的に人のことは構わずに自分の事だけ考えてやるのが、最近はベストかなって考えてました。
橋本:ラインっていうのは暗黙の了解で、同地区の者たちが一つのチームになるっていうのが、ずっと長年続いてきた中であるんですけど、同じ地区、近いところに住んでいる者同士だから人間関係の深い繋がりがあるかっていうと、必ずしもそうとは言えないし、もちろん逆の場合もある訳で。そう考えると、ラインを同じ地区同士だからという理由だけで組まないといけないっていう、この暗黙の了解は選手にとって、すごくストレスになる部分っていうのはあるかもしれないですね。
浅井:そうですね。やっぱり信頼できない相手とは連携したくないと思うんですよね。
あと、最近は先行選手が上で、マーク選手が下、みたいな雰囲気が強いですけど、そういうものではないと思っていて、先行選手としてしっかり役割を果たして、マーク選手が止めてくれるっていう仕事をする。それでしっかりとしたラインが形成できて、ワンツーが決まる確率が上がる。先行、捲り、追い込み、マーク、それが合わさって効果を発揮する訳ですから、そうならないのであれば、ラインなんて組む必要は全くないかな、とは思いますね。
ちなみに谷口(谷口遼平選手・三重103期)とかに言うんですけど「練習で俺がお前よりもタイムが良くて、それで後ろにつくんやったら安心せんか」って(笑)確かに、最後抜かれるかもしれないけど、逆に脚がなかったら千切れて仕事どころじゃないし、それこそ「ダッシュでギリギリついてきて仕事もせずに抜かれるのは一番嫌なんちゃうか~」という。
やっぱり、レースの積み重ねが信頼関係に繋がる訳なんで。ただ、時と場合で切り替える時は全然あるよというのも言ってます。でも、それはお前(谷口遼平選手・三重103期)のスピードが周りのスピードよりも、劣ってるから切り替える訳で、もう仕掛けるタイミングがない場合は仕方ないというのは伝えています。
橋本:これは非常に相手の受け止め方が難しいところで、切り替えられるとあの人は冷たい人だ、って思われかねないですよね。
浅井:そうそう。そうなんです。簡単に言えば、ホームでカマされた先行選手を2角で入れたら、自分は4番手か5番手か。まぁ、先行選手は4番手くらいになるじゃないですか。もうそうなってしまって勝負圏があるかってなったら、ないですよね。この間の決勝で新山(新山響平選手・107期)が一人で来て、嘉永がハマってという状況なら分かります。それなら直線勝負できるんです。ここの違いですよね。本当にカマした選手が弱かったらいいんですよ。でも、それはGIでは通用しないですよね。
橋本:ですよね。実は、そういったレースの積み重ねの中で、浅井さんはとても葛藤しているんだろうなぁというのは以前から感じていました。というのも浅井選手というのは、ファンの皆さんへのこれまでの対応とか、そういうのをずっと見せてもらう中で、本当はめちゃめちゃ優しいんじゃないかと、でも、その優しさを捨てなければいけないというか、非情にならなければいけないというのを無理してやってるんじゃないかと。敢えて非情になるという表現はおかしいかもしれませんが。
浅井:あの~最近、優しいっていうことを周囲が分かってくれてきたようで(笑)最近そう言ってもらうことが増えてますね。競輪に関係のない人たちと会っても「なんでこんな優しいの」って言われたりもあって。自分で言うのも何ですが、確かに昔から優しいタイプだとは思います。
橋本:でもその優しさでは勝てない。叩かれてしまった自力選手と同じように付き合ったら共倒れになりますから。
浅井:そう、そうなんです。切り替えに関して、自分で絶対に決めているルールが一つあって。それは前を任せた選手が捲りになってしまう。でも、それが不発だろうなと思って、先に切り替えるのは無しなんですね。捲り、カマしになって「これはいけないだろうな」と思っても、ついていくとこまでは、しっかりついていって、そこから無理だったら切り替えるって形なんですよ。これに関しては自分の中で間違えたと思ったことはないです。
橋本:そういう時のファンの皆さんの声ってのはどう感じていますか?ネガティブな意見もあると思いますが。
浅井:最近、新しく競輪を知ってファンになってくれた皆さんは、本当に応援してくれて、SNSを使って競輪の魅力を発信してくれたり、本当にありがたいんですけど・・・例えば、切り替えたという、その状況だけを捉えて判断されてしまうというか。その先「こういった結果に繋がるから、このように動いたんだ」という部分を理解してもらえてないような。それが残念に感じることはありますね。この選手の動きはこういう意図があってやったんだ、とか、その前後の動きを予測した状態でこういう判断になった。みたいなことが分かってくると、もっと競輪っていうのが面白くなると思いますしね。
橋本:選手のプロフェッショナルな部分ですね。
浅井:とはいえ、僕らからすればそれが普通だけど、そこまで見れないのは当たり前というのもあるんですよ。でも実際、僕らからしてみれば、走ってる感覚と、映像で見た感覚っていうのは大分、差があるんですよね。例えば、今3角ぐらいかなと思ったら、もう4角になっていたり。そのくらいズレがある時もあったりして。だから気付いた時には、もう相手がそこまで来ている可能性があるんで、それで遅れてしまうというのはありますね。
橋本:GIクラスなんかだと、本当に瞬時の判断なのでとても難しいと思います。だからこそ、ラインの総合的な戦闘能力が必要、ということになるんでしょうね。
浅井:やっぱり追い込み勢の人たちが以前より優しくなり過ぎたっていうのはあるでしょうね。最近は先行選手同士が並ぶじゃないですか。僕はあんまり昔はこうだったっていう話は好きじゃないんですけど、例えばチャレンジとかA級のレベルでも、決勝戦になって、先行選手同士が並ぶってなったら、追い込み選手が競りにきましたからね。そして、競りにこられるなら、ということで同じ地区同士であっても若手が分かれて「じゃあ、もう各自、自力でやりましょう」ってなって、別線になる。そして別線になることで、同地区でも相手に対するライバル心というか、負けたくない!って気持ちが強くなって、そこで切磋琢磨できるのに、今は、そこで自力同士でラインをしっかり組みましょうっていう流れになってしまう訳で。だから、元を辿れば追い込み勢の優しさには問題があるからだろうな、という風には思いますね。以前、例えば永井さん(永井清史選手・岐阜88期)と僕が並ぶ時とか、僕と深谷(深谷知広選手・静岡96期)が並ぶ時とか、他地区の誰かが競りにくるっていうのは結構ありましたし、そんな中で別線勝負を選んだっていうのもありましたし。だからこそ、若いうちは追い込みを覚えるべきではないと思うんですよね。
橋本:目先の勝利を追いかけるのか、将来の事を考えるのか?というテーマになりますね。
浅井:そうですね。そういうのは、ここで勝ったらタイトル!っていう時に考えるものじゃないかなとは思いますね。やっぱり脚力をつけるためにやるのが大切で、じゃあ、それは何故なのかと言われると、GIとかGPで勝つためにというものだと思うんですよね。それなのに最初から番手回って優勝したりしてしまうと、楽を覚えてしまうというか。人間早いうちから楽を覚えてしまうと、そこから上にいけないですよね。やっぱり一番しんどいことができる人間は絶対に強くなるんで。そう考えると厳しく接する先輩が減ったっていう責任もあると思うんですよね。
橋本:とはいえ今は厳しくし過ぎるとハラスメント、みたいなところもあるので難しいですよね~。でも、今、お話を伺っていて、これからは打てば響く!そんな若い選手たちとの交流というか巡り合わせが生む相乗効果が、これからの浅井選手にとってはとても大切なのではないかと感じました。
浅井:僕は向上心を持って聞きに来る若い選手たちには、全て教えようと思っています。
ちゃんと自分自身を理解して、聞いたことを実践してみて、真剣に強くなりたいと思って取り組んでいる選手。それは敵とか味方とか関係なく、全て伝えて、それでも俺は負けないようにっていう風な思いでやってますね。
橋本:そういうところなんですよね。本当の意味での優しさというか、聞かれたことには誠実に出し惜しみせずに答えようという。でも、厳し過ぎるがあまり中部の後輩は恐れているのかも知れないという(笑)
浅井:検車場でよくヘラヘラ笑いながら過ごしてる人いるじゃないですか。あれが嫌いなんですよ。
橋本:あ!!僕らの取材のせいでヘラヘラさせてしまったりするかも(笑)
浅井:いやいや、というか、普通に仕事行ってヘラヘラしてる時間ないだろって僕は思っていて。勿論、仕事が終わって、部屋でのんびりする時間に楽しく会話をしながら食事みたいなのはいいんです。でも、それを検車場でする必要はないだろう、と僕は思うんです。僕からすると、もうその時点できちんと向き合えてないな、と感じてしまいます。とはいえ、結構周りにも「浅井が若手を育てろよ~」みたいなことも言われるんですが、そうは言われても普段そんな岐阜勢や愛知勢の選手たちと会う機会もないし、そもそも上位のレースに来る選手も少ないので、教えるどころか会話する機会もないんですよね。だから、まず自分自身で上のクラスのレースに参加できるレベルまで努力して欲しい。僕の仕事は、そこからの話だとは思ってます。
橋本:ここまで本当にズバズバと。多くの人が言いにくいことも、しっかり口にできるところが僕は個人的に浅井選手の魅力ですね。表面的なリップサービスがない分、言葉に重みというか力を感じます。
浅井:今回の四日市のGIII、確か三日目だったと思うんですけど、勝利者インタビューの時に、僕のラインスタンプを持ったファンの方が来ていて暖かい応援だったんですが、その時「浅井さん暖かい応援ですね~」みたいな事をインタビュアーの方が言ってくれたんですけど「いや僕、実は3,4年前はすごいヤジばっかで、この雰囲気になったの最近です」
という話を普通にファンの皆さんの前で(笑)
橋本:いやいやいやいや、正直すぎるやろ(笑)でも、お客さんの前で常に正直でいるって凄く勇気のいることだと思うし、正しいか間違っているかという話だけではなく、色んな逆風にも負けずに、言い続けることができる存在って、本当に貴重だなと思います。競輪選手って「こういう思いで走っているんだ」ってことを、インスタライブなんかでも発信されてるじゃないですか。
浅井:それがファンサービスというより、それ自体も仕事だと思いますね。確かに、そこにお金が発生してないからファンサービスになるかもしれないけど、競輪選手としての思いをお客さんにしっかり伝えるということも、大切な仕事ですよね。インスタライブだけじゃなく、例えばコラムなんかでも、伝えたいことを文字で伝えるのは、どういう勉強なのかと、考えながら取り組むことによって、自分が成長できる訳じゃないですか。「喋ってくれたら文章はこっちで起こします」って最初はそんな感じだっんですけど、それだと勉強にならないんで「僕、自分でやります」って言って。話の内容や構成を自分で考えて、誤字脱字は最後にチェックしてもらいますが、そこも自分の成長の為に必要な事だと思ってやってます。
橋本:競輪に限らずあらゆることに理解が深まって成長していく事に対する、喜びというか達成感というのを凄く大切にされているんだなというのがよく分かります。
浅井:若い時にはできなかったことに挑戦して克服できたら、それはもう進化だと思うんです。そう考えると人間はいつまでも進化し続けるという捉え方ができる訳で。だから年老いたなとかって思うんじゃなくて、年齢と共に挑戦し続ける事ができれば、老化ではない。それは進化だと考えています。勿論、考え方が変わっていくのは当たり前だし、変わる事も進化の一つじゃないですか。昔はこう言ってたかも知れないけど、それが間違いだった、ではなく、年を取っていく中で新しいものを取り入れて、意見が変わった。それは当然の話ですね。ヤジに関しても、進化のきっかけになることもあるし、僕は「アホ、ボケ」も言われるのが当たり前だと思ってます。そりゃ、お金賭けて期待に応えられなかったら、そう言われるのは当然だと思うんですけど。
橋本:確かにあの耳の痛い言葉の中に、何か気づきを与えてくれるようなものというのはあるでしょうね。
浅井:ヤジは、そう、必要。言われて育つと思うんですけどね~。
橋本:浅井選手の中で、競輪選手としての進化、何か現時点でありますか?
浅井:実は、四日市の時に初めてシューズを変えたんですよね。アシックスのクラシックのやつからカーボンのやつに変えまして、今、それが違和感しかないんです。要は、これまでのやつがとにかく履きやすいんです。でも、なんでもそうだと思うんですが、新しいものっていうのは機能は増してると思うんですよね。例えばiPhoneでも新しく変えたら最初は使いにくいじゃないですか。でも使っていくうちに、新しい方が便利になっているって、色んな場面であると思うんです。だから、今の成績を変えるために、その増している機能に対応できる自分に変化してみようというのはありますね。旧型じゃなく、新型に変えてみて、どこまでやれるかを試しているところですね。
橋本:なるほど。新しい道具を操れる自分に変化することによって、レベルがワンランク上がっていけるようにと、まさに進化ですね。とにかく今日より明日、明日より明後日と、そのたゆまないストイックな取り組みはさすがとしか言いようがありません。
浅井:いやいや、僕ストイックじゃないですよ。三日坊主ですよ。
橋本:そんなアホな!!(笑)
浅井:いや、あの三日坊主って大体、途中で辞める事を言うじゃないですか。じゃなくて、僕、三日で習得するぐらい集中してやり続けて、辞めるっていう三日坊主ですね(笑)
橋本:すごい天才じゃないですか!
浅井:いやいや、そうじゃなくて
橋本:あ!!没頭できるんや。
浅井:そう、ずっとあの下手したら起きた瞬間から寝るまでというか、寝ててもパッて起きたりするじゃないですか、その時に思い浮かんだら、動いてみたりとか。それが大体三日という。集中してマスターする努力を三日で完結する感じですね。そしたら、また次に新しいものが出てくるんで、またこれまでやってたのをリセットして、新しい方向へという。それって、心技体の心の部分なんです。心というのはしんどい時に踏ん張るとか、気合で何とか!みたいな捉え方をされている事が多いと思うんですが、そうじゃなくて精神状態をどうもっていくかという。本当にその世界に入りこむっていう無心の状態になれるかどうかという話なんですよね。いわゆるゾーンに入るという感覚です。
橋本:何となくわかります。無心になって没頭するっていう時が一番、作業効率もいいし、吸収が早いですよね。いわゆる座禅の、禅の教えとでも言いますか。
浅井:どんな状況に人は置かれても無心になれるし、没頭するものがあれば進化は続けられると思うんです。極端な話、牢屋に入って、ずっと外に出られなくたって、きっと文章を書いたり、筋トレできたり、とにかく集中して取り組める何かはあると思うんです。ちなみに僕も座禅とかはやったりしますよ。
橋本:いやぁ、今日は本当に競輪選手としての浅井康太というよりも、一人の人間としての話と言いますか。どこでどんな状況に置かれても、浅井さんはその中で、ポジティブに生きていける人なんだろうなって感じました。
浅井:悩みはいっぱいありますよ。ありますけど、それに縛られて結局前にも進めないというのではなく、自分が動かんことにはアカンっていうか、自分が考えないと意味がないんで。悩むんなら、とにかく動いてみようって話ですよね。
橋本:選手としての側面だけではなく、人間としての浅井康太が今後、どういう風に変わっていくのか一人のファンとして非常に楽しみにしています。しかし、今回の取材、本当に選手としての調子とか状態とか、全くお聞きしませんでした。このコラムを最後まで読んだけど、浅井に関して車券予想の参考になる収穫はまるでなかったぞ!と読者から言われそうで怖いですが(笑)
浅井:いや、これ、めちゃめちゃよく喋ったんで、あれですよ!頭が回ってる時は、大体調子も上がってくるんで、多分調子はいいんじゃないかなということに・・・・きっと調子は上がってくるということに(笑)
橋本:では、絶好調ということでいいですか?
浅井:いや、ボチボチということで・・・(笑)
橋本:あ・・・ありがとうございました。ダービー頑張ってください。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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今年初めてのGI戦に挑み、1989年の中野浩一さん(福岡・引退)以来34年ぶりに全日本選抜競輪を連覇した大阪の古性優作選手(大阪100期)にお話を伺いました。
大津:全日本選抜競輪優勝おめでとうございます。
古性:ありがとうございます。
大津:今年初のGI戦で優勝したお気持ちはいかがですか。
古性:脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)と竜生さん(三谷竜生選手・奈良101期)のおかげで優勝できましたし、すごく嬉しいです。
大津:大会連覇に関してはいかがでしょうか。
古性:そこに関しては特に意識はしていませんでした。
大津:昨年もそうでしたが、早めにグランプリ出場を決めたことで気持ちに変化などはありましたか。
古性:精神的に楽にはなりましたが、それでも結果は求められますし、プレッシャーはどのレースを走っても付いてくるのでって感じです。
大津:古性選手の場合、岸和田で高松宮記念杯競輪も控えてますもんね。
古性:そうですね、それも大きいです。
大津:今回のシリーズにはどのような思いでのぞまれましたか。
古性:奈良記念ではお客様に迷惑をかけてしまいましたし、その分もしっかり取り返したいなと思って走りました。練習もGIに上手く合わせられた気がします。
大津:初日は自らが前で走る番組でした。
古性:しっかり自力を出そうと思ってました。
大津:レース自体のイメージはどのようにお考えだったんですか。
古性:特にはなかったですね。スタートしてから流れの中での判断でした。
大津:初手は後ろからの組み立てになりましたね。
古性:深谷さん(深谷知広選手・静岡96期)が強いので、一度深谷さんを後方に置きたいなとは思ってました。
大津:後方になった深谷さんの巻き返しも凄かったように感じます。
古性:本当に凄かったです、とてもかかっていました。
大津:最後は古性選手が内に進路を選択されました。
古性:全く考えてはいなかったです。
踏んだ時に郡司(郡司浩平選手・神奈川99期)が外に振ってきて、和田君(和田真久留選手・神奈川99期)が中に入っていったスピードが僕は負けていたので和田君の進路を塞ぐしかないなって思って入った感じですかね。
大津:一走して手応えはどうでしたか。
古性:高知のバンクだったのでよく分からなかったです。高知のバンクは特殊なので。
状態は良いはずだったんですが、進みもあまり良くなかったので、僕自身の進みが悪いのかバンクの特性なのか、そのあたりが分からなかったです。結局四日間通して最後まで分かりませんでした。
大津:高知は約4年ぶりの登場でした。
古性:そうなんですか、もっと走ってないイメージがありました。
改修工事があって新しくなったそうなのですが以前の感じも覚えていないので、特に今回も印象などはありませんでした。
大津:2日目は脇本選手の連携でした。
古性:強かったです。いつもと違う動きだったので、どうなるかとは思っていましたが強かったです。
大津:いつもと違う動きとは具体的にどういう動きだったのでしょうか。
古性:前のラインに付いていって、そのまま切りにいったところですね。僕としてはそのままワンテンポ待つのかなと思ったのですが。
大津:その辺りは事前に脇本選手と作戦会議はされるのですか。
古性:いや脇本さんとの作戦会議は全くありません。初手も分からないです。
大津:脇本選手が「腰痛」というコメントを出していましたが、後ろに付いていて感じる部分はありましたか。
古性:状態っていうよりか、高知のバンクが苦手そうだなってのは感じました。
大津:スタールビー賞では新山選手(新山響平選手・青森107期)に叩かれた後に古性選手が切り替える場面がありました。
古性:新山君が脇本さんを締めた時に脇本さんのペダルがバンクに当たってる感じがあってバランスを崩していたので一瞬脇本さんが転けるかなって思いました。
凄い勢いで下がってきたので、それで切り替えたんです。もう行くしかいかなって判断しました。
大津:切り替えてからは郡司選手を捌きながら更に強襲して一着を取りました。
古性:脇本さんがあそこまで連れていってくれましたし、新山君もすごい長い距離をかけてたので自分が何とか届いたのかなって感じですね。
大津:準決勝でも脇本選手と同じレースでしたが想定はされていましたか。
古性:いや、その辺りは何も考えていなかったです。
大津:毎回別ラインに警戒される中で結果を残すのは、かなり重圧もあるように思います。
古性:僕よりは脇本さんのプレッシャーのほうが凄いと思います。準決勝は特に厳しい相手だったので、そこが難しかったです。
大津:ホームで脇本選手が仕掛けてからは古性選手も車間を空けてアシストされていました。
古性:脇本さんが逃げる展開になれば任せてくれって感じでした。
大津:決勝戦のメンバーが出揃っての印象はいかがでしたか。
古性:本当に強い選手ばっかりで難しいなって印象でした。
大津:展開の中では自分の位置で粘られる可能性も考えていたのでしょうか。
古性:そこは毎回考えていることなので油断は全くしていませんでした。自分のところで粘られたら、そこは僕が頑張るだけなので。
大津:レース中は古性選手自身はどのようなことを気を付けながら走っていたのでしょうか。
古性:とにかく飛付かれた後の対応と、しっかり脇本さんに離れないように付いていくことを考えていました。
大津:実際に新田選手が内で粘ってきました。
古性:そこはきっちり外をさして対応できたかなと思います。
大津:最後の直線コースでは優勝の確信はありましたでしょうか。
古性:いえ、僕もけっこう脚を使っていたのでちょっとしんどかったです。どうなるか分からなかったです。
大津:ゴールした瞬間の気持ちは覚えていますか。
古性:自力で勝つのは難しいのですが、ホンマにラインの人たちに助けてもらったって感じでしたね。脇本さんと竜生さんのおかげです。
大津:ファンの声援も大きかったのではないですか。
古性:そうですね、GIの歓声というのは普段の開催よりも一段階大きいのでその中で勝てたというのは本当に嬉しかったですね。
大津:今年ここまでを振り返ってみていかがですか。
古性:しっかり走れている部分と失格してしまって迷惑をかけてしまっている部分があって、良いところもあれば悪いところもあるのかなっていう感じです。
大津:今年は特に勝ち星を量産されているイメージがありますが何か昨年と違いはありますか。
古性:色々あります。練習など意識的に変えているところもあり、その辺りが良い感じで噛み合ってきているのかなと思っています。
大津:打倒近畿を掲げている他地区の動向はどう感じていますか。
古性:特に感じる部分はないです。とにかく目の前の一戦一戦を大切にしていくことを心掛けています。
大津:次は5月にダービーが行われます。
古性:日本選手権競輪は日本一を決める大会だと思っていますし、それを獲りたいという意識は強くあります。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
古性:いつも応援ありがとうございます。これからも応援してもらえるよう頑張ります。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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