平塚競輪場で行われた第77回日本選手権競輪で頂点に輝いた岐阜の山口拳矢選手(岐阜117期)。ダービー王になった喜びの声を伺いました。
大津:第77回日本選手権競輪優勝おめでとうございます。
山口:ありがとうございます。
大津:ダービー王に輝きました。
山口:全然そんな「僕が日本一だ!」みたいな感じはなくて展開に恵まれただけです。
大津:レース後に感情が追いつかないと話していたのが印象的でした。
山口:そうですね、驚きのほうが大きくてフワフワしてました。「フワァ」って感じで衝撃が大きかったです。
大津:実感はまだないですか。
山口:周りの方から沢山連絡をいただいたので、その辺で実感はわきました。
大津:かなり反響もあったんじゃないですか。
山口:そうですね、200件近くメールがあったので返信するのが大変でしたね。
大津:優勝してから少しはゆっくりする時間はありましたか。
山口:うーん、次の次の日くらいから練習を始めてっていう感じです。
大津:GIを優勝した後くらいゆっくりしようって気持ちにはならないんですか。
山口:僕もそう思ったんですけど、結局やることもないですし練習してないと不安なんで。
大津:2011年に山口幸二さん(岐阜:引退)が優勝された平塚グランプリを現地で観てたんですか。
山口:そうです、家族で観に行ってました。
大津:その時のことははっきりと覚えてますか。
山口:覚えてます。他の選手の家族の方たちと一緒の部屋だったので、あまり騒がないようにしようねって言ってたんですが、ゴール前はめちゃくちゃ叫んでました。「お父さん、いけぇ!!!」って(笑)
大津:今回はお父さんが同じように叫んでたかもしれませんね。
山口:アッハッハッハ、そうかもしれません。
大津:その辺りはお父さんとは話はしましたか。
山口:いや、ずっと「ダービーかぁ、ダービーかぁ。」って同じことを言ってました。
大津:お父さんがグランプリを獲った平塚の地で、今回は僕が獲ったのかぁなんて特別な感情が芽生えたりはしましたか。
山口:あの時はバンクの外から見てたので、また違う景色に映りました。
インタビューで「あそこから見とったんやぞ。」って言われた時に、「確かにそうやったなぁ。」って思い出しました。レースの時は思い出す余裕もなかったです。
大津:今シリーズを迎えるにあたって状態面はいかがでしたか。
山口:その前の富山も福井も連続で優勝出来ていたので良かったです。
練習は特に変わらずって感じでしたけど、めちゃめちゃ調子良いかって言われたらそうでもなく、なんなら練習の感じは悪かったくらいです。
レースでは良いんですけど、練習だと重くて感じが良いなぁって思うことは少なかったです。
大津:実践の時のほうが山口選手は結果が出るってタイプなんですか。
山口:そうですね、練習では僕より強い選手がいっぱいいるので、そういった選手がレースで結果が出るようになれば、今後より楽しくなってくると思います。
来期からS級の選手も増えるので皆で頑張っていきたいですね。
大津:今節は2日目に初戦を迎えました。
山口:初日に合わせていってるので走りたかったなっていうのはあったんですが、終わってみれば2走して休みで2走してって感じだったので良い日程だったかもしれません。
大津:ライン上位独占と幸先の良いスタートを切られました。
山口:すんなり中団だったので展開が良かったってのもありますが、ワンツースリーだったので本当に良かったです。
大津:シリーズ全体を通して印象に残っているレースはありますか。
山口:二次予選ですかね。動かなかったんです、眞杉君(眞杉匠選手・栃木113期)の後ろから。もう、そこで勝負だなって思って。
セオリーでいけば赤板のところで僕が動いて眞杉君の先行を呼び込むのが普通なんですが、僕にその脚はないし、他の選手が僕を切らせてくれるかも分からないですし、こういう状況になった時に「敢えて切らないのも面白いですかね。」って作戦会議の時に先輩と話してて、中団勝負で行きますってなったのでこだわりました。
大津:6日間の長丁場を戦う上で大切にしていることはありますか。
山口:僕はずっと寝てますね。レースも後ろのほうだったら昼まで寝てたりするので、睡眠ですかね。
スッキリするまで寝るのが一番です。後はリラックスするために漫画を読んだりしています。
大津:決勝戦の前夜はいつもと同じように眠れましたか。
山口:絶対に寝れんくなるって思ったんですけど意外と眠れました。良い状態で決勝戦を迎えました。
大津:僕なんか緊張で押しつぶされそうになって絶対眠れない気がします。
山口:緊張はもちろんしましたけど、2021年の共同通信社杯のほうが緊張したと思います。地元だったんで。
大津:発走機に着いた時は平常心でいられましたか。
山口:いや、めちゃめちゃ緊張してました。自分を落ち着けるために深呼吸したり色々してました。号砲が鳴ったら気になりませんでした。
大津:決勝戦は別ラインもかなり強力な選手が揃いました。
山口:僕に優勝のチャンスはあるのかなって正直思いました。全然自分が勝つ姿が見えなかったです。
大津:ただ、その中で優勝されました。
山口:自分が思い描いてたレースの中で一番良い展開になりました。
犬伏君(犬伏湧也選手・徳島119期)が先行して、新山さん(新山響平選手・青森107期)が中団にいて脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)が後方で、清水さん(清水裕友選手・山口105期)が番手捲りにいって。
本当にその通りにすすんでくれたので、犬伏君ラインの後ろに僕がいれば最悪でも3着はあるなって思ってました。
大津:まさにイメージ通りとなったわけなのですが、その時の心境はいかがでしたか。
山口:赤板から犬伏君がすごいスピードだったんで正直考える余裕もなかったです。周りを見る余裕も一切なかったので、前しか見てなかったです。
大津:最後の手応えはどうでしたか。
山口:踏み込んだときにけっこう脚が残ってたので「あっ、これイケるかも。」って感じたんですが、そこで慎太郎さん(佐藤慎太郎選手・福島78期)に当たられてちょっとヤバいと思ったんですが、直線だけだったので最後まで無我夢中で踏んだ感じですね。
大津:佐藤選手の動きを耐えて、そこからの優勝ですもんね。
山口:いやぁ、たまたま踏んだコースが加速したっていう感じです。
大津:ゴールした瞬間は覚えていますか。
山口:清水さんと1/8車輪差だったので確信が持てなかったのですが、慎太郎さんが「拳矢か!」って言ってくださって「多分!」みたいなやり取りをしたのを覚えています。
で、ビジョン観たら自分が映ってたのでガッツポーズしちゃおうみたいな感じでした。
大津:共同通信社杯も新田祐大選手(福島90期)の上を越えて、今回も清水選手の上を越えて本当に強い勝ち方だったように思います。
山口:全然そんなことないです。展開がハマったなってだけかなって、僕だけ脚を使ってなかったんで。
大津:以前オッズパークのインタビューで外併走になったとしても堪えて伸びる練習もしていると仰ってました。
山口:そうですね、どこで踏めば一着まで届くってのは練習で意識したりしているので、この位置ならっていう距離感は分かっている気がします。
大津:ここからグランプリへ向けてどのように過ごしていきたいですか。
山口:まだグランプリまでは半年以上もあるので意識はせずに、目の前のレースに集中してやっていきたいです。後は怪我をせずにって感じで頑張りたいです。
大津:共同通信社杯を優勝した時は時計を買われたと言っていましたが、今回は何か買われたんでしょうか。
山口:今回はなにも考えてないですね。1億稼いでしまって、これからどうなるんだってなんか逆に不安しかないです(笑)
大津:デビューして3年で1億円プレーヤーって想像してましたか。
山口:いやいやいや、全然想像なんかしてなかったです。早めにタイトルが獲れたらいいなぁってくらいで。
今回も走る前に橋本君(橋本優己選手・岐阜117期)と話してて「どうする、もし俺が優勝したら?」って、優己は「良いじゃないですか、優勝してくださいよ。」なんて言ってましたけど。それくらいなんか優勝するイメージがなかったですもん。
大津:実際に優勝賞金を手にした時はどんな気持ちだったんですか。
山口:紙袋に入ってるんですが、重かったです。お金の重さってすごいんですね。
「本物!?」みたいな感じで実感もなかったです。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様にメッセージをお願いいたします。
山口:来年からS級S班になるんですが、赤いパンツのプレッシャーに負けないように目の前の一戦一戦をしっかり走っていきたいと思いますので応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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