
本デビューから9連勝で123期2人目の特進を決めた青木瑞樹選手(岡山123期)。
その後A級1-2班でも初優勝を果たし勢いに乗っている青木選手に、選手を目指したきっかけやこれまでの振り返り、今後の目標を伺いました。
ナッツ:まず青木選手が自転車競技を始めたきっかけを教えてください。
青木:中学校まで柔道をしていたのですが、全国で戦いたいという気持ちがあって、柔道の経験が何か活きるものはないかなと思って、そこで自転車を始めました。
ナッツ:柔道では、全国で戦うのはなかなか厳しかったんですか?
青木:全国にも行けたのは行けたのですが、小1からずっとやる中で壁を感じましたね。なので、ちょっと違うものにっていう風に思っていました。
ナッツ:そこで柔道から自転車へ、というのもなかなか面白いなと感じるのですが、どうやって自転車競技を知ったのでしょうか。
青木:近くの高校に強いところがあったので行ってみようと思って行った感じですね。笑
ナッツ:そんな経緯で!笑
そして実際にその高校に行かれて、自転車競技で好成績も残されていますが自転車をやって良かったなと感じますか。
青木:そうですね。まあ成績自体はぼちぼちかなあという感じでしたけど、ある程度は自分が思っていたような活躍ができたなとは思います。
ナッツ:そこから次は競輪選手へ、ということになりますがそのきっかけは。
青木:高校まで自転車競技をやって、その後やりたいことが見つかれば違う道も考えて大学に入ったんですけど、特に自転車以外にやりたいことってのが見つからなかったんですよね。あとは大学の先輩方が活躍してるのも知っていたので、それを見ていいなと思って、自分も選手を目指そうと。
ナッツ:具体的にはどなたが先輩にあたるんですか。
青木:同年代だと、村田瑞季選手(京都117期)、山根将太選手(岡山119期)あたりですね。(自転車競技の名門である中央大学出身)もう自分が大学に入った時には活躍していたのですごいなと思っていました。
ナッツ:先輩の背中を追いかけたのですね。そしてその後入った養成所では在所19位という上位の成績でした。振り返ってはいかがですか。
青木:ゴールデンキャップを獲得したわけではないですし、そんなに目立った感じでもなかったですね。
ナッツ:ただ、記録会では上位の成績を上げていましたし、成績を見ると、ホームやバックも比較的取ってるような印象があります。どういった意識で養成所では過ごされてたんですか。
青木:めちゃくちゃ多い数字ではないのですが、デビューに向けて特にバックに関してはしっかりと取ろう、仕掛けていこうという気持ちではいたのでその点は良かったかなと思います。
ナッツ:青木選手含め同期4人の師匠が櫻井太士選手(岡山94期)ですが、師匠との出会いはどういうきっかけだったのでしょうか。
青木:個人的に何か繋がりがあったわけではなくて、鳥取出身の同期4人が競輪選手になりたいとなった時に、誰が面倒みるかってなったらしく、そこで櫻井さんが見てくれるようになった感じです。
ナッツ:その後、ルーキーシリーズを走って2回とも決勝に乗りました。ファンのお金がかかっているレースという部分が養成所とは異なりますが、その辺りは走ってみて実感はありましたか。
青木:自分に対してではないんですけど、同期が飛ばされていた野次でちょっと実感したような感じですね。笑
ああ、自分も競輪選手になったんだなあと。
ナッツ: 本デビューしてからは負けなしの9連勝を達成しました。ルーキーシリーズと本デビューの違いは、一走目に感じましたか。
青木:やっぱり先輩が後ろに付いているので、自分だけではなくラインでしっかりと決まるようにしないといけないという部分があって緊張しましたね。
ナッツ:その本デビュー戦は後ろに3車付いての4車ラインとなりました。一度相手のラインに突っ張られるレースでしたが、ジャン前から巻き返していきましたね。
青木:はい、あの辺りは緊張感ある中でもしっかりラインで決まるような仕掛けはできたなと感じます。
ナッツ:本当に落ち着いたレースをされていて、新人離れしてるような印象を受けました。初勝利を上げてから先輩たちから何か声をかけられましたか。
青木:おめでとう、だったり良かったな、ということは言われたと思うのですが緊張していたのであまり覚えていないです。笑
ナッツ:更にデビュー節で完全優勝を果たしました。そのあたりの気持ちはいかがでしたか。
青木:優勝出来ないと思っていたわけじゃないんですけど、相手も強かったですし、展開によってはできないこともあるだろうなって感じていたので、優勝出来て嬉しかったですね。
ナッツ:そこから更に連勝を伸ばして、9連勝での特進を達成しましたが、特進はどのあたりで意識しましたか。
青木:特進自体はデビューした時から意識していました。
ナッツ:え、そうなんですね!
青木:はい、やっぱり早く1-2班には上がりたいなと思っていたので、それを実際に叶えられたのは良かったです。
ナッツ:その特進がかかる中でのレースは高知で同期の中岡海選手(愛媛123期)との対決でした。やはり特進がかかるレースとなると、捲りにどっぷり構えて、みたいなイメージがある中で、しっかりとホームで巻き返していきました。大きいレースをされたなっていう印象がありますが、振り返っていかがでしょうか。
青木:2分戦でしたし、中岡選手の反応が少し遅れた感じもあったので、逃さずに行きました。出切れたかなと思ったのですが、少し番手がもつれる感じになってしまったことが反省点ですね。
ナッツ:番手に中岡選手がハマって最後の直線は迫ってきましたが、1着でゴールして特進が決まった瞬間は、気持ちはいかがでしたか。
青木:ほっとしましたね。もちろん嬉しさもあったのですが、やっぱり500バンクで脚を結構使っていたこともありましたし、最後はきつかったのでほっとした気持ちが大きかったです。笑
ナッツ:同期の中では2人目の特進でした。他の同期と比較すると早くにA級1-2班に上がりましたがそのあたりの気持ちとしては。
青木:何番目に上がるとかの意識はなかったのですが、なるべく年内には上がりたいと思っていたのでそれは良かったですね。
ナッツ:そしてそこからA級1-2班でも数場所戦いましたが、チャレンジと1-2班の違いは感じますか。
青木:やっぱり違いますね。チャレンジなら行こうと思ったところで行けるのが、1-2班だとずっと相手に睨まれていてプレッシャーを感じますね。なので結構そのあたりは思い通りに行かないというか。
ナッツ:それに加えて番手の選手の仕事もあったりしますもんね。
青木:あーそれが、結構厳しいですね。やっぱり捲って行った時に結構持ってこられたりするのが、チャレンジとは違って、そこがまだ対応できていないですね。
ナッツ:青木選手の走りとしては地脚を活かしたレースのイメージですが、逃げだけじゃなく、鋭い捲りも出ていますよね。ご自身の中で戦法としてはどちらが得意、というものはあるんですか。
青木:やっぱり地脚を活かして逃げた方が持ち味は出るのかなと思いますけど、まだ組み立てが甘くて、そうなった時は捲っている感じですね。
ナッツ:その中でも小倉では後方から大外捲りで優勝しました。特進して3ヶ月程で1-2班で優勝したっていうのは、本当にすごいんじゃないかなと思います。
青木:ここは強い選手がいる中でも自分にもチャンスがあるメンバーかなと思っていたので、優勝できて嬉しかったです。
ナッツ:青木選手は、事前にしっかりメンバーも確認されているんですね。
青木:はい、行く時は一通りメンバーを見ますね。そして番組が出たら自分の頭の中で作戦を考えます。
ナッツ:ラインの先輩方と立てるというよりは、まずご自身の中でイメージされるんですか。
青木:そうですね。出走前にはラインの方と作戦を考えるんですけど、自分の中でしっかりとイメージ出来る時は良い結果になっていますね。でも時々どうしたらいいのか全く思い浮かばない時もあって、その時は中途半端な走りになってしまいます。
ナッツ:じゃあその時はもう先輩方に頼って。
青木:はい。どうすればいいですかっていう感じで。 あんまり考えがまとまっていない状況だと走りにも影響が出てしまうので、そこはしっかりと先輩方に確認して作戦を立てます。
ナッツ:これから更に上を目指していく上で、青木選手が目標とする選手はいらっしゃいますか。
青木:特にこの選手、という方はいないのですが、中四国は強い先輩方も沢山いるので頑張っていきたいですね。
ナッツ:普段の練習はどのようにされているのでしょうか。
青木:ずっと玉野バンクで、その時にいる方と一緒にその都度考えて練習をしています。なので、しっかりとメニューを組んでいるわけではないんです。
ナッツ:その中で、ご自身の中で重点的に取り組んでいることはありますか。
青木:スピード強化ですね。まだそこが足りないですね。
ナッツ:レースを見ていると、青木選手はスピードも十分にあるなっていうイメージなのですが、まだまだご自身の中では納得いかれてないんですね。
青木:すんなりの展開だったらまだ良いのですが、やっぱり展開が縺れた時にスピードが足りないというか、捲れないことがあるので、そういった時にもしっかりと結果を残せるような練習をしています。
ナッツ:青木選手はお休みは作っていますか。
青木:それが割と毎日のようにバンクに入ってますね。
ナッツ:すごいですね。自分に負けずにというか、疲れてちょっと今日はもうやめようかな、みたいなふうに思っちゃう時もありそうですが。笑
青木:そう思うこともあります。笑
でもそこはやっぱり練習していかないと強くなれないので頑張っています。
ナッツ:デビュー初勝利や特進を決めた時の賞金でご自身へのご褒美は何かされましたか。
青木:全部貯金に回してますね。笑
まだ養成所の返済もありますし、自分の為に使うのはもう少し先かなと。
ナッツ:更に稼げるようになった時に欲しいものは何かあるんですか。
青木:物欲自体が無くて、車くらいですね。笑
同期は結構もう買ってる人もいますが、もっと強くなって、更に稼いでからという感じですね。
ナッツ:堅実ですね。それと最近の若手選手はSNSも積極的に活用されていますが青木選手はされる予定は。
青木:いや~プライベートで持っているアカウントはあるんですが、選手用のを作る予定は今はないですね。やっぱりDMで言われたりするのはメンタルやられるので。笑
ナッツ:インタビューを見ても落ち着いていますし、結構どっしりとしている印象だったんですが。笑
青木:あれは緊張してガチガチなだけなんです。笑
良いメッセージばかりだったら良いんですけど、そういうわけにもいかないですし、メンタルは弱いので今は考えていません。笑
ナッツ:今後も戦いが続いていきますが、ご自身の中での目標を教えてください。
青木:まだ少し先の話にはなりますが、S級でしっかりと逃げて結果を残せるようになりたいです。
ナッツ:それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをいただければと思います。
青木:しばらくはA級での戦いですが、まずはしっかりと逃げて勝てるように脚力を付けていきます。これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一年発起し脱サラ。今年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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競輪養成所での在所順位は40位ながらも、123期で最初の特別昇班を達成した新潟の牧田悠生選手に今後の目標を含めお話を伺いました。
大津:123期では一番乗りで特別昇班を決めたお気持ちはいかがですか。
牧田:デビューする時には、まさか自分が特別昇班が出来るなんて全く想像もしていなかったので信じられなかったです。
大津:9連勝出来た要因ってのはどのようにお考えですか。
牧田:養成所を出てからの練習内容や新車に変えたのとか色々な面で噛み合ったからじゃないかと思います。
大津:競輪養成所の生活はいかがでしたか。
牧田:いやぁ、大変でした。苦しかったです。初めの頃は滝澤所長のT教場に入っていたんですが「こんなに苦しい練習があるんだ。」ってくらい辛くて、それがまず一番印象に残っています。養成所の中でもなかなか成績を残すことが出来なくて、そういう意味でも苦しかったです。
大津:競走訓練では課題をもってのぞまれていたんですか。
牧田:課題っていっても何をやっても本当にダメで・・・。僕、ホームバックが0本で卒業してきてるんです。先行回数がゼロで1着だけ2回。それも250競走の6車とかだったので。2周で切りに行ったら残り1周で叩かれて末着になっちゃうし、中団を取ろうとしても取れなくて後方になって中間着で終わっちゃうことが多かったので、課題とかっていうよりも全然ダメでした。
大津:本人としては「先行してやろう」という気持ちもあったのですか。
牧田:そういう時期もありましたけど、ただホームやバックを取るどころか末着ばっかりだったので、それだったら着を取りに行こうとかするんですけど、良くて3着とかそんな感じでした。
大津:そのような感じだと、僕が牧田さんの立場であればデビューするのが怖くなったりしそうなのですが。
牧田:全くその通りで「この成績でデビューして1・2班の成績取れるのかな。」「最悪70点も取れないんじゃないか。」って気持ちでした。
大津:そこから何か掴んだきっかけはあったのですか。
牧田:養成所を卒業してから弥彦のバンクは使えなくて街道練習ばかり行ってたのですが、バンクでの練習がない中で宇都宮のルーキーシリーズで1着が取れて、その次の福井でも決勝に乗ることが出来て「あっ、勝てた。」みたいな気持ちでした。改修工事が終わってからはバンクに入れるようにはなって本デビューを迎えたって感じです。きっかけっていうのは、あまり思い浮かばないです。
大津:パワーアップしてるなって実感もなかったですか。
牧田:6月7月はタイムも1番上がってはいましたね。練習内容とフレームが噛み合ったのかもしれません。
大津:本デビューを迎えるにあたっての心境はどうでしたか。
牧田:ルーキーシリーズでそこそこ結果を残すことが出来たので「なんとか決勝くらいには乗れるんじゃないかなぁ。」って感じでした。最初は弥彦でデビューの予定でした。その開催には同期の篠田幸希さん(群馬123期)がいたんでキツイなぁ、とその次の小田原で初優勝出来たら良いなぁくらいの気持ちだったんですけど弥彦の前に富山の追加が来て走ってみたら完全優勝出来ちゃって、地元も走ってみたら3連勝で「あれ?次で特別昇班じゃん。」ってなりました。
大津:デビュー戦走ってみて「戦えるぞ」って感じでしたか。
牧田:初日は捲りの展開だったのですがゴールをした後に後ろを見たら、けっこう離れてて「あー、千切っちゃった。」ってなって、この脚ならイケるのかなぁって思いました。決勝も同期の山元大夢(石川123期)と斉藤樂(宮城123期)がいたんでキツイと感じてたのですが僕は単騎だったんで気楽に走れて、そこで優勝出来たのが次の弥彦や小田原に繋がったような気がします。
大津:決勝終わった後は同期の選手とは話はしましたか。
牧田:いや、先輩方が待っていたので話をせずにシャワーを浴びて直ぐに帰りました。
大津:レース後のコメントを見ていると非常に落ち着いている印象を受けます。
牧田:チャレンジの勝ち上がりに関してはけっこうあたふたしていたんですが、決勝に関しては全部自分の頭の中で描いてた通りになってました。自分が勝つならコレかなって感じが全部ハマりました。
大津:それってめちゃくちゃ気持ち良いんじゃないですか。
牧田:そうですね、気持ち良かったです。
大津:レースのシミュレーションはけっこうするのですか。
牧田:ある程度って感じです。初手位置が変わる可能性もあるので臨機応変にやってます。
大津:なかなか養成所に受からない時期もあったからこそ、デビュー出来た思いはひとしおなのではないですか。
牧田:浪人生活が長かったので、デビューした時はやっとここまで来たかって気持ちが強かったです。ルーキーシリーズで初めてお客さんの前で車券を賭けてもらった時は感慨深かったですね。
大津:ご家族の反応はいかがでしたか。
牧田:テレビで観てたのですが宇都宮の最終日に1着を取った時は喜んでました。
大津:賞金は何に使ったのですか。
牧田:家族でご飯を食べに行きました。
大津:ご自分へのご褒美はしなかったのですか。
牧田:車が買いたいんですよね。ただ、自転車を新車で2台買ったので、そこまではなかなか。あとは自転車の部品やサプリメントとか買いました。
大津:同期の人たちはけっこう車買ってますよね。
牧田:いやぁ、多いですね。本当に多いです。競輪場に行くたびに車を買ったって話を聞いてます。そういうの聞くと欲しくなっちゃいますね。
大津:仲の良い同期や意識している同期の選手はいらっしゃいますか。
牧田:仲が良いのは福岡の丸林駿太(123期)や群馬の浮島知稀(123期)です。意識してるのは1・2班に上がってきてる同期は全員ですかね。
大津:今の目標を教えてください。
牧田:ルーキーチャンピオンに出たいですね。そしてしっかり優勝したいです。
大津:それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
牧田:1・2班に上がってから、まだ勝ちきれない競走が多いのですが、11月の西武園で1着を2回取れて良い流れになってきてるので、ここからしっかり巻き返して上位戦でも優勝出来るように頑張るので応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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まもなくやってくる今年最後のガールズGI『第1回競輪祭女子王座戦(GI)』。ここで今年のオッズパーク杯ガールズグランプリの出場者が決まります。現在賞金ランキング上位で、初のガールズグランプリ出場を狙う吉川美穂選手(和歌山120期)。今の心境やここまでを振り返ってお話を伺いました。
山口みのり:競輪祭(GI)も迫っていますが、現在の調子はいかがでしょうか?
吉川美穂選手:今は、良いとは言えないです。今、体調を崩してしまったんです。競輪祭の前なのに、万全で臨めないのはつらいです。
山口:そうでしたか。ここからどうケアしていくかですね。
吉川:そうですね。まずは3日間無事に走り切れるようなケアをしていきたいです。インフルエンザでもコロナでもなかったんですが、自分でもまさかこんなタイミングで風邪を引くとは思っていなくて......。競輪祭(GI)の時にも記者さんにも「風邪を引いてしまった」とコメントは出そうと思っています。
山口:そうでしたか。どうぞご自愛ください。それではここまでの振り返りを中心にお話を伺いますね。今年はGIを2回とも出場され、なかでも『オールガールズクラシック(松戸)(GI)』では決勝2着でした。そこへ入るまでには前走から期間が空きましたがいかがでしたか?
吉川:基本的に練習をしていました。追加も欲しかったんですが、なかったらそれはそれとして練習を頑張るだけと。松戸は期間が空いてもそれなりに走れたので良かったと思います。
山口:『パールカップ(GI)』では西日本予選では6着でした。松戸も予選基本的には2着権利の厳しい勝ち上がりでした。そこはどう考えていましたか?
吉川:パールカップ(GI)と同様に厳しい勝ち上がりだと認識してとても緊張をしていました。初日は2着で準決勝にいけてよかったです。
山口:展開としては前で梅川風子選手(東京112期)にとびつく形でした。それは想定していましたか?
吉川:はい。33バンクなので「誰かをマークする」というよりは、自分で前にいた方が良いなと思っていました。
山口:位置取りも厳しい選手もたくさんいましたね。
吉川:はい。だからより、私が良い位置を初手から取れるとは思っていませんでした。前でレースを作った方が、私には展開が向くと思っての組み立てでしたね。
山口:準決勝も、自力がたくさんいる組でした。メンバーを見た時はいかがでしたか?
吉川:GIはどのレースも初日からメンバーは強い選手ばかりでしたが、準決勝は特に濃いなと思いました(笑)でも佐藤水菜選手(神奈川114期)が強いなと思ったので、初手からマークをしたいなと考えていました。車番も、佐藤選手が4番、私が5番で隣だったのもあり、初手でマークができたらその組み立て、マークができなかったらその時に考えようと思っていたんですが、すんなり後ろを取れました。後は、佐藤選手が本当に強いのでとにかくマークをはずさないように、と集中していました。
山口:7番手になるかもしれない、という想定はありましたか?
吉川:そうですね。佐藤選手の仕掛け次第では6番手、私が7番手になるだろう、でも彼女がいけないなら仕方ない、と思って覚悟はしていました。
山口:佐藤選手は最終ホームストレッチあたりで捲っていきました。あのタイミングはどうでしたか?
吉川:私は打鐘でいくかなと思っていたので、かなりドキドキしました。メンバーも前には小林莉子選手(東京102期)、日野未来選手(奈良114期)、柳原真緒選手(福井114期)など、みんな自分から仕掛けていける選手がそろっており、打鐘でいくのかなと思っていたので「まだいかないのか」と(笑)たださっきも言ったように覚悟はしていました。
山口:最終バックストレッチでは皆さんが仕掛け合う形でしたね。
吉川:私は佐藤選手を追走していたので、最終3コーナーでは余裕がありました。「もしかしたら佐藤選手を差せるかもしれない」と夢を見ましたが、4コーナーでは佐藤選手がすごく伸びていったので、私は追走しただけでしたね。ただ私は2着を取らないと決勝進出は厳しかったので、結果にはほっとしました。
山口:決勝は振り返っていかがでしたか?
吉川:尾方真生選手(福岡118期)が初手で私の前まで来たので、入れるか迷ったんですが1車入れました。レースが動いて最終周回では、私は内側にいてコースがなかったんです。でも外から佐藤選手が捲るのが見えて、そこから外へ持ち出しても佐藤選手には追い付かない、と思った瞬間に前が空いてコースができたので、もう思い切り踏み込みました。「ここしかない」と思って無我夢中で踏んだら、勢い余って久米詩選手(静岡116期)の内側に差し込んでしまい、もったいないことをしました。でもそこでバックを踏んでも伸びていったので、調子も良かったと思うし、自分の勘もさえていたのかなと感じました。
山口:確かに、3コーナーからは縫うようにして追い込んできましたよね。
吉川:はい。「このコースが空くかな」と思ったところが本当に空いたり、と展開や運が良かったです。
山口:それで賞金ランキングが更にあがりましたね。
吉川:はい、良かったです。
山口:その後の地元和歌山では、100勝と地元初の完全優勝を達成されました。
吉川:はい、いろんな方に物凄くプレッシャーを掛けられました。
山口:先輩方に、ですか?
吉川:いや、一緒に決勝を走っていた藤田まりあ選手(埼玉116期)に「美穂さん、決勝で勝つと100勝なんですよね」と言われたりしました(笑)
山口:おお!(笑)
吉川:あとは和歌山の選手にも「やれんのか?」と煽られていました。緊張した中での決勝でしたが、うまいこと立ち回れて100勝と完全優勝ができて良かったです。
山口:地元の期待は、この後のガールズグランプリ出場へもかかっていると思いますが、どんな雰囲気でしょうか?
吉川:『オールガールズクラシック(GI)』を走る前から、関係者の方や選手にも「今年はグランプリ出場いけるやろ」と言われて、「まだそれは早いです、いけたらラッキーくらいに思って、そこまで期待しないでください」と返していました(苦笑)
山口:そうでしたか。取材時の賞金ランキングでは吉川選手は4位ですが、今年は3~6位がほぼ変わらない額で混戦ですよね。
吉川:差はないので、今の私の体調を考えると、競輪祭(GI)で全て決まるのが不安です。今の正直な気持ちとしては、私ももちろん優勝を狙うんですが、それ以外だとグランプリ圏内の誰かが優勝してくれ、と思ってしまいます。優勝が厳しくなってしまった場合は、少しでも上位が取れるように、賞金の積み上げができるように、くらいついていきたいです。なんとかグランプリに出られたら嬉しいです。
山口:賞金争いをしている他の選手の緊張感などは感じますか?
吉川:普通開催ではそこまでないですね。ただ私も特に意識してグランプリの話はしないようにしているので、そう感じるだけかもしれません。ただ10月、宇都宮では石井寛子選手(東京104期)が優勝したのですが、その時には石井選手に「一緒にグランプリにいこうね」と声を掛けてもらいました。
山口:ありがとうございます。では競輪祭女子王座戦(GI)について伺います。去年のトライアルレースは雰囲気はいかがでしたか?
吉川:ピリピリしている選手とそうでない選手の差がありました。でも、私はあんまりそういうピリつきを感じない鈍感な方なので、あんまり気にしないですね。
山口:自分のペースは乱されないのは良いですね。
吉川:そうですね。それは問題ないと思います。でも私がポケーとしすぎて、周りのペースを乱しているのかもしれません(笑)
山口:そうですか(笑)それは人それぞれということで(笑)小倉は7月に走っていますが、イメージはいかがでしょう?
吉川:前回に走った時はそれなりに走れました。でもそれよりも、競輪祭(GI)の時の印象が強いですね。その時は波があって良い走りはできなかったんです。今年も体調を崩してしまっての参加は憂鬱ではあります。なんとか決勝を目指していきたいです。勝ち上がりも『オールガールズクラシック(GI)』に比べたらまだゆるいので、1日1日集中して、頭を振り絞って考えてレースに臨みたいです。
山口:まずは初日ですかね。
吉川:はい、そこを集中していきたいです。
山口:前回のインタビューの時には「メンタル強化が課題」と仰っていました。今はどうでしょうか?
吉川:レースでは気持ちの弱さが出ることはまだありますね。グランプリにもし出場ができたら気持ちの強いレースをしたいな、と思っています。まずはそれをクリアしないといけませんね。
山口:去年と今年では、プレッシャーやご自身の成績、環境など変わったことはありますか?
吉川:去年も後半は「グランプリいけるぞ!」という応援とプレッシャーをいただいてのレースがあったので、そこまでは変わっていない気がします。今年はグランプリ出場が現実味を帯びてきましたが、でも、そんなに変わらないですね。
山口:そうですか(笑)
吉川:「グランプリ出場が決まったら飯おごってやるよ」くらいですね(笑)
山口:良い環境です(笑)
吉川:はい(笑)
山口:それでは、最後にオッズパーク会員の皆様へ、『競輪祭女子王座戦(GI)』への意気込みをお願いします。
吉川:体調を崩してしまい、自分でどこまでやれるのか不安はありますが、1日1日集中して1着を目指して、決勝を、そしてグランプリ出場を目指して頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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11月豊橋にて通算400勝を達成した尾崎睦選手(神奈川108期)。これまでの振り返りと今後の目標、そして直近のGI『競輪祭女子王座戦(GI)』への意気込みをお伺いしました。
山口みのり:400勝達成、おめでとうございます。
尾崎睦選手:ありがとうございます。
山口:300勝からを振り返っていかがですか?
尾崎:今年に入ってからあまり良くなく400勝は今年中に達成できるとは思わなかったので、達成できて良かったです。
山口:今年の前半は走っていない期間もありました。スタートダッシュという点で、でしょうか?
尾崎:そうですね。去年のオッズパーク杯ガールズグランプリは地元の平塚で開催だったんですが、出られなかったことで気持ちが切れてしまいました。そこから立て直すのに時間が掛かってしまいました。
山口:新たなスタートを切るきっかけはありましたか?
尾崎:これといって特にありませんでしたが、レースを重ねているうちに「このままだと良くないな」という気持ちはずっとありました。気持ちが切れたまま走っているのは、お客さんはもちろん、平塚競輪場でいつも一緒に練習している仲間や先輩たちにも失礼だ、一緒に練習をしてもらっているからには結果を残していかないといけない、という思いで、気持ちを入れなおしましたね。
山口:中継で平塚に行ったときに、選手の練習の様子を見させてもらい、本当にたくさんの選手と一緒に練習されているんだと感じました。
尾崎:はい、平塚は集まる時はたくさんの選手が一緒に練習をします。ガールズだからと言って嫌な顔せずに一緒にしてくれるので、ありがたいなと思っています。
山口:川崎が使えなかった時に、ガールズの選手も練習に来ていると伺いました。
尾崎:はい。ガールズもですし、川崎の男子選手もたくさん来ていました。皆さん、練習のためにずっと競輪場にいるんです。それが当たり前の光景でしたが、改めて「皆さんこんなに練習をするんだな」と思ったんです。
山口:尾崎選手もそこにいたのに、客観的に見えたんですね。
尾崎:自分の中で練習のサイクルができていたので、いつもその流れで練習をしていました。ただいろんな部分に視野を広げると、別々の選手が、様々な方法で強くなっている。川崎の選手であったり、他のガールズの選手の話も聞いたりしました。それで「このままだと良くないな」と思ったんです。「自分の脚力を向上させるためには、現状のまま練習をやっているのではだめだ」と、練習へ取り組む気持ちや時間の使い方に変化がありました。
山口:具体的には?
尾崎:具体的な練習方法というよりは、意識的なものが大きかったです。「みんな当然だけどたくさん練習をしているんだな」と(笑)
山口:初心にかえる、ということでしょうか(笑)
尾崎:私自身も、前はもっと練習していたのかな、と思いました。最近はどこか満足、という訳ではないですが落ち着いてしまった部分があった気がしました。
今年は2回違反訓練に行ったのですが、その時にガールズの選手たちと一緒に練習をしました。若い子たちと練習をして「みんな強い!」とびっくりしました。このままだと良くない、と。それで意識が変わったんでしょうね。
山口:今年は後半に優勝が複数回あります。その気持ちの変化が表れているんでしょうか。
尾崎:そうかもしれません。やっていることはそこまで変わっていませんが、取り組み方や意識が変わったから結果も繋がってきた気もします。
山口:GIの新設が、更に気持ちの変化があったりしましたか?
尾崎:それは特には関係ないですね。『パールカップ(GI)』を走った時はまだほわっとしていましたが、その後の『オールガールズクラシック(GI)』は出られませんでした。来年は3つのGIに出たいなと思います。
山口:『オールガールズクラシック(GI)』の選考期間に欠場期間が含まれていて、賞金上位という面では厳しかったですよね。
尾崎:2か月、あっせん停止だったのもありますが、その後にも結果が残せませんでした。もう少し優勝ができていれば出場できていたと思うので、勝てなかったのが良くなかったです。
山口:次の『競輪祭女子王座戦(GI)』へ向かうお気持ちはいかがですか?
尾崎:GIになったことで、モチベーションも上がります。今、平塚にはアマチュアのガールズがいるんですが、その子もGIレースは見ると思うので、私がそこで結果を出すことで彼女自身が「私も大きい舞台で戦いたい」と思ってくれると良いなと。それで頑張らないとなと思います。
山口:小倉は7月に走っていますが、イメージはいかがでしょう?
尾崎:走りやすいですが、それはみんなが思うのかなと。風もないですしね。
山口:去年はグランプリトライアルレースで2つ、ガールズグランプリへの切符がありました。今年はGIになりグランプリ出場権は1人です。その変化はどう感じますか?
尾崎:わかりやすくて良いと思います。去年までの2枠というのはもちろんチャンスは広がりますが、「今まで1年間賞金争いをしていた選手たちを、賞金ランキング下位の選手が優勝したら一発逆転でグランプリ出場が2人もいる」というのはどうなんだろう、と疑問に思っていた部分も正直に言えばありました。だからGIになって良かったのかなと思います。
山口:GIは予選、準決勝、決勝と勝ち上がりになりますね。それについてはいかがですか?
尾崎:ガールズケイリンではなかなか勝ち上がりのレースは少ないですが、さっきも言いましたがこれもわかりやすくて良いと思います。しっかり初日から気持ちを入れて走りたいと思います。
山口:レース内容の点をお伺いします。戦法や気持ちの面で、近況の変化はありますか?
尾崎:レベルがとても上がって、みんな脚力もありスピードもあります。自力でレースを勝つというのが難しくなってきました。だから、位置取りを含めてシビアに、クレバーに走らなければいけないレースもあると感じています。何でもできる選手になろうと思いますね。
山口:近況は狭いコースから捲りに行くこともありましたね。
尾崎:無理に位置を取りに行くことはしないですが、自分の位置はちゃんと主張しないといけないと思っています。もちろんルールの範囲内ですが、踏み負けないようにしたいです。
山口:何でもできる、というのは先行も含めてですか?
尾崎:はい。先行をできる選手というのが一番脅威だと思うので、「先行を含めて何でもできる選手」というのが理想です。
山口:8月には京王閣の4日制のレースで優勝がありました。普段より1日長い開催で結果を出したというのはいかがでしたか?
尾崎:4日間の内容が良かったのかなと思います。1着は決勝だけでしたが、予選から組み立てを考えて、決勝を勝ち切ることができたのは収穫がありました。何度か4日制を走って慣れてきた部分もありますが、過ごし方なども男子選手のアドバイスもあり、それを生かせたと思います。でも疲れましたね。
山口:トータルでの組み立て、というのは大事なんですね。
尾崎:そうですね。3日制の普通の開催でも一緒ですが、予選などの勝ち上がりの走り方は大切です。予選を見て、対戦相手もレースを組み立ててくると思うので、それは意識をして走れました。
山口:今後のビッグレースにも繋がりますかね。
尾崎:そうだと良いです。ビッグレースはみんな強いので、そうそう自分の思うようなレースをさせてもらえません。でもちゃんと準備をしてやりたいこと、勝ちに向かう組み立てを悔いなくできたら良いなと思います。
山口:今後の課題はどんなことでしょうか?
尾崎:1着を取る回数が少ない時期があったり、ばらつきがあるので、1着を安定して取れるようにしたいです。あとはしっかりGIに出場して確定版にのる、決勝に進出して優勝争いができるように、まで持っていけたら良いなと思います。
山口:今年はビッグレースを外で見る時期がありましたが、どう感じましたか?
尾崎:松戸の『オールガールズクラシック(GI)』は、ガールズだけでGI開催ができたのは凄いと思いました。「ガールズケイリンが凄くなっているんだな」と客観的に見ていましたね。それは1期生の人たちから、作ってきたものが形になってきて、男子と同じGI、競輪に近づいていけている。ガールズケイリンって良い競技だなと思いました。
山口:その中には、他競技で活躍した尾崎選手のような選手が第2の競技人生としてガールズケイリンで活躍しているのは大きいと思います。
尾崎:そうですね。他の競技からもガールズケイリンには入ってきやすいと思うので、私は本当にガールズケイリンと良い出会いができたなと思います。
山口:これからも活躍を期待しています。
尾崎:ありがとうございます。
山口:『競輪祭女子王座戦(GI)』も近づいています。これからの過ごし方は?
尾崎:もうすぐですから、今からじたばたしてもだめですからね。ゆっくりケアをしていきたいです。
山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へ、GIへの意気込みをお願いします。
尾崎:GI......一生懸命頑張ります、しか言えないですね。
山口:では応援してくださる皆様へ、ではいかがでしょう?
尾崎:そうですね。では、この前400勝を達成した時に、私が嬉しそうにしていたんですが、記者の方に「競輪は500勝が節目ですよ」と言われたんです。「そうなんだ!」と思ったので、この後は500勝をできるように頑張らないとなと思ったんです。なのでそれを目指して頑張ります。応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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10月2日~4日に松戸競輪場で行われた『第1回オールガールズクラシック(GI)』。2つ目のGIとして、今回はナショナルチームの3人も参戦となりました。賞金ランキングではオッズパーク杯ガールズグランプリの出場は難しい中、佐藤水菜選手(神奈川114期)は見事完全優勝を飾り、その切符を手にしました。今回はレースの振り返りから、今後のナショナルチームのこと、年末へ向けてのお話を伺いました。
山口みのり:オールガールズクラシック(GI)、優勝おめでとうございました。
佐藤水菜選手:ありがとうございました。
山口:ガールズグランプリへの切符は意識していましたか?
佐藤:特別意識していた訳ではなかったです。ガールズケイリンの前走が西武園でのガールズドリームレースなんですが、その時は自分の力を出し切れずに終わってしまいました。松戸ではとにかく力を出し切って走りたい、その後で結果がついてきたら良いなという思いでした。
山口:内側で仕掛けられないのはやめよう、と意識していたんですね。
佐藤:はい。一瞬でも良いから風を切ってレースをしたいと思っていました。
山口:ナショナルチームの3人はオールガールズクラシック(GI)の選考順位が低く予選からのスタート、しかも初日は7番車でした。それはいかがでしたか?
佐藤:そうだったんですね。外枠だとは思っていたけどそれは知らなかったです。でも自転車競技ではくじ引きで内外が決まるので、特に車番はどうとかは気にしていないです。
山口:アジア大会から帰国後、翌日が前検日でした。体力的にもきつかったのでは?
佐藤:レースに対してしんどいなという気持ちはいつもあります。でもアジア大会の気持ちでそのまま入れたので、「前検日入れてあと4日、頑張ろう」と自分に言い聞かせていました(笑)
山口:そうでしたか(笑)
佐藤:はい。でもアジア大会までに練習は充分できていたので、レースは大丈夫だろうと思っていました。ただアジア大会も期間が1週間ほどあり、疲れはあったので「早く休みになれば良いな」と毎日頑張っていました。
山口:坂本勉さんが「国際大会は1日に複数回レースをする。ガールズケイリンは1日1走だからむしろ脚は休まる」と仰っていたのですが、その感覚はありますか?
佐藤:休まるというよりも、レースでの強度が足りないので最終日には脚力が落ちてないか心配になります。
山口:え?そんなに違うんですね。
佐藤:はい。だからこそ前検日に「体がきつい、練習をしすぎたかな」という感覚くらいで調子がキープできるような気がします。
山口:凄いですね。ではレースを初日から振り返っていきます。初日は長い距離を踏むレースでした。
佐藤:初手で後方になったので、上がっていった時に鈴木奈央選手(静岡110期)の前に入れました。私を入れてくださった形ですね。だからという訳ではないですが、「私を前に入れて良かった。メリットがある」と、鈴木選手にも周りの選手にも思われる走りをしなければ、と思いました。だから長い距離を踏もうと。最終的に後ろが野口諭実可選手(大分102期)と鈴木美教選手(静岡112期)が取り合う形で、鈴木奈央選手の前ではなくなってしまったんですが、それは見えていなくて「長い距離になってしまってもどこからでもいこう」と思ってゴールまで一生懸命に走りました。
山口:準決勝も激戦で、奥井迪選手(東京106期)の先行、日野未来選手(奈良114期)の捲りの上を捲ったレースでした。
佐藤:そうでした。まず気になっていたのは、外で並走していた吉村早耶香選手(静岡112期)でした。自分の仕掛けるタイミングがずれてしまうのが嫌だったので、本来は外の並走の選手に対しては前を追走してそのまま内側から行くのが正解ですが、私は吉村選手の外から仕掛けました。それは自分のタイミングがずれないようにです。4コーナーくらいから仕掛け、最終BSでは先頭に出られれば良いなと思っていました。
山口:日野選手の動きよりも吉村選手だったんですね。
佐藤:まず吉村選手でした。その次に一車前にいた柳原真緒選手(福井114期)、その次に日野選手と、私は目の前の選手を次々と見ていく感じですね。だから一人目の吉村選手を越えた時に「よし!」となりました。
山口:そうなんですね!
佐藤:はい。それで自分の安全に走れるコースを確保できていたし、スピードも落とさずにいられる状態を作れたので、レースとしては良い展開を作れたと思います。
山口:見ていた私は「佐藤選手は、厳しい展開かな」と思いましたが、良い展開だったんですか。
佐藤:はい、問題なかったです。焦って内側へいって自分のペースで走れない方が良くない、落ち着いて自分のペースで走れたら大丈夫だと思っていました。
山口:33バンクの松戸であの大外の捲りはなかなか行けないと選手に聞きますが、250バンクを普段走っているから問題ないんでしょうか。
佐藤:それはあると思います。あと、直前のアジア大会で走った中国のバンクが、大会のために作られた新しいバンクでとても癖があったんです。カント(傾斜)が不思議な感じと言ったらいいんでしょうか。そこで結果を出せた、走りきれたからこそ松戸は自信を持って走れていました。
山口:決勝も先に前にいた児玉碧衣選手(福岡108期)が動いた時についていきませんでした。今のお話に通じますか?
佐藤:そうですね。児玉選手についていって他の選手と絡んでしまうリスクよりも、レースが一旦動いた後に「次は自分の仕掛ける番だな」とレースを作り直す方が良いと思いました。ドリームレースでの内につまってしまったレースや、直近の世界選手権で自分のタイミングではない時に焦って仕掛けて、悪い結果になったことも頭にあったので、余計に「自分のレースをしたい」と思っていたんでしょうね。
山口:なるほど。では再度決勝を振り返ると、かなり強い雨が降っていましたが気になりましたか?
佐藤:豊岡英子選手(大阪114期)にいただいた撥水スプレーをサングラスにしていたお陰でレースもしっかり見えていました。雨なので後ろからレースをしたいなと思っていました。
山口:どんな理由があるんですか?
佐藤:雨の跳ね上がりを避けるのに好きに走りたかったし、私は雨の方がスピードが出ると思っているので後方でも問題ないという判断です。
山口:雨の方がスピードが出る?
佐藤:滑っている感覚なので、私はそう感じるだけです(笑)だから先行でも捲りでも展開は何でも良いかなと思っていました。
山口:落ち着いていたんですね。その他のポイントはどこだったと思いますか?
佐藤:児玉選手が仕掛けた時に、太田りゆ選手(埼玉112期)が追わず、後ろにいる私を見ていたんです。ということは太田選手は私を警戒している。「私を中心にレースを考えているなら、仕掛けるのは今ではなく遅らせよう」と決めました。準決勝の時と同様に目の前の選手を注目していたので太田選手の動きだけを見て、太田選手の捲りが久米詩選手(静岡116期)とスピードが合っていたので、その上をいきました。
山口:行こうと思ったタイミングはいかがでした?
佐藤:前の選手が止まったなと感じたタイミングで、今度は自分が仕掛けないといけない、と切り替えられました。仕掛ける準備はできていました。
競技からガールズケイリンに戻ってくると、ギアなど自転車も違いスピード感も全く違うため、自分の認識の差が生まれます。だから仕掛けるタイミングは自分の体の感覚を信じるしかないですが、それは余裕がありました。
山口:見事3連勝の完全優勝です。優勝後の同期での集合写真は良い写真でしたね。
佐藤:今まで同期が一緒と言っても柳原選手だけだったり、あんなにたくさんはいなかったのですごく嬉しかったです。
山口:次のGIは『競輪祭女子王座戦(GI)』ですが、そちらへの意気込みはいかがですか?
佐藤:GIの前11月16日~18日に伊豆で国際大会の『ジャパントラックカップ』があり、それが過酷なんです。1年で一番嫌なレースかもしれません(笑)ハードな日程で、去年は4日間だったんですが、今年は3日間と短縮されました。そこでのレース内容が不安なんですよ・・・。しっかりと出し切って、20日前検日だから19日はしっかり休んで競輪祭(GI)に向けての気持ちを作って臨みたいです。
山口:ハードですね。
佐藤:それよりも疲れなどの後遺症が心配です。ただ連戦をしても、ジャパントラックカップで良いレースが見せられたら、競輪祭(GI)への自信に繋がります。今はGIに向けてフレームを、競技のものからガールズケイリンのものに戻して練習をしているので、その部分は不安は除かれますね。
山口:オールガールズクラシックの後のインタビューで「ガールズグランプリの権利を獲得したので、次のGIはいろんなことを試したい」と仰っていました。言える範囲で良いのですが、どんなことを試したいですか?
佐藤:勝ちにこだわり過ぎずに、自分の限界を試してみたいんです。先行でも追い込みでも何でも。スタートだけは頑張って取りに行かないですが、それ以外は何でもしたいですね。
山口:ドームというのは佐藤選手にとっては有利ですか?
佐藤:はい。有利だと思うし、自分の真の力が発揮できる場所だからこそ挑戦したいなと思います。
山口:チャンスを見つけて、限界を超える走りですね。
佐藤:いいえ。チャンスを見つけるのではなく、3日間全開でいきます!
山口:おお!
佐藤:松戸もそんな感じで走っていたんです。後でコーチから注意されました。次もコーチを説得していきます。
山口:疲労の蓄積はありますもんね。
佐藤:はい、競技では1日何本も走ります。だからレースの途中でも自分が勝利を確信したら、体力温存のため力を抜くんです。松戸では、もちろん1着になるために走っていますが、勝利を確信したら余力を残すための走りになってしまったので、次の小倉は最後の最後まで踏み切るレースをしてみたいんです。
山口:見る方は楽しみです!
佐藤:でも他の選手もいるので、先行になるかもしれないし、3日間追い込みのゴール前勝負になるかもしれません。それはわかりませんが、どっちにしても限界に挑戦する走りをしたいです。
山口:今年はGIが3つ新設されました。優勝したらガールズグランプリの権利を獲得と、ナショナルチームの3選手にとってはチャンスが広がったと感じましたか?
佐藤:去年までは競輪祭の2枠が唯一優勝したらグランプリというレースで、特に去年はナショナルチームの3人が同じ組でした。だから3人のうち1人しかグランプリにいけない。葛藤も多くありました。今年はGIが3つ。だから「それぞれ3人が優勝を目指せるね」と言っていたんです。6月パールカップは国際大会があり出られませんでしたが、松戸は私が優勝でき、次の競輪祭(GI)は他の2人も優勝をできればグランプリに出場できるチャンスがある。2人は優勝を取りに来るし、私もドキドキします。でもGIの新設はナショナルメンバーにとってはすごく良いし、ポジティブな気持ちでレースに向かえます。
山口:GIの連覇という意気込みはいかがですか?
佐藤:それよりも、力を出したいという方が大きいです。賞金争いで下位の選手が優勝できるチャンスがあるというのは、面白いと思うんです。下剋上というか一発逆転できる。参加選手全員にチャンスがある。トライアルレースで結果を出した選手が出られるガールズケイリンコレクションも良いと思うんです。私が初めてビッグレースに出場するチャンスをもらったのもトライアルレースで決めたコレクションでした。だから同じシステムは好きだし、走っていてもワクワクします。
山口:ガールズグランプリに走ったことがない選手にとっては大きなチャンスですもんね。
佐藤:はい、グランプリという舞台を初めて走る選手との対戦は楽しみです。
山口:ガールズグランプリの出場選手が変わるというのは、翌年のガールズケイリン全体も大きく変わって面白そうです。
佐藤:お客さんもその方が面白いと感じてくれると思います。プラスの気持ちしかないですね。これは、もしかしたら選手よりもお客さん目線に近いかもしれませんね。
山口:聞いているとその部分は大きそうです。
佐藤:自分のことよりもファンの人の目線で見ると、競輪祭(GI)は「グランプリの権利を持ってる佐藤水菜より、権利を持ってない他の選手の優勝を見たい」と思う方もたくさんいるはず。私もお客さんの立場ならそう思います。だからこそ、競輪祭(GI)は勝ちたい気持ちもあるけど、限界を試せる良いチャンスです。どちらの気持ちでも楽しみです。
山口:ガールズグランプリへ向けてはいかがでしょうか?
佐藤:去年に比べて練習はしっかりできるスケジュールになると思います。レースについては問題ないと思うんですが、前夜祭が得意じゃないので、それが心配です。
山口:そうなんですか。
佐藤:人と関わるのが得意ではなくて(笑)ヘアメイクさんとかホテルの方とか、普段関わらない方もたくさんいるのが苦手なんです。毎年欠場したいとお願いしているくらい(笑)
山口:ファンの方は見たいですよ。
佐藤:いや、私以外の6人でお願いしたいです(笑)グランプリに出たい気持ちのが大きいけど、もし出たくない理由があるとすれば前夜祭です(苦笑)
山口:そんなに(笑)立川は佐藤選手が初めて走ったガールズグランプリですね。
佐藤:覚えてます。怪我をして走ったグランプリだったんですよね。ただ立川にはあんまり悪いイメージはないです。
山口:では良いイメージで年末も走れそうですね。現状のナショナルチームの練習内容はどのような感じなんですか?
佐藤:ウェイト、街道、バンク練習と、日曜以外は午前と午後で内容が違うなど、まんべんなくやっています。1週間前にメニューが配られるので、それにそって短距離チームみんなで練習をします。
山口:以前は「スケジュールがきっちり決まっている方が楽で良い」と仰っていましたが、それは変わりませんか?
佐藤:はい、信頼してやってきて強くなった自分がいるので、安心感があります。スケジュールが決まっているということは生活リズムが整いやすい。迷わなくて良いです。目標に向かって信頼してやれば大丈夫という確証があるから続けられます。
山口:目標というのは具体的には?
佐藤:競技で結果を出すことです。今ならジャパントラックカップで結果を出すこと。次のシーズンが年明けに始まる時も良い感じでスタートしたいです。
山口:オリンピックが決まるのはどれくらいなんですか?
佐藤:来年の6月頃ですね。
山口:そんなに直前なんですね。
佐藤:まだまだ勝負が続きます。まずは国際大会でポイントを獲得し、出場権を取れたら次は国内の選抜です。
山口:ありがとうございます。ナショナルチームのお話もたくさん聞かせてもらいました。
それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
佐藤:たくさんの応援、いつもありがとうございます。『競輪祭女子王座戦(GI)』も第1回ですし、そこで優勝をできるように力を出し切ります。またガールズグランプリへ向けては、競輪祭(GI)を優勝できたら良い弾みになると思うので、それができるように頑張ります。引き続き応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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