
今回は九州地区の先行レーサーとしてデビューから5年半、S級1班に昇格して丸三年を経て飛躍をつづける伊藤颯馬選手(沖縄・115期)に今年の展望などをうかがいました。
― 昨年の最終戦だった寺内大吉杯(静岡FI)での優勝に続き、年始めの高知FIと全日本選抜(豊橋)の直前も松山FIで優勝されました。
伊藤:ありがとうございます!年末年始は流れも向いたのだと思います。
― 今年初戦の高知戦は完全優勝。捲りの決まりにくいバンクで3連発でした。
伊藤:ええ。ただ実のところ内容や脚はまだイマイチな部分があるんです。松山も調子は絶対に優勝できない程度だったんです。これから寒い時期が終われば良くなっていくんじゃないかと。
― さて昨年は全てのビッグレースを走りました。名だたるトップレーサーに力勝負を挑みましたね。あらためて振り返っていかがでしたか。
伊藤:色々経験できて楽しかったです。ウイナーズカップの決勝を走ったのはその中でも大きかったです。
これからも全部かは分かりませんがビッグに出走して出来ればいい結果を残したい、そのために頑張りたいと思えた一年でした。
― ウイナーズカップの優出は沖縄出身の選手として初の快挙として話題になりました。さらなる飛躍が注目される今年の目標や課題は?
伊藤:一番の課題は"落車しないこと"です。調子が上がってきたときの落車は上向いた流れにブレーキを掛けますからね。
怪我をせず走って状態を維持していければ、たとえラッキーでも特別の決勝を走るチャンスがやってくるんじゃないかと思います。
― 伊藤選手といえば九州地区の中でもデビュー当初から仕掛けの早さが挙げられます。
伊藤:前で走るからには、ですね。あと仲良くしてもらっている皆さんのために頑張ろうって思うことはあります。
といってもラインに恩を着せるようなつもりはないですけど(笑)
― ダッシュを活かして先手を取るいわば急先鋒として走る強い意識はどのように維持してきましたか?
伊藤:負けても悩みすぎないことです。レースに内容があればきっと収穫があるし、続けてればいつか結果につながってくれれば。
行こうと思ったところで動いていればポジティブで居続けるとやってきました。
― 自力だけでなく捌きも強烈です。横の動きは練習で身につけたのですか?
伊藤:いやぁ、レース本番での引けないってなった気持ちだと思います。練習だと怖くて出来なかったです。
― それは意外でした!
伊藤:最近はようやく練習でもやれるくらいに慣れてきましたけど元々は競ったり、目の前で競られてもメチャ嫌だったんです。
それでもなんとなくレースでタイミングが合ったときに競ったら出来ただけでキッカケはたまたまなんです。
― 引くに引けずの状態を横の動きで切り抜けたのを見た師匠や練習仲間の皆さんの反応はどうでしたか。
伊藤:そのときは「やるじゃん、強いじゃん!」って言ってもらえましたけど戦法の幅を広げようと意識せずにまず脚をつけることに一生懸命でした。
― デビューから5年半、S級1班に昇班して丸三年で印象に残ったレースは?
伊藤:振り返って思い出すのは落車したレースばかりです。まだまだ胸を張れる結果を出したわけではないですから。
― GIIIの優勝は意識していますか。
伊藤:したいですけれど皆さん強くてなかなか厳しいのが現状。先行しても番手に差されるし、捲られている間は難しいです。
― 更なる飛躍をめざすために伊藤選手が必要と感じていることは?
伊藤:ゴール前の伸び脚が足りないのを感じています。中途半端なところで動く癖があるんです。サッサと仕掛けるなら仕掛けるで構えるなら構える。捲り追込みをする勇気とそれでも結果につなげる脚力をつけたいです。
― "たとえ立ち遅れても必ず動く"のは一般的に自力選手へのプラス評価ですが、それだけではダメだと?
伊藤:いつもベストなタイミングで仕掛けられたらいいんですが、展開上ここは捲り追込みだぞ!って場面でも焦って早めに踏み出してしまう。
これでは却って中途半端なレースになってしまう。だったらいっそ溜めて溜めて遅めに捲る。それが出来る勇気があればいいんですけど。
― これもひとつの戦法の幅ですね。
伊藤:ええ。今でもときどき突っ張ったり後ろから抑えたりと色々やっていますが競走スタイルが固定されると前受けが多くなり苦戦しがち。なので後ろになってしまってもチャンスを作れる強さもほしいです。
― 現在はどのような練習環境ですか?
伊藤:沖縄は環境は良いのですがいっしょに練習をする人数がどうしても少なくなるので熊本に行ったり、久留米へ行ったりと色々な所で練習しています。
最近だと...東矢圭吾や後藤大輝、冬季移動で来ていた小笠原光さんと4人で練習しました。
― 若手同士のつながりが九州勢をいっそう盛り上げますね。
伊藤:九州のひとりとして「戦えている」から「対抗する」ところまでいけば素晴らしいです。
― セッティングや自転車全般の情報交換なども?
伊藤:どちらかと言うと練習のメニューを話し合って決めて取り組んでお互いを刺激しあう感じですね。僕自身はバンク練習をしたいなと考えていて出稽古してます。
それでも冬場はなかなか思うほどに追い込めてないです。暖かい時期に比べると練習不足になりがちなんです。
― 今日は2月19日で全日本選抜競輪は目の前、ということで本格的に格上との対戦が始まる現在の心境は?
伊藤:自分はまだまだ縦では勝てないし横でも技術でも及ばないし中途半端なりにせっせと頑張るしかない。実際のところは流れ一本ですよ。
落車をしないようにで厄払いにもいってますし運気はいいと思うので少しでも優勝に近づけたらいいですけど。
― ちなみに初詣はどちらへ?沖縄では首里城も有数のパワースポットですよね。
伊藤:熊本と沖縄でもお詣りしました。今年の初詣は熊本駅から近い北岡神社でした。首里城は去年初めて行きました。
実力じゃまだ勝てないんで神様とラインを組んで頑張ります!
― 練習の後や合間の時間の過ごし方は?
伊藤:マッサージに行ったりするときもありますし、お酒を飲んだり、趣味の時間に使ったり。レースの結果を良くても悪くても考えすぎないように心がけています。
今までは無意識にがむしゃらにやってきたと自分でも思いますけどこれからは何事にも意識して取り組んでいきます。
― トップレーサーの皆さんにお話をうかがうと"意識する"というワードが出てきます。
伊藤:戦えてるって状態から上位の皆さんに少しでも近づけたらいいですね。
― では最後にオッズパーク読者の皆様、全国の伊藤颯馬ファンへメッセージをお願いします!
伊藤:いつも応援ありがとうございます。今年は落車なく怪我なくを第一に。
練習に打ち込んでレースは自分らしく気負わずに頑張ります!今後とも応援をよろしくお願いします。
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
九州地区の競輪場でレース実況を中心に活動中。
出身地は大阪。1976年生まれ。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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