
・去年はGIでの活躍もありましたけど、振り返っていかがですか?
GIも含めてそこまで自信があったわけじゃなかったので、自分でもここまでできるんだっていう驚きがありましたね。自分の練習環境が整ってきて、すごく恵まれているのもあって自信がついて来ていて、もうちょっと頑張っていけばなんとか上を目指していけるんじゃないかっていう気持ちはあったんです。それがうまく結果に繋がって、6月のGIパールカップの結果だったので嬉しかったですね。4月のGIオールガールズクラシックは自分では良いと思って臨んだんですけど、体調的にもピークに持っていけなかったりとか、やってることが噛み合ってなかったんです。パールカップはそれまでにすごく練習したり、しっかり臨めてああいうふうに結果が出たので、噛み合えば結果も残していけるんだなっていう感じがありました。
・GIパールカップでは3日間Bを取る競争でしたが、走ってみてどう感じましたか?
GIでBを取る競争をして勝ち上がりたいっていう気持ちがあったので、3日間ともしっかりBを取って決勝に乗れたことはすごく自信になって良かったんですけど、やっぱりあそこまで行ったら勝ちたかったっていうのも正直な気持ちです。でもやっぱり勝てないっていうのは自分に何か足りないところがあるからこその結果なので、そこはやっぱり受け止めて向き合わなきゃいかなきゃいけないなとは思いました。
でも終わってみて、すごく悔しいって思えたんです。今までだったら多分2着ならやった方だなって感じだったと思うんですけど、2着で満足してなかったので自分の中でもびっくりというか、そういう舞台で悔しいって思えたことは収穫でした。
・今年のGIはどう戦っていきますか?
やっぱり自分の中ではBを取る競争でGIを獲りたいっていう気持ちはあるので、そこはブレずに、それでどうやったら勝てるのかってところを考えたいです。ガールズ競輪のレベルも上がってきて、正直なところ本当に自分のその走りで勝てるかって言われたら、去年はあまり自信が持てなかったんです。GIで勝つとかグランプリに出るっていうことも、自分の中でまだ実力が足りないんじゃないかっていうか思ってしまってたところがあって、、でも自分がそう思ってしまったら、もう絶対にそこは目指せないし叶わないと思いましたね。本気でGIを獲るとかグランプリに出るのを目指せてなかったのは気持ちが1番大きいと思います。自分で限界を作っていたし、まだ自分の実力ではちょっと足りないなっていうのを思ってしまってたなと。
たとえ力の差はあったとしても、獲りに行く自信持つことは絶対に大事だと思うので、去年を振り返ると戦う前からそういうところで負けてしまっていたのはあったと思います。そういう気持ちで臨んでしまうのは、応援してもらっている人や一緒に練習してもらってる人もそうだし、ファンの人に対してもすごく失礼だと思うので、自分自身が気持ちの面で本気でそこに向かっていかないといけないですし、今年は本気でGIを獲る、グランプリに出るってところを目指していきたいって気持ちがあります。
・GIの雰囲気に飲まれてしまうこともありますか?
そうですね、やっぱり自信がないといつも行けるところでも行けないことはあります。気持ちと体が噛み合ってないと自分のレースすらさせてもらえないし、今は脚力の面でも気持ちの面でもレベルがすごく上がっているので、自分自身がもっと気持ちも脚力も上げていかないと飲まれてしまうな、と去年1年間でGIを走って感じました。
・ガールズ競輪でGIが新設されて賞金ではなくグランプリに出られる枠ができたことはどう感じましたか?
本当にガールズにとっては大きい出来事だったと思います。今まではグランプリって賞金の積み重ねだったので、走って稼ぐ部分はあったと思います。ただGIにちゃんとピークを持って行って、実力のある人が勝ち上がってタイトルを獲るっていうのはすごく大変なことなので、それだけの価値があることです。
GI前に他のレースがあったり、レース間隔によって準備は変わってくるんですけど、それでも上手く対応して仕上げていかなきゃいけない難しさはありますけどね。
グランプリの出場権を獲れるっていうのはすごく大きなことだし、逆により実力の世界になってくるんですけど、それは本当に選手としては良いことだなとは思いました。
・現在賞金ランキング3位ですが、ご自身ではどう感じていますか?
まだ今年が始まったばっかりなので、全然これからです。でも去年の前半は半年ぐらい優勝できなかったので、そういう意味ではしっかり優勝できているのは大きいと思います。3日間の開催だと予選2日間で出し切ってしまって、決勝でなかなか上手くいかなかったりもあるので、、
決勝までに余力を残す、と言うと少し違うかもしれないですけど、自分のやりたいレースと、1番大事な最終日の決勝に向けて予選をどうやって走るかというのは考えています。前は力を出し切って踏み切っても決勝で自分がやりたい走りをできていたんですけど、年齢を重ねて疲労が溜まりやすくて取れづらくもなっているから、予選の2日間を乗り方も含めてどう走るかを考えながら走ってますね。うまく踏み回すというか乗り方も含めて、力で走るというより効率良く走ることも考えながら臨んでいます。
GIだと初日から効率良くなんて考えてる余裕はないので、いかに開催に入る前に疲れがなく良い状態で入るかが大事だとは思うんですけど、普段の開催はやっぱり予選の2日間を走る時も、決勝に向けてのコンディションの調整は意識しています。
・ドームはあまり好きではないと聞きました。強風などの重いコンディションが得意なイメージもありますが、いかがですか?
立川のバンクが改修してから前よりは軽くなったんですけど、前は立川は結構重くて練習でも風が強かったんです。なので他の人より風をそこまで嫌だと思う感覚がないと思いますし、それは強みかなとは思います。逆に風が強い方が自分の良さを発揮できるって気持ちを持てるのは良いですね。でも前はすごい練習量をやっていたので、そういう部分では休息を取り入れるようになったので風とか悪条件の時の強さは年々少しずつ弱くなってきたとは感じています。
・競輪はオフがないですが、練習のモチベーションはどうコントロールしていますか?
私は結構淡々としてるんですよね。毎日そんなに起伏がなくてやることをやるって感じで、練習に対して「うわーやだなぁ」とか思うことがあんまりないんです。だから毎日やることをしっかりやるっていうか。コツコツやるのが日常って感じです。逆に気持ちが上がるってこともあんまりないですけど、やっぱりまだまだ自力でやりたい気持ちがあるので、そのために何が必要かっていうのを考えて日々淡々とやってます。だから練習が嫌だっていうのはないですね!
ただ去年はちょっとやりすぎちゃって、それこそ4月のオールガールズクラシックはオーバーワークでちょっと失敗しちゃったと思います。そこで気付いて、自分自身の中でもちゃんと自分の体の声を聞いて疲れたら休むようにはしてます。
前は絶対にこれをやるって決めたらやらなきゃという気になっていたんですけど、去年ぐらいからは割り切って、疲れたら無理してやらないようにしています。それがうまくできるようになってから、ちょっとずつ成績も安定してきたし結果的には良い方向に向いた感じですね。楽しんでやっていて自分の年齢でもまだまだやれるって思えてるし、自分の可能性を楽しめていると思います。
・オフの時はどんなことをされてるんですか?
疲れた時は家でゆっくりしたり、体がそこまで疲れてない時は甥っ子が都内に住んでいるので遊びに行きます。子供が好きなので一緒に遊ぶのが1番のリラックスですし、すごく可愛くて元気をもらえる存在です。
・もともと教員もされていましたもんね。教員から競輪選手になられて当時はご両親が反対されていたってことでしたが、今はいかがですか?
今はもう本当に一番応援してくれています。優勝したら喜んでくれるし、すごくありがたいですよね。家族みんなが応援してくれてるのは、自分の中でもすごく心強いです。
・若手の選手もどんどん出てきていますが、同じレースになった時の戦い方はどのように考えていますか?
前は絶対に先行というのを自分の中で譲れない部分があったんですけど、今は先行というよりBを取る競争を意識しています。もちろんそれが先行であることがベストなんですけど、それが捲りでも今はレースの状況次第で使い分けられるようにとは思っていますね。その気持ちはちょっと前とはまた違うというか、自力にはこだわりたいんですけど何が何でも先行ってわけではなくなってきています。
・今年の目標はありますか?
今年はグランプリに出るのが目標です。
・去年のグランプリはご覧になっていかがでしたか?
私の中ではやっぱり坂口楓華選手(愛知112期)の走りがすごく印象的でした。絶対的な佐藤水菜選手(神奈川114期)に対してあれだけ良いスピードで1周カマして駆けて、もちろんタイミングとかもあったと思うんですけど、簡単には捲れなかったですし、、あれはすごい強い走りだったなってインパクトがありましたし、自分もこういう走りをしたいなって気持ちにさせてもらいました。
・佐藤選手が圧倒的に人気を集めていた中で、坂口選手の先行していく勇気がすごかったですよね。特にグランプリのような一発勝負の大きな舞台では体が動かなかったっていうのも聞きますが、奥井選手はそのような場面で強い選手を相手に先行する時の心境はどのような感じですか?
私の場合はそういう大きな舞台でも、自分のレースをしたいっていうのがデビューしてからずっとありますね。レースで魅せたいって気持ちが強いです。
先行はもちろん勇気もいるし、後ろがみんな強いから1周駆けたら自分が勝つチャンスは減るかもしれないって思うんですけど、それでもやっぱりそのレーススタイルで勝ちたいって想いでずっとやってきています。
グランプリで言えば2016年は風がすごい強かったんです。(風速4.0m)自分は先行で勝つって決めてるけど、でもこの条件の中で先行したら絶対勝てないなっていう葛藤が自分の中であって、初めてレース前に吐きそうなほど緊張?というか、、(笑)
でもやっぱりそれぐらい先行するっていう気持ちは持っていました。
だからこそ去年のグランプリの坂口さんからは、すごく伝わるものがあるなと思いました。私もそういう走りをしたいし、やっぱり坂口さんの走りに勇気をもらったというか、うわって熱い気持ちになりました。人を熱くというか心を動かす走りがしたいと思ってるので、グランプリに出るのも自分のスタイルを一年間貫いて、その先にグランプリっていうのが理想ですね。
・2016年のグランプリは惜しかったですよね。翌年の2017年のグランプリも先行して石井寛子選手(東京104期)とタイヤ差での2着と、かなり惜しかったですね。
そうですね。やっぱりその勝ちきれないっていうのは、どこか自分の気持ちの弱さがあるんだと思います。自信っていうか、やっぱり勝てる力があるっていうことをまずは自分が信じないと絶対勝てないなって思いましたね。ファンの人はそう思ってくれてるのに、一番大事な自分がそう思えてないのが自分の弱さだなって思いました。今のレベルで自信を持つってすごく難しいことなんですけど、自信を持つだけのことをしっかりやっていきたいです。
・現在598勝で600勝もまもなくですが、心境はいかがでしょうか?
節目自体はもうあまり意識はしないんですけど、100勝を振り返って怪我や大きな故障もなく走れたことや、この100勝の中で良い時も悪い時もずっと応援してくれてるファンの方がいることに感謝するっていう感じですね。周りの人達に支えられて、節目節目を積み重ねて来られているので。
500勝の時はわざわざ遠くからファンの方が前橋まで見に来てくれてて、絶対今日決めなきゃってその時は意識しました。わざわざ来てくれてる!みたいな(笑)
その時は2着で申し訳ないなって思いましたけど、そうやってわざわざ来ていただけるファンの方がいるっていうのはありがたいですね。ファンの方が自分の応援の輪を広めてくれて、色んなところで声援を送ってもらえるようになって、すごくありがたいです。
本当に1番の力になっているので、そういうことに感謝をするのが節目なのかなと思います。
・今年1年はどう戦っていきますか?
グランプリっていう目標に向けて、一戦一戦で自分のスタイルを貫いて、結果的にその目標に辿り着きたいと思っています。
本当に自分の力だけでは成し遂げられないと思うので、ファンの皆さんも1年間一緒に走ってもらえたら嬉しいなと思います。
・今年のグランプリに出場した場合は、レーススタイルにこだわりはありますか?
そこはやっぱり力勝負というか、、去年の坂口さんみたいなすごい熱い走りとか。男子だと去年のグランプリの脇本さんも(脇本雄太選手 福井94期)
本当に抜群のタイミングでああやってしっかり仕掛けてて、やっぱりすごいなって思いました。私も見てる人に感動を与える走りがしたいです。
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※インタビュー / 太田理恵
東京大学 大学院卒、GIでは自力選手のタイムを計測。 モデル出身で、現在は競輪MCや毎月のコラム執筆を中心に活動する。 ミス・ワールド日本大会2014,2015,2020特別賞受賞。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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