競輪界を代表する男子選手、ガールズケイリン選手にインタビューを実施します。他では聞けない素顔や本音、競輪にまつわるエピソード、今後の抱負などをご紹介します!
競輪界を代表する男子選手、ガールズケイリン選手にインタビューを実施します。他では聞けない素顔や本音、競輪にまつわるエピソード、今後の抱負などをご紹介します!
四日市記念で約6年10か月ぶりに記念優勝を果たした神山拓弥選手(栃木・91期)。
「0.1歩ずつ」の積み重ねが生んだ完全優勝。
マーク選手として長く戦ってきた神山選手に、競輪への向き合い方を伺いました。
ナッツ:まずは四日市記念でのGIII優勝おめでとうございます。
神山:ありがとうございます。
ナッツ:記念の優勝は2019年の大宮以来ということで、約6年10か月ぶりになります。そのあたりのお気持ちはいかがですか。
神山:素直にうれしかったですね。連日、関東の若手が前で一生懸命頑張ってくれたおかげで、展開がすべて向いてくれました。とても良い形でした。
ナッツ:寛仁親王牌からほとんど間隔が空いていない中での開催でしたが、状態面や調整はどうでしたか。
神山:中3日しかなかったので、脚力自体が上がることはないんですけど、普段通りの練習をして良い感じで入れました。
ナッツ:今シリーズはSS班も5人いて、"スーパー記念"とも言われるGIIIでしたが、優勝のイメージはありましたか。
神山:全くなくて、本当に一戦一戦積み重ねたら優勝できた、という感じですね。
ナッツ:決勝に関しては眞杉匠選手(栃木・113期)のほぼ先行一車という構成でした。後ろからの組み立ては想定通りでしたか。
神山:車番も悪く、後ろ攻めになるとは思っていました。前を取りに行って突っ張るという話も少し出たんですけど、後ろから組み立てた方が前がごちゃつく可能性もあるという話になって、結果的に後ろからの組み立てになりました。
ナッツ:勝負どころでは古性優作選手(大阪・100期)が飛びついてくるのでは、という見方も多かったですが。
神山:古性君は横も縦も強いので警戒していました。特に横の動きが勝負だなと思っていたので、そこは対処する意識を持って走りました。結果的に速度差もあったので、飛びつかれる形にはなりませんでした。
ナッツ:眞杉選手がジャン前で一気に仕掛けましたが、踏み出した時はいかがでしたか。
神山:眞杉はダッシュも掛かりも強いですし、今回は4車だったので、そのあたりを考えて走ってくれていました。さすがタイトルホルダーの動きだったと思います。
ナッツ:出切ってからは最終バックで古性選手も捲ってきましたが、対応はいかがでしたか。
神山:スピード差がそれほど大きくなかったので、一度外に持ち出して牽制しました。その後戻るときに眞杉の後輪に差し込んでしまったので、あとはもう縦に踏むしかない、という状況でした。
ナッツ:そこからの直線はどんな気持ちで。
神山:いっぱいいっぱいでしたし、「誰も来ないでくれ!」と思いながら必死で踏んでいました。
ナッツ:四日市は直線も長いので、余計にそう感じそうですね。
神山:そうですね。ただ結果的にしっかり踏み切れたので、そのあたりは練習の成果が出たのかなと思います。
ナッツ:今回は完全優勝という結果で、グレードを問わず完全優勝は2013年6月のいわき平以来になります。そのあたりはいかがですか。
神山:いや~、完全優勝はなかなかできるものではないので、今回のメンバーでできたのは本当にうれしかったです。
ナッツ:先ほど「練習の成果」というお話もありましたが、今の競輪はスピード化が進んで縦脚がより必要な時代になっています。ご自身ではどのように意識されていますか。
神山:まず縦脚がないと横の対応もできないので、そこは意識して取り組んでいます。ただ、レース本数が増えてまとまった練習時間が取れないこともあるので、中3日とかの中で少しずつ積み上げていくしかないと思っています。脚力は簡単には付かないので、本当に「0.1歩ずつ」、下手したらもっと小さい歩みで進むしかないですね。
ナッツ:0.1歩ずつ、ですか。本当に積み重ねですね。
神山:そうですね。強くなる近道なんて多分ないですよ。もしあるなら自分も知りたいです(笑)。結局は小さな積み重ねを続けるしかないですね。
ナッツ:そのためにも、練習はしっかりと計画的に取り組んでいるんですね。
神山:斡旋が1か月前に出て、中何日空くかが分かるので、それに合わせてやるべきことを決めています。脚力を付けるというより、不安を取り除く意識ですね。それをやってきたから今回は大丈夫なんじゃないか、という気持ちで臨めます。不安がなくなればレースで気持ちよく走れる、というのを意識しています。
ナッツ:気持ちの部分でも万全で臨めるように、ということですね。
神山:そうですね、でもみんなやってると思いますよ。今回の記念前も中3日でしたが、午前中はバンクに行って、午後は眞杉と街道でもがきました。久々に連係する可能性があったので、その対策も兼ねて、できることをやりました。
ナッツ:眞杉選手の話も出ましたが、ここ数年関東の若手もどんどん強くなっています。今は若手を支える立場という見られ方もありますが、その点はどう考えていますか。
神山:いや、自分に支える余裕なんてないです。むしろしがみついていかないといけない立場ですね。自分の脚力を上げて、若い選手に食らいついていく。その上でできることがあればやるというスタンスです。
ナッツ:若い選手にもしっかりアドバイスしている印象がありますが、そのあたりは。
神山:やっぱり、それぞれの選手の特性を生かすことを伝えられればいいなと思っています。レース後にあれこれ言っても仕方ないので、聞かれたら必要なことを伝える感じです。
ナッツ:神山選手は長くマーク選手として戦ってこられた印象です。マーク選手は自力選手ほど注目されない部分もありますが、日々のモチベーションはどう保っていますか。
神山:注目されるかどうかは関係ないです。目の前の一戦に全力を尽くして車券に貢献する、それが自分の仕事です。一戦一戦、全力で走るだけですね。
ナッツ:ファンからすると頼もしい言葉です。マーク選手として大切にしていることはありますか。
神山:できないことはできないので、できることをしっかりやる、それだけです。無理に背伸びすると事故や落車につながるので、自分ができることを100%やるようにしています。
ナッツ:できることをされた結果、6年ぶりにGIIIを優勝されました。この6年間をどう感じていますか。
神山:今は競輪全体のレベルが上がっています。GIで結果を出したい気持ちはありますが、正直きついと感じる場面もあります。今回の優勝はうまく積み重ねが結びついたという感じです。努力しているのは自分だけじゃないですが、考えながら続けてきたことが、こういう"たまたま"の優勝を生むんだと思います。でも、その"たまたま"を起こすのが日々の準備です。
ナッツ:年齢的にもベテランの域に入ってきていますが、競輪への考え方は若い頃から変わりましたか。
神山:若い時は先行で走っていましたし、自力選手の気持ちも分かります。その経験を後ろで生かせている部分もあります。自力とマークでは見える景色は違いますが、どちらも経験したからこそ、今の考えにつながっていると思います。自力でも番手でも、やるべきことをやるというのは同じなので。今回は関東の選手のおかげで展開もできましたし、本当に感謝しています。
ナッツ:まさに今回の四日市記念も、普段仕事をしている神山選手が報われたといいますか、積み重ねてきたからこその優勝という結果で、見ていて本当に痺れる走りでした。「支えているつもりはない」とおっしゃりますが、自力選手からすれば心強い味方ですし、信頼関係があるからこそですよね。"たまたま"ではなく、本当に積み重ねてきた結果だと、私は感じました。
神山:そう言ってもらえるのは選手冥利につきますね。
大したことじゃないんですけど、一応いつも自分なりに一生懸命考えてやってはいるんですよ。その中で、「なんだこれ、全然意味がないな」と思うような練習もあります。でも、それはやってみなきゃ分からないことで、1日2日で答えが出るものでもない。
無駄な時間って言ったら言い方はあれですけど、「ためにならなかったな」って思う練習もたくさんしてきたと思います。でも、それが結局は「あ、これは今、必要ないんだな」「これは自分には合わないんだな」って分かることができれば、それはそれでプラスなんですよね。それも一歩前進しているんだと思います。
だから、自分の考えでは、結局「失敗はない」んです。正直、意味のない練習って言ったら意味のない練習なんですけど、意味がないって気づけた時点で、それはもう失敗じゃない。分からないままやらないんじゃなくて、やってみた結果「やらない」と判断できる方が、一歩進んでいると思うんです。
無駄なことでも一歩進んでいる。だから結果的に全部無駄なことじゃない。そういう風に思っています。
ナッツ:意味がなかったと分かること自体が収穫なんですね。
神山:そう思います。そうした積み重ねが、今の考え方や競輪への向き合い方につながっていると思っています。
ナッツ:神山選手は当たり前とおっしゃっていますが、そういう考え方に辿り着ける人って、実際どれだけいるのかな、とも思います。
神山:今は養成所のトレーニングもナショナルチームの要素が入っていますし、ウェイトトレーニングの精度も昔より確実に上がっていて、科学的な答えが出ている練習をみんなやっていると思うんです。だから、デビューした瞬間から"即戦力"みたいな選手も増えていますよね。
でも、競輪って独特な部分があって。横の動きや駆け引き、展開の読み、脚だけではない勝負がある。もちろん、ナショナルチームの若手みたいに脚で全部ねじ伏せられるぐらい抜けてしまえば、それはそれでひとつの答えですけど。でも、それが毎回、全部のレースで通用するかと言うと、そうじゃない。それが競輪の面白さであり、奥深さだと思います。
もし脚力だけが全てなら、年齢が上がった選手は絶対に勝てないですよね。でも今、50代で特別競輪を走っている選手もいますよね。ああいう人たちは脚以外の強さがあるから走れているんだと思うんです。だから競輪にはいろんな要素が必要なんだと思っていて、どの要素を鍛えるか、どう考えるか、どう練習に落とし込むかが大事なんじゃないかなと思います。
ナッツ:そこをしっかりと考えた上で積み重ねていくということが大切なのですね。神山選手も、50代まで現役を続けたいという気持ちはありますか。
神山:50歳までやりたい気持ちはあります。ただ惰性で続けると気持ちがダレてしまうので、そこに向けて本気でやりたいです。40代半ばになった時に、また感じるものも絶対にあると思いますし、50歳で特別競輪に乗っていたら最高です。S級にいられたら自分でもすごいなと思います。A級でも50歳で走っていたら、それはそれで立派だと思います。ただ、結局は自分がその時どうなっているか、やってみないと分からない。
毎年ダービーに出続けたい、GIに出続けたい、とか、そういう目標の積み重ねですね。1年単位で今年はこれって感じではなくて、特別競輪から逆算してここを強くしたい、数字を少しでも上げたい、と積み重ねる感じです。そしてその間にもレースがありますが、レースでしか分からないこともあるので、不安を感じたらそこを取り除く。それを繰り返すだけです。
ナッツ:今日は神山選手に、競輪に対する考えも聞かせていただきました。最後に、オッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
神山:応援してくださる皆さんに感謝しています。これからも一戦一戦、しっかり走りますので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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