競輪界を代表する男子選手、ガールズケイリン選手にインタビューを実施します。他では聞けない素顔や本音、競輪にまつわるエピソード、今後の抱負などをご紹介します!
競輪界を代表する男子選手、ガールズケイリン選手にインタビューを実施します。他では聞けない素顔や本音、競輪にまつわるエピソード、今後の抱負などをご紹介します!
デビュー16年4ヶ月で初GIIIタイトルを掴んだ塚本大樹選手(熊本・96期)。
周囲の成長に刺激を受け、練習法も意識も根本から見直して歩んだ30代。
これまでの道のりは。そして来年、地元の全日本選抜競輪(GI)へ挑む思いは。様々なお話を伺いました。
ナッツ:小田原GIII優勝おめでとうございます。お気持ちはいかがでしょうか。
塚本:やっぱり初めてGIIIが獲れたので嬉しいですね。
ナッツ:デビューして16年4ヶ月で初のGIIIのタイトルです。
塚本:ここ最近ちゃんとやる気を出してしっかり競輪に向き合ったので、その結果が出たのは良かったなと感じます。
ナッツ:塚本選手は2019年あたりまではS級とA級を行き来するような時代もありました。
そこからまたS級に復帰して、30代になってから一気に活躍している印象ですが、そのあたりは何か意識の変化があったんでしょうか。
塚本:そうですね。熊本競輪も復活しましたし、周りの熊本の選手が強くなってきたっていうのが一番ですかね。そこで向き合い方を変えて良くなりました。
ナッツ:今回の小田原GIIIではシリーズリーダーという立場でしたが、そのあたりの意識はいかがでしたか。
塚本:最近ちょこちょこシリーズリーダーになることがあって、そういう時は負けられないという気持ちが強くなっていますね。
ナッツ:今回は連日、若手の先行選手に前を任せるレースが続きました。
塚本:そうですね。競輪にやる気が戻ってからは、横では負けないようにしっかりと仕事をすることを強く意識していたんですけど、それが段々と実ってきて、今は安心して後ろを回れるようになりました。横から来られても勝てるという自信があるので、その安心感が結果につながったのかなと思います。
ナッツ:決勝では九州3人で、阿部将大選手(大分・117期)や宮本隼輔選手(熊本・113期)との連係でした。
特に同県の宮本選手と一緒に決勝へ上がったお気持ちはいかがでしたか。
塚本:準決勝では自分が先にレースを走ったんですけど、隼輔が決勝に乗った時はめっちゃ嬉しかったです。
そのまますぐ「明日頑張れよ!」という感じで話しましたね。
ナッツ:決勝は3分戦で単騎が1名の構成でしたね。レースは阿部選手の突っ張り先行になりましたが、作戦はどう考えていましたか。
塚本:阿部ちゃんは取れたところから絶対に主導権を取る、っていう感じでしたね。ただ無茶駆けはせずに、みんなで決まるように、って話でした。
ナッツ:初手がどうなろうと、「主導権は絶対取るぞ」ということだったのですね。
勝負所では松坂洋平選手(神奈川・89期)が内に来るシーンもありましたが、対応としてはいかがでしたか。
塚本:自分はもう、ああいう動きが来ても大丈夫なように走ってるんで、全然問題なかったです。
ただ宮本はちょっと力が抜けちゃってるな、って感じましたね。
ナッツ:その宮本選手が縦に踏んでいきました。どんな気持ちで追走していましたか。
塚本:踏み込んだ時点で1着か2着の争いはできるな、と思っていました。僕は終始余裕があったので、「交わせたらいいな」と踏み込みましたね。
ナッツ:ゴール前はきっちり差しましたが、差したのは分かりましたか。
塚本:はい、分かりました。
ナッツ:その後、バンクを一周する中で右手を上げるシーンもありましたが、あの時のお気持ちは。
塚本:小田原競輪場はモニターがないんですよね。交わした自信はあったんですけど、本当に1着かどうか確認できなくて笑。
でもファンの声援的に「1着っぽいぞ」って感じて。それで手を上げましたね。
ナッツ:画面越しに見ていても、ファンの声援がすごく伝わってきました。
塚本:いや~盛り上がってましたね。
ナッツ:表彰式後には九州勢での胴上げもありましたね。
塚本:みんな来てくれるとは思わなかったんで、嬉しかったですね。
ナッツ:胴上げ自体初めてかと思いますが、宙に舞った感触はどうでしたか。
塚本:今まで強い選手たちが胴上げされてきたのはずっと見てきたし、自分も中本匠栄選手(熊本・97期)とか松岡貴久選手(熊本・90期)が優勝した時に持ち上げたことがあったんです。
今回は自分が持ち上げられる立場になってよかったです。
ナッツ:その立場になるまでの道のりについてお聞きしたいと思います。
先ほど、周りの熊本勢が強くなったのがきっかけで意識が変わったというお話がありました。ご自身の若い頃は、競輪への向き合い方が甘かったという自覚があったのでしょうか。
塚本:そうですね。自分たちが20代の時は、競輪界自体が厳しい状況に陥っていましたから、そこまで競輪に全力で挑めなかったんです。でも売上が上がると共に、競輪界の活気が出てきて、「自分も遅れちゃいけない」って気持ちが強くなりましたね。熊本競輪場が復活っていうのもあったので、それに向けて目標を決めて取り組んできた結果でもあります。
ナッツ:それはここ何年かで意識が変わってきたんですか。
塚本:うーん...5年前くらいですかね。ちょっと一回落ちて、また上がってきて、競争得点も110点近くまで行ったんですよね。今まで熊本記念に呼んでもらったことなかったんですけど、成績が上がってきても呼ばれなかったんです。「結果を出しても呼ばれないんだ...」っていうモヤモヤがありました。まだ自分はそこまで認められている選手じゃないんだな、って感じたんです。他のレースでも、決勝でも、点数があっても前を回れないっていうこともあったので、そこで「しっかり周りにも認められる選手になって、責任ある位置を回れるようになろう」って気持ちが強くなったんです。練習は試行錯誤しながらやっていましたが、今は決まったメニューを毎日やると決めて、それがいい方向にいってますね。
ナッツ:その中でこうして成績が上がってきて、去年はGIにも何度か出場されましたね。
実際走ってみて、GIというのはどうですか。
塚本:やっぱりレベルは高いし、緊張感もすごいですね。でも、今までGIを"調子のいい状態"で出たことがないんですよ。体調を崩したり怪我したり...。だから今のこの良い流れでGIに行ければ、いい戦いができるんじゃないかなって思っています。
ナッツ:GIを万全の状態で迎えたことがなかったんですね。
塚本:そうなんです。落車もありましたし、去年の全日本選抜(GI)を走る時には、落車しすぎてフレームもダメになっちゃって...間に合わなかったんですよ。
今年は地元の全日本選抜用に、多めに自転車を作って、絶対に乗れるフレームがある状態で走るようにしてます。
ナッツ:そういう意味でも、来年の地元のGIはすごく楽しみですね。
塚本:そうですね。来年はいくつかGIが走れそうですし、1年間しっかり仕上げていこうと思ってます。
ナッツ:熊本勢といえば、嘉永泰斗選手(熊本・113期)がGIを制覇しました。そのあたり、先輩としてどう見ていますか。
塚本:よく話す後輩だし、素直にめちゃくちゃ嬉しかったですね。励みにもなりました。泰斗の後ろは今まであまり回ったことがなかったので、その位置をしっかり回れるくらいになりたいな、って思いました。
ナッツ:塚本選手は年齢的にもベテランに差し掛かっていますが、若手の熊本勢が育っていく中で、ご自身はどういう存在でありたいと思いますか。
塚本:熊本の中でもそうなんですけど、やっぱり「九州勢は横が甘い」って言われがちなんで、しっかりサポートしながら戦える選手になりたいですね。
みんなが安心して走れる存在を目指したいです。
ナッツ:レースだけじゃなくて、普段のコミュニケーションでも、ということですよね。
胴上げのシーンを見ても、塚本選手が周りに好かれているのが分かりました。
塚本:そうですね。みんなとワイワイやるのが好きなんで。好かれてるなら、それは嬉しいことですよね。
ナッツ:ご自身の中で、年齢を重ねて身体のケアやトレーニングはどう意識されていますか。
塚本:身体のケアはめちゃくちゃ気にしてますね。今年は週3~4は整体に行ってます。
ナッツ:え、そんなに行ってるんですね。
塚本:そうですね。僕の場合は、しっかりと練習する以上に身体を丁寧に仕上げた方が自転車が進むなって感じがあって。
身体の使い方をすごく意識しています。それで成績も全然違うんです。
ナッツ:まだまだご自身の伸び代も感じますか。
塚本:感じますね。年齢重ねても強い選手はたくさんいるし、自分の憧れは南さん(南修二選手・大阪・88期)みたいな、動けて横もできる追い込み選手ですね。
ああいう選手になりたいです。
ナッツ:最近は追い込みでも、縦脚がないと戦えない、という話をよく聞きます。
塚本:そうですね。縦も横も必要です。突っ込んだ時に勝負できる脚があると自信にもなりますし、横は経験していきながら、勉強していくしかないですね。でも少しずつ身になってきています。
ナッツ:これからの目標はどこに置いていますか。
塚本:来年はビッグレースを結構走れそうなので、頑張っていきたいなと思います。あとは阿部拓真(宮城・107期)が夢を作ってくれたんで...(笑)。
自分もあわよくば、くらいの感じで頑張りたいですね。ビッグレースでの初勝利も、今の状態なら自信はあるので目指したいですね。
ナッツ:期待しています。では最後にオッズパーク会員の皆様へ、メッセージをお願いします。
塚本:今の一番の目標は、来年の地元のGIである全日本選抜競輪です。嘉永と連係もしたいです。決勝に乗るという目標で頑張っていくので、今後も応援お願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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