
日本選手権(ダービー)を制した吉田拓矢選手(茨城・107期)。
競輪祭以来、約3年半ぶりのGI制覇。
自然体を貫きながら勝利を掴んだその裏に、どんな思いがあったのか。
改めて振り返ってもらいました。
―まずは日本選手権優勝おめでとうございます。
ありがとうございます。
―ダービー王という称号を手にしました。改めて、今のお気持ちはいかがでしょうか。
上位の選手もみんなダービーは獲りたいと思っているタイトルなので、まさか自分が獲れるとは、って感じです。今でもまだ信じられないんです。
―少し時間が経っても、まだ実感がないというか。
そうですね。ふわふわしているというか、「ダービー王になったんだな」っていう実感はまだないですね。
―3年半前には競輪王になりましたが、やはりダービーというのは、選手として他のGIとはまた違うのですね。
そうですね。GIの中でも一番格式が高いGIだと思っています。勝ち上がりも難しいですし、長丁場ですし、やっぱり特別ですね。
―そのダービーには熊本のF1を走ってからの参戦となりました。迎えるにあたっての状態面はいかがだったんでしょうか。
熊本の時は追い込んで入った感じで、仕上がり的には少し疲れてる状態だったんですけど、その熊本を走ったことでうまく疲れが抜けて、ダービー前にはしっかりと仕上がっていました。
―じゃあもう、ご自身の中では状態としては万全で。
そうですね、自信を持って入れましたね。
―1走目の特別選抜予選では自力での戦いということで、3番手を確保してのまくり追い込みでしたが、振り返っていかがですか。
レースとしては、新山さん(新山響平選手・青森107期)が仕掛けていて、やっぱり強かったですね。でも小林泰正選手(群馬113期)が位置を取ってくれたので3番手にいられて、そこから待って踏んでいったレースでした。
―1走しての脚の感触としてはどうでしたか。
身体は問題なかったんですけど、全体的に自転車とマッチしてない感覚があって。終わった後に先輩に相談したら、「セッティングを変えた方がいい」ってアドバイスをもらったんです。なのでその日の夕方に変えましたね。
―走った日にセッティングを変えて、その後は練習で確かめた感じですか。
そうですね。そこで確かめて、もうそれ以上変える必要はない感じだったので、良い方向に行きました。
―1走してから2日空くというのは、調整が難しそうにも思えますが、吉田選手にとってはどうでしたか。
気持ち的には1回余裕を持てるので良いですね。その後3走連続になるんですけど、2日空くことでうまくリセットできていました。
―一度リセットすることで、またそこから気持ちを上げていくのも大変そうですが、そのあたりは上手く対応できたのですね。
はい、気持ちを張り詰めてるだけだと疲れちゃうんで、そこはむしろリラックスしてた方がいいんです。
―その後のレースでは眞杉匠選手(栃木113期)の番手、そして準決勝は自力というシリーズの中で、その辺りの使い分けの難しさは吉田選手にとってはないですか。
僕は普段あまり気にならないんで、どちらにも対応できますね。その時その時でやるべきことをやる感じです。
―決勝戦はゴールデンレーサー賞と同じく眞杉選手との連係となりました。5番手からのスタートでしたが、作戦としては。
眞杉がスタートを頑張ってくれて、ああなるだろうな、という想定通りの感じでしたね。
―勝負所では新山選手が突っ張って、その後ろは4番手に古性優作選手(大阪100期)がいる展開の中で、吉田選手はどうご覧になっていましたか。
眞杉も落ち着いていたので、あの辺りで仕掛けるんじゃないかという感覚はありました。
―眞杉選手はバック5番手から捲り上げていきました。前に古性選手もいる中で持ってきそうな雰囲気もあったかと思いますが、いかがでしたか。
やっぱりその辺りは考えて、少し外を踏んで対応できるようにはしましたね。
―4コーナーからは外を踏んで直線突き抜けました。脚の余裕はありましたか。
そうですね、余裕があって、あとはゴールまでという感じでした。
―1着でゴールした瞬間の気持ちは。
やっぱりそこは眞杉に対する審議が入ってたんで、そんなに大きく喜べはしなかったですね。失格だったら嫌だなって。結果的には失格にはならず、そこでようやく喜べた感じでしたね。
―失格の話もそうですが、眞杉選手と吉田選手といえば、やはり2023年のオールスターのことが過ってしまいます。それからのここ2年ほどの関係性というのはどうだったのでしょうか。
そうですね...眞杉もなかなか口には出さないんですけど、ずっと自分のことを気にかけてくれてるなという感じではありましたね。
―吉田選手もそれを感じていて、恩返しじゃないですけど、いつかオールスターの分まで、という眞杉選手の気持ちがあったわけですね。
そうだと思います。決勝に乗ったら決めたいという雰囲気もあって、その気持ちがすごく伝わってきました。結果的にワンツーで良かったなと思います。
―吉田選手は競輪祭以来、約3年半ぶりのGIタイトルとなりましたが、そのあたりはどう感じていますか。
やっぱりGIを取るのは簡単じゃないなと思っていました。競輪界全体のレベルも上がってきてるし、チャンスが来た時に取れるかどうかだと思ってたので、その間、自然体で挑んだのが良かったと思います。
―競輪祭の時は単騎で、今回は仲間と決勝に乗って、その違いはありますか。
やっぱり全然違いますね。競輪祭はもちろん仲間のアシストもあって決勝には乗れたんですが、今回はラインで勝てたという嬉しさがあります。
―関東地区の結束も感じられる中で、今回は直前の関東合宿もあったようですね。
そうですね。ダービー前に初めてやりました。今までは茨栃勢でやっていたり、自力選手が集まって練習したりというのはあったんですが、関東でまとまって練習したのは初めてでした。
―その合宿で得られたものが、ダービーに繋がりましたか?
はい、すごくいい刺激が入りました。練習メニューもそうですが、ダービー直前だったので、やっぱり気持ちの面が大きかったですね。
―メンタル面についてですが、吉田選手はあまり表に喜怒哀楽を出さない印象があります。常に淡々とされていて、安定しているように感じるのですが実際はどうですか。
そうですね、デビューしてから武田豊樹(茨城88期)さんにアドバイスをもらったんです。武田さんも一喜一憂しないタイプじゃないですか。やっぱりその姿を見てきたので、自然と身についている感じだと思います。
―レースで結果が良くなくても、引きずらずに気持ちを切り替えられると。
悔しいのは悔しいですよ。でもそこは自分の中で消化しています。次がありますし、いつまでも引きずってはいられないですね。
―今後についてお聞きします。ダービー王として30代を迎える中で、関東の中ではどういう存在になりたいと考えていますか。
やっぱりしっかりと姿勢で示すというか、前で戦う時も番手の時も一生懸命走る姿を見せることが大事だと思っています。前回SS班になった時は、自分で自分を苦しめてしまったところもあったので、今は自然体で、目の前のことを頑張っていこうという感じです。
―気は早いですが、グランプリも決まりました。今回は日程に余裕がありますが、意識としてはどうですか。
正直、まだまだ全然ですね(笑)。今は目の前のレースのことだけ考えてます。一つひとつのレースでしっかり状態を作って頑張るのみです。
―グランプリが近づいたら、気持ちも入れていくという感じですね。
そうですね。一つ一つクリアしていくだけです。練習で自信をつけて、本番でそれをいかに出せるかが大事だと思っています。練習でできたことしか本番では出せないと思っているので。番手の時は後ろの仕事をしっかりと、気持ちを込めて頑張らなきゃいけないと思っています。
―吉田選手の中での今後の目標は?
GIを2個目取ったんですけど、やっぱりGIは何個でも取りたいので、それを目指したいですね。
―ゆくゆくはグランドスラムも。
いや~、そこは大きな声では言えませんが(笑)、とりあえず一つ一つのGIで優勝するつもりで頑張りたいです。
―では最後に、オッズパーク読者の皆様にメッセージをお願いします。
いつも応援ありがとうございます。これからも一生懸命走るので、応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:公益財団法人 JKA / 株式会社スポーツニッポン新聞社
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