先日、地元四日市で行われたGIII万博協賛競輪を制した浅井康太選手(三重90期)。このGIIIでの優勝は実に1年7か月ぶり。かなり間隔が空きました。常に新しいスタイルを求めて進化を模索するトップレーサーが抱える葛藤とはどんなものなのか。競輪選手としてではない「人間・浅井康太」の一面に深く迫ってみました。
橋本:まず、直前の地元GIIIを優勝されまして、非常に嬉しそうな表情と、ヘルメットを投げ入れたりっていう喜びの表現が印象的でした。
浅井:そうですね。やっぱり一年七か月ぶりの優勝ってことだったんで、だいぶ間隔が空いたなっていう思いです。最近の中部勢の中でラインの層の薄さを感じることが多くて、なかなか決勝で勝ち切ることができないとか、決勝戦に乗っても勝てないとか、決勝にそもそも乗れないとか、色々あったんで、このところは厳しい中で戦ってるなという実感がありましたね。
橋本:今回は別地区の嘉永選手(嘉永泰斗選手・熊本113期)と決勝で連携しました。
浅井:そうですね。今回の決勝は嘉永くんとライン組んで共に戦って、改めてラインっていうのは凄く大切なんだなっていうのを感じ取れた開催でしたね。
橋本:元々ラインの大事さっていうのは理解はされてたと思うんですけど、それにも増してということですか?
浅井:やっぱそうですね。嘉永くんとラインを組んだ理由というのも色々あって。別の地区なんですけど、ライン組む人間同士の信頼関係ですね。その中でお互いの持ち味を生かし、ラインの良さを出すということの大切さを感じました。
橋本:高校時代の嘉永選手が浅井選手にサインを貰ったというニュースを拝見しました。
浅井:「熊本競輪場で僕、学生時代に浅井さんにサインを貰いました」って話を初日のレースが終わってクールダウンの時にしたんですけど、いきなりそんな話になった訳ではなくて、嘉永が「自転車なんかちょっと駄目なんです。調子悪いんです」みたいな感じで話しかけてきて、それなら「こうした方がいいんちゃうか」みたいな話をしていたら「実は僕・・・・」みたいな感じになったんです。で、その前段階に遡るんですけど、共同通信社杯(2022年9月17日、名古屋12R二次予選A)の時に、僕が単騎っていうコメント出して、その単騎ってコメントを出した後、瓜生(瓜生崇智選手・熊本109期)と嘉永が僕のところに来て「浅井さん、こいつに付いたってくださいよ~」みたいな事があったんですよ。
とはいえ「もう俺もコメント出したで~」ってなりまして、まぁやっぱり中部の自力選手として後輩たちもいることやし「ここはしっかり単騎でやるわ」と返して、申し出を断っているんですよ。で、また何か機会があった時は、しっかり考えて付かせてもらうかもしれないって話をしていたというのがあったんです。で、それがたまたま今回の四日市GIIIの決勝戦で、十夢さん(渡辺十夢選手・福井85期)とみたいな感じになった中で、嘉永が単騎になるかもしれないっていう状況だったんですよね。
で、記者さんには「浅井つくの?どうするの?」みたいになっている時に、嘉永が「浅井さん、ついてください」って話しに来たんです。そんなの、なかなか先行選手が「ついてください」ってないじゃないですか。それも、この前の共同の事があって、嘉永の中では、その共同の時、次にこういう機会があったら「自分から浅井さんに言いに行こうと思ってました」らしく、僕としても、そこまでの気持ちがあるなら「つかせてもらうわ。よろしくね」ってなったんですけど、僕が地元だからといって、無理に仕掛けるとかじゃなくて「絶対取るレースしろよ」って。もうそれこそ何回も何回も「絶対取れよ。絶対取れよ。絶対の絶対に取れよ!そしたら自然に俺もチャンスあるから、絶対に優勝狙えよ(笑)」と伝えて、全部嘉永の作戦で、嘉永があの走りになりました。
橋本:色んな事が伏線になっていたんですね。本当にいい話です。
浅井:そうですね。なんか本当にうまく繋がったって感じになってますよね。それがほんとに学生時代にサイン貰ったってところから始まって、一緒にライン組めて、それで地元GIIIで優勝できて、それもワンツーで決まって。それがGIとかGPとかだったら、もっといいんだろうけど。でもやっぱり、地元GIIIってところでも大きいですよね。
橋本:かつてサインした少年と一緒に戦えた、そんな浅井さんの嬉しさがとてもよく伝わってきます。
浅井:サインを貰いにいった様な憧れの選手と走る事って僕も経験あるんですけど、実は僕の場合、神山さん(神山雄一郎選手・栃木61期)なんです。印象に強く残っているそのレースで、僕はブロックされたんです。これは捲れると思っていったんですけど、その捲りがブロックされて、止められて。凄いなぁって肌でその凄さを感じて、嬉しさもあり悔しさもあり。でも、その時、そこを乗り越えることができたら、いつかタイトルを取れるかもな、と考えたのがいい経験になったというのはありますね。だから、今回は僕が優勝しましたけど、次は「40手前のおじさんにもう抜かれないぞ!」という気持ちでね(笑)今後やってもらえたら、すぐにタイトル取れるんじゃないかな。と思います。
橋本:これは長いこと超一流のポジションにいないと、味わうことのできない思いですね。浅井選手が長年そういうポジションに居続ける事ができたから、いや、できているからこそです。
浅井:それはあるかもしれないですね。ただ、やっぱりそういう風に憧れてましたって言われても、弱くなると結局は「なんだ~昔は強かったけどな」みたいなのって嫌じゃないですか。やっぱり憧れられているという思いに応えたい。だからこそ、今の状態を維持しないといけないというか。なので、逆に言うと本当にそのことが僕を支えてもらってるんだなっていうのはありますよね
橋本:その気持ちっていうのは、例えば同県の後輩から「弟子にしてください」みたいな憧れとは受け止め方は違うんですか?
浅井:全然違いますね。結局同じ地区とか、もしくは同県とかってなってくると、身近に感じすぎることの弊害というのかな。それはあると思いますね。元々は自由に練習して「これやっとけよ~」みたいな感じでやってたんですけど、仲間の成績が落ちてきた時期に、ちょっとグループとしてまとまってないなぁ。と思ったので、みんな良くなるために、こうした方がいいんじゃないかなと、アドバイスみたいな事をしたんですが、なかなかうまく伝わらなくて、それが悪い方向へいってしまうというか。良かれと思って言ったことが悪い方向へ行ってしまうので、それならもう言わない方がいいのかな、という。
橋本:これはもう対人コミュニケーションの本当に難しいところですよね。
浅井:だから基本的に人のことは構わずに自分の事だけ考えてやるのが、最近はベストかなって考えてました。
橋本:ラインっていうのは暗黙の了解で、同地区の者たちが一つのチームになるっていうのが、ずっと長年続いてきた中であるんですけど、同じ地区、近いところに住んでいる者同士だから人間関係の深い繋がりがあるかっていうと、必ずしもそうとは言えないし、もちろん逆の場合もある訳で。そう考えると、ラインを同じ地区同士だからという理由だけで組まないといけないっていう、この暗黙の了解は選手にとって、すごくストレスになる部分っていうのはあるかもしれないですね。
浅井:そうですね。やっぱり信頼できない相手とは連携したくないと思うんですよね。
あと、最近は先行選手が上で、マーク選手が下、みたいな雰囲気が強いですけど、そういうものではないと思っていて、先行選手としてしっかり役割を果たして、マーク選手が止めてくれるっていう仕事をする。それでしっかりとしたラインが形成できて、ワンツーが決まる確率が上がる。先行、捲り、追い込み、マーク、それが合わさって効果を発揮する訳ですから、そうならないのであれば、ラインなんて組む必要は全くないかな、とは思いますね。
ちなみに谷口(谷口遼平選手・三重103期)とかに言うんですけど「練習で俺がお前よりもタイムが良くて、それで後ろにつくんやったら安心せんか」って(笑)確かに、最後抜かれるかもしれないけど、逆に脚がなかったら千切れて仕事どころじゃないし、それこそ「ダッシュでギリギリついてきて仕事もせずに抜かれるのは一番嫌なんちゃうか~」という。
やっぱり、レースの積み重ねが信頼関係に繋がる訳なんで。ただ、時と場合で切り替える時は全然あるよというのも言ってます。でも、それはお前(谷口遼平選手・三重103期)のスピードが周りのスピードよりも、劣ってるから切り替える訳で、もう仕掛けるタイミングがない場合は仕方ないというのは伝えています。
橋本:これは非常に相手の受け止め方が難しいところで、切り替えられるとあの人は冷たい人だ、って思われかねないですよね。
浅井:そうそう。そうなんです。簡単に言えば、ホームでカマされた先行選手を2角で入れたら、自分は4番手か5番手か。まぁ、先行選手は4番手くらいになるじゃないですか。もうそうなってしまって勝負圏があるかってなったら、ないですよね。この間の決勝で新山(新山響平選手・107期)が一人で来て、嘉永がハマってという状況なら分かります。それなら直線勝負できるんです。ここの違いですよね。本当にカマした選手が弱かったらいいんですよ。でも、それはGIでは通用しないですよね。
橋本:ですよね。実は、そういったレースの積み重ねの中で、浅井さんはとても葛藤しているんだろうなぁというのは以前から感じていました。というのも浅井選手というのは、ファンの皆さんへのこれまでの対応とか、そういうのをずっと見せてもらう中で、本当はめちゃめちゃ優しいんじゃないかと、でも、その優しさを捨てなければいけないというか、非情にならなければいけないというのを無理してやってるんじゃないかと。敢えて非情になるという表現はおかしいかもしれませんが。
浅井:あの~最近、優しいっていうことを周囲が分かってくれてきたようで(笑)最近そう言ってもらうことが増えてますね。競輪に関係のない人たちと会っても「なんでこんな優しいの」って言われたりもあって。自分で言うのも何ですが、確かに昔から優しいタイプだとは思います。
橋本:でもその優しさでは勝てない。叩かれてしまった自力選手と同じように付き合ったら共倒れになりますから。
浅井:そう、そうなんです。切り替えに関して、自分で絶対に決めているルールが一つあって。それは前を任せた選手が捲りになってしまう。でも、それが不発だろうなと思って、先に切り替えるのは無しなんですね。捲り、カマしになって「これはいけないだろうな」と思っても、ついていくとこまでは、しっかりついていって、そこから無理だったら切り替えるって形なんですよ。これに関しては自分の中で間違えたと思ったことはないです。
橋本:そういう時のファンの皆さんの声ってのはどう感じていますか?ネガティブな意見もあると思いますが。
浅井:最近、新しく競輪を知ってファンになってくれた皆さんは、本当に応援してくれて、SNSを使って競輪の魅力を発信してくれたり、本当にありがたいんですけど・・・例えば、切り替えたという、その状況だけを捉えて判断されてしまうというか。その先「こういった結果に繋がるから、このように動いたんだ」という部分を理解してもらえてないような。それが残念に感じることはありますね。この選手の動きはこういう意図があってやったんだ、とか、その前後の動きを予測した状態でこういう判断になった。みたいなことが分かってくると、もっと競輪っていうのが面白くなると思いますしね。
橋本:選手のプロフェッショナルな部分ですね。
浅井:とはいえ、僕らからすればそれが普通だけど、そこまで見れないのは当たり前というのもあるんですよ。でも実際、僕らからしてみれば、走ってる感覚と、映像で見た感覚っていうのは大分、差があるんですよね。例えば、今3角ぐらいかなと思ったら、もう4角になっていたり。そのくらいズレがある時もあったりして。だから気付いた時には、もう相手がそこまで来ている可能性があるんで、それで遅れてしまうというのはありますね。
橋本:GIクラスなんかだと、本当に瞬時の判断なのでとても難しいと思います。だからこそ、ラインの総合的な戦闘能力が必要、ということになるんでしょうね。
浅井:やっぱり追い込み勢の人たちが以前より優しくなり過ぎたっていうのはあるでしょうね。最近は先行選手同士が並ぶじゃないですか。僕はあんまり昔はこうだったっていう話は好きじゃないんですけど、例えばチャレンジとかA級のレベルでも、決勝戦になって、先行選手同士が並ぶってなったら、追い込み選手が競りにきましたからね。そして、競りにこられるなら、ということで同じ地区同士であっても若手が分かれて「じゃあ、もう各自、自力でやりましょう」ってなって、別線になる。そして別線になることで、同地区でも相手に対するライバル心というか、負けたくない!って気持ちが強くなって、そこで切磋琢磨できるのに、今は、そこで自力同士でラインをしっかり組みましょうっていう流れになってしまう訳で。だから、元を辿れば追い込み勢の優しさには問題があるからだろうな、という風には思いますね。以前、例えば永井さん(永井清史選手・岐阜88期)と僕が並ぶ時とか、僕と深谷(深谷知広選手・静岡96期)が並ぶ時とか、他地区の誰かが競りにくるっていうのは結構ありましたし、そんな中で別線勝負を選んだっていうのもありましたし。だからこそ、若いうちは追い込みを覚えるべきではないと思うんですよね。
橋本:目先の勝利を追いかけるのか、将来の事を考えるのか?というテーマになりますね。
浅井:そうですね。そういうのは、ここで勝ったらタイトル!っていう時に考えるものじゃないかなとは思いますね。やっぱり脚力をつけるためにやるのが大切で、じゃあ、それは何故なのかと言われると、GIとかGPで勝つためにというものだと思うんですよね。それなのに最初から番手回って優勝したりしてしまうと、楽を覚えてしまうというか。人間早いうちから楽を覚えてしまうと、そこから上にいけないですよね。やっぱり一番しんどいことができる人間は絶対に強くなるんで。そう考えると厳しく接する先輩が減ったっていう責任もあると思うんですよね。
橋本:とはいえ今は厳しくし過ぎるとハラスメント、みたいなところもあるので難しいですよね~。でも、今、お話を伺っていて、これからは打てば響く!そんな若い選手たちとの交流というか巡り合わせが生む相乗効果が、これからの浅井選手にとってはとても大切なのではないかと感じました。
浅井:僕は向上心を持って聞きに来る若い選手たちには、全て教えようと思っています。
ちゃんと自分自身を理解して、聞いたことを実践してみて、真剣に強くなりたいと思って取り組んでいる選手。それは敵とか味方とか関係なく、全て伝えて、それでも俺は負けないようにっていう風な思いでやってますね。
橋本:そういうところなんですよね。本当の意味での優しさというか、聞かれたことには誠実に出し惜しみせずに答えようという。でも、厳し過ぎるがあまり中部の後輩は恐れているのかも知れないという(笑)
浅井:検車場でよくヘラヘラ笑いながら過ごしてる人いるじゃないですか。あれが嫌いなんですよ。
橋本:あ!!僕らの取材のせいでヘラヘラさせてしまったりするかも(笑)
浅井:いやいや、というか、普通に仕事行ってヘラヘラしてる時間ないだろって僕は思っていて。勿論、仕事が終わって、部屋でのんびりする時間に楽しく会話をしながら食事みたいなのはいいんです。でも、それを検車場でする必要はないだろう、と僕は思うんです。僕からすると、もうその時点できちんと向き合えてないな、と感じてしまいます。とはいえ、結構周りにも「浅井が若手を育てろよ~」みたいなことも言われるんですが、そうは言われても普段そんな岐阜勢や愛知勢の選手たちと会う機会もないし、そもそも上位のレースに来る選手も少ないので、教えるどころか会話する機会もないんですよね。だから、まず自分自身で上のクラスのレースに参加できるレベルまで努力して欲しい。僕の仕事は、そこからの話だとは思ってます。
橋本:ここまで本当にズバズバと。多くの人が言いにくいことも、しっかり口にできるところが僕は個人的に浅井選手の魅力ですね。表面的なリップサービスがない分、言葉に重みというか力を感じます。
浅井:今回の四日市のGIII、確か三日目だったと思うんですけど、勝利者インタビューの時に、僕のラインスタンプを持ったファンの方が来ていて暖かい応援だったんですが、その時「浅井さん暖かい応援ですね~」みたいな事をインタビュアーの方が言ってくれたんですけど「いや僕、実は3,4年前はすごいヤジばっかで、この雰囲気になったの最近です」
という話を普通にファンの皆さんの前で(笑)
橋本:いやいやいやいや、正直すぎるやろ(笑)でも、お客さんの前で常に正直でいるって凄く勇気のいることだと思うし、正しいか間違っているかという話だけではなく、色んな逆風にも負けずに、言い続けることができる存在って、本当に貴重だなと思います。競輪選手って「こういう思いで走っているんだ」ってことを、インスタライブなんかでも発信されてるじゃないですか。
浅井:それがファンサービスというより、それ自体も仕事だと思いますね。確かに、そこにお金が発生してないからファンサービスになるかもしれないけど、競輪選手としての思いをお客さんにしっかり伝えるということも、大切な仕事ですよね。インスタライブだけじゃなく、例えばコラムなんかでも、伝えたいことを文字で伝えるのは、どういう勉強なのかと、考えながら取り組むことによって、自分が成長できる訳じゃないですか。「喋ってくれたら文章はこっちで起こします」って最初はそんな感じだっんですけど、それだと勉強にならないんで「僕、自分でやります」って言って。話の内容や構成を自分で考えて、誤字脱字は最後にチェックしてもらいますが、そこも自分の成長の為に必要な事だと思ってやってます。
橋本:競輪に限らずあらゆることに理解が深まって成長していく事に対する、喜びというか達成感というのを凄く大切にされているんだなというのがよく分かります。
浅井:若い時にはできなかったことに挑戦して克服できたら、それはもう進化だと思うんです。そう考えると人間はいつまでも進化し続けるという捉え方ができる訳で。だから年老いたなとかって思うんじゃなくて、年齢と共に挑戦し続ける事ができれば、老化ではない。それは進化だと考えています。勿論、考え方が変わっていくのは当たり前だし、変わる事も進化の一つじゃないですか。昔はこう言ってたかも知れないけど、それが間違いだった、ではなく、年を取っていく中で新しいものを取り入れて、意見が変わった。それは当然の話ですね。ヤジに関しても、進化のきっかけになることもあるし、僕は「アホ、ボケ」も言われるのが当たり前だと思ってます。そりゃ、お金賭けて期待に応えられなかったら、そう言われるのは当然だと思うんですけど。
橋本:確かにあの耳の痛い言葉の中に、何か気づきを与えてくれるようなものというのはあるでしょうね。
浅井:ヤジは、そう、必要。言われて育つと思うんですけどね~。
橋本:浅井選手の中で、競輪選手としての進化、何か現時点でありますか?
浅井:実は、四日市の時に初めてシューズを変えたんですよね。アシックスのクラシックのやつからカーボンのやつに変えまして、今、それが違和感しかないんです。要は、これまでのやつがとにかく履きやすいんです。でも、なんでもそうだと思うんですが、新しいものっていうのは機能は増してると思うんですよね。例えばiPhoneでも新しく変えたら最初は使いにくいじゃないですか。でも使っていくうちに、新しい方が便利になっているって、色んな場面であると思うんです。だから、今の成績を変えるために、その増している機能に対応できる自分に変化してみようというのはありますね。旧型じゃなく、新型に変えてみて、どこまでやれるかを試しているところですね。
橋本:なるほど。新しい道具を操れる自分に変化することによって、レベルがワンランク上がっていけるようにと、まさに進化ですね。とにかく今日より明日、明日より明後日と、そのたゆまないストイックな取り組みはさすがとしか言いようがありません。
浅井:いやいや、僕ストイックじゃないですよ。三日坊主ですよ。
橋本:そんなアホな!!(笑)
浅井:いや、あの三日坊主って大体、途中で辞める事を言うじゃないですか。じゃなくて、僕、三日で習得するぐらい集中してやり続けて、辞めるっていう三日坊主ですね(笑)
橋本:すごい天才じゃないですか!
浅井:いやいや、そうじゃなくて
橋本:あ!!没頭できるんや。
浅井:そう、ずっとあの下手したら起きた瞬間から寝るまでというか、寝ててもパッて起きたりするじゃないですか、その時に思い浮かんだら、動いてみたりとか。それが大体三日という。集中してマスターする努力を三日で完結する感じですね。そしたら、また次に新しいものが出てくるんで、またこれまでやってたのをリセットして、新しい方向へという。それって、心技体の心の部分なんです。心というのはしんどい時に踏ん張るとか、気合で何とか!みたいな捉え方をされている事が多いと思うんですが、そうじゃなくて精神状態をどうもっていくかという。本当にその世界に入りこむっていう無心の状態になれるかどうかという話なんですよね。いわゆるゾーンに入るという感覚です。
橋本:何となくわかります。無心になって没頭するっていう時が一番、作業効率もいいし、吸収が早いですよね。いわゆる座禅の、禅の教えとでも言いますか。
浅井:どんな状況に人は置かれても無心になれるし、没頭するものがあれば進化は続けられると思うんです。極端な話、牢屋に入って、ずっと外に出られなくたって、きっと文章を書いたり、筋トレできたり、とにかく集中して取り組める何かはあると思うんです。ちなみに僕も座禅とかはやったりしますよ。
橋本:いやぁ、今日は本当に競輪選手としての浅井康太というよりも、一人の人間としての話と言いますか。どこでどんな状況に置かれても、浅井さんはその中で、ポジティブに生きていける人なんだろうなって感じました。
浅井:悩みはいっぱいありますよ。ありますけど、それに縛られて結局前にも進めないというのではなく、自分が動かんことにはアカンっていうか、自分が考えないと意味がないんで。悩むんなら、とにかく動いてみようって話ですよね。
橋本:選手としての側面だけではなく、人間としての浅井康太が今後、どういう風に変わっていくのか一人のファンとして非常に楽しみにしています。しかし、今回の取材、本当に選手としての調子とか状態とか、全くお聞きしませんでした。このコラムを最後まで読んだけど、浅井に関して車券予想の参考になる収穫はまるでなかったぞ!と読者から言われそうで怖いですが(笑)
浅井:いや、これ、めちゃめちゃよく喋ったんで、あれですよ!頭が回ってる時は、大体調子も上がってくるんで、多分調子はいいんじゃないかなということに・・・・きっと調子は上がってくるということに(笑)
橋本:では、絶好調ということでいいですか?
浅井:いや、ボチボチということで・・・(笑)
橋本:あ・・・ありがとうございました。ダービー頑張ってください。
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※インタビュー / 橋本悠督(はしもとゆうすけ)
1972年5月17日生。関西・名古屋などでFMのDJを経て、競輪の実況アナウンサーへ。
実況歴は18年。最近はミッドナイト競輪in小倉を中心に活動中。
番組内では「芸術的なデス目予想」といういいのか悪いのかよく分からない評価を視聴者の方から頂いている。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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