今年新設されたガールズケイリンのGI。最後の開催となったのは11月21日~23日に小倉競輪場で行われた『第1回競輪祭女子王座戦(GI)』でした。見事完全優勝を飾りガールズグランプリの切符をつかみ取った梅川風子選手(東京112期)にレースの振り返りを中心に、年末へ向けてのお話を伺いました。
山口みのり:競輪祭女子王座戦(GI)、完全優勝おめでとうございました。
梅川風子選手:ありがとうございました。
山口:少し時間経ちましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか?
梅川:優勝した瞬間はすごく嬉しかったんですが、次の日ぐらいにはもう切り替えて次へ向けてという感じでした。
山口:あとで情報を見たのですが、体調が悪い中で走っていらっしゃったそうですね。
梅川:体調も悪かったのですが、自転車も進みも、しばらくずっと悪かったんです。それでジャパントラックカップに出たんですが、更に崩してしまって、ダブルパンチでした。前検日に入ってからもしんどくて、当日欠場になるのは覚悟していました。それを選手管理に報告、相談していたのですが、初日は熱が下がりなんとか走れました。
山口:そうでしたか。初日は体調面で大変でしたね。ただ展開は、前で踏み合いがあり梅川選手に向きましたね。
梅川:展開も自分に向いたのもあるし、体調が悪かったので、自分の中では期待せずに展開待ちみたいな感じになっちゃいました。それは良くない事なんですけど、良くない中でも自分に展開が向いてきたって感じでした。なのでレース後にインタビューで「一走して感じはどうですか?」と聞かれても「展開が向いたとしか言えないです」という感想でした。
山口:ガールズのGIはいつものポイント制の予選ではなく勝ち上がりのレースです。オールガールズクラシック(GI)では準決勝は4着で残念ながら決勝はいけませんでしたが、女子王座戦(GI)は、「準決勝は勝負だ」と体調面も含めて思っていましたか?
梅川:勝負だなとは思ってたんですが、体調がもう本当悪かったので、「絶対に勝ち上がってみせる」とか強い気持ちはあんまり考えずに走っていました。逆に、力は抜けて走れていました。
山口:ガールズグランプリに出るには決勝に勝ち上がらないと、なども考えずに?
梅川:はい。そこは全く考えなかったです。「まずはこの準決勝っていう一つのレースをどう完結させようかな」という気持ちで走っていました。そこまで「決勝に向けて勝たないと」とか「絶対3着以内に入って決勝乗るぞ」みたいな意気込みではない感じですね。
山口:そうなんですね。レースは太田りゆ選手(埼玉112期)の上を仕掛けて先行になりましたが、あの展開や仕掛けも流れの中でみたいな感じだったんですか?
梅川:事前にレース展開をざっくりと予想している中で、太田選手のS取りは可能性がそこまでないのかなと考えていました。ただ実際は太田選手がSを取りました。でも次の瞬間には別の展開が頭の中に出てきたので、そのまま走ったっていう感じです。準決勝は、レース前に「こうしようかな」や「あの選手が動いたらこうしようかな」などは、考える必要がないかなと思ってあんまり考えてなかったのも良かったです。
山口:なるほど。仕掛けた後は、梅川選手の後ろがもつれる形になりましたね。
梅川:もつれるようなペースになっちゃった感じでした。私が早く仕掛けて、そこからスピードを上げすぎてもゴールまではもたないと思っていたので、「後ろでもつれてるな」と確認して、落ち着いてレースができたのかなと感じていました。
山口:初日は捲り、準決勝は先行と巧みなレースをされていたので、体調が悪かったというのを後で見た時は本当にびっくりしました。見ていて感じませんでした。
梅川:見てる人にはわからないぐらい結果や動きもが良かったから、「体調が悪いです」と言ったところで「え?」という反応になると思います。私自身も、別の人がこんな成績が出ているのに、「体調が悪い、調子が悪い」と言っても「そんなわけなくない」って思いますもん(苦笑)でも、実際はこれが事実です。実際には、こんな気持ちで走っていました。
山口:ありがとうございます。では決勝戦ですが、このレースも先ほどおっしゃっていたように「優勝したらガールズグランプリ出場」などの気持ちはなく、一つのレースを走りきるという気持ちだったんですか?
梅川:そうですね。「この一戦を走りきる。どう攻略しようかな」としか考えていなかったです。ただ正直に言うと、自分が勝つ可能性はそんなに高くないなと思っていました。走る以上はもちろん1着を目指すのですが、ただ自分が1着を取るイメージはあんまり湧いてきてなかったです。佐藤水菜選手(神奈川114期)だったり、太田りゆ選手だったり、もちろん他の選手も、トップスピードで自分より強い選手たちがいる中で、どういう風に仕掛けるのがベストなんだろうとかなり悩んでました。
山口:佐藤選手や太田選手は、特にいつも練習を一緒にして、脚力やレース内容とかもよく知ってる選手だったというのも含めてですか?
梅川:それもあります。そういうことも踏まえて、自分がどう動くかっていうことを結構悩みましたね。仕掛けるタイミングを決めてしまうか、どうしようかをずっと考えてたんですが、発送前ぐらいまでには結構すっきりまとまって「こういう動きをしたいな、こういう展開に持ち込めるだろうな」っていうなんとなくイメージがついたので、それでいこうと思ったんですけど、号砲が鳴る瞬間ぐらいに、再度「どうしよう」って悩んだ感じです。
山口:え?もうレース始まります。
梅川:スタートする直前ぐらい、一礼しているくらいで、「ちょっと、どうしよう」って悩み出しました。たまにあるんですよ。
山口:すごいお話です!そこで焦ったりはしないんですか?
梅川:焦ってます。焦ってるからそういう風に考えてるんですよ。「自分が思う展開にならなかった場合、どうしよう。これは考えてなかったなー」みたいな。迷いが出てしまいました。「迷いが出てるのはまずいな」と思って立て直しをはかりました。迷っていると落車しちゃったりとかもあるから、そういうところはだめだから気を付けないとと。
山口:スタートして周回中は梅川選手は佐藤水菜選手の後ろ、前から2番手で進める形でしたね。
梅川:はい。佐藤選手がSを取らなかった場合は、私が取ろうと思っていました。ただ、自ら取りに行くのではなく、いわゆるSを取らされる形は避けたかったんです。佐藤選手がスタートした瞬間にどう動くかを見ていました。先に踏んでいくのか、スタートけん制をかけてくるのかを見た上で判断してもいいかなと思って、それで佐藤選手の出方を見てから自分も踏み込んだ感じでした。
山口:初手の並びの段階ではどう思っていましたか?
梅川:佐藤選手が、周りが出ないなら自分が行くっていう感じの出方をしたんです。なので、そのまま私も追いかけようかなっていう気持ちに切り替わりました。その瞬間にもう展開は私に向きそうだなと思っていました。
山口:次の動きは打鐘すぎでした。吉川美穂選手(和歌山120期)が一気に仕掛けてきました。あの動きはどう見ていましたか?
梅川:吉川選手の動きは、ゆっくり抑えに来る感じではなく、さっとスピードがのった仕掛けでした。そこから一気にスピードも上がっていきました。1回スピードが上がったら、ガールズケイリンのスピードのコントロールは前の方で始まってしまいます。「もうこれは佐藤選手が有利だな」と思ってましたね。
山口:佐藤選手がどこから仕掛けるかで、梅川選手の仕掛けも変わってきたと思うんですけど、それはどう考えていましたか?
梅川:私の調子が良ければ、佐藤選手と車間を切って、ホームなり最終BSからの仕掛けをしたいなと思っていました。ただ調子が悪かったので、自分の仕掛けよりも佐藤選手の仕掛け待ちみたいな感じになっちゃいましたね。
山口:最後の追い込みのスピードにかけようという判断になったんですか?
梅川:佐藤選手のスピードがすごく高いのはわかっていたので、佐藤選手が仕掛けたところを更に自分が仕掛けるよりも、仕掛けたところを待って、そこで足がためられれば良いなと思っていました。あとはもう直線勝負だなっていう感じですね。
山口:最後の直線はどうでしたか?
梅川:いやー、正直、追い込みに行った時、全然出なかったんで全く抜ける気はしませんでした。でも最後は抜けたので良かったです。
山口:佐藤選手もかなり踏み直していたんでしょうね。
梅川:やっぱ強いですよね。佐藤選手は、仕掛けのスピードよりも踏み直しが強いイメージが私はあります。ゴール前が一番トップスピードが高い感じですね。今まで抜いてきた他の選手よりも、きつい感じでした。ギリギリでした。
山口:目の前のレースだけを考えて走られて、結果としては完全優勝でGIを取りました。素晴らしい結果です。
梅川:そうですね、本当に自分でびっくりですね。こんなことがあるんだな、と不思議です。勝ち上がりの時点で、うまく自分の形に持ち込めたり、体調が悪くても諦めずに走ったりした結果、決勝の車番も良かったですし、いろんなことが積み重なって結果が出たので良かったです。
山口:その優勝で200勝も同時に達成ということだったんですね。
梅川:そっちは全く意識していませんでした。今年はなかなか走れていませんでしたしね。
山口:10月前半にオールガールズクラシック(GI)が終わって11月の女子王座戦(GI)までの間は、ジャパントラックカップなどもあってハードだったと思いますが、ガールズケイリンへの意識というのはどうだったんですか?
梅川:そうですね、競技の大会とこの女子王座戦(GI)の日程が隣り合わせだったので、もちろんハードなことは承知の上でオールガールズクラシック(GI)からの期間を過ごしていました。心の準備とかそういうのはできてたんですが、やっぱり体調の面で女子王座戦(GI)へ万全で入ってこれなかったのが自分の中で残念、というか申し訳なかったです。本来、万全で入るべきだと思うので、そこら辺うまくできなかったのはかなり悔しい部分ではありました。国内のレースをおろそかにしたくないので、グランプリはしっかり体調を整えたいなと思います。
山口:今年は地元立川で、ガールズグランプリが行われます。前回2019年の立川グランプリは出場されましたが、結果は残念でした。
梅川:そうですね。地元だったんですが、落車があり再乗して7着でした。あの時の悔しい思いを晴らせるようにと思います。
山口:今年のメンバーを見て印象はいかがですか?
梅川:グランプリに何回か出てる中で、「今年だからすごい」とか、「あの年だからどう」っていうのはあんまないです。今年は、今年の調子のいいメンバーが揃ったんだなという感じですね。
山口:前夜祭なども含めてですが、今後のスケジュールや過ごし方を、言える範囲で教えて欲しいです。
梅川:沖縄で競技の合宿をしています。合宿の合間に前夜祭も参加をして、合宿後は各自調整をしてグランプリへ、という感じですね。
山口:立川バンクへ練習へ入る予定はありますか?
梅川:入らないです。ナショナルチームの拠点である伊豆で練習ですね。
山口:立川の印象はどうですか?
梅川:もうみなさんご存知だと思いますけど、立川はやっぱり重たくて風が強いです。でも天気が良かったら風もないし、風が気にならない日もある。ただバンクは絶対重たいので、ただそこまで不利ではないかなと思います。
山口:梅川選手は去年の年末、同じ時期に立川を走って完全優勝をしていますね。
梅川:そうですね。走りました。あの日も風が強かったし、バンクが重かったなと感じました。でも、競技では重いギヤで練習をして踏めていますし、空回りするよりは重い方が良いのかなと思います。
山口:地元のガールズグランプリへの気持ちはいかがですか?
梅川:女子王座戦(GI)は、「優勝を目指す」とかそういうところまではっきりと言えるような状態でスタートできなかった中での優勝だったので、自分の中でも「あれ?」という感じでした。なのでグランプリはしっかりと体調を整えて、自分でしっかりと戦えるという状態で入りたいなと思いますし、そういう熱い気持ちで走りたいです。優勝だけを目指して頑張りたいと思います。
山口:地元ということで、お客様もたくさん応援に来てくださると思いますが、いかがでしょう。
梅川:とても楽しみです。なかなか地元でグランプリって経験できないと思いますしね。そのあたりはしっかり自分の胸に刻んで走りたいなと思ってます。
山口:ありがとうございます。では、最後にオッズパーク会員の皆様へ向けてメッセージをお願いします。
梅川:地元の東京でガールズグランプリを走れることを本当に誇りに思いますし、地元のご声援を力に変えてしっかり走りたいなと思っているので、ぜひ現地に来ていただき、応援していただけると嬉しいです。
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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。
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※写真提供:公益財団法人 JKA
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