2023年12月8日の岸和田競輪場で通算52人目の500勝を達成した坂上樹大選手(石川80期)にお話を伺いました。
大津:500勝達成おめでとうございます。
坂上:ありがとうございます。
大津:達成されたお気持ちはいかがですか。
坂上:率直に嬉しいです。
大津:500勝という数字はどのように受け止められていらっしゃいますか。
坂上:【〇百勝】という節目がある中で、500勝というのは選手の中で一つ目標としている数字ですし、歴代の偉大な選手が達成している記録でもあるので僕も取れたら良いなぁって思っていたら達成することが出来たので良かったです。
大津:デビュー当時から【500勝】への意識はあったのですか。
坂上:デビューした時はそんな目標は立ててなかったです。とにかく勝ちたい、一着を取りたいってそんな感じでした。それが積み重なって500勝が近くなった時に意識し始めましたかね。100勝して200勝して、節目の勝利を達成する度に「今度は300勝出来たらいいな。」「次は400勝したいな。」ってそんな思いでやってました。
大津:では、次は600勝を目指してということになりますか。
坂上:そうですね、600勝できるかっていうのは正直分からないですけど次の一勝っていうのは常に変わらず思っています。勝つっていうことが僕たち選手がお客さんに貢献できる一番のことですから。
大津:選手によっては節目の勝利の際に記念品を作っている方もいらっしゃいますが。
坂上:周りで500勝を達成した選手の方にどうしているのか色々と聞いてはいます。自分も作ろうとは思っているのですが、今のところ何を作ろうかっていうのは決まってないです。今まではトートバッグやTシャツを作りました。
大津:坂上選手はデビューしてから勝ち星を積み重ねるペースに差がないように感じます。
坂上:ほんとですか。一着は多いかなって思ったことはあります。周りからも「一着選手だね。」って言われたこともありますし。着をまとめるっていうか、それよりかは一着を取ってる感じですかね。
大津:そういうのは自力選手に多いイメージがありました。
坂上:そうですよね、中部でいえば山内卓也さん(山内卓也選手・愛知77期)とか志智さん(志智俊夫選手・岐阜70期)とかもそういうイメージがあります。中部の追い込み屋には多いですかね、縦足があるんだと思います。
大津:興味深いデータがありまして坂上さんは冬場によく節目の勝利を挙げられています。
坂上:夏より冬のほうが好きってのはありますね。寒いほうが気持ちがピリッとするんですよ。暑いとダラッとしちゃうというか。だからといって冬場のほうがタイムが出るとか得意とかってわけじゃないです。
大津:500勝を達成した岸和田の初日は目標不在のレースでした。
坂上:中部地区で自力型がいなくて付けられる選手もいませんでした。鷲見選手(鷲見逸喜選手・岐阜79期)が僕と一緒だったんですが、彼が任せるよって言ってくれたんでじゃあ流れを見ながらやろうって思ってました。中団中団を確保しながらって思っていたらジャンで前が踏み合っていて、このままだと僕が一番後ろになりそうだったので追い上げていこうと思った時に前の選手が緩めていたので、僕自身の勢いを殺すのが勿体なかったので、そのまま前に出ちゃいました。縦はどこかでは出そうかなって思ってましたが、あんなに早く行く予定は全くなかったです。
大津:決まり手は【捲り】でしたが【逃げ】みたいな仕掛けでしたもんね。
坂上:レース終わったあとに周りからも言われました。僕の中では【捲り】でも別に良いかなぁって、なんだったら【差し】でも(笑) 俺は自力屋じゃないんで決まり手にこだわりはないですね。
大津:今回逃げ切ったからといって今後坂上さんが前を走る時に戦法が変わることはないってことですね。
坂上:A級戦なので縦を出す準備というのはいつでもしていますけど、レースで中部の選手がいたら僕はその選手の後ろに付けますから、自力でどうのってのはあまりないです。
でも誰もいなくて任されたときは頑張りますよ。今回も鷲見が「任せるよ」って言ってくれたんで、それには答えなきゃいけないなって思いました。
大津:レース後は鷲見選手を讃えるようなコメントも出されていましたね。
坂上:俺が自力屋じゃないから鷲見も抜けるだろうと、俺を残さないかんと考えてくれてたと思うんです。僕も走ってて「いかん、これは6着か7着になるやつや。鷲見頼むから残してくれ」って思ってましたから。そしたらまさかの押し切りだったので自分でも驚いています。
大津:普段の練習では自力も出しているんですか。
坂上:練習ではみんなやってると思います。追い込み屋だからといって追い込みの練習だけではなく自力の練習も。じゃないとレースにならないんです。自力型の選手はレースでも自力を出すのでそこまで脚は落ちてこないと思うんですが、僕らはレースでは人の後ろを回るので脚力が落ちていくんです。だから練習で自力を出して脚力を強化しておかないと競走の時に苦労しますね。
大津:後ろを固める上で大切にされていることはありますか。
坂上:まずはラインの3車で決めることです。2車ならワンツーですね。ラインで上位独占を決めるために追走をしっかりする、守り切る、前を残すってのは常々考えています。そのためにレースの前にはしっかりと話をします。みんなが同じ気持ちをもってレースを走らないといけません。その中で誰が1着2着3着でも良いんじゃないかなって気持ちは正直あります。ラインの誰でもチャンスないと意味ないんで。だから4番手とか5番手ってのはよっぽどじゃない限り、皆で話をして回らないほうが良いんじゃないかと言います。車券に絡めるのは3人しかいませんからね。買ってくれてるお客さんのためにも全員が一着を目指せる位置があるのが良いんじゃないかなって。
大津:確かにファンからすると自分の推してる選手が5番手だと複雑な気持ちになりますもんね。
坂上:そうですね、選手からしても我慢して回るんじゃなくて本当に納得して回るのであれば良いんですけど、そうじゃない思いが少しでもあるなら僕はきっちりと話し合いをしてラインを決めるべきだと思っています。
大津:そういう思いはお弟子さんたちにも伝えているのですか。
坂上:僕たち選手は僕たちだけの勝手な思いで走ってはダメなんだよってのは伝えています。お客さんが見てくれているわけですからね、だから途中で着を諦めてしまうような走りはしてはいけないって言ってますね。じゃないとお客さんに失礼じゃないですか。もちろん僕たちも人間なので調子の波はあります。だけど、その中で手を抜かないっていうかその時の100パーセントは出してほしいですよね。
大津:今年は6度の優勝がありましたが、どんな一年でしたか。
坂上:久しぶりに良い一年でした。腰を壊したり、首を壊したり、膝を壊したりと色々あったんですが、以前に怪我したそういった部分が癒えてきたってのもありますし、落車もなかったので身体的に良かったのが今年の成績に繋がっていると考えています。皆さんもお分かりだと思うんですけど競輪って成績が良くなって点数が上がると番組にも恵まれるんですよね。そういう部分が全部恵まれた気がします。
大津:来年はS級に返り咲きますね。
坂上:前に同じ状況だったときは厳しかったんですが今回は戦える状態だと思います。
ただ、今言ったようにA級からS級に上がったばかりだと点数がない状況なので番組としては厳しい番組になるんじゃないかって思いますね。2番手じゃなくて3番手を回る機会も増えそうです。でも、その中でラインで決められるよう頑張ってコツコツと点数も上げていきたいです。そうすればS級でも戦えると思います。
大津:今後の目標を教えてください。
坂上:長く選手を続けていきたいですね。そのためにも身体の状態を良くして、練習も怠らずにやっていきたいです。チャレンジとかの下のクラスに落ちてしまうとあっという間に終わってしまうと思うんです。だからS級とか上位に長く居られるよう一戦一戦丁寧に走りたいですよね。
大津:何歳までっていう具体的な年齢目標はありますか。
坂上:60歳まではとりあえずやりたいです。
大津:では、また節目のインタビューで沢山お話がお伺いできそうです。
坂上:500勝を達成している選手は最近増えてきているので600勝はやりたいですね。
大津:最後にオッズパークの会員の皆様にメッセージをお願い致します。
坂上:一つ一つのレースを一生懸命に頑張ってお客さんの車券に一つでも絡めるように頑張っていきます。これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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