記録尽くめの2022年。最後の大一番も制し、KEIRINグランプリ2022を制した競輪界最強の脇本雄太選手(福井94期)にお話を伺いました。
大津:グランプリ優勝おめでとうございます。
脇本:ありがとうございます。
大津:少しお日にちが経ちましたがお気持ちはいかがでしょうか。
脇本:自分の中ではグランプリに関しては、去年のことなのでしっかり気持ちを切り替えてと思っています。
大津:その思いが和歌山記念でも結果として表れていたように思います。
脇本:僕の中では正直ラインで決められなかったレースというのもありますし、100%納得出来たわけではありません。
大津:グランプリを走ったすぐ後のシリーズで気持ちを維持して走るのは難しいのではないですか。
脇本:僕自身、気持ちの切り替えを早くしないといけないタイプでして、いつから気持ちを入れようかと考えた時に自分に厳しく元日からしっかりと切り替えようと思ってました。1月1日から練習も始めたのですが、それが結果的に和歌山記念にも繋がったと感じています。
大津:グランプリ王者として走る中で気持ちに変化はありましたか。
脇本:初日特選だけは1番車のユニフォームを着ている違和感というか「僕が着てるんだ。」という変な意識はあって浮足立ってる感じはありました。
二日目以降は切り替えて、今年一年頑張っていこうという気になりました。去年、古性君(古性優作選手・大阪100期)が味わってた気持ちが少し分かりましたね。
大津:では、グランプリのお話を伺っていきたいと思います。競輪祭を新山選手(新山響平選手・青森107期)が優勝したことで北日本勢が4人になりましたが、その時の心境を教えてください。
脇本:構成的には初めは3分線とかになるのかなって思ってたんですが、北日本が揃ったことで2分線になってしまい、近畿としてはやりづらくなってしまったなっていうのが正直な感想です。
大津:結果的に3選手が単騎を選択しました。
脇本:単騎勢の思考を読み解かないと僕らがどうしても不利になってしまうのでその辺りの対応もすごく悩まされました。
大津:普段からGIの決勝戦などで戦っているメンバー相手でも考え方は変わってくるものなのでしょうか。
脇本:そうですね、グランプリだからいつものレースとは違うことをしてくる人もいますし、そこも難しいなって思いましたね。
大津:グランプリメンバーが決まって本番まで約1ヶ月空くのですがシミュレーションはされるのでしょうか。
脇本:シミュレーションはしますが、あくまで頭の中でだけです。練習の中ではグランプリを想定してっていうのはやらないです。
大津:北日本勢が二段がけをしたら、このタイミングで仕掛けようとかっていう練習はされないんですね。
脇本:しないほうが良いです。練習の中で取り入れたとしても、その場で新田さん(新田祐大選手・福島90期)とかが走るわけじゃないですからね。
たまにそういう練習もしますけど鵜呑みにしないというか深くは受け止めません。
大津:本番前に古性選手と練習はされたのですか。
脇本:今回に関しては僕から古性君にお願いして一週間だけ一緒に練習させてもらいました。
大津:練習環境が伊豆から福井に変わりましたが、その辺りで何か影響はありましたか。
脇本:練習を見てくれる人がいないということ、また練習の中で使える機材が限られてくるなど制限はありましたが、それを不利ととらえずにプラス思考でやっていこうと思っていたので影響は特にありませんでした。
大津:競輪祭での脇本選手の走りを見て、状態面を心配された方も多かったように感じます。
脇本:競輪祭前は正直スケジュールをタイトにしすぎてしまいました。グランプリは一か月調整期間をもらえるので、その間にしっかりと修正できると思ってました。
競輪祭は不甲斐ない走りをしてしまいましたが、グランプリへ向けては競輪祭での結果を重く受け止めてはなかったです。古性君もそうだったと思います。
大津:公開練習などで平塚バンクを走ってみていかがでしたか。
脇本:平塚は2年前のグランプリでも走ってますし、自分自身も悪い感覚というのはありませんでした。
大津:先ほど北日本勢が4人揃ったことで難しくなったと仰っていましたが、どのようなイメージでレースは考えてたのですか。
脇本:新山君の駆けるポイントだったりペース配分とかを見極めた上でレースをしないといけないと考えていました。結果的には松浦君(松浦悠士選手・広島98期)の動きで僕ら近畿勢に良い方向にレース展開が向いてくれました。
大津:単騎の選手が北日本を分断するかもしれないというのは思ってましたか。
脇本:誰かが分断に行くだろうなとは思っていましたけど、あそこまで早く行くとは考えてなかったです。
大津:早い段階から松浦選手が動いたときは、どのように見てたのでしょうか。
脇本:意外だなとは思ったのですが、それと同時に「さすがだな」って見てました。
松浦君からすると自分からレースを動かしにいきたいという気持ちがあった中での判断でしょうし、展開待ちをしないというところが、さすが松浦君だなと。
大津:前がもつれる中で脇本選手自身は仕掛けるポイントなどどう考えていたのですか。
脇本:後ろ攻めになった時点で残り二周になったら行こうと考えていました。
ただ、新田さんがもう一度松浦君のところに追い上げたことで自分が追い上げなくてもペースが上がってくれたので自分としては余計な足を使わずに回ることができたってのが大きかったです。
大津:新山選手の先行はいかがでしたか。
脇本:ジャンの4コーナーあたりではヤバいなって思いました。ただ、僕も自分で仕掛けた以上は自分を信じ切っていくっていう風に決めていたので気持ちの強さが出た気がします。
大津:新田選手とも壮絶な踏みあいになりました。
脇本:2022年のいわき平でのダービーでの決勝戦を思い出すようなレースだったのかなと。
大津:出切った時に優勝の確信というのはありましたか。
脇本:いやいやいや全然なかったです。余裕はありませんでした。古性君とワンツー勝負が出来るかとは感じましたが抜かれると思いました。
大津:優勝した時はどのような思いがこみ上げてきましたか。
脇本:すべてを出し切ったレースの中で勝ち取れた優勝なので一層嬉しいものでありました。
大津:この優勝で年間獲得賞金が3億円を突破しました。
脇本:周りの盛り上がりに対して僕はけっこう冷めてて、「あー、3億かぁ。」とは思ってるくらいで、でも、本当に光栄なことだなって感じて胸を張って、驕ることなく来年もしっかり頑張ろうという気持ちでいます。
大津:以前オッズパークのインタビューで「3億円は言い過ぎだ。」って仰ってましたが、言い過ぎではなかったですね。
脇本:現実になっちゃいましたね。
大津:これからも脇本さんは周りからいろいろと求められるのでしょうね。
脇本:もう記録ないっすよ。いっても去年だけでけっこう記録塗り替えたんですから。
獲得賞金も連勝記録も勝率も・・・まだ何かありますかね。一年間で全てのGIとグランプリ取ってのグランドスラムとかですか。
大津:年頭の和歌山記念を見てると本当に達成されそうな気がいたします。
脇本:正直そこまで意識してほしくはないですね。対応する僕としても疲れてくる部分ではあるので(笑)
大津:大きなケガから復帰された中での記録づくしの2022年でしたが、改めてどんな1年でしたか。
脇本:2021年はオリンピックもあって不安定な部分もありお客さんに迷惑をかけた部分もありましたが、その中で自分のできることはやってきたつもりではいます。
2022年だけではなく今年、そして来年と自分のやるべきことを長く続けていきたいと思っています。
大津:最後にオッズパークの読者の皆様へメッセージをお願い致します。
脇本:グランプリチャンピオンとして迎えた和歌山記念では優勝することができました。
自分の目標として目の前の一戦一戦をしっかりと勝ち続けることを念頭に置きながら今年一年レースをしたいとは思いますし、最終目標はグランドスラムと思ってはいるのですが達成できなかったらできなかったで、それも自分の競輪人生だなと思いますのでそこも含めて一年間見守ってくれたら幸いです。
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※インタビュー / 大津尚之(おおつなおゆき)
ソフトな見た目と裏腹にパワフルで安定感のある重低音ボイスが魅力。
実況、ナレーション、インタビュー、俳優など活躍の場は多岐にわたる。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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