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ばんえい名馬ファイル(7) ヨウテイクイン

華麗なる一族 ヨウテイクイン

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Photo●OPBM

 雪の馬場を、彩りも鮮やかな馬服を着た馬たちのパレードが続く。

 帯広競馬場で毎年恒例になっているばん馬の引退式である。今季で競走生活を終える競走馬たちが、最後の勇姿をファンにお披露目するのである。1億円馬のフクイチも、一度も特別レースに縁のなかった馬たちも、この日は五十音順でのパレードである。「重賞競走に一度も出走できずに終わりますが、無事是名馬という言葉があるように故障もせずに本当によく走ってくれたよ」と、ある調教師の言葉が印象に残った。

 ばん馬を愛するファンと最後の別れのセレモニーであり、全国的にもひじょうに珍しく、当日は道内外のファンでスタンドは満杯である。

 数々の名勝負を演じた馬たちにねぎらいの声が飛ぶ。だが、この引退式を前に繁殖牝馬となった名馬がいる。平成7・8年度のばんえいグランプリを連覇し、数々の名勝負でファンを魅了した牝馬ヨウテイクインである。
 スピードの女王と呼ばれたヨウテイクインは、昭和59年度の農林水産大臣賞典馬ハイスピードを父に、母は"ばんえい界の華麗なる一族"と呼ばれる名馬たちを数多く輩出しているトツカワ、叔父に1億円馬のタカラフジ、農林水産大臣賞典馬ニューフロンテヤ、兄に重賞10勝のダイヤテンリュウと、文句なしの良血である。

 エリートだけにデビュー前から注目されていたが、北見で行われた能力試験では1着合格。デビュー戦では2着馬のアジアテンリュウ以下に大差をつけ、圧倒的な強さで楽勝劇を演じ名血ぶりを見せつけた。

 牝馬ながら885キロの鹿毛の馬体を持ち、父譲りのスピードと障害の巧みさは、3歳牝馬の重賞・白菊賞、黒ユリ賞の二冠を制し3歳牝馬ナンバー1となる。

 デビュー当時885キロだった馬体も、最終計量では936キロと成長し、牝馬には難しいといわれる4歳秋の重賞・ばんえい菊花賞では牡馬のコーネルトップやダイヤキャップを相手に牝馬3頭目の菊花賞馬に輝き、5歳時にはヒロインズカップ、クインカップ、銀河賞と、3年連続の重賞ウィナーとなった。『1着ヨウテイクイン(6歳)、2着コトブキクイン(4歳)、3着ニセコクイン(7歳)』。確定放送のあと、スタンドが沸いた。

 トツカワ産駒の3姉妹が1~3着を独占したのだ。同一レースに3姉妹が出走を決めた時から話題ではあったが、それが現実となったのである。改めて"華麗なる一族"の証を見せつけたばんえい史上に残るレディースカップであった。

 前週、そのレディースカップで3姉妹の先頭を切りゴールしたヨウテイクインだけに、当然ファン投票で出走馬が選ばれるばんえいグランプリに出走を決めた。

 第7回ばんえいグランプリ当日、岩見沢は朝から雨。スピードが身上のヨウテイクインには恵みの雨であった。1番人気の10歳馬マルゼンバージには、高重量戦は実績があるが時計の速い競馬を苦手としているだけに、今日だけは降ってほしくなかった雨である。

 雨が勝敗を決めた。人気投票で選ばれただけに、のちの1億円馬フクイチ、快速コーネルトップと実力馬が揃ったが、ヨウテイクインのスピードは雨を味方にし、フクイチなどは追走もままならない。マルゼンバージだけが必死で追うが、2分16秒7の好タイムでゴールしたヨウテイクインの2着が精一杯の結果だった。

 「デビュー前から調教してきた馬ですが、引退の前年まで重賞レースを勝ってきましたからね。兄ダイヤテンリュウの10回優勝に並びました。1億円馬の望みもあったんですが、9歳の春に体調を崩し、シルバーカップでは4分49秒8。シマヅショウリキの勝ちタイムが2分19秒1ですから、馬主さんと調教師の大友先生(※1)が話し合って引退式の前に繁殖に上げたんです。ヨウテイクインほどの牝馬はもう出ないと思ってますよ。でも今年はトツカワ産駒の末っ子のカゲプリンスがデビューしましたからね。姉と同じ北見で1勝していますし、スピード馬ですから楽しみですよ」

 普段は寡黙な1000勝ジョッキー(※2)千葉均騎手が熱く語ってくれた。

 現在のヨウテイクインは、その名を貰った羊蹄山の麓で数年後デビューするであろう仔のために、優しい母の顔と堂々たる母の体型になっていると聞く。

文/小寺雄司

(馬齢は当時の旧年齢で表記)
※1:大友榮司調教師・当時。
※2:1999年当時。

ヨウテイクイン
1990年5月7日生 半血 牝 鹿毛
父 半血・ハイスピード
母 半血・トツカワ
母の父 ベルジ・ジアンデュマレイ
北海道虻田郡ニセコ町 堀忠一氏生産
競走成績/138戦34勝(1992~98年)
収得賞金/82,940,000円
主な勝鞍/92年白菊賞(岩見沢)、黒ユリ賞(帯広)、93年ばんえい菊花賞(北見)、94年ヒロインズカップ(旭川)、クインカップ(岩見沢)、銀河賞(北見)、95年ばんえいグランプリ(岩見沢)、96年ばんえいグランプリ(岩見沢)、97年チャンピオンカップ(帯広)、北見記念(北見)


月刊「ハロン」1999年10月号より再掲

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