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馬券おやじは今日も行く(第27回)  古林英一

輓曳から「ばんえい」へ

 存廃論議で気の揉める昨今である。これは公営競技(いわゆる3競オートですな)全般に共通していえることなのだが、1950年代に、自治体(中央競馬は国だが)の収益源として現在の公営競技が出そろい、以来半世紀の歴史を刻んできた。ついでに、ちょいと細かいことをいうと、3競オートのうち、競馬については「自治体の小銭稼ぎとして競馬をやる」という文言は、競馬法のどこを探してもないのである。あるのは収益の使途を定めた第23条の3だけなのである。しばしば「財政競馬」といういい方がなされるが、少なくとも、競馬に関しては「財政寄与」を目的にあげる必要は実はないのである。

 だから、競馬については、「財政への寄与」ではなく、「馬事文化の保全・継承」を目的に掲げてもかまわないのである。このことは、ばんえい存続のひとつの根拠として、高く掲げてもいいのではないだろうか。全国津々浦々のばんえいファンの多くは、馬券だけが目当てではなく、ばんえいという世界でも類例をみない馬事競技そのものを愛好しているのだと小生は信じている。もちろん、馬券推理も重要な楽しみではあるのだが。

 さて、小生の今回の表題は「輓曳から“ばんえい”へ」であるが、輓曳と“ばんえい”は同じだろ?という疑問はもっともである。これは文学的表現というものなのである。もちろん、辞書的な意味は同じだ。だが、その昔、輓曳と表記されていた時代と、現代の「ばんえい」と表記される時代では、ずいぶんその内容は変わっている。

Sori1  ばんえい競馬情報局をご覧になるような方なら、先刻ご承知とは思うが、馬と橇を連結している帯のような馬具がある。胴びきというのだが、これは布製で、橇との連結部分だけ鉄製のチェーンが使われている。

 輓馬大会などではチェーンのみの胴曳きも使われている。なぜ故に布製の胴曳きが使用されているのか、布よりもチェーンの方が丈夫だろうと小生なんぞは思っていたのだが、実はさにあらずで、チェーンは腐食による損傷があって、切れやすいのだそうだ。そこで麻製、現在はナイロン製の胴曳きが使用されているのだという。

 また、胴びきに平行して、長い棒が装備されている。これはかじ棒である。「輓曳」の時代のかじ棒は木製(タモの木が使われたそうな)だったのが、今ではグラスファイバー製である。木製では損傷が起こりやすいことに加え、タモの木そのものが資源枯渇によって入手困難になってきたことから、グラスファイバー製に切り替えられた。

 タモの木に替わる材料を探し求めていたとき、たまたま走り高跳びのバーを見た関係者がこれだと思いついたという逸話が残っている。走り高跳びと輓曳競馬、思わぬところで思わぬものが結びつくものだ。早速関係者が尋ね回って見つけたバーのメーカーが、あのミズノであった。ミズノの担当者も思わぬ注文でさぞびっくりしただろう。ということで、今は違うそうだが、最初のグラスファイバー製かじ棒はミズノ製だったのである。

 橇だって当初は木製だったのが、今の鉄製になったのは、1970年代になってからの話である。重量物も当初は麻袋やカマスに土砂を詰めたものだったのが、今は鉄板である。

 一見すると、昔ながらの競技のように見えて、その実、ずいぶん近代化がおこなわれているのである。伝統の継承・保存と、近代化という、一見相反するテーマをさりげなく、実現したのが「輓曳から“ばんえい”へ」という流れであった。

 と、今回はちょっと学者っぽいシメで、お後がよろしいようで。

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