13日(日)メインは3歳オープン馬による重賞・愛馬の会会長杯「第7回阿久利黒賞」(水沢1600m)、10頭立て。
昨年まで阿久利黒賞は冬期の3歳重賞で行われていたが、今シーズン、3歳レース体系が見直され、?短距離路線の休止、?レース開催時期の変更―などが行われた。その一環として阿久利黒賞は今年、5月に実施することになった。
それによって3歳牡馬ダート路線はスプリングカップ(4月15日 水沢1600m)→重賞・阿久利黒賞(5月13日)→七時雨賞(水沢1800m)→重賞・岩手ダービー・ダイヤモンドカップ(盛岡ダート2000m)からG?・ジャパンダートダービー(大井)へと向かう路線。
一方、3歳牝馬は菜の花賞(4月14日)→重賞・留守杯日高賞(4月29日)→あやめ賞(5月12日)→重賞・ひまわり賞(5月27日)と路線を変更し、以降は岩手ダービー・ダイヤモンドカップ、仮にそれを勝った場合、出走意思があればジャパンダートダービーにも進める形となる。
さて本題。今年の阿久利黒賞、セイントセーリングvsネバーオブライトの一騎打ちムードが濃厚だ。
(スプリングカップ1着 セイントセーリング 写真・佐藤到)
まずセイントセーリング。デビュー当初は芝が活躍の舞台でパワーの要るダートではちょっと精彩を欠いていたが、それを吹っ切ったのが今年1月2日、重賞・金杯だった。当時は馬場の凍結対策として融雪剤が撒かれていたが、不思議なことに芝適性が高い馬が大活躍。今回、出走するカネショウエリートも同様のケースで寒菊賞(水沢1600m)を制したが、セイントセーリングも馬場を味方に金杯をスイスイ逃げ切り。圧倒的な1番人気に支持されていたパラダイスフラワーの追撃を封じ、待望の重賞タイトルを手に入れた。
そして前走・スプリングカップでも後続を引きつけて逃げ切り勝ちを収め、このレースに駒を進めてきた。
対するネバーオブライト。何度も記してきたが、デビュー戦を驚異のレコードタイムをマーク。続いて盛岡ダート1400mを舞台に行われた若松賞も快勝し、船橋へ遠征。重賞・平和賞へチャレンジしたが、残念ながら力足りずキンノライチョウから1・3秒差4着に破れ、地元・南部駒賞もパラダイスフラワーの4着。
陣営はその一戦で早々と切り上げ、遠野馬の里へ放牧。そこで英気を養うとともに坂路で地力アップに努めた。
(若松賞1着 ネバーオブライト 写真・佐藤到)
今季始動は4月30日。村上佐重喜厩舎は元々、無理をさせずゆったりとしたローテーションを組むが、ネバーオブライトもじっくり休養させ、5ヵ月半ぶりに戦列に戻ってきた。ただ、最終追い切りの反応がひと息だったため、当日は2番人気(1番人気はダンストンリアル)。550キロを超す大型馬だけに、一戦は様子を見た方がいいという評価だった。
しかしネバーオブライトは久々のハンデをモノともせずに逃げ切り。さすがにゴール前は久々の影響もあって脚色は一杯だったが、それをはねのけて勝つのだから、やはり底力が違った。
そして今回は実戦を叩かれて気配アップは歴然だし、馬体も締まってくること必至。両馬は甲乙つけがたい評価になるのも当然だろう。
で、結論はネバーオブライトを主軸に推す。完成度ではセイントセーリングが一歩リードだが、ここはネバーオブライトの上昇度に託そうと思っている。
このラインは強力だが、もし割って入るとすれば着実に力をつけ、スプリングカップ2着、前走もネバーオブライトの0・1秒差2着ハルサンヒコ。あとは前回圧勝劇を演じたワクワクヨークン、終いの脚が魅力ソードあたりだが、ここはネバーオブライト、セイントセーリングのマッチレースを期待したいところだ。
◎ ?ネバーオブライト
○ ?セイントセーリング
▲ ?ハルサンヒコ
△ ?ワクワクヨークン
△ ?ソード
3連単は8、12の1、2着折り返しから3着は1を厚め。4、10は押さえ程度
馬複は8−12、1−8、1−12、4−8
<お奨めの1頭>
11レース デュアルライフ
昨年までA1級に在籍し、今季はC1へ降格。初戦を2着にまとめ、特別・五葉山特別(C1)、前走B2級と目下2連勝中。ここも勝負付けが済んだメンバーだ。
今週は12、13日の2日間開催。12日(土)メインは3歳牝馬による特別「第33回あやめ賞」(水沢1800m)。今シーズン、3歳路線が一部変更され、毎年8月に実施されていた岩手版オークス・ひまわり賞(3歳牝馬 地方競馬全国交流)が5月27日と開催が早まった。それに伴い、この「あやめ賞」は重賞・ひまわり賞トライアルに様替わりして1、2着馬にはひまわり賞への優先出走権が与えられる。
中心は毎度のことながら、パラダイスフラワーで絶対だろう。特別・菜の花賞、重賞・日高賞と逃げ切り2連勝。今季は直線で遊ぶところが出てきたが、地元岩手、しかも同世代の牝馬同士ならこれは愛嬌みたいなもの。ここで体力を温存させて来たる大舞台へ軽く足慣らしと行きたい。
(パラダイスフラワー 写真・佐藤到)
ところで今回もパラダイスフラワーは今回も1枠を引き当てた。菜の花賞、日高賞も同じ1枠。まるで1枠希望のように最内枠からのスタートとなったが、小林騎手は日高賞後のコメントで「できれば外枠から控える競馬をしたい。2戦連続(菜の花賞、日高賞)で1枠だったので押し出させる形で逃げたが、ズブくなった今だと前に馬がいたほうがいいと思う」と。確かに今後のことを考えれば、逃げ一辺倒より好位追走がベストの戦法だし、揉まれる競馬も何回か経験済み。
とは言っても今度も菜の花賞、日高賞とほぼ同じメンバー構成だから、ほぼ逃げることは間違いなし。唯一の懸念材料は初の1800mだが、これとて全馬が未知の距離だし、水沢1800mは内枠が圧倒的に有利。まさにパラダイスフラワーに勝ってくださいの条件がそろった。
相手も順当にマツリダワルツが演じる。今季はパラダイスフラワーと同じステップを踏み、3歳A1戦1着(2着パラダイスフラワー)、菜の花賞3着、日高賞2着。菜の花賞ではシュクジャンヌ(今回は出走申し込みなし)に先着を許したが、これは早めマクリからパラダイスフラワーを負かしに行ったもので納得の3着。続く日高賞2着で3歳牝馬?2の座を確定させた。
(マツリダワルツ 写真・佐藤到)
身上とするのは牝馬特有の切れる末脚。390キロ前後の小柄な牝馬だが、いわゆるカミソリのように切れる脚で直線一気に台頭する。ただ菜の花賞396キロ、日高賞391キロと馬体の細化が若干の気がかり。昨年、400キロ台で走っていたことを考えればもう少しフックラしたい。それによって切れが鈍くなることはまずないだろうし、逆に当日の馬体重がさらに減っていればちょっと割り引きが必要かもしれない。
以上のラインを崩すとすればサクラアリエルだろう。牝馬ながら480キロと雄大な馬格を誇り、デビュー当初から注目を集めていた1頭。しかしソエなどで順調さを欠いて昨シーズンは1勝のみに止まったが、今季は体もパンとして2、4、3着。その3着は日高賞だったが、スローの流れに反発し、自ら動いて一発勝負に賭けたもの。その中味からも進境度は著しく、こちらをパラダイスフラワーとの本線にする手もある。
以下は休み明け3戦目と走り頃を迎えたサイレントステージ、今季不振だが重賞ウィナー・オーナーズスキャンまで。
◎ ?パラダイスフラワー
○ ?マツリダワルツ
▲ ?サクラアリエル
△ ?サイレントステージ
△ ?オーナーズスキャン
3連単は1を1着固定に5、10の折り返し本線。あとは6、9を3着押さえ
馬複は1−5、1−10、1−6
<お奨めの1頭>
8レース テンポウキング
豪快なマクリが冴え渡って目下2連勝中。今回は先に行きたい馬がそろい、展開もこの馬向きだ
ここ北国岩手でも桜の季節が終わりました。今年の見ごろは水沢が4月22日頃、盛岡が5月1日頃だったでしょうかね?かつて無い程の暖冬で季節が一ヶ月ぐらい早く進むのではないかと思われたのも束の間、春先の冷え込みのおかげで一気に元に戻るどころか、むしろ例年より遅れ気味の春となってしまいました。
盛岡ではなぜかこの頃風の強い日が多く、とくに5月4日の夜から5日の早朝にかけては強烈な雷とともに暴風が吹き荒れ、散り始めた桜の花をいっぺんに吹き払ってしまいました。
この時期はいつも思うのですが、日本人というのは本当に桜の花が好きなんですね。岩手では毎朝まだ氷が張っているころから、気象庁が発表する桜前線に全国民が注目。そして実際の開花日が早まったり遅れたりするたびに一喜一憂し、咲いたら咲いたでテレビでは生中継、人々はいつ花見に行くかでそわそわしたりして…。ネイチャーフォト好きなカメラマンとしては、絵的に見栄えのする一瞬のタイミングを逃すまいと思いながらも仕事の都合で動けなかったり自分の腰の重さに動かなかったりして、毎年この時期は何かに追われるような気持ちになってしまいます。
桜の何がそれほどまで日本人の心を捉えるのか?あの満開時のボリューム感でしょうか、それとも小さな花びらがひらひらと舞い散る儚さでしょうか?? 余談ですが、桜の皮を使った樺細工や桜材を使ったインテリアも私はかなり好みです。また桜の染め物もやわらかなピンク色に発色してとてもきれいなものですが、あれは桜の花ではなく、開花直前の樹皮を使って染めるのだと聞いたことがあります。とすれば春先の桜の木はその体中に桜色のエナジーが充満していて、そして枝の先の小さな出口から一気に吹き出した力が花というかたちになっているのかもしれません。
昔の人は桜の下には何かが埋まってるんじゃないかと考えたそうですが、それもそんな見えないエナジーを感じたのかもしれませんね。
(文/写真・佐藤 到)
5月6日 第33回シアンモア記念(3歳以上オープン・地方競馬全国交流 水沢1600m)
(シアンモア記念ゴール 写真・佐藤到)
1着 ニューベリー
1枠から好ダッシュを決めて逃げの手に出る。戦前はダンディキングが逃げるかと見られていたが、菅原勲騎手は当初からこの戦法を取るつもりでいたようだ。
というのはトライアル・栗駒賞でも1番人気に支持され、絶好の3番手をキープ。前の馬を射程圏に入れて、どこからでも抜け出せるポジションにつけたつもりだったが、いざ3コーナーで追い出しをかけてもまったく反応せず、ただもたつくばかり。
ひとまず直線で若干盛り返して4着にまとめたが、転入初戦でクビ差2着まで肉薄した末脚をイメージしていた菅原勲騎手にしてみれば案外の結果となっていた。
そういう訳で逃げの戦法を取った。また仮に他の馬が来ても「ハナを譲るつもりはなかった」とコメントした。
1周目スタンド前でペースが落ち着き、ニューベリーはハロン12秒台後半の正確なラップを刻み、4コーナーでゲイリーエクシードが並びかけるシーンもあったが、再びニューベリーが突き放して2馬身半差。岩手では3戦目で初勝利を飾り、それが待望の重賞タイトル獲得となった。
「3コーナーを回っても手応えが良かったのでこれなら大丈夫だと思った。9歳馬だが中央時代に無理をして使っていなかったので馬体の張りもいい、衰えを全く感じない。おそらくタイプ的にマイル以下の距離がベストだと思うが、岩手のような小回りで時計のかかる馬場なら長い距離もこなせるのでは」と菅原勲騎手。
2着 ゲイリーエクシード
いつもは最後方か、それに近い場所がマイポジションだったが、今回はスローに近い流れと見て後方4番手からの競馬。向正面からロングスパートをかけ、4コーナーで一瞬、ニューベリーに迫る場面もあったが、そこまで。「今日はいつもより長い脚を使え、いい感じで追い詰めたと思ったが、相手がまた伸びたから仕方がない」と沢田騎手。
こちらは10歳馬でめっきり馬体が白くなってしまったが、衰えなし。3月の一戦こそ後方のまま8着に終わったが、前回1着、そしてこのシアンモア記念2着と老いてますます末脚が冴え渡っている。この状態を維持できる厩舎スタッフには本当に頭が下がる。
3着 ヤマニンエグザルト
終始4番手インにつけ、直線も最内を突いて渋太く伸びる。前回・栗駒賞でほとんど見せ場なし9着に沈み、ピーク過ぎたかと思ったが、得意のマイルと本来の根性が復活し、3着を死守した。
5着 サイレントエクセル
冬期間はずっと川崎で調整されてグレードレースを狙っていたが、脚部不安のアクシデントもあってマリーンカップ1戦のみに。そのレースでも本来のシャープさが影を潜め、11着に惨敗。
今回はそれ以来の実戦に加え、遠征の反動が心配されたが、ひとまずプラス10キロで出走にこぎつけたことにはホッとした。それでも「道中、ブレーキがかかった感じで走った」(板垣騎手)そうで、もたつきが目についたが、直線を向いてようやくエンジンがかかり、直線大外から鋭く伸びる。結果的には5着だったが、今後に明るい材料が出てきた。
11着 オウシュウクラウン
スタートで出遅れを喫し、終始後方を追走。直線でもいいところなしで二ケタ着順11着と信じられない内容と結果。
前走・栗駒賞を叩かれて馬体そのものは良くなっていたが、パドックで入れ込みが目立つ。そしていつもは掛かり気味にレースを進めるタイプだが、それも見られなかった。どうやら精神的なスランプに陥っている印象で、なんとか復活のきっかけを掴んでほしい。
4日連続開催の前半2日を終えて、菅原勲騎手が絶好調です。2日で5勝のハイペース、3日・4日とメインレースも勝ち、開幕当初のスランプ感を完全に払拭しました。最初など開催6日間でたった3勝しか出来なかったですからね。最近スロースターターな菅原勲騎手とはいえいくらなんでも勝てなさすぎだろうと思っていましたが、1ヶ月たっていよいよエンジンがかかってきたようです。
好調時の菅原勲騎手の乗り方は『ライバルをきっちり封じ込めて自分が勝つ』。現にこれまで絶好調だった小林俊彦騎手はこの2日でわずか1勝。それも菅原勲騎手がいないレースで勝ったもの。馬券検討の念頭に置いておいて欲しい傾向です。
小林俊彦騎手独走ムードで始まった今シーズンでしたが、役者が揃って一層面白くなりそうですね。
◇お奨めこの一頭
11R:ユキノキャスター
他の人気しそうな馬はいずれも差し馬、それも追い込みに近いポジションから来る馬。うまく先行策が取れればそのままのシーンも。