カネサブラック有終の美を飾る!
24日(日)は年度末の頂上決戦・ばんえい記念(4歳以上オープン)が行われ、単勝1.0倍の圧倒的1番人気でこれが引退レースのカネサブラックが優勝。重賞21勝の金字塔を打ち立て、引退の花道を飾りました。
馬場水分は1.8%とやや重めの状態で、ばんえい記念恒例の新旧重賞ファンファーレが鳴り響きました。そろったスタートからゆったりと各馬が第1障害へ。ホッカイヒカルを最後に、まずは障害を突破します。キタノタイショウ、カネサブラック、ホクショウダイヤあたりが馬群をリード。いつも以上に進んでは止まり、進んでは止まり、を繰り返し、ほぼ各馬横一線で第2障害にたどり着きました。
真っ先に動いたのはカネサブラックで、やや遅れてギンガリュウセイも登坂開始。ホッカイヒカル、ホクショウダイヤも果敢に挑み、キタノタイショウも仕掛けます。しかし先頭で天板に脚をかけたのはカネサブラック。少し間を置いたのち、グッと腰を入れると荷物を曳き上げると、次第に馬体が前傾。先頭で障害を突破しました。やや遅れてキタノタイショウもクリア。そしてさらにギンガリュウセイが続きます。
しかし先頭のカネサブラックは残り30メートル付近でいったん脚を止め、これにキタノタイショウが迫る展開。これに勢いよく伸びてきたギンガリュウセイが追いつき、三つどもえの様相を呈します。カネサブラックとキタノタイショウがスピードを生かしてギンガリュウセイを突き放すと、脚を止めているうちにギンガリュウセイが追いつくという、一進一退の攻防。しかしキタノタイショウが脚を止めるインターバルが早くなり、残り10メートルを切ってカネサブラックが単独先頭。ギンガリュウセイが歩き続けて2番手に浮上し、先頭をうかがう勢い。キタノタイショウは脚を出しては止まるという苦しい状況となります。
そして残り5メートル。脚を止めていたカネサブラックに、ギンガリュウセイが並び掛けて前に出ようか、という勢い。しかし、ここからが王者の底力でした。渾身の力を振り絞って歩きはじめたカネサブラックは、一歩ごとにギンガリュウセイより前に出始め、わずかに1秒9だけ先に荷物を運び切りました。ギンガリュウセイは王者を苦しめたものの、惜しくも2着。つねにこの2頭に食い下がる勝負根性を見せたキタノタイショウが3着となりました。なお、カネサブラックと同じくこれが引退レースだったナリタボブサップは5着で入線。無事、全馬完走を果たしました。
カネサブラックは前述のとおり、これが重賞21勝目。スーパーペガサスの20勝を上回るタイトルを獲得しました。5、6歳時に重賞で勝ち切れなかったのが、今となってはうそのようにも感じられる、この金字塔。紛れもなく、ばんえい史上に残る名馬と言えるでしょう。通算成績は186戦72勝。25日第6レース終了後、ナリタボブサップとともに引退式を行ったのち、種牡馬として第2の馬生を送ることとなります。
その王者を最後まで苦しめたのがギンガリュウセイ。今季はばんえいグランプリ、北見記念を制し、帯広記念でも2着に健闘しました。高重量戦でもきっちり歩けるところが最大の武器で、今後もパワー優先のレースで力を発揮してくれるでしょう。
キタノタイショウは今回もいわゆる"善戦止まり"でしたが、この重量で終始2頭に食い下がったレース内容は素晴らしいの一語。まだ7歳だけにさらなる飛躍が望めそうで、今後も重賞戦線を沸かしてくれるに違いありません。
松田道明騎手「調教師、厩務員もこのレースを勝とうと思って力を入れてやってきて、最高の状態で馬を出走させてくれました。ギンガリュウセイもキタノタイショウも最後にかなり攻めてきていましたし、カネサブラックもだいぶ辛くなってきて止めてもバックしなくなりました。余力がなくなっていたんです。一瞬どうしようかな、と思ってゴール前でも迷っていましたが、なんとか一生懸命追って、馬に助けてもらって勝つことができました。この馬に騎乗したことですごく勉強になったし、育ててもらいました。この経験を生かして、ほかの馬もうまく乗れるようになりたいですね。
役目を果たした、安心した、というのが今の気持ちです。ゴールするまで勝ったか負けたかわかりませんでしたが、『やった!』という厩務員の一言で勝利を知りました。ゴール前20メートルでスタミナが切れて思うように動かない場面があり、こんなアクシデントは今までありませんでした。焦りましたね。こんなところで負けられない、という強い思いで乗り切りました。スーパーペガサスの記録を抜くことができて、しみじみとうれしく思います」