大みそか31日メインは岩手競馬の恒例行事・岩手版グランプリ「第47回桐花賞」(水沢2000m)。今年度は正月競馬を実施しないため、桐花賞がレギュラーシーズンの1年を締めくくる(11Rはあるが)一戦。
岩手競馬の根幹レースはシアンモア記念、一條記念みちのく大賞典、桐花賞。以上3レースすべて出走はヴァケーション、ゴールデンヒーラー、ノーブルサターン、そしてフレイムウィングスの4頭のみ。今年1年、紆余曲折があったが、オープン重賞戦線は3強で推移したことを裏付けるメンバー構成となった。
本命はノーブルサターン。昨年12月、南関東A1から転入。いきなりトウケイニセイ記念、桐花賞と重賞2連勝を飾ってシーズンを終了した。今年は赤松杯から始動して4着からシアンモア記念へ臨み、好位キープから直線抜け出しを決めて完勝。今年も健在をアピールした。
続く一條記念みちのく大賞典では1番人気に支持されたが、後方のまま。ヴァケーションに2秒3差7着に終わった。それが尾を引いたのかマーキュリーカップも二けた10着。その後は秋田の牧場で完全放牧に出た。復帰まで思った以上にかかったのは夏負けがひどかったため。ご存じのように今年は岩手も猛暑続きだった。
10月22日にようやく戦列復帰したが、2番手キープから直線一杯5着。年齢的な衰えかと思わせ、北上川大賞典は屈辱の5番人気だったが、鮮やかな逃げ切りを決めた。前走・トウケイニセイ記念は出遅れながらも貫禄の2連覇。2600mから一気に1600m短縮もまったく問題にしなかった。
今回のテーマは桐花賞2連覇だが、もう一つ重要な仕事がある。連覇はイコール年度代表馬の座を盤石にすること。昨年の年度代表馬はヴァケーションだったが、今年は絶好のチャンスとなった。
ヴァケーションは重複するが、昨年度の年度代表馬。白星はシアンモア記念優勝のみだったが、マーキュリーカップ3着、盛岡開催のJBCクラシック挑戦など年間を通して活躍したことが評価された。
今季始動はノーブルサターンと同じく赤松杯でグローリーグローリの2着。上々の滑り出しだったが、連覇を狙ったシアンモア記念でまさかの7着。逃げたゴールデンヒーラーの2番手につけたが、共倒れになって2頭で撃沈した。
一條記念みちのく大賞典4番人気もやむなしだったが、逃げの手に出て8馬身差で圧勝。シアンモア記念7着から一転、見事な復活劇を演じた。マーキュリーカップは7着、川崎遠征・スパーキングサマーカップ12着。"らしさ"をまったく見せることができず、3ヵ月半休養。トウケイニセイ記念は何とか間に合った格好だったが、見せ場を作って2着。
この一戦を使えたのが陣営にとっては心強い材料。ぶっつけで桐花賞は不安が大きかったが、2着連対は大収穫。昨年はノーブルサターンに完敗2着だったが、今年こそ雪辱。2年連続で年度代表馬へまい進する。
ゴールデンヒーラーも苦難の1年だった。昨年、JBCレディスクラシック出走取り消し後、北海道へ帰郷。"一回り大きくなった"と渡辺正彦きゅう務員が語り、復帰戦の栗駒賞を完勝。今年の主役を予感させたが、シアンモア記念6着、一條記念みちのく大賞典8着に凡走した。
佐藤祐司調教師「フェアリーカップは引退も覚悟した一戦」だったが、ゴールデンヒーラーは1秒4差で圧勝。続く青藍賞も完勝で堂々の2連覇を達成し、マイルチャンピオンシップ南部杯へ2年連続で挑戦。昨年は5着、今年は7着だったが、ようやく本来の動きを取り戻した。
2度目の挑戦となった船橋・クイーン賞8着の評価に迷うところだし、今回の水沢2000mは本質的には向かないが、2着1回。こなせない条件ではない。仮に優勝すれば悲願の古馬ビッグタイトルを獲得することになる。
フレイムウィングスは中央ダート2勝、南関東1勝・B1級から転入。ピリッとした脚がないため未勝利だが、一條記念みちのく大賞典3着、北上川大賞典2着など重賞で馬券対象を果たしている。よく言われることだが、三強は成り立たず―の定説を考えれば一角を崩す可能性は十分にある。
ホッコーライデンは中央ダート4勝、北海道1勝・A1級から転入。初戦のトウケイニセイ記念でメンバー最速の上がりを披露して4着。スロースターターで展開に注文がつくが、3着候補には押さえたい。
マイネルアストリアは前回快勝。自分の競馬ができれば強じんな粘りを発揮する。三強がけん制し合い、マイペースに持ち込めれば残り目一考。
◎④ノーブルサターン
〇⑧ヴァケーション
▲⑤ゴールデンヒーラー
△⑦フレイムウィングス
△⑩ホッコーライデン
△①マイネルアストリア
<お奨めの1頭>
7R ササキンローズ
前走2着は勝った馬が強く仕方なしの結果。このメンバーなら首位を譲れない
30日メインは2歳重賞「第48回金杯」(水沢1600m)。圧巻の無敗5連勝で全国に名をとどろかせているフジユージーンは現在、静岡県御殿場市で休養中。ナンバー2・ミヤギヴァリアントは軽い剥離骨折の手術を受けて宮城県で休養。トップ2が不在に加え、トライアル・寒菊賞を完勝レッドオパールも当初の予定どおり自重。よって中心不在の一戦となった。
セイバイラックはデビュー4戦まで芝1本のローテーションを組み、若鮎賞2着、交流・ジュニアグランプリ4着。未勝利ながら毎回上位争いを演じた。しかし転機は芝1600mの予定だったが、走路悪化のためにダート変更となった1600m戦だった。不安はもちろん初ダート対応だったが、2番手キープから4角先頭。直線は後続を突き放す一方で2着に8馬身差をつけて圧勝。初勝利が初ダート。秘めた適性を存分に発揮した。続く牝馬交流・プリンセスカップ4着。岩手最先着を果たした。
評価に迷うのは太夫黒特別3着だが、12頭立ての最内1番枠。1周目スタンド前で周囲が壁になって折り合いを欠いたのが痛かった。結果、寒菊賞は4番人気にとどまったが、うまく流れに乗ってレッドオパールの2着を確保。今回のメンバーでは最先着を果たした。よりによって今回、前々走と同じ1番枠に入ってしまったが、山本聡哉騎手は二のテツを踏まず。今度こそ重賞タイトルを獲得する。
マルーントリックは北海道2勝2着2回から転入。兄は2021年度の年度代表馬であり、岩手競馬で一時代を築いたエンパイアペガサス。父はエンパイアメーカーからカリフォルニアクロームに替わり、420キロ前後の牝馬。兄とは100キロ以上の差はあるが、レースセンスは兄譲り。転入後も2、3着にまとめた。最大ネックは勝ち切れていないことだが、寒菊賞でセイバイラックとの差は0秒2。仮に北海道時代のように420キロ台まで回復すれば逆転の可能性は十分ある。
リトルカリッジはデビュー2連勝から芝・若鮎賞へ挑戦。1番人気に支持されて予定どおり逃げの手に出たが、8着に失速。明らかに芝が合わなかった。その証明がビギナーズカップ2着。同じく逃げの手からフジユージーンの2着に粘った。その後は3ヵ月の休養を余儀なくされ、復帰戦・プリンセスカップ12着に大敗したが、ひと叩きされて反応が一変。しかも後方に控えて直線抜け出しを決めた価値ある1勝。差し競馬もできるようになれば鬼に金棒だろう。
ドリームキャッチはデビュー3戦目の門別1200m戦を勝ち上がり、牝馬重賞・フローラカップへ挑戦9着。転入戦は3番人気に甘んじたが、中団キープから豪快に抜け出して快勝。好発進を決めた。その後は寒菊賞をスキップして金杯に合わせて調整。牝馬ながら馬格にも恵まれて2連勝を重賞制覇で飾る。
サクラトップキッドはデビュー戦で出遅れながらも0秒6差で完勝し、2戦目は1秒9差で圧勝。南部駒賞へ果敢に挑戦し、全国の強豪相手に5着に善戦した。寒菊賞は当然のように1番人気に支持されたが、前半は置かれっぱなし。追走にも手こずったが、上がり37秒8の脚を使って4着。小回り水沢がネックだが、地力は引けを取らない。
ミヤギシリウスはデビュー戦の芝1000mは4着だったが、ダートに替わって2戦目を圧勝。以降、ネクストスター盛岡4着、若駒賞でも2着を確保した。前走は3着に終わったが、0秒1差。この一戦を使って巻き返しに転じる。
◎①セイバイラック
〇⑤マルーントリック
▲④リトルカリッジ
△⑥ドリームキャッチ
△②サクラトップキッド
△⑧ミヤギシリウス
<お奨めの1頭>
3R ピラヴロス
前走は東北優駿以来、半年ぶりの実戦だったが、逃げ粘って2着。能力の片りんをのぞかせた。ひと叩きされて首位を奪回する
12月26日(火)、第9R・B1級・850m戦で村上忍騎手がチベリウスで逃げ切りを決め、地方競馬通算4000勝を達成した。前日25日(月)、第2R・C2級ビュウティマドンナで快勝し、4000勝にリーチをかけたが、以降は白星なし。強心臓で定評があるが、やはり大台達成は相当なプレッシャーだったに違いない。
26日、第5Rでベロニカブレインに騎乗したが、まさかの出遅れから3着惜敗。26日の達成は厳しいかと思われたが、続く第6Rでは9番人気マルケイヴェスパーで4着入線。これが村上忍騎手の真骨頂で、いい意味で腹をくくった。そして1レースを置いて自きゅう舎のチベリウスで記念すべき4000勝を飾った。
村上忍騎手「4000勝は春からの目標だった。途中ちょっと勝てない時期もあって、自分では特に変わりはなかったと思うが、勝てないと"あれ?"という感じにもなってしまった。来年に持ち越してしまうかなとも思ったりもしたが、年内に達成できて良かった。厩舎の勝ち星のことも頭にあって(※所属の村上実厩舎の地方競馬通算1600勝)それも達成できたらなと、自分の気持ちの中にあったから、自分のきゅう舎の馬で、同時に達成したので凄くホッとしている。菅原勲騎手の記録にも近づいてきたそうだが、その辺はあまり意識しない。ケガがないように乗って行ければと思っている。来年は自分の勝ち鞍もそうだけど、おもしろそうな馬たちがいるので、そこで何とか良い仕事ができればと思っています」
岩手競馬の通算最多勝は菅原勲元騎手(現調教師)の4127勝。今年、村上忍騎手は12月26日(火)時点で167勝と独走でリーディングジョッキー首位を堅持し、リーディングに返り咲くのは100%確実。
村上忍騎手のすごさは"一戦入魂"。どんな下級戦でも全力投球で臨み、勝利に対する貪欲さ、意欲は誰よりも強い。だからきゅう舎の支持、ファンの支持も大きいと思う。
村上忍騎手が『おもしろそうな馬たち』がいると語ったのは現2歳トップ2のフジユージーン、ミヤギヴァリアントとも主戦ジョッキーを務めているから。すでに2頭は休養に入っているが、復帰すれば主役を演じるのは確実だ。
村上忍騎手は1977年2月生まれだから現在46歳。そして騎手デビューが1994年7月デビューだから区切りの30年目。2012年から調騎会騎手部会会長の重責も務める"岩手競馬の顔"。いずれ聞いてみたいと思っている。"4000勝から見える世界はどんな感じですか?"と。
今週の岩手競馬
12月30日(土) メイン10R 「第48回金杯」(2歳 水沢1600m)
12月31日(日) メイン10R 「第47回桐花賞」(オープン 水沢2000m)
文/松尾庫司
この稿は12月26日の予想になります。ここで改めてですが、今シーズンの岩手競馬は12月31日がレギュラーシーズンの最終日(毎年回りくどく書くのですが、3月の特別開催も区切り上は"2023年度"に入るので、ホント回りくどいですけども、"2023シーズンの最終日"とは言えない)。1月には開催がありません。意外に気がついていない方がいるようなので改めて書いておきます。
ということで、残すところはこの26日と、30日・31日の3日間となりました。暖冬と言われた割にはしっかり雪が降ったりしている最近ではありますが、気温は実際、例年の今頃に比べると高めですよね。競馬場にいても例年ほど"寒い"と感じません。
そしてこのあとの年末年始は"10年に一度クラスの高温"だとか。盛岡市とか奥州市とかは最高気温がもの凄く高いという形ではなくて下の気温、最低気温がそれほど下がらない・・・という数日間になりそうです。雪ではなく雨の大晦日~元日になりそうでもあって、あまり変な天気にならないでほしいなと思うばかりです。
もう一度書きますがレギュラーシーズンの岩手競馬は26日と30日・31日の残り3日間。1月は開催がありません。お間違えなきよう。
そのかわり、30日には2歳の重賞『金杯』、31日は古馬のグランプリ『桐花賞』が行われます。最後の2日間まで岩手競馬でお楽しみください。
予想に行きましょう。12月26日のメインレースは11Rの『アンドロメダ賞』、B2級三組のダート1600m戦。本命は(7)ヤマショウデリーヌを狙います。
1番人気に推されながらも3着に留まった前走でしたが、結果的には向こう正面で1・2・3番手にいた3頭がその順番でゴールした形。スローに持ち込んだ勝ち馬にしてやられたという言い方でいいでしょう。
勝った二走前のように先行・好位から決め手を活かす形が勝ちパターン、自身のキャリアでは水沢ではまだ未勝利ですが、それは水沢のマイルでも十分通用するはず。馬場状態的にいわゆる"前が止まらない"傾向になる可能性は小さくありませんが、前走もそれでも3着に食い下がっていることを思えば大きな不利にもならないでしょう。ここは前走の雪辱を狙う、狙える一戦になると見ます。
(4)クロマツミッチーが対抗。前走は◎と同じレースでこちらは2着。この馬も勝った馬にしてやられた方になります。以前はマイルは少し長い、水沢のマイルは余計に苦手という印象でしたがキャリアを積んだおかげなのか今はいずれも問題無さそう。この馬にしても前走の借りを返したい一戦でしょう。
3番手は(5)ホウオウサマンサを。出走取消明けになりますが、以前も同様のパターンで初戦を快勝しています。今回も大きな影響はないと見て良さそう。実質的にB2復帰初戦になるものの時計比較ではむしろ優位ともいえ、馬体重等念のために注意は必要でしょうが、出走取消明けという事で人気が下がるようなら狙い目・・・でしょう。
(9)リュウセイグンのこの二戦は展開も向かなかった印象。前掛かりの流れにでもなってくれれば大きく浮上のチャンス。(3)タイムトゥゴーは今季序盤からB2級で勝ち負けしているように地力はある馬。人気で負けたり人気薄で好走したりの振れ幅が大きいタイプだけに直近の敗戦で軽視してしまうのは避けたいですね。(横川典視)
●11Rの買い目
馬単(7)=(4)、(7)=(5)、(7)→(9)、(4)=(5)、(7)→(3)
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25日メインはB1級一組「アラバスター賞」(水沢1600m)。各馬が一長一短のメンバー構成で、波乱の要素がたっぷりと含んだ一戦となった。
本命にマルケイアローを指名する。2歳時は1勝のみにとどまったが、3歳時に4勝をマーク。着実に地力が強化され、今シーズンも2勝2着3回。9月からA級入りを果たしたが、5着2回、7着1回。オープンの壁は厚かったが、前々走で3着確保。待機策に転じたのが功を奏した。
前走はB1級へ降格したが、好調馬がそろった上、1400mの忙しい競馬に手こずりながらも最速の上がりを駆使して3着に突っ込んだ。今回は実質A級メンバーだが、マイル延長は望むところ。脚質面で不安は残るが、決め手を武器に7月以来の勝利をモノにする。
アーバンキッドは一昨年、中央芝3勝から障害1勝を経て転入。いきなり芝交流・OROカップでロードクエストの2着を確保し、中央オープンの底力を披露した。昨年は順調さを欠いて未勝利に終わったが、今シーズンは芝重賞・いしがきマイラーズ2着で健在を誇示した。
転機は5走前のB1戦。当初予定は芝1600mだったが、走路悪化のためダート変更。アーバンキッドには厳しい変更だったかに見えたが、鮮やかな直線抜け出しを決めて完勝。続くダート1600m戦も快勝し、2連勝。JRA交流は5着だったが、近2走は連続2着。ダートで完全に勢いを取り戻した。心配は連戦による疲れ。今年10歳馬だけに若干割り引きが必要。対抗評価に落ち着いた。
サンエイブレーヴは昨年11月からA級に在籍。2着1回が最高で頭打ちだったが、9月の格付け再編成でC2へ降格。4勝をあげ、B1でも前々回快勝した。気性面に難があり、凡走ケースも少なくないが、前々走に強さ一目。レースが流れるようなら首位を奪回するシーンまで。
コリコは中央未勝利、川崎1勝・C2から転入。4勝2着3回3着1回。馬券対象から外れたのが強豪そろった前走・ひいらぎ賞4着のみ。抜群の安定感を誇っている。メンバーは骨っぽいが、すんなりの流れなら残り目も十分。
ソロムコは2戦7、5着に終わったが、前々走は直線で前がカットされる不利。前走は先行2頭の決着で流れが合わなかった。決め手を生かせる展開なら直線で台頭できる。
◎(9)マルケイアロー
〇(6)アーバンキッド
▲(4)サンエイブレーヴ
△(2)アルティマボス
△(5)コリコ
△(10)ソロムコ
<お奨めの1頭>
1R ピカパンドーラ
850m戦にエントリーして2戦連続2着。あと一押しのところで勝利を逃がしているが、今度こそ首位を奪取する