先週12月3日(日)、水沢1600mを舞台に「第22回トウケイニセイ記念」が行われ、3番人気に支持されたノーブルサターンが完勝。2着ヴァケーションに1馬身半差をつけ、トウケイニセイ記念2連覇を飾った。連覇はトニージェント(3連覇)、テンショウボスに続いて史上3頭目と偉業を果たした。
レースは2番人気グランコージーが逃げ、1番人気ミニアチュールが追走。ハイペースを形成し、縦長の展開となった。3番手インにヴァケーション、4番手外にインテンスライト、5番手グローリーグローリ、その外にノーブルサターン。
グランコージーが快調に飛ばしたかに見えたが、3~4コーナー中間でヴァケーションが先頭。ノーブルサターンも遅れずスパートをかけ、直線は2頭のマッチレース。残り100mでノーブルサターンが抜け出し、北上川大賞典に続いて重賞2連勝を飾った。
高松亮騎手「今回も強い競馬をしてくれて頭が下がります。感謝しかありません。前回(北上川大賞典=2600m)は緩い流れだったが、今回は距離が1600m。間隔も短かったので半信半疑の面があったが、返し馬の感じ良くて、これならば大丈夫だと思った。あとは流れを見ながらレースを進めた。早めに先頭に立ったヴァケーションに離されないで追走できたから、直線で交わすことができれば勝てるなと思った。次走の桐花賞はみんなが狙っているレースでしょうが、ぜひ連覇したいと思っています」
板垣吉則調教師「今日は中1週のローテーションだったが、状態が良かったので心配にはならなかった。2600mらいきなり1600mに短縮されても気にならなかった。去年もトウケイニセイ記念を実際に勝っていますからね。4ヵ月休養したのは夏負けもあったからだが、今の季節が合うんでしょうね。次走は予定どおり桐花賞。2連覇を目指します」
終わってみれば昨年の桐花賞と同じ結果。3歳馬ミニアチュール、快速グランコージー、新興勢力の挑戦も少なくなかったが、ノーブルサターン、ヴァケーションは格の違いを見せつけた。
ノーブルサターンはトウケイニセイ記念の連覇で今シーズン、シアンモア記念、北上川大賞典に続いて重賞3勝目。大混戦だった年度代表馬の争いから一歩抜け出した格好だが、仮に桐花賞をヴァケーションが優勝すれば、逆転の目も十分。まさに大みそか12月31日が雌雄決戦の場となる。
同日、トウケイニセイ記念の表彰式終了後、木村暁騎手の引退セレモニーが行われた。開始が17時ぐらいからだったが、多くのファンが木村暁騎手の引退、そして調教師合格を祝った。
木村暁元騎手「寒い中、たくさんの方々が集まってくださってありがとうございます。ジョッキー仲間のみんなにも感謝します。調教師開業は2月。3月競馬に合わせて準備を進めていきます。今後は調教師として岩手競馬を盛り上げていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします」
木村騎手、お疲れさまでした。今後は調教師として強い馬を育てて岩手競馬を盛り上げてください。
今週の岩手競馬
12月10日(日) 「第22回寒菊賞」(2歳 水沢1600m)
12月11日(月) 「ゴールデンジョッキーズシリーズ(2戦)」(10R・B2級水沢1400m、11R・B1級・1600m)
12月12日(火) 「阿久利黒特別」(2歳 水沢1600m)
文/松尾 康司
12月3日に行われた古馬マイルの重賞『トウケイニセイ記念』。ベテラン古馬から3歳馬までが集まった豪華メンバー出行われたこのレースはノーブルサターンが優勝。前走・北上川大賞典に続いての重賞連勝としました。
2番人気グランコージーが逃げ1番人気ミニアチュールがこれを追うという展開で幕を開けた戦い。しかし3コーナーあたりでこれら先行勢が失速しはじめ、替わって先頭に躍り出たヴァケーション、そしてそれを追って上昇してきたノーブルサターンが後続を引き離していきます。
何度も振り切ろうとするヴァケーション、何度も交わそうとするノーブルサターン。2頭のたたき合いは直線半ばでノーブルサターンが前に出たところで決着。同馬は昨年に続いて連覇を達成する勝利となりました。
2着はヴァケーションがしっかりと確保しましたが、3着はセイヴァリアント、4着はホッコーライデン、5着はマナホクと後方からの差し馬勢が飛び込んできて3連単は7万5千円ちょうどの波乱。グランコージーは9着、ミニアチュールは12着に終わっています。
12月5日のメインレースは12Rの『師走特別』、A級一組ダート1600mでの11頭立ての戦いです。
暦が12月に入って、盛岡・水沢ともに雪が降る日も増えてきましたが、やはり暖冬の予報通りというべきか、例年の今時期ほどには最低気温が下がらない日々となっています。そのおかげで例年なら凍結防止剤を使う時期になってもそれ無しで競馬を開催できているとの事。
先週や今週の水沢競馬では「重」や「不良」の馬場状態になっていますが、凍結防止剤を使っていない事でこの時期にありがちな"不良なのに脚抜きが悪く時計もかかる"馬場ではない、わりと普通の、普通のというと変ですけども、普通の重・不良馬場に近いようです。結果、時計が速いし上がりも速い。決め手が活きる。そんな決着が続いているように見えます。
この先寒さが厳しくなってくると、さすがに年末頃には凍結防止剤を使わないといけないようになるとは思いますが、この「いつもの冬の不良馬場とは違う馬場傾向」を念頭に置いて予想を組み立てる必要がありそうですね。
予想に行きましょう。師走特別の本命は(3)マイネルアンファンを採りました。
前走の北上川大賞典では6着だった同馬ですが、距離というよりはスローの上がり勝負の展開が向かなかった印象です。岩手で勝った時はいずれも上がり最速級の末脚。実際、敗れた時はほとんどの場合は先行有利・差し不利の傾向にも持ち味を削がれていました。今の馬場傾向なら極端な前残りにはならないでしょうし、決め手勝負の展開になってくれれば水沢のマイルでも力を出しきってくれるでしょう。
差しタイプで固める覚悟で対抗は(11)マイグレーションを。大外枠や距離の点はあまり気にしなくていいと思います。この馬も末脚はなかなかのものという点に注目。
そして3番手も差しタイプで(10)ハクシンパーソナル。8月以降勝ち星から遠ざかっていますがデキ落ち感はなく、力負けというよりは展開負けの印象です。春頃より相手関係が厳しくなっているのは確かとしても今回のようなメンバーと互角に戦ってきているのですから、あくまでも展開ひとつと考えていいはず。
ということで以下は先行タイプから、まず(7)マイネルアストリア。今年は夏場も順調に乗り切って好調キープ。こちらも差しタイプたちとは逆の意味で展開ひとつで押し切れていい馬。もう一頭は(6)トキノパイレーツを。こちらも近走は展開負けの印象が強いです。調子はずっと良いものを保っているだけに上位を争って不思議はありません。(横川典視)
●12Rの買い目
馬単(3)=(11)、(3)=(10)、(3)=(7)、(11)=(10)、(3)→(6)
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4日メインはオープン「スプリント特別」(水沢850m)。何度も記したが、850mは特殊レース。調子、近況成績以上にスーパースプリント適性を問われるのが特徴。休み明けでも850mなら息を持つことができる。今回は久々の実戦馬が不在だが、水沢850m戦なら適性だけで勝ち負け可能だと頭の片隅に入れてほしい。
本命はもちろんダイセンメイト。金沢デビューで2勝2着1回3着4回から名古屋1戦を経て転入。水沢2戦1400mで着外に終わり、そのまま埋もれてしまうだろうと多くの関係者が思った。
しかし、転機がどこにあるのか本当にわからない。菅原勲調教師はレースぶりを見て短距離向きではないかと判断。これがダイセンメイトを覚醒させた。850m戦であっさり3連勝をマークして盛岡ダート1000mも快勝。連勝を4に伸ばした。続いて盛岡ダート1200m戦に駒を進めたが、1秒5差6着に終わり、再び850m戦を2連勝。もう一度、1200へチャレンジしたが、2秒1差8着に大敗。1000mまでが守備範囲だった。
ただレースを見ると盛岡ダート1000m戦でもラスト100mで脚が上がっている。勝った時はセーフティリードを取った時。逆の場合は最後が甘くなってしまう。それは芝1000m戦でも同じだった。
対して850mは7戦7勝とパーフェクト成績。逃げがベストだが、今回は1枠にアヴェントゥリストがいるので、おそらく先手を主張。ダイセンメイトは外を追走すれば控える競馬もこなせる。とすれば2番手キープから直線抜け出しがイメージ。岩手11勝目に王手をかけた。
アヴェントゥリストは800m~1200mで通算14勝。今季も1000m、1200mでそれぞれ1勝をマークした。ここ3戦は着外に沈んでいるが、条件が合わなかったのも敗因。加えてひと頃に比べて下降気味の印象があるが、冒頭に記したように850mは調子以上に適性が大きなファクター。過去13戦6勝2着5回の抜群の連対率を前面に、巻き返しに転じる。
カタナは開幕から850mで2連勝を飾り、盛岡1000m2着から重賞・早池峰スーパースプリントへ挑戦して3着。その後は脚部不安が発生して5ヵ月の休養を余儀なくされ、11月に復帰。2戦とも着外だったが。今度は4戦3勝3着1回の850m戦。好走条件がそろった。
カルーナブルガリスは中央未勝利、園田を経て岩手入り。短距離を専門に使われて11戦連続で3着以上。4勝2着3回3着2回の成績でオープン入りを果たした。A級昇格後は苦戦が続くが、850m短縮で反撃必至。
ケイアイサクソニーは中央芝1400m以下で4勝をあげ、北海道へ移籍。2着2回から昨OROターフスプリントを0秒8差で圧勝。盛岡芝で持てる能力をフルに発揮した。今年3月に転入して3着2回。順調さも欠いたが。ダート変更のOROターフスプリント3着で底力を垣間見せた。850m未経験だが、格が不気味。
◎(2)ダイセンメイト
〇(1)アヴェントゥリスト
▲(7)カタナ
△(6)カルーナブルガリス
△(4)ケイアイサクソニー
<お奨めの1頭>
2R レアマカナ
前走は4ヵ月ぶりの実戦だっが、1秒2差で圧勝。初の850m戦だが、前回パフォーマンスを信じる手
12月3日メインは重賞「第22回トウケイニセイ記念」(水沢1600m)。第1回(2000年)、第5回(2004年)は12月中旬に実施されたが、ほかは年明けのレギュラーシーズン最終週に行われていた。しかし一昨年(2021年)から12月初旬へ移行。
この移行によりトウケイニセイ記念から桐花賞までのレース間隔が開き、昨年の覇者ノーブルサターンは桐花賞も制し、重賞2連勝を飾った。一昨年優勝ヒガシウィルウィンも桐花賞を使う予定だったが、走路悪化のために取りやめ。つまりトウケイニセイ記念を使った有力馬はローテーション的に組みやすく、桐花賞にも出走する可能性大。その意味でも目が離せない一戦となった。
ノーブルサターンは赤松杯から始動。昨桐花賞時に比べてプラス9キロで出走。久々の実戦も影響して3番手を追走したものの、最後の伸びが甘く4着。陣営も納得の結果だったが、2戦目のシアンモア記念を完勝。ゴールデンヒーラーが逃げてスローに落としたが、ペースが緩まず2番手ヴァケーションとともに直線一杯。対してノーブルサターンは中央競馬で同様の流れにも慣れており、2着に0秒3差で完勝。今年も健在を誇示した。
続く一條記念みちのく大賞典で当然のように1番人気に支持されたが、まったくシャープさが見られず7着。マーキュリーカップも10着に敗れ、4ヵ月休養。10月22日に復帰したが、馬体重がマイナス18キロ。久々も影響して5着に終わったが、ひと叩きされて反応が一変。北上川大賞典で見事な逃げ切りを決めた。
最大ネックは距離が2600mから1600mへ大幅短縮されたこと。距離対応が微妙だが、昨年のトウケイニセイ記念を完勝。大型馬だが、器用さを兼ね備えているタイプなら問題ないと判断した。
グランコージーは南関東から4度目の里帰り。2歳時に6戦5勝、重賞2勝をマークして2歳最優秀馬に選出された。翌年も川崎・クラウンカップ6着から再転入戦でクラシック一冠目・ダイヤモンドカップを逃げ切った。
今回の岩手入りはトウケイニセイ記念狙いは明らか。前走、盛岡ダート1600m戦を破格タイムで逃げ切って、好ムードで今回を迎えた。7番枠だが、先手を主張できるメンバー構成。気になるのは3歳・ダイヤモンドC以来、重賞に縁がないことだが、好走条件がそろったのは間違いない。
スズカゴウケツは中央ダート3勝、岩手1勝、名古屋1勝から再転入。1勝のみだが、シアンモア記念、一條記念みちのく大賞典で2着確保し、大舞台で強さを発揮している。前走・北上川大賞典は4着だったが、2600mは守備範囲外で度外視。マイル短縮で巻き返しに転じる。
ヴァケーションの評価が難しい。シアンモア記念は7着に凡走したが、一條記念みちのく大賞典を1秒3差で圧勝。健在を誇示した。スパーキングサマーカップ12着後、順調さを欠いてぶっつけで臨むのが不安だが、休み明け未勝利ながら2着2回3着2回ならマズマズ。アッサリまで十分。
ミニアチュールはダイヤモンドカップ、東北優駿(岩手ダービー)、ひまわり賞(オークス)、OROオータムティアラと牡牝馬クラシック四冠を獲得。川崎・ロジータ記念10着に沈んだが、直線では無理をせずダメージは少ないはず。古馬初挑戦でどんなパフォーマンを見せるか。
ホッコーライデンは中央ダート4勝、門別1勝2着2回。道営記念は落馬のアクシデントがあったが、前々走・門別1800m2着なら十分通用する。
◎④ノーブルサターン
〇⑦グランコージー
▲③スズカゴウケツ
△⑤ヴァケーション
△②ミニアチュール
△①ホッコーライデン
<お奨めの1頭>
4R インオービット
転入戦は3ヵ月ぶりの実戦に加えてスタートで出遅れ。結果2着も仕方なしだった。それでも破格タイムをマークし、今度は首位を譲れない
千葉博次きゅう舎所属の木村暁(さとし)騎手が12月1日に調教師免許を取得。それに伴い、11月30日をもって騎手を引退する。同騎手は2002年4月20日デビューし、7戦目(4月29日)、ロイヤルエリートで初勝利。また昨年5月8日、ヴァケーションに騎乗してシアンモア記念を優勝。初重賞を獲得した。
ラストライド(最後の騎乗)は11月28日、第12R「夢・希望 未来へ前進」(B2級四組)エイシンヌチマシヌ。5番人気に支持され、後方待機策から渾身の追い込みに賭けたが、善戦及ばず6着。しかし3着以下は0秒1差。横一線でゴールし、馬券対象にはあと一押しだった。
調教師免許の合格後の木村暁騎手インタビューを紹介したい(IBC岩手放送 競馬中継より)。
木村騎手「初挑戦でまさか合格するとは思っていませんでした。毎日多くの時間を使って勉強しましたが、集中してできました。一次試験が競馬法でしたから、難しかったですね。この世界に入ったら仕事を全うしたかったので、いずれ調教師になりたいと思っていました」
―今回、調教師試験を受けようと決めたのは?
「今年春、先生(千葉博次調教師)から打診を受けたので、それならば受けてみようと。免許交付は12月1日ですが、準備に結構、時間がかかります。ですから3月の春競馬開幕から開業したいと思っています」
―どんな調教師になりたいですか
「関係者、ファンから愛されるきゅう舎作りが第一。そして強い馬を育てて岩手競馬を盛り上げたいと思っています。騎手引退は後ろ髪を引かれるところがありますが、前に進むしかない。これから忙しい日々が続くと思います」
木村暁騎手の引退セレモニーは12月3日(日)、最終12R(発走:16時30分)「第22回トウケイニセイ記念」の表彰式終了後。20年余りの騎手生活にピリオドを打つ木村騎手にエールを送ってほしい。
今週の岩手競馬
12月3日(日) メイン12R 「第22回トウケイニセイ記念」(水沢1600m)
12月4日(月) メイン12R 「スプリント特別」(オープン 水沢850m)
12月5日(火) メイン12R 「師走特別」(A級一組 水沢1600m)
文/松尾庫司