6月21日 第11回かきつばた賞(3歳以上オープン 盛岡芝2400m)
1着 ボスアミーゴ
いつもどおり前半はジックリ待機策。流れはスローだったが、ペースに惑わされることなく中団から離れた後方4番手を追走、向正面から徐々に先陣に接近して3コーナーでは早くも先行馬を射程圏に入れる。
スパートをかけたのは4コーナー手前で、アッと言う間に3番手まで進出。ラスト150mで先頭に立ち、あとは若干気合いをつけただけで後続を離す一方。2着に2馬身半差の完勝で芝特別2連勝を飾った。
「久々にコンビを組んだが、(ボスアミーゴは)本当に芝は走る。58キロのハンデが心配だったので、仕掛けがちょっと早すぎたかも知れないが、とにかく反応のいい馬。終わってみればハンデもまったく関係なし。岩手相手で芝なら実力が違いすぎる」と菅原勲騎手。
次走は予定どおり芝の規定路線を歩み、7月20日の芝2400m重賞・せきれい賞へと向かう。
2着 コスモアンファング
サクラエキスプレスの出鼻を叩いて果敢に逃げてスローに落とす。1周目1コーナー、2番手にいたサクラエキスプレスが行きたがるのを見て先手を譲り、じっくり2番手インに控える。その瞬間の判断がズバリ当たり、直線で最内を突いてスルスル進出。一旦、2番手まで上がったクルセイズを交わして2着を確保した。
「ペースが遅いと思ったから前に行こうと決めた」と草地騎手は語ったが、前回・あじさい賞では中団追走から直線ジワジワ伸びて3着。その時に芝が合うと判断した草地騎手のプレーが光った。
中央0勝ながら2着1回3着4回の戦績から南関東へトレード。しかしダートが合わなかったようで9戦すべて着外。岩手入り後も水沢2戦とも着外に沈んでいたが、芝に替わって反応が一変。あじさい賞3着、今回のかきつばた賞2着で芝の活躍は約束された。
3着 クルセイズ
3番手をキープし、外からボスアミーゴに被せられたが、それでも怯まず3着を死守。終いの切れ比較では見劣るが、長くいい脚を使えるのが特長で今回もその良さを発揮した。
7着 サクラエキスプレス
コスモアンファングが意表を突く逃げに出たため2番手に控えたが、馬が掛かりっぱなしで1コーナーで先頭。その後は折り合いがついたが、前半のロスが響いて直線で失速した。「掛かったので先に行かせたが、距離も長かったかも」と関本淳騎手。
6月22日 第36回一條記念 みちのく大賞典(3歳以上オープン地方競馬全国交流 盛岡ダート2000m)
(みちのく大賞典ゴール 写真・佐藤到)
1着 ブラーボウッズ
いつもの出遅れグセは出さなかったが、出たなりでポツンと最後方の位置取り。逃げたニシノグレイシャが出ムチを入れて先手を奪い、4馬身ほどリードしたが、1コーナー過ぎからガクンと減速。そのスローの流れを見るや、菅原勲騎手が向正面から大外を回って先行馬をひとマクリして、3コーナー手前で先頭に立つ大胆な騎乗。誰もが仕掛けが早すぎると思い、直線入り口で後続グループが徐々に差を詰めにかかったが、直線で再び突き放して待望のビッグタイトルを手に入れた。
「3600勝まであと1勝に迫っていたのは分かっていたが、まさかここで勝てるとは思わなかった。ペースが遅くなったし、人気も差ほどではなかったので思い切って先頭に立った。これで負けたら仕方ないと思ったが、最後まで我慢してくれた。3600勝をビッグレースで達成できて素直にうれしい」と菅原勲騎手。
これまでブラーボウッズは豪快にマクって快勝したかと思うと次走は凡走。それを繰り返してムラな面がなかなか解消されなかったが、今季はすべて入着を果たして安定感が出てきたのは確か。
しかしレコード決着の前走・あすなろ賞(水沢1900m)では追走するのに手こずって4着止まり。その結果から今回は4番人気にとどまっていたが、菅原勲騎手の大胆、かつ巧みなレース運びでビッグレースを制することに。これこそ同騎手の真骨頂、そして今後に語り継がれる菅原勲騎手、名勝負の一つに加わった。
2着 マイネルイディオス
前半は中団インをキープし、3コーナー過ぎからスパート。決して反応がいい訳ではなかったが、ばてずにジワジワと伸びてマチカネモエギが終い一杯になったところを外から交わして2着を確保した。
「位置取りは予定どおり。もう少し早めに動いていればもっと差を詰めたかも知れないが、これでオープンでも通用のメドが立ったのでは」と関本浩司騎手。
マイネルイディオスは中央1勝がダート2100m。その後、名古屋に転籍して徐々に頭角を現し5勝をマーク。岩手転入は今年4月で格付けにも恵まれて4連勝中(名古屋時代を含めると5連勝)でみちのく大賞典に臨んだが、B1二組を勝ち上がったばかり。
ここではキャリア不足と判断され5番人気だった。1番人気ノムラリューオー以外は団子の背比べの印象だったが、それにしてもマイネルイディオスの大好走にはビックリ。長距離配合の血を2000mの舞台で発揮した格好か。
3着 マチカネモエギ
ニシノグレイシャにハナを譲って2番手をキープ。向正面で展開がガラリと変わったが、自己のポジションを終始キープ。直線でも最内で渋太く粘っていたが、ラスト100mで脚が上がる。これが距離経験のなさと判断していいだろう。それでも周囲に惑わされない吉田稔騎手の好プレーが光った。
5着 ダンストンリアル
道中は4番手外をキープして4コーナーではブラーボウッズに再接近したが、直線でいつもの伸びが見られず5着。「まだここでは力が足りない。今後の成長に期待」と村上忍騎手。
7着 ノムラリューオー
1枠に入ったので前半は無理をせず4、5番手のインを追走。「スタートは悪くなかったし、位置取りも考えていたとおりだったが、外が動いたのに全然ついていけなかった」(小林騎手)。3コーナー直前から一杯に追っていたが、先陣から離され、それならと小林騎手は外に持ち出したが、シアンモア記念のシャープさがまったく見られなかった。
「レース前、このあいだ(シアンモア記念)みたいな落ち着きがなかったし、フットワークも前回のようではなかった」と小林騎手。
そのシアンモア記念のパフォーマンスがすばらしく、当日は単勝1・6倍の圧倒的な1番人気に支持されたが、見せ場を作れずに凡走。内に入ったのが痛かったか、盛岡コースが合わなかったか、坂も響いたか…改めて競馬の難しさを実感させられた。
10着 サイレントエクセル
当日の馬体重は前走(桐花賞)比プラス10キロ。5ヶ月半ぶりの実戦を考えれば思ったほど太くは映らなかった。担当厩務員いわく「追い切りをしたらレースを分かったようで自分から調整をした。そして馬運車に乗ったら入れ込んで汗をかいていたし、装鞍所でもカリカリしてしまった」。これがオープン馬たるゆえんでレースを感知していたようだが、その気合いが空回り。当日、いつもの板垣騎手から山本聡哉騎手に替わったこともあったが、後方のまま追走するだけに終わった。
盛岡開催も折り返し点を通過した来週、いよいよ牧野孝光騎手の騎乗が始まります。牧野騎手は既に岩手入りしており、先日の金曜日には発走調教検査にも騎乗しました。来週からの騎乗に向けて準備は万端、というところでしょうか。
また、新規開業した吉田司調教師も来週の開催より出走開始となります。まだ馬が揃っていないという事で3回盛岡開催には3頭しか登録されていませんが、抽選漏れになったりせず無事初出走となってほしいもの。櫻田康二調教師のように「初出走・初勝利」なんていうドラマが起きればいいですよね。
対抗にはアポロパトリオットを。岩手5戦目でようやくの勝利でしたが、JRA時代は1200m中心に走っていた馬、1600mで勝ったのはこの馬の能力の高さゆえでしょう。一ハロンでも短縮されるのは好材料、前走の再現があってもおかしくないと見ます。
ガイアヴァンテは3番手としました。既にかなりのスピード性能を見せている馬ですが、近走を見た感じ、距離短縮は逆にマイナスになりそうな気配があります。逃げて一気に押し切るというタイプでもないし、ここは控えめな評価が妥当では。
上位は4歳馬で固めましたが、ベテラン勢も黙ってはいません。まずブラックオーメン。マイルの差し馬という印象が強いですが、1400mでも意外に成績がいい。むしろ距離短縮はチャンスでは。そしてケイアイフォーユー。マイル以上は明らかに長い馬、距離短縮ははっきりプラスです。
4歳馬3頭のBOXでだいたい大丈夫と見て、後は2着・3着に加えるかな、というところ。今週は若干前残り傾向が強めなので、厚く狙うなら人気が低くとも先行馬の方を優先で。
馬単BOX 1=8=10
3連単 (8=10)→(8=10)→(1・5・7)
◆お奨めこの一頭
6R:トーセンエンパイア
ようやく軌道に乗ってきた。距離短縮よりも先行有利のコース状態がプラスになりそう。
22日(日)メインは岩手伝統の「第36回一條記念 みちのく大賞典」、12頭立て。舞台はダートのクラシックディスタンス・盛岡ダート2000m。スタート地点は4コーナー奥のポケットで直線が約600m。コーナーを4つ回って最後の上り坂を2度乗り越えなければならず、ほぼ例外なく実力どおりに決着する。
昨年はテンショウボスが、2着エアウィードに1馬身半差をつけて完勝。このレースで岩手の頂点に立ち、脇役の座を返上。以降も快進撃を続け、年度代表馬にまで出世した記念すべきレースとなった。
そのテンショウボスは佐賀記念遠征後、軽い膝骨折が判明してリタイアしたが、幸い大事には到らず現在は調教を再開。夏過ぎにはテンショウボスの勇姿が見られるかもしれない。
またテンショウボスと双璧を成すサイレントエクセルは、今回のみちのく大賞典でついに戦列復帰。大好きな暑い季節、そして盛岡コースも合うだけに期待をかけたいところだが、昨年12月31日、桐花賞4着以来の実戦。能力の高さは誰もが認めていても、いきなり重賞の舞台に加え、いきなりの2000m。さすがのサイレントエクセルでもこの条件を乗り切るのはきつく、ひとまず△評価とした。
(シアンモア記念ゴール 1着・ノムラリューオー 写真・佐藤到)
主軸はノムラリューオーで断然だろう。前々走・房の国オープンで02年、黒潮盃以来、実に6年ぶりの勝利をマーク。途中、1年10ヵ月などの長期休養などもあったが、久々の美酒を味わい岩手の根幹重賞・シアンモア記念に参戦。1番人気は岩手のタイキリオンに譲ったが、絶好のスタートから2番手をキープ。4コーナーでは馬なりで先頭に立ち、インを強襲したマンジュデンコウベの追撃を封じて快勝。コンビを組んだ小林騎手は「レースセンスがすばらしく、9歳とはとても思えないほど若々しい」とノムラリューオーを絶賛した。
石井勝男調教師に話をうかがうと「当初、地元船橋のグランドマイラーズを視界に入れていたが、相手を考えて途中からこちらへ方向転換。1800mまでがベストだが、折り合いがつく今なら2000mもおそらく大丈夫。一週前の追い切りでは重苦しさが若干あったが、それを叩かれて気配が一変。最終追い切りでは非常にいい手応えを感じ、前回よりもさらに良化した」と語り、自信の参戦となった。
コメントにもあるとおり2000mの距離と直線の上り坂がカギを握るが、中央時代に坂は経験済みだし、どんな流れにも対応できるタイプなのでおそらく問題はない。マキバスナイパー、コアレスハンターに続いて南関東勢3頭目のみちのく大賞典制覇の可能性は非常に高い。
相手も遠征馬マチカネモエギをピックアップ。中央ダートで4勝マークして準オープンから5月に名古屋へ転籍。初戦を3着にまとめ、2戦目をきっちり勝ちあがった。条件的には当然、勝ち負けのはずだが、中央4勝すべてがダート1200m戦。これまで最長距離戦はJRA・阪神ダート1800m10着、名古屋1800mの3着。果たして距離2000mを克服できるか、どうかが最大の焦点。常識的に考えれば距離の壁があると見るべきだが、今の岩手オープン陣は先にも記したように明らかに手薄。 鞍上に名古屋の名手・吉田稔騎手を迎え、盛岡コースの経験も豊富。抜群の手綱さばきで距離も克服してくれるに違いない。
対する岩手勢トップ評価をしたのはダンストンリアル。目下10戦連続で連対を継続中で、昨年秋を境に本格化は疑いのないところ。地元重賞・ダービーグランプリ出走(6着)まで1勝のみだったとは信じられないほどの躍進ぶりだ。
今シーズンも4月から4戦3勝2着1回と、まさに昇竜の勢いに乗っている。とは言え、いきなり重賞、しかも交流レースではキャリア不足は明白で苦戦ムードが漂っているが、そこは未知の魅力に賭けてみたい。
ブラーボウッズは今年10歳だが、衰え知らず元気一杯。何といっても強調できるのは盛岡ダート2000m戦でただ1頭だけ白星を上げている点。一昨年、特別・赤松杯でマークしたもので、この実績が光る。
あとは距離への融通性を備えてきたダンディキング、そしてサイレントエクセルの底力にも注意を払うべきだろう。
◎ ?ノムラリューオー
○ ?マチカネモエギ
▲ ?ダンストンリアル
△ ?ブラーボウッズ
△ ?ダンディキング
△ ?サイレントエクセル
3連単は1を1着固定に3、6、12のフォーメーション。あとは2、6を3着押さえ
馬複は1−3、1−10、1−12、1−2
<お奨めの1頭>
11レース フォーナインミダス
中央2歳新馬戦(新潟芝1400m)を快勝した実績はダテではなく、初の盛岡芝を2着。今度は首位疑わず
21日(土)メインは芝2400m戦「第11回盛岡タイムス杯 かきつばた賞」、10頭立て。
(あじさい賞ゴール 1着・ボスアミーゴ 写真・佐藤到)
参考となるレースは古馬オープンによる芝第一弾の特別・あじさい賞。このレースはボスアミーゴ、タイキリオンが人気を分け合ったが、後方に待機したボスアミーゴが3コーナースパートを決めて快勝(タイキリオンは3番手好位につけながら、直線失速9着)。昨年10月、古馬を一蹴した芝2400m重賞・きんもくせい賞以来、6戦ぶりの美酒を味わった。
ボスアミーゴは昨年終盤に一度、JRA中山・ディセンバーステークスへ挑戦12着を含めて水沢の重いダートにてこずり、いずれも着外。前々走・シアンモア記念でも後方から差を詰めただけに終わっていた。
ところが、芝に替わった前走・あじさい賞で動きがガラリ一変。前半は後方でじっくり脚を貯めて3コーナーから追い出すと、抜群の反応を見せて直線入り口で早くも射程圏内。逃げ込みを図るサクラエキスプレスを余裕で交わして1馬身差。まさに非の打ちどころのない内容で完勝した。これで盛岡芝7戦5勝2着2回と連対を継続し、昨年の最優秀ターフホースの貫禄を改めて見せつけた。
今回は盛岡芝1700mから芝2400mへ距離延長されたが、前記・きんもくせい賞優勝しており、まったく不安材料とはならない。まずは不動の本命と断言して差し支えないだろう。
相手も順当にあじさい賞2着サクラエキスプレスが演じる。ホッカイドウ競馬でデビューして7戦3勝2着3回の成績を残して中央入り。芝1800mで2勝、準オープン・初富士S(芝1600m)も勝ってオープン入りを果たしたが、その一戦後、脚部不安のために2年2ヶ月あまりの長期休養を余儀なくされた。
昨年4月、ホッカイドウ競馬で復帰を果たして再起を目指したものの6戦とも着外に沈み、今年3月に岩手へ新天地を求めてきた。しかし水沢の重いダートにてこずり、4戦連続で大差負け。ほとんどしんがり負けを喫していたが、前回・あじさい賞では果敢に攻めて快調な逃げを披露。2番手につけたメイショウオオナミ、3番手タイキリオンはそれぞれ5着、9着に沈んだが、サクラエキスプレスだけが先行馬で粘ってボスアミーゴと0・1秒差。3着以下に6馬身差をつけて最後まで見せ場を作った。
今回のカギは初の芝2400mに尽きる。これまで芝の最長距離はホープフルSの2000m戦(5着)。さらに2ハロン伸びた距離が不安といえば不安だが、盛岡芝は1周1400mの小回りコース。このメンバーならスンナリ先行できるのに加え、スローペース必至。あじさい賞の再現濃厚と見るべきだろう。
盛岡芝2400mの鬼といえばサイレントグリーン。過去の戦績は<7.2.1.0>。驚異の勝率と連対率を誇り、昨年も同条件の重賞・せきれい賞を制して見事に復活を遂げた。
往時に比べると年齢的な衰えが隠せず、得意の芝であじさい賞1・5秒差6着はちょっと不満だが、実は盛岡芝1600m、1700m戦では未勝利。芝通算7勝はすべて2400mで稼いだもので、とにかく徹底した2400m巧者。それに賭けてみる手か。
クルセイズは3月、4月に2戦使って一旦、北海道へ移籍。赤レンガ記念で5着に入って再転入し、初戦をアッサリ快勝した。昨年は芝ダートを問わず大活躍。特に芝重賞・OROカップ、きんもくせい賞で4着に食い込んだ実績がある。
以下、あじさい賞で3着に好走コスモアンファング、芝でも長距離戦が合いそうなベリーメリーホークを押さえ
◎ ?ボスアミーゴ
○ ?サクラエキスプレス
▲ ?サイレントグリーン
△ ?クルセイズ
△ ?コスモアンファング
△ ?ベリーメリーホーク
3連単は1を1着固定に6、7、8流し。あとは2、5を押さえ
馬複は1−6、1−7、1−8、1−2
<お奨めの1頭>
11レース マイネルモンシェリ
盛岡芝は初めてだが、中央時代に芝で3勝マーク。近走内容も安定しているし、芝はもちろん望むところ
6月14日土曜日午前9時前、東北地方は強い地震に見舞われました。岩手・宮城内陸地震と名付けられることとなったこの震災が、岩手と宮城の県境付近で大きな爪痕を残したのは報道で伝えられているとおり。今後も続報が出てくるたびに、いかに被害が甚大だったかということを思い知らされることでしょう。
地震発生時、私は盛岡競馬場の撮影をお休みし、今日は盛岡市・滝沢村の伝統行事「チャグチャグ馬コ」の写真を撮ろうと出掛けるところでした。揺れ始めは駐車場を歩いていたためか分かりませんでしたが、家の中で物が落ちるガシャンという音を聞いて周りを見渡すと電線が大きく揺れています。激しい縦揺れはちょうど10年前に岩手県内陸北部地震でも経験しているので、断層性の直下型地震であることはすぐに分かりました。急いで室内に戻りテレビを点けるとNHKが最初に特別番組を。それを見て始めて、阪神淡路大震災に匹敵する規模の大きな地震であったこと、複数の死者がでているなど大変なことになっているのを知ったのです。
幸いと言って良いのか、盛岡では震源から離れているため大きな被害は無く、オーロパークでの岩手競馬は平常通り開催。チャグチャグ馬コも経路が一部短縮されたものの通常通り行われました。ただ、近年この祭りに参加する馬は盛岡滝沢周辺だけでは足りず、県外からの参加者も多いのです(今年は97頭が行進したとのこと)。休憩地点となる中津川河原に並んだトラックの中には、宮城県北の栗原市や加美郡の文字が… きっと馬コ行列で歩きながらも気が気ではなかったでしょうね。こちらに来ていて直接被災せずに済んだのなら良かったですが、帰り道は無事に着いたでしょうか。自宅のご家族や厩舎は大丈夫だったでしょうか。心配です。
一方、比較的震源に近かった水沢競馬場はどうだったのだろうと、翌日のオーロで水沢所属の関係者何人かに聞いてみました。厩舎では、それまで経験したことが無いような激しい揺れに馬も人も驚いたものの、立てかけていた物が倒れた程度で負傷や物損はほぼ無かったようです。臆病と言われる競走馬ですが、暴れて怪我などしなくて本当に良かった。またスタンドのほうは一部の壁やガラスが破損したとのことですが、大きな損傷は受けていないとのこと。(ただし念のため今週は2階以上の発売所を閉鎖)考えてみればこの建物は、2005年に耐震補強工事が行われており、その効果を証明する機会となったと言えそうです。もし補強が施されていなかったらもしかして…と思うとゾッとします。付け加えると、さらに震源に近い旧胆沢町にご自宅がある某調教師さんは、棚の物などが落ちて家の中が大変だとのこと。片付け頑張って下さい。
写真は昨年秋に須川岳(宮城県側では栗駒山と呼びます)に登った際、山頂から見た宮城側の山々。今回いちばん被害の大きかった地域です。このとき通った一ノ関市からの道路も橋が崩落するなどズタズタになり、しばらくは通行できそうにありません。須川岳には今年も行きたいね、などと話していた矢先だっただけに残念です。
もともと東北地方は地震が多く、特に宮城県沖は近いうちに大震災が起きる可能性が警戒されていましたが、今回の震源域はあまり注目されていなかった地域。近くにある“北上低地西縁断層帯”という断層は国の警戒リストに載っていたものの、100年以内に地震が起きる確率はほぼ0%とされており全くのノーマークだったそうです。断層の活動周期が1万5千〜2万年ということですから、人間の時間尺度では想像もつかないのも致し方ありません。というか、そもそも地震の巣の上に乗っかっているようなこの島国では、知られている断層などほんの一部なのでしょうね。逆に言えば断層の活動データが無くとも、あらゆる場所でいつ何が起こってもおかしくないと思った方が良いのかもしれません。
私たちは科学という力の下に物事を知り尽くしているような錯覚に陥りがちですが、人間が解っていることなど、大自然のほんのひとかけらに過ぎないのでしょうね。
最後に、被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。一日も早くいつもの生活に戻れることを祈っています。
(文/写真・佐藤到)
p.s.
このような大きな出来事があるといろいろと考えてしまいますね。文章にしようとしても全然まとまりません。
○揺れの加速度を現すガル値が史上最高記録。阪神淡路の約3倍とは!
○地元で消防署員をやっている友人は被災地に派遣されただろうか?
○元岩手競馬騎手で栗原市出身の千田和江さんはどうしているだろう?
○最近、断層性の地震が多くてプレート性のが少ないのがかえって不気味だ。
○手塚治虫氏の漫画『ブラック・ジャック』の中に6月14日午前8時頃に東北地方でM7.0の大地震が起こるエピソードがあった。
○エトセトラ、エトセトラ……