6月14日土曜日午前9時前、東北地方は強い地震に見舞われました。岩手・宮城内陸地震と名付けられることとなったこの震災が、岩手と宮城の県境付近で大きな爪痕を残したのは報道で伝えられているとおり。今後も続報が出てくるたびに、いかに被害が甚大だったかということを思い知らされることでしょう。
地震発生時、私は盛岡競馬場の撮影をお休みし、今日は盛岡市・滝沢村の伝統行事「チャグチャグ馬コ」の写真を撮ろうと出掛けるところでした。揺れ始めは駐車場を歩いていたためか分かりませんでしたが、家の中で物が落ちるガシャンという音を聞いて周りを見渡すと電線が大きく揺れています。激しい縦揺れはちょうど10年前に岩手県内陸北部地震でも経験しているので、断層性の直下型地震であることはすぐに分かりました。急いで室内に戻りテレビを点けるとNHKが最初に特別番組を。それを見て始めて、阪神淡路大震災に匹敵する規模の大きな地震であったこと、複数の死者がでているなど大変なことになっているのを知ったのです。
幸いと言って良いのか、盛岡では震源から離れているため大きな被害は無く、オーロパークでの岩手競馬は平常通り開催。チャグチャグ馬コも経路が一部短縮されたものの通常通り行われました。ただ、近年この祭りに参加する馬は盛岡滝沢周辺だけでは足りず、県外からの参加者も多いのです(今年は97頭が行進したとのこと)。休憩地点となる中津川河原に並んだトラックの中には、宮城県北の栗原市や加美郡の文字が… きっと馬コ行列で歩きながらも気が気ではなかったでしょうね。こちらに来ていて直接被災せずに済んだのなら良かったですが、帰り道は無事に着いたでしょうか。自宅のご家族や厩舎は大丈夫だったでしょうか。心配です。
一方、比較的震源に近かった水沢競馬場はどうだったのだろうと、翌日のオーロで水沢所属の関係者何人かに聞いてみました。厩舎では、それまで経験したことが無いような激しい揺れに馬も人も驚いたものの、立てかけていた物が倒れた程度で負傷や物損はほぼ無かったようです。臆病と言われる競走馬ですが、暴れて怪我などしなくて本当に良かった。またスタンドのほうは一部の壁やガラスが破損したとのことですが、大きな損傷は受けていないとのこと。(ただし念のため今週は2階以上の発売所を閉鎖)考えてみればこの建物は、2005年に耐震補強工事が行われており、その効果を証明する機会となったと言えそうです。もし補強が施されていなかったらもしかして…と思うとゾッとします。付け加えると、さらに震源に近い旧胆沢町にご自宅がある某調教師さんは、棚の物などが落ちて家の中が大変だとのこと。片付け頑張って下さい。
写真は昨年秋に須川岳(宮城県側では栗駒山と呼びます)に登った際、山頂から見た宮城側の山々。今回いちばん被害の大きかった地域です。このとき通った一ノ関市からの道路も橋が崩落するなどズタズタになり、しばらくは通行できそうにありません。須川岳には今年も行きたいね、などと話していた矢先だっただけに残念です。
もともと東北地方は地震が多く、特に宮城県沖は近いうちに大震災が起きる可能性が警戒されていましたが、今回の震源域はあまり注目されていなかった地域。近くにある“北上低地西縁断層帯”という断層は国の警戒リストに載っていたものの、100年以内に地震が起きる確率はほぼ0%とされており全くのノーマークだったそうです。断層の活動周期が1万5千〜2万年ということですから、人間の時間尺度では想像もつかないのも致し方ありません。というか、そもそも地震の巣の上に乗っかっているようなこの島国では、知られている断層などほんの一部なのでしょうね。逆に言えば断層の活動データが無くとも、あらゆる場所でいつ何が起こってもおかしくないと思った方が良いのかもしれません。
私たちは科学という力の下に物事を知り尽くしているような錯覚に陥りがちですが、人間が解っていることなど、大自然のほんのひとかけらに過ぎないのでしょうね。
最後に、被害に遭われた方々に心からお見舞い申し上げます。一日も早くいつもの生活に戻れることを祈っています。
(文/写真・佐藤到)
p.s.
このような大きな出来事があるといろいろと考えてしまいますね。文章にしようとしても全然まとまりません。
○揺れの加速度を現すガル値が史上最高記録。阪神淡路の約3倍とは!
○地元で消防署員をやっている友人は被災地に派遣されただろうか?
○元岩手競馬騎手で栗原市出身の千田和江さんはどうしているだろう?
○最近、断層性の地震が多くてプレート性のが少ないのがかえって不気味だ。
○手塚治虫氏の漫画『ブラック・ジャック』の中に6月14日午前8時頃に東北地方でM7.0の大地震が起こるエピソードがあった。
○エトセトラ、エトセトラ……