8日(日)メインは3歳以上牝馬による地方競馬全国交流「第32回ビューチフル・ドリーマーカップ」(盛岡ダート1800m)。昨年は北海道から参戦したドリームチャッター(当時3歳)が3番手追走から鮮やかに直線抜け出し。2着ハッピーアデルに4馬身差をつける圧勝劇を演じ、華月賞(3歳牡牝馬 旭川)、ひまわり賞(3歳牝馬交流 水沢)と重賞3連勝を飾った。
今年も連覇を狙って盛岡へ参上するドリームチャッターだが、今回は迎え撃つ岩手勢から強力な切り札が出走する。もちろんサイレントエクセルのことである。
(写真はひまわり賞ゴール 1着サイレントエクセル 写真・佐藤到)
シーズン当初は一戦ごとに馬体重が減り、決して本調子ではなかったが、3歳牝馬重賞・留守杯日高賞1着、3歳特別・やまびこ賞2着と一応の結果は出していた。
立ち直ったのは一息入れた岩手ダービー・ダイヤモンドカップから。そのレースでオウシュウクラウンの2着にまとめて以降、破竹の進撃を開始。牝馬路線にターゲットを絞り、6月24日・あやめ賞1・4秒差、7月22日・ひなげし賞2・3秒差と3歳牝馬特別をぶっち切り、3歳牝馬全国交流・ひまわり賞でも2着バルクに1秒差で完勝。そしてG?・ダービーグランプリ(9月18日)へ名乗りを上げた。
当日は14頭立ての7番人気。いかに3連勝を飾っているとは言え、牝馬限定戦。いきなり牡馬相手、しかもJRAから強豪が大挙参戦し、地元岩手からもジャパンダートダービー3着オウシュウクラウンが出走とあれば、7番人気も仕方なしだった。
しかし、サイレントエクセルはこの低評価を自らの脚で覆した。スローペースの中、抜群のスタートを切ったサイレントエクセルはバンブーエール、マンオブパーサーの3番手を追走。直線を向いて前記に2頭にジワジワと迫って3着。これは「外に出したのは勝ちに行ったから」(板垣騎手)のコメントどおり、勝ちを意識しての3着だったから価値は非常に高かった。
その一戦後も順調に乗り込まれ、ビューチフル・ドリーマーカップ出走は当初の予定どおり。すでにG?3着の箔をつけたサイレントエクセルにしてみれば、ここは明らかに恵まれた組み合わせ。加えて4歳以上55キロに対し、3歳53キロとハンデも有利に運び、このレースをステップに全国に殴り込みをかけて欲しいと多くのファンが願っている。
サイレントエクセルのセールスポイントはどんな流れにも対応ができ、父ウイングアロー譲りの切れる末脚。これを武器に今後、どのように成長続けるのか非常に楽しみだ。
軸は確定したが、ヒモ捜しがちょっと難解となった。勢いを取るか、過去実績を取るかで迷ったが、昨年の覇者ドリームチャッターを相手筆頭に指名したい。B・ドリーマーカップ快勝後、大井・TCKディスタフに挑戦したが、15頭立て9着。その後は南関東へ移籍して3戦未勝利で6月、北海道へ里帰り。現在はA3級へ格付けされているが、B・ドリーマーカップを制して以降、1年間、白星から見放されている。その点が一番の気がかりだが、相性のいい岩手で何とか復活ののろしを上げたいところだ。
タカエイチフジはB・ドリーマーカップのトラアイル・エレガンスカップを快勝(7月16日 盛岡ダート1600m)したが、その後は足踏みが続き、前回A1級戦でも4着。とは言え、勝ったのが南部杯にも駒を進めるベルモントシーザーでその他にも強豪牡馬がそろい、4着も納得の結果。牝馬同士なら巻き返しに転じて何ら不思議はない。
ヨイチテーストのスピードも怖さ十分だ。中央9戦未勝利に終わったが、北海道トレードされて上昇一途。転入3戦目から圧巻の4連勝をマークし、ノースクイーンカップは2着だったが、遠征直前のB2戦も余裕の逃げ切りを決めている。ちなみにノースクイーンCにはドリームチャッターも出走して7着。この結果を考えればドリームチャッターより上の評価も必要かもしれないが、逃げ一辺倒の脚質。地元岩手に同型グローリサンディがいるし、サイレントエクセルも早めに動けば苦しく、ひとまず△に落ち着く。
キョウエイフリューは中央未勝利から03年、南関東へ新天地を求めて通算8勝。条件的にはまだC1級を勝ったばかりだが、3走前にはA3級以下の牝馬準重賞・クリスタルナイトカップで3着に入っている。
あとは盛岡回り一息だが、トライアル・フェアリーカップ(水沢1900m)を強いレースで勝ったグローリサンディも折り合いつけば侮れない存在だ。
◎ ?サイレントエクセル
○ ?ドリームチャッター
▲ ?タカエイチフジ
△ ?ヨイチイースト
△ ?キョウエイフリュー
△ ?グローリサンディ
3連単は11を1着固定に2、3着は2、10、8を厚め。9、12は3着押さえ
馬複は2−11、10−11、8−11、9−11、11−12
<お奨めの1頭>
7レース マコトセイウン
水沢コースは反応が鈍いが、盛岡に替わると動きが一変。盛岡4戦4勝とする
岩手競馬はいよいよ南部杯ウィークに突入。その初日7日(土)メインは九州競馬所属騎手と岩手競馬所属騎手との交流戦「M&Kジョッキーズカップ」第一戦。A2級馬によるダート1800mを舞台に争われるが、出走登録馬が相次いで回避。フルゲート12頭に対し、9頭立ての少頭数となってしまった。しかし、それによって佐賀3騎手、荒尾3騎手、岩手3騎手の等配分で行われ、対決構造は明確になったと言っても良いかもしれない。
主軸はゲイリーエクシード=松島慧騎手(荒尾)で動かないだろう。前走・岩手日報杯ではタイム差なしの2着に惜敗したが、これは前半のスローペースに泣いたものと解釈。先に動いたサージェリーを上がり3ハロン36秒9の鋭い末脚を駆使したものの、クビ差届かず2着。これはあくまでも展開のアヤと見て間違いない。
過去、岩手で12戦走って<5.5.1.1>。水沢でも1勝2着2回と連対パーフェクトを誇っているが、本領発揮の舞台は直線の長い盛岡。毎回、惚れ惚れとする豪快なマクリを披露してくれる。芦毛の中でも一際、目につく白い馬体で鮮やかな一気を決める。
逆転筆頭は前回でゲイリーエクシード以下を切って捨てたサージェリー=川野騎手(佐賀)だ。この馬は調子の波がハッキリしたタイプで好、凡走の落差が激しく今年5月から8月までずっと凡走。しかし9月9日の水沢マイル戦を快勝し、復活宣言。その好調度を前面に岩手日報杯(盛岡ダート1800m)も中団抜け出しで2連勝を飾った。
ネックは激しい気性ゆえ、テン乗りがどう影響するかの点。騎手とのコミュニケーションがうまくいかなければ調子に関わらず後方のままに終わるケースもままある。素質は間違いなくA級のそれ。果たして川野騎手がサージェリーの持ち味をどう引き出してくれるのかも興味深い。
マイニングプレスは奇しくも主戦ジョッキー・小林俊彦騎手とのコンビとなった。昨年までA1級に在籍し、平場戦で5勝をマーク。今シーズンも0勝ながら2着2回3着4回4着2回、いつでも上位争いを演じている。気になるのは安定感がある半面、A2に降格したにもかかわらず依然、未勝利と最後の詰めが甘くなっていること。それと盛岡をやや苦手としていること。
今回、ほとんどの騎手がテン乗りとなったのだが、唯一、小林騎手がお手馬を引き当てたのも何かの縁。今シーズン未勝利のうっ憤を一気に晴らしたいところだ。
評価に迷うのがブルーオスカーだ。今季4勝2着5回とスランプから完全に脱出。昨シーズンまで盛岡コースでは精彩を欠いていたが、1勝2着3回とそれも克服するほど勢いに乗っている。
ただ、前回・岩手日報杯ではスローの流れで絶好の2番手をキープしながら、直線の伸びがひと息で5着。ちょっとピークを過ぎたかな…という印象も受けるが、フレッシュコンビ・石川浩(佐賀)騎手がうまく御し、巻き返しを図れるか注目してみたい。
サンエムブレイヴは現在、岩手トップ独走中の菅原勲騎手との組み合わせとなった。中央1勝、園田0勝から今年4月、岩手へ転入。当地での2勝は阿部英俊騎手、内田利雄騎手がそれぞれプレゼントしたが、この馬は勝つか、それとも大敗かの両極端。これはスンナリの流れにならないと脆さを露呈するからだが、2勝とも鮮やかな勝ち方だった。
そして前走・岩手日報杯は好位3、4番手追走の4着。それまでバッタリのケース続きだっただけに、この入着は一応の評価ができ、リーディングジョッキー・菅原勲騎手がどのような結果を出すか、人気的にもおもしろい。
他では前回、得意の芝でJRA交流・プロキオン賞を快勝したフジローレルが、好調度を前面にダートでも好勝負に持ち込めるか、荒尾の田中純騎手の手腕に期待してみたい。
3連単は3、9を1、2着固定に4を厚め。あとは8、1、2にも流してみたい
馬複は3−9、4−9、1−9、8−9
<お奨めの1頭>
9レース テンショウボス
今回から古馬A1級入りとなる3歳馬だが、重賞・不来方賞2着の実績があればアッサリの可能性濃厚
今週は、こんな↑写真を皆様にご覧頂きましょう。これは盛岡競馬場の管理棟玄関ホールに展示されている、ダートコースと芝コースの“カットモデル”。見ればわかると思いますが、右が芝、左がダートの走路です。
驚くのは、馬が走れるように砂が敷きつめてありさえすれば良いようなダートコースであっても、相当に深いところからしっかりと造成されているということ。この深部にある砕石層のおかげで、盛岡のコースは水はけが良く保たれているのですね。そして砂の部分も、同じ砂と言っても芝とダート、表層と基礎部分で質の違うものを使い分けているのがわかります。おそらく各地の砂を比較吟味した上で、適切なものを選定したのでしょう。余談ですが、表示されている3種の砂の産地、雫石町・大和町・協和町はいずれも内陸の土地。自然のまっただ中にあるオーローパークは環境への影響に最新の注意を払って造られたと聞いていますので、塩分を含んでいて、流れ出すと周辺の山林や農地に悪影響を及ぼす海砂は使わないようにしたのだと思われます。
芝コースの方を見ますと、芝の品種が書かれているのが興味深いですね。ペレニアルライグラス・ケンタッキーブルーグラス・トールフェスクというと、なんだかとっても素敵な名前に聞こえますが、これらは全て牧草としてポピュラーな種類。放牧場、採草地の多い岩手ではたくさん植えられていますし、ケンタッキーブルーは公園の芝生などでもよく使われますので、種子が飛んで道端などに生え、「雑草」として日常的に皆さんの目にもとまっているハズです。
岩手競馬にはもうひとつ、水沢にもダートコースがありますが、関係者によりますと両競馬場の表面のクッション砂は同じものなのだそうです。しかし実際にそれぞれの競馬場でコースを見てみると、盛岡の方が白く明るい色をしており同じ物には思えません。私は撮影で露出を決めるとき、よく砂をカメラの内蔵露出計で測って参考にするのですが、このとき盛岡と水沢では、経験上、絞り半分〜一段分は明るさに差があります。とすれば、盛岡の方がより水はけが良く、含水率が少ないために、表面の“反射率”が高くなっているということなのでしょう。確かに水沢は雨が続いたり、あるいは蒸発量が少なくなる冬期間には水気が多く溜まって田んぼのような馬場になりますが、盛岡がそこまでなることはほとんどありません。
今年の盛岡開催もあと1ヶ月ほどで終わりますが、水沢に開催場が移ると、もう馬場はほとんど重〜不良。すると芝でしか良績の無い馬が突然激走ということがあり、これも冬の水沢名物(?)のひとつになっています。馬券検討の際には思い出して下さいね。
(文・写真/佐藤 到)
<次走へのメモ>
10月1日 第7回若松賞
(写真・佐藤到)
1着 ネバーオブライト
「今回は貯めてどんな競馬ができるかと思って最初から2、3番手を考えていた」(村松学騎手)。パチョリがダッシュ鋭く何が何でも逃げる構えを見せ、ネバーオブライトは2番手外に控えたが、ダンストンリアルが間を割ってきたので一瞬、掛かり気味となる。
それをなだめて折り合いをつけるが前半3ハロンが35秒8。2歳戦としては非常に速い流れでレースが進み、ずっとパチョリから2馬身後方キープのまま直線へ。パチョリも内で渋太く粘っていたが、ラスト200mでパチョリを交わしてゴール前では余裕を残して快勝した。
「デビュー戦は逃げ切りだったので、今回は距離も延びたことも考え、直線まで我慢して抜け出すイメージで騎乗した。左回りはむしろスムーズでしたし、4コーナーでハミをかけたらまた伸びてくれたので競馬はしやすかった。盛岡は初コースなので入念にスクーリングをしましたが、覚えもいいようです。これからもじっくり教えながら成長させていきたいと思っています」(村松学騎手)
スタートからのレースラップは12・5−11・3−12・0−12・9−12・1−12・4−13・4。ラスト1ハロンは若干かかったが、これは前半のペース、2歳戦を考えれば仕方なし。それでも走破タイムは1分26秒6をマークし、これは第5回若松賞優勝ウツミジョンソンと同タイムでレースレコードタイだったが、その時は思いっ切り重馬場。この日はむしろ馬場が深く、同条件(盛岡ダート1400m)の7レースC2が1分29秒2(1着パワフルジャパン)と比較すれば、いかに速いタイムだったかが一目瞭然。7頭立てと少頭数ながら、いかにレベルが高かったかがうかがい知れる。
次走予定はまだ決めていないそうだが、船橋・平和賞を視界に入れていると村上佐重喜調教師。
2着 パチョリ
9月24日の認定競走(芝1000m)を勝った直後、中5日の連闘となったが、馬体重はマイナス2キロとさほど影響がなかった模様。「砂を被るよりは逃げたほうがいい」と陶文峰騎手が判断し、果敢に逃げる。先に記したように道中もほとんどラップは落ちず、ラスト200mで一杯となったが、ネバーオブライトが破格のタイムを出しており、負けてなお強しのレースだった。
厩舎に入った頃から馬を見ているが、当時は線の細さが目についていた。しかしデビュー戦を使って以降、馬がどんどん成長し、同時にレース勘も見につけたのは明らか。本質的には芝が合うと思うが、ダートでも今回のレースを見れば十分にこなせる。これからも楽しみになった。
3着 アンダーボナンザ
前半のハイペースについていけず後方2番手からの競馬となったが、小林騎手は無理せずジックリ待機。3コーナーからインを回ってスパートをかけたが、パチョリからも3馬身差。これは2頭が強すぎたもので、例年レベルならばアッサリ勝っても不思議なし。
480キロの恵まれた馬体で均整も取れているし、血統背景(父スキャン、母アンダースワロー)も申し分なし。今後、どのように成長していくのか、この馬も注目し続けていきたい。
メインレースの予想に行く前に2歳戦戦の話を少し。
今年の岩手競馬の2歳、厩舎の中では「去年もハイレベルだと思ったが、今年はそれ以上ではないか?」という話題で持ちきりです。
特別2勝、来週のエーデルワイス賞G3に駒を進めるパラダイスフラワー、芝の重賞・ジュニアGPを勝って朝日杯をめざすボスアミーゴだけでもなかなかの強豪なのに、新馬戦でレコードを出したネバーオブライト、レコードタイで走ったクールビズなど、これまでの記録を破るような馬が次々と現れているから、なのですが、確かに2歳交流重賞路線に進めそうな馬がこれほどまとまって出てきた年はあまり記憶になく、確かにレベルは高いのでは、という印象を受けます。
まあ、そうした「レベルの高いトップクラス」だけでなく「例年よりやや下がるクラス」もかなり多くて、全体のレベルがおしなべて高い、というわけではないようなんですけれど、それでもこのご時世、話題になる事が多いのはいいことですね。特に未来のある2歳馬の場合には。
そうこう書いているうちにネバーオブライトが若松賞を快勝、南関東の2歳重賞・平和賞をめざすという話が出てきました。その先にあるのは当然、全日本2歳優駿G1。パラダイスフラワーのレースも楽しみです(芝はダメだったけど、ダートなら問題ないと思いますよ)。
さて、月曜メインのハーベストカップ。私の本命は5枠6番キタノソナタで行きたいと思います。
キタノソナタは今シーズン9戦6勝2着2回と抜群の安定度を見せている牝馬。前回の特別戦を勝った時は、格上挑戦でもいいから牝馬オープンの重賞、ビューチフル・ドリーマーカップに進みたいという話も出ていたくらいで、今乗りに乗っている時期といっていいでしょう。
近走は芝での活躍が目に付きますが、当然ダートでも大丈夫。盛岡1800mという距離も大丈夫。怖いのは砂をかぶり通しになった時で、そうなると三陸リアス特別のように大敗してしまう可能性が出てくるのですが、最近見せている先行力ならそう簡単に後手を踏まされる事はないと思います。B1では2連勝しているのに、もう一度B1を走れるのも有利。
対抗はエイシンガッサンで。B2級で連勝してB1級に上がってきた馬ですが、その昇級初戦でやや崩れた以外は、B1級でも常に勝ち馬と2〜3馬身の圏内に突っ込んでくる安定度を見せています。確かに勝ち味には遅いですが、どんな展開でも上位に来る堅実さは軸としての信頼度が非常に高いといっていいでしょう。
もう一頭は休み明けを叩かれたスウィープザボードを。前走はキタノソナタに0.7秒差9着と完敗でしたが、元々叩き良化型の馬ですから、休み明け初戦の前走は度外視可能。1800mも守備範囲です。
あとはアドマイヤウイングとカヌマビートを。アドマイヤウイングは本来1800mも十分にこなせる馬。B1級は昨年一度卒業した条件で、ここでは格上と言える力も持っています。カヌマビートは左回りをいくらか苦手にしている感じですが、先行力には定評がある馬ですし、基本的に前残りの今のコース状態なら一応抑えておく必要があるでしょう。
買い目は5枠6番キタノソナタから1、2、4、10へ。力の差はそれぞれ接近していると思いますので、できればBOXで高配当期待の戦法を。