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ばんえい名馬ファイル(4) サダエリコ

父を超える重賞コレクター サダエリコ

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 皆さんはダイヤテンリユウという馬をご存じだろうか? ニセコクイン、ヨウテイクイン、コトブキクイン。井馬アナウンサーが「ばんえいの華麗なる一族」と呼んだ三姉妹の兄である。競走成績は通算で71戦29勝、そのうち重賞10勝という驚異的な成績。種牡馬入りしてからはリーディングサイアーとなること6度。競走馬としても繁殖馬としても頂点を極めたばんえい競馬界を代表する名馬といえよう。そして、そのダイヤテンリユウの最高傑作といえる産駒が今回の主役、サダエリコである。

 サダエリコのデビュー戦は2002年4月22日旭川競馬場。手綱を取ったのはデビュー6年目の水嶋恵介騎手(後のリーディングジョッキー鈴木恵介騎手)。単勝7番人気で結果は3着だった。初勝利は舞台を北見に移したデビュー4戦目の牝馬限定戦。9番人気という低評価ながら2着に10秒近くの差をつけての圧勝となった。その後いちい賞、岩見沢に移ってあじさい賞と牝馬限定の特別戦を連勝し、次第に頭角を現しはじめる。初重賞の白菊賞は3着、ナナカマド賞は8着に敗れるも、ホクレン賞では9番人気という低評価を覆しての勝利、手綱を取った水嶋騎手ともども重賞初勝利となった。その後は牝馬限定の黒ユリ賞を制して重賞連勝。大一番イレネー記念では3着に敗れたものの、デビューシーズンの成績は21戦8勝で重賞2勝。受賞額7,756,000円はイレネー記念馬エビステンショウを抑えて2歳馬首位。若きヒロインの誕生である。

 2カ月の休養を経て迎えた3歳シーズン。さらなる飛躍が期待されたサダエリコだったが、年上馬との対戦や同年齢戦でもハンデが課せられ、なかなか勝てないレースが続く。三冠レース第一弾のばんえい大賞典ではシンガリ負け。続くクインカップ、はまなす賞でも着外と、苦戦が続いていた。
 そんな中で迎えた2003年8月31日のばんえいオークス。同い年の牝馬相手の定量戦というまたとない好条件、サダエリコは2着に8秒以上の差をつけて完勝。表彰式では井馬アナウンサーが「強いサダエリコが戻ってきた」と評したとおり、見事復活を果たした。続くばんえいダービーでは1番人気に推され、こちらも2着に10秒1の差をつけての大勝。ハイトップレディ(1998)、アンローズ(2002)に続く史上3頭目のオークス&ダービー馬となった。その後、北見コースに舞台を移して迎えたオールスターカップでは軽ハンデもあいまって、当時頂点に君臨していたスーパーペガサスらを抑えて単勝支持率5割を超える圧倒的な1番人気に応えての勝利。続くばんえい菊花賞にも勝って、この年4つ目の重賞勝ちを収めた。しかし、帯広に移ってからは一度も連対することなく、好不調の波がはっきりしていた馬でもあった。

 そして4歳を迎えたサダエリコ。5月には4歳馬の重賞・旭川記念を制し重賞7勝目、8月のはまなす賞を勝って8個目の重賞タイトル。この頃は古馬オープンが相手でも互角の勝負ができるようになっていた。そして圧巻はこの年の北見シリーズに移ってから。10月末のオールスターカップで連覇。帯広に移って銀河賞を制したほか、ヒロンイズカップ2着、チャンピオンカップ3着。北見・帯広で12戦して4-4-4-0。4着以下なしという抜群の安定感。

 この勢いは5歳シーズンになっても止まらず。旭王冠賞では7着に敗れるも、4着以下なしという安定したレースを続けた。岩見沢では北斗賞を制し、ばんえいグランプリと岩見沢記念は2着も岩見沢シリーズは9戦して6-2-1-0。北見では北見記念も制した。天才少女はいつしか「女傑」と呼ばれ、完全にばんえい競馬の中心を担う馬へと成長を遂げていた。ただ、一息入れた後の帯広記念以降は4戦連続で9着と、好不調の波が激しいのは相変わらずだった。

 6歳のシーズンを迎えたサダエリコ。シーズン初重賞の旭王冠賞を幸先良く勝利。しかし、その後はだんだん勝ちきれないレースが続き、勝ち星から遠ざかってしまう。いつもの一時的な不調の波に入ったのか? それともダイヤテンリユウの産駒は早熟馬が多いと言われてきたが、このサダエリコも例外ではなかったか? 結局このシーズンは24戦2勝、旭王冠賞のあとは1つも勝てないままのシーズンエンドとなる。
 そして帯広単独開催となった2007年4月。7歳になったサダエリコは6期目のシーズンを迎えた。北斗賞2着、ばんえいグランプリ3着と重賞では度々善戦するも、なかなか勝てないレースが続いた。そして、2008年1月オーロラ特別で1年7カ月ぶりに待望の勝利を挙げた後、オーナーの「ファンの期待を裏切らない引き際を」という思いから引退を表明。現役を退くことになった。

 1歳上のライバル、アンローズとともに、4市開催の最後を盛り上げたサダエリコ。獲得重賞は取りも取ったり、父ダイヤテンリユウを超える13個。これはばんえい競馬史上、牝馬による最多獲得重賞記録である。

文/高野直樹

サダエリコ
2000年4月3日生 半血 牝 鹿毛
父 半血・ダイヤテンリユウ
母 半血・雪椿
母の父 ペル・武潮
北海道河西郡更別村産
競走成績/138戦34勝(2002~08年)
収得賞金/36,863,000円
重賞勝鞍/06旭王冠賞(旭川)、05北見記念(北見)、北斗賞(岩見沢)、04銀河賞(帯広)、オールスターカップ(北見)、はまなす賞(岩見沢)、旭川記念(旭川)、03ばんえい菊花賞(北見)、オールスターカップ(北見)、ばんえいダービー(岩見沢)、ばんえいオークス(岩見沢)、黒ユリ賞(帯広)、02ホクレン賞(帯広)

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