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2010年5月28日 アーカイブ

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今週の見どころ(5/29~5/31)

2010年5月28日(金)

 今シーズンから、ばんえい競馬の過去の名馬をピックアップするコラム「ばんえい名馬ファイル」がスタートしました。第1回はキンタローです。月に1頭ずつ更新していきますので、お楽しみに。


 5月30日(日)には、ギャンブラークイン(牝9、大友栄人厩舎)の引退式(第3レース終了後・13:00ころから、帯広競馬場パドック付近にて)が行われます。通算37勝のうち、重賞での勝ち星は05年クインカップでのひとつだけでしたが、同世代の牝馬フクイズミ、エンジュオウカンらと若駒時代からしのぎを削ってきました。29日(土)のメイン・十勝岳特別が最後の出走で、今後は繁殖入りする予定となっています。

 5月29日(土)のメイン第11レースには十勝岳特別(オープン-2組・17:15発走予定)が行われます。出走馬の重量区分はすべてオープンです。
 今季初出走のフクイズミに注目します。昨季は帯広記念など重賞3勝を挙げ、初挑戦のばんえい記念でも4着に追い込んだ実績馬。9歳になっても決め手に衰えはなく、オープン-2組のメンバー相手なら、取りこぼしは許されません。
 相手筆頭はウメノタイショウでしょう。開幕週の重賞・ばんえい十勝オッズパーク杯で一線級古馬相手に6着に健闘し、前開催のさつき特別(オープン-2組)では、今回のメンバー中最先着の3着の実績があります。早めに第2障害で仕掛けて、フクイズミにプレッシャーを与えたいところです。
 キンセイモンはさつき特別で9着に敗れましたが、障害さえまともなら力差はありません。

 5月30日(日)のメイン第11レースは大雪賞(オープン-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分はすべてオープンです。
 前開催の桃酔特別(オープン-1組)で今季初勝利を挙げたナリタボブサップに引き続き期待します。前走は二枚腰を発揮し、ほぼ同時に第2障害を越えたマルミシュンキをゴール前で引き離す快勝でした。今回は、出走9頭中7頭が前走と同じメンバーだけに、連勝の可能性十分でしょう。
 強敵は別路線組のライデンロック。前走はオープン-2組特別で、逃げ切って圧勝しています。こちらもナリタボブサップと同様、スピードと障害力で勝負するタイプです。
 前述2頭はレースぶりが一本調子なところがあり、展開待ちの面も。その点、どんな流れでも力を発揮できるマルミシュンキがまとめて負かす場面もありそうです。
 ホクトキングは桃酔特別3着など、このところ走りが安定しています。前走のゴールドトロフィーは9着でしたが、トップハンデだっただけに参考外。今回は自己条件で、大崩れは考えられません。

  5月31日(月)のメイン第11レースは士幌高原特別(A1級-1組・17:15発走予定)。出走馬の重量区分は400万円未満4頭、320万円未満6頭です。
 ここはナカゼンスピードに期待します。今季開幕から4戦して、障害に手間取った前々走のスーパートレーナー賞(オールカマー)8着以外はすべて勝利しています。今回と同じ別定10キロ増で、3走前・若葉特別でA1級-1組特別はすでに勝利しており、引き続き好勝負できそうです。
 若葉特別4着で、前開催のA1級-1・2組決勝特別を制した障害巧者のイッスンボウシや、別定5キロ増は課題もスーパートレーナー賞2着の牝馬エンジュオウカンら400万円未満(重量区分)が有力でしょう。
 320万円未満(重量区分)勢では、ミノルタイソンに注目。若葉特別3着で、目下A2級で2連勝と勢いに乗っています。

ばんえい名馬ファイル(1) キンタロー

史上初の1億円馬 キンタロー

kitaro.JPG

 「まだまだ走れる」。昭和61年12月14日、北見競馬場第9レース。この日を最後に競走生活から引退する10歳馬のレース、蛍の光賞が行われた。

 スタンドを埋めているファンの大半は、大外枠10コース、スタンドからいちばん近くに見える史上初の1億円馬キンタローの最後の勇姿をと、身動きできないほどの入りである。前週12月7日、ここ北見コースで3度目の農林水産大臣賞典馬となり、獲得賞金で重量が決定する番組編成上、最軽量馬のヤシタフジ他が800キロに対しキンタローが870キロと上下70キロのハンデである。昭和54年のデビューからコンビを組んでいた尾ケ瀬富雄騎手が調教師となり、その後61年春から騎乗している金山明彦騎手と、ハンデの発表を見てから蛍の光賞に出走させるかどうかはかなり悩んでいたという。

 関係者の多くは70キロのハンデがあるのではいくらなんでもキンタローといえども勝ち目はない、と思っていた。70キロのハンデは昭和49年、金山騎手が騎乗し怪物と呼ばれたハクリュウが3歳時に勝って以来のハンデ差で、当時これが最初で最後だろうと言われたものである。力量差のある3歳馬ならともかく、古馬のオープン戦である。ファンの多くは、「1トンを超える馬だもの。10キロや20キロなんかあまり気にすることないよ」と思っている人がまだまだ少なくない。でもその10キロが勝負を左右する。ゴール前10メートルでその差が微妙に出る。それがばんえいの面白さなのである。

 大臣賞典直後の尾ケ瀬富雄調教師のコメントで「70キロのハンデ差は確かにきついが、それ以上にこの時計の速い馬場状態の方が展開的に苦しいね。大臣賞典を最後に引退というのがいちばんかもしれないが、今、本当に体調がいいんですよ。走れる限り走らせてあげようと思っているんですよ」と話してくれた。

 着差1秒1。

 ゴール前、久田守騎手のアサヒダケを金山騎手が必死で追うが、半馬身届かず2着。馬道を厩務員に引かれてくる1027キロ青毛の馬体を見送りながら多くの人から出た言葉が、「さすがキンタロー、まだまだ走れる」であった。

 キンタローのように強い馬を、第2のキンタローを俺の手で、というのが厩舎関係者の目標である。

 3~4歳時のキンタローは無冠で終わっている。3歳の能力テスト前から、関係者の間では注目されていたが、感冒のため体調を崩していた。同期のマルトダンサーが後年3000勝ジョッキーとなる金山騎手とコンビを組み、3歳時ナナカマド賞他、4歳時にはダービー、菊花賞、大賞典と3冠馬となり、華々しい活躍の陰でじっと体調の回復を待った。

 その素質が開花するのは、北見競馬場で行われた第4回地方競馬全国協会会長賞(5歳オープン)である。1番人気のマルトダンサーを破り、初の重賞勝ちとなる。のちに1億円馬となるまでの活躍は、農林水産大臣賞典3回、岩見沢記念3回、旭シルバーカップ3回など重賞14勝。この記録は通算獲得賞金1億624万5000円とともに未だ破られてはいない。その後、平成10年度のフクイチまで6頭の1億円馬が誕生するが(※1)、昭和50年当時の賞金は大臣賞典750万円、開催日数17開催102日。現在の25開催130日(※2)など諸事情を考えると、ばんえい最強と呼ぶにふさわしい馬であることは間違いない。

 38秒9、帯広競馬場、水分9.9%、平成4年キタノテイオー。6分10秒6、旭川競馬場、昭和44年ハルトカチ。ばんえいレコードである。両方とも直線200メートルの最小、最多要タイムである。この時計の差がばんえい競馬の奥の深さを示す。

 旭川・岩見沢・帯広・北見と現在4市で行われているが(※3)、各競馬場には砂の深さ、障害の型、その他微妙に変化も持たせている。名馬と呼ばれる馬となるにはスピード、力、登坂力、最後に闘争力。その中のひとつでも欠けていては、砂塵の舞う8月の旭川、雪の中の帯広では通用しない。バランス良くそれらの要素を兼ね備えた馬づくりに関係者は今も、第2のキンタローをと、朝夕の調教に汗を流している。

文/小寺雄司

(馬齢は当時の旧年齢で表記)
※1:その後、スーパーペガサスも1億円馬に
※2:1999年当時
※3:平成19(2007)年より帯広単独開催

キンタロー
1977年生 ペル系 牡 青毛
父 ペル・二世ロッシーニ
母 ペル系・宝玉
母の父 ペル・威鏡
北海道別海町・粂川一郎氏生産
競走成績/102戦32勝
収得賞金/116,725,000円
主な勝鞍/82年岩見沢記念(岩見沢)、83年旭王冠賞(旭川)、農林水産大臣賞典(帯広)、84年旭シルバーカップ(旭川)、85年旭シルバーカップ(旭川)、岩見沢記念(岩見沢)、農林水産大臣賞典(帯広)、86年岩見沢記念(岩見沢)、農林水産大臣賞典(帯広)、旭シルバーカップ(旭川)


月刊「ハロン」1999年6月号より再掲

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