素敵な人馬に会える共進会
7月18日、久々に谷さんとデートした。って書くと、また、谷さんネタかと思われるだろうけど、今回は、共進会のお話。
共進会というのは、平たく言えば品評会のこと。17日の夕方、谷さんから「明日、音更で共進会があるから行こうと思うんだけど、一人じゃ寂しいから一緒に行かない」とお誘いの電話。
大体、馬がずらりと居並んで、その優秀性を競う共進会が、私は大好きである。それが、我が家からほど近い音更町(帯広市の北隣)で行われる。かてて加えて、岩見沢に行ってしまって久しく会っていない谷さんと会えるなら、万難を排しても行かねば!!
という次第で出かけた今回の共進会は、その名も「十勝総合畜産共進会」。
「昔に比べたら、参加馬が減った」と、関係者は嘆くけれど、1歳馬から繁殖馬まで十勝の農用馬(大型馬)精鋭馬73頭が一堂に会した会場は、やっぱり活気に溢れて壮観壮観。
同年齢の馬を、これだけの頭数、体格や歩様を比較できる場は少ないから、私は狂喜乱舞して、巨漢馬の間を歩き回り、ためつすがめつしては嘆息する至福の時を過ごした。
そんな大満足の共進会について、読者各位に報告したいことは山ほどあるけれど、それを全部書いていたら本欄がエンドレスになってしまうから、特筆すべきことを2つだけ、ご紹介申し上げよう。
まず、第1に報告すべきは、坂本東一騎手が会場に来ていたこと(写真)。坂本騎手と言えば、言わずと知れた、ばんえい屈指の名騎手。今年も、勝鞍数で3位につけて、リーディングを射程圏内に捕らえているけれど、そんな多忙なスター騎手が、開催の合間の休日に、わざわざ車で3~4時間もかかる岩見沢からやって来たとは……。研究熱心な方とは聞いていたけど、それにしても凄い情熱。と、そう考えたから、失礼とは重々承知の上で、一言ご挨拶を申し上げた。
一面識もない怪しいオバサンに声をかけられて、坂本騎手、さぞ当惑されたことと思うけれど、レースでは精悍なこの名手が、私の差し出した名刺を柔和な笑顔で受け取って下さって、曰く
「今日は、馬が好きって言う人を案内して来たんですよ。共進会の存在も日程も、一般の人には、ほとんど知られてないから、少しでも、こういう所を案内して、ばんえい競馬や馬を知ってもらおうと思って」
ううむ、心底、感心してしまった。その口調の紳士的なことに先ず驚いたけれど、それ以上に、ばんえい競馬振興を真剣に考えている真摯な姿勢に、恐れ入るばかり。
以前、この欄でもご紹介した服部調教師もそうだけど、ばんえい競馬には、「なんとしてでも、この競馬を守って行くんだ」という強い信念を持った人が何と多いことか。
各馬を熱心に吟味する鋭い視線に戻った坂本騎手の、その貴重なお時間を潰すのは忍びなかったので、お礼を述べて早々にその場を退散したけれど、言葉を交わしたこの数分が、私の人生における宝物になったことは言うまでもない。
と、坂本騎手に感動する余り、スペースが無くなってしまったので、先を急いで……。
今回、もうひとつ、私の琴線を揺さぶったのは1頭の2歳牝馬だった。金寿姫(写真)という名のこれなる馬は、サカノタイソン産駒。急逝したタイソンの産駒は、それだけで貴重だけれど、金寿姫は、その産駒の中でも群を抜いて素晴しい馬だと評判で、実際、この馬を目前にして私も嘆息してしまった。何と言っても雄大で、この日の計測でも体高は180センチ! その立派な馬格も、青光りする毛並みも、在りし日のサカノタイソンを彷彿させるに充分だったから、この馬との出会いも、また、人生の宝物となった。
と、何だか、私的幸福をひけらかしてしまったけれど、読者各位だって、共進会に行けば、こんな素敵な人馬に会える。
嬉しいことに、今年は4年に1度の全道共進会の開催年。馬(農用馬)部門は9月9日、10日の2日間、十勝農協連家畜共進会場(音更町字音更西2線9-1)で行われる。勿論、ここに登場するのは北海道中から選び抜かれた最上級の馬ばかり。だから、あなたも、未来のスター馬を探しに、そして、「生涯の宝物」となる出会いを探しに、共進会に来てみませんか?