先週10日、南部杯トライアル「第25回青藍賞」を優勝したチェリーピッカーの話。
父カフェオリンポスはグランドスラム産駒の持ち込み馬。ジャパンダートダービー(JpnI)を制して種牡馬入り。当初は茨城で繋養され、その後、北海道へ移動。数少ない産駒からチェリーピッカーが誕生した。
チェリーピッカーは中央デビューしたものの、8戦未勝利に終わり昨年10月に岩手へトレード。持ち賞金が"0円"だったため、C2最下級からスタート。
そこから快進撃を続け、8戦8勝でシーズンを終了。直後にテンコートレセンへ移動して坂路で鍛え直して帰郷。連勝は12でストップしたが、再び2連勝を飾り、ついに重賞へ名乗り。初挑戦で青藍賞を制する快挙をやってのけた。
3着コスモジョイジョイはともかく、2着メイショウオセアン、4着以下イーグルカザン、ガッサンプレイらは中央オープン、準オープン馬。未勝利馬が格上をナデ切りした。
しかし、決して順風満帆だったわけではない。やんちゃで攻め馬を担当した山本聡哉騎手は何度も落とされかけたというし、担当厩務員も苦労の連続。今季強くチェリーピッカーの"わがまま"に付き合った。
勝利騎手インタビューで「中央から転入後、ずっと調教も乗っていた馬なので喜びもひとしお。感慨深いものがあります」と山本聡哉騎手が語ったのも納得がいくと思う。
もう一つ象徴するのがパドック。一見するとおとなしく周回している印象を受けるが、毎回二人引き。いつ何をするか分からない―。それがチェリーピッカーなのだ。
17日メインは2歳芝交流「第19回ジュニアグランプリ」(盛岡芝1600m)。カギを握るのは北海道2騎モリノラスボス、ドリームスイーブル。
特にモリノラスボスは4戦2勝2着2回。距離経験が1200mまで。芝未経験。父はダートで活躍したエスポワールシチー。しかも輸送もあるなど、不確定要素が多い。それでも一連の走破タイムが優秀だし、底を見せていない。ひとまず初芝を考慮して〇=対抗としたが、アッサリまで十分考えられる。
本命はコウギョウカナリアとした。デビュー戦の水沢850m戦は辛勝だったが、ハナ差で1着から芝・若鮎賞へ挑戦した。
距離が倍の1600m。しかも芝。さらには出遅れて直線でも前がふさがる不利。大外ベストロードの強襲に屈したが、0秒1差2着なら上出来。同じ轍を踏まなければ首位奪取は濃厚と判断した。いずれスムーズな競馬を期待したい。
ベストロードは若鮎賞を直線一気で快勝。それ以前は2着2回、4着1回だが、パワーのダート、不良馬場の芝に手こずったため。良馬場で持てる能力を存分に見せつけた。あくまでも馬場が渋らないことが前提で重賞2連勝まで。
プリヴィレッジはビギナーズカップから連闘が若干気になるが、若鮎賞で積極的に攻めて3着。先行馬が総崩れだったが、強じんな粘りを披露した。スンナリなら上位に食い込める。
リュウノフェスタゴは前々走でベストロードを完封。不良馬場だったが、強さが際立っていた。ベストロードとは逆に雨が降れば怖い存在となる。
リュウノムーンはデビュー戦を圧勝。2ヵ月ぶりの実戦、初芝などが不安だが、潜在能力は引けを取らない。
◎③コウギョウカナリア
〇④モリノラスボス
▲②ベストロード
△⑧プリヴィレッジ
△⑤リュウノフェスタゴ
△⑥リュウノムーン
<お奨めの1頭>
3R ヤマニンアルバス
転入初戦を圧巻の強さで逃げ切り勝ち。好調馬がそろったがスケール一枚上
今週から戦いの舞台は盛岡競馬場=OROパーク。9月16日(土)から11月8日(月)までビッグレースが目白押し。約1ヵ月半の盛岡劇場をお楽しみください。
コース替わりで毎回悩まされるのが馬場傾向。特に開催替わり3日間はやっかいだ。先行有利か差し有利か、内有利か外が有利か。当のジョッキーも手探り状態で意外な先行馬が残ったり、有力差し馬が後方のままに終わるケースも結構ある。
対策は一つ。前開催までの水沢成績は一旦白紙、クリアー。まずは前半レースで傾向をつかむこと。加えて時計がかかっているか遅いか。遅かったらパワー勝負。速い決着なら持ちタイムが有力な手掛かりとなる。
ただ1Rは中央からの転入馬が5頭中4頭、2Rは5頭中3頭。ちょっと把握しづらいメンバー構成だが、ひとまず基準は盛岡ダート1200m1分14秒台の決着なら普通。1分15秒以上かかったら馬場が深いと見ていいはず。我々、予想する側も手探りだということを念頭に入れてほしい。
盛岡初日メインは3歳「第5回イーハトーブマイル」(盛岡ダート1600m)。春の3歳重賞戦線の主役を演じてきたキングジャガー、サンエイリシャールが激突する。
1600mが舞台ならサンエイリシャールが上位。昨年、重賞2勝。ベンテンコゾウが2歳最優秀馬に選ばれたが、唯一黒星をつけたのが若駒賞=サンエイリシャール。
今シーズン開幕のスプリングカップを快勝し幸先のいいスタートを切ったが、やまびこ賞アタマ差2着、岩手ダービー・ダイヤモンドカップ0秒7差3着。いずれもキングジャガーが制し、主客が完全に逆転してしまった。
しかし、やまびこ賞は体重が大幅減。ダイヤモンドCは2000mも長く、勝負付けが完全に済んだわけではない。
前走、古馬A級挑戦は1秒差3着と完敗だったが、相手は後に青藍賞を優勝したチェリーピッカーなら悲観材料ではなく、貴重な経験となったはず。舞台は2戦2勝の盛岡ダート1600m。首位奪回する絶好のチャンス。
キングジャガーは南関東で揉まれた効果が絶大。スプリングカップこそ2着だったが、やまびこ賞、岩手ダービー・ダイヤモンドカップを連勝。ダンシングブレーヴ2×4の血統が見事花開いた。
その後、どんなローテーションを組むかと思ったら自きゅう舎で夏を過ごし、ずっと水沢で調教。秋始動をイーハトーブマイルを考えていたそうで、予定どおりの行動。3ヵ月ぶりの実戦でも乗り込み不足はまったくない。
それでも対抗としたのは1600m適性。キングヘイロー産駒だが、長丁場でこそ持ち前の先行力と強じんな粘りを発揮。忙しいマイルは若干割り引きが必要ではないかと踏んだからだが、地力でアッサリまで。
ダンストンリアンの成長力も目覚ましい。シーズン初めはオープンで頭打ちだったが、ウイナーカップ2着からハヤテスプリント(盛岡ダート1000m)を快勝。
続いて1000mから倍の2000m・ひまわり賞でも3着に善戦し、古馬B1では大本命ヴィグラスムーヴ相手に見事逃げ切った。
何よりも魅力は54キロの軽ハンデ。有力馬が58キロを背負うのに対し、4キロのアドバンテージは強力だ。
オールザベストは4走前のやまびこ賞が初の盛岡戦。終始、外にモタれて8着。コース適性に暗雲が立ち込めたが、前々走の1200m1着で克服のメド。今回の1600mもコーナー2つだけ。好調度で上位争い必至。
グラマシーはダイヤモンドC10着、ウイナーカップ8着と凡走したが、ひまわり賞で逃げて2着。再び牡馬が相手だが、勢い取り戻して軽視できない。
ユイノムテキは南関東2、3、4着から再転入。岩手2勝の強さが際立っていたし、激戦区で揉まれたキャリアを生かせるかも。
◎⑧サンエイリシャール
〇⑤キングジャガー
▲⑥ダンストンリアン
△④オールザベスト
△⑨グラマシー
△③ユイノムテキ
<お奨めの1頭>
7R ヴァーサス
伏兵がそろって油断できないが、B2で足踏みする器ではないはず。スッキリ勝利をモノにし、今後に弾みをつける
★重賞・ヴィーナススプリント/転入初戦のアリッサムが逃げ切りV
9月9日に行われたオープン牝馬の重賞『ヴィーナススプリント』はこれが転入初戦だったアリッサムが逃げ切り勝ち。自身のキャリア2勝目が重賞タイトルという見事な結果を残しました。
レース序盤はこのアリッサムに加えコウユーココロザシ、ミラクルフラワーの3頭が激しく先行争いを繰り広げる形でスタート。しかしアリッサムは一歩も譲らず先頭をキープしたまま直線までたどり着きます。
コウユーココロザシは途中で脱落しており追いすがるのはミラクルフラワー、そして好位からじわじわと迫ってきたスマートアレンジ。しかしアリッサムは後続を突き放し、最後は3馬身差まで拡げる完勝の形で逃げ切りました。
★重賞・青藍賞/チェリーピッカーが待望の重賞タイトルを手に
9月10日に行われた重賞『青藍賞』は2番人気のチェリーピッカーが勝ちました。
レースの展開はある意味前日のヴィーナススプリントと似た形。逃げたメイショウオセアン、それを追うコスモジョイジョイと、先行馬群の直後で機をうかがうチェリーピッカー。しかし終盤の形が異なりました。
二頭並んで粘り込みを狙う先行2頭が内に、差しを狙うチェリーピッカーが外に。先行勢がそのまま流れ込むかと思われた瞬間、チェリーピッカーが一気に伸びて前をまとめて捉えてゴール。重賞初挑戦で優勝という離れ業を演じて見せました。
★オッズパークLOTO 5重勝/9月11日(対象8R~12R)
8R/評価A: 7番 評価B: 3番 穴:1番
9R/評価A: 4番 評価B: 1番 穴:6番
10R/評価A: 8番 評価B: 5番 穴:2番
11R/評価A:10番 評価B: 7番 穴:3番
12R/評価A:10番 評価B: 6番 穴:3番
10日メインは「第25回青藍賞」(水沢1600m)。ついにチェリーピッカーが重賞に挑戦する。
当初、すずらん賞から重賞へ名乗りを上げる予定だったが、13連勝目を狙ったA級二組戦でコスモジョイジョイの2着。連勝が12でストップし、重賞挑戦は一旦白紙。
調子もひと息だったようで1ヵ月ほどレースから離れて態勢立て直しに専念。2連勝を飾り、本来のシャープさを取り戻した。
中央未勝利から12連勝マークはコミュニティ以来。そのコミュニティは桐花賞、みちのく大賞典を含め、重賞7勝するまで出世した。
ただ、コミュニティはステイヤー。対するチェリーピッカーはマイラー。タイプが違うので今後の路線は違ってくるだろうが、いずれにせよオープン一線級で通用するか。今回は〇=対抗評価としたが、非常に興味深い挑戦だ。
本命はメイショウオセアンに落ち着く。中央ダート1400m4勝、1200m1勝。オープンでは頭打ちだったが、勝ち馬とは1秒前後にまとめていた。
初戦・すずらん賞は逃げて3着。7月当時は猛暑が続き夏負け気味だったのに加え、盛岡=左回りも影響した。
その後は青藍賞1本に絞り、満を持して登場。ポスト・ナムラタイタンを考えていた陣営は背水の陣で臨むに違いない。
イーグルカザンはすずらん賞を快勝。直線半ばで先頭に立ったコスモジョイジョイをゴール寸前で捕らえ、赤松杯に続いて重賞2勝目を飾った。
奇しくもイーグルカザン、コスモジョイジョイは大坪騎手のお手馬。「コスモジョイジョイに負けたら眠れなかったと思う」とすずらん賞後のコメント。
続いてクラスターカップへ連闘で臨んで7着。きついローテーションの印象を受けるが、橘調教師はあえて使った。
「地元同士だけの戦いが続くと緩いペースに慣れてしまう。グレードレースの速い流れを経験すれば、いい刺激になるはず。だからクラスターCを使って青藍賞へ向かいたかった」。クラスターC効果も出て重賞3勝目を手にするか。
コスモジョイジョイはすずらん賞クビ差2着。惜しくも大魚を逃がしたが、負けて強し。前走もユッコがマイペースで逃げたが、いつもどおりの末脚を使って0秒2差まで肉薄。いまだ成長を続けている。
ガッサンプレイは転入後、4戦2着3回。クラスターカップ8着をはさんで連対を果たしている。特に栗駒賞、岩鷲賞でラブバレットの2着を確保し、実力は折り紙付き。
前走コウユーココロザシに逃げ切りを許し、マイル未経験が気になるが、小回り水沢なら距離延長も難なくクリアー。3連モノでは外せない。
ナリタポセイドンは9ヵ月ぶりの実戦。常識的には"消し"だが、絆カップでナムラタイタンを破り、北上川大賞典を1秒2差で圧勝。地力が不気味。
◎⑤メイショウオセアン
〇③チェリーピッカー
▲④イーグルカザン
△⑨コスモジョイジョイ
△⑧ガッサンプレイ
△⑩ナリタポセイドン
<お奨めの1頭>
6R シンキングターボ
3戦連続で勝ち星から見放されているが、相手が強かった。メンバーが緩和されて首位奪回。相手はレオチェックメイト
佐藤雅彦きゅう舎所属の高松亮騎手が9月4日、第3R・ダーナで1着。地方競馬通算1000勝を達成した。
先々週8月28日、第4R・ベニコウライで999勝をマーク。1000勝に王手をかけたが、その後は勝てないレースが続いた上、大本命ヴィグラスムーヴの出走取り消しなどがあり、生みの苦しみを味わっていた。
「今までの区切りとは別。感慨深いものがあります。初勝利をあげるのに93戦もかかりましたからね。それを考えたらなおさらです。
1000勝を目標にしていた訳ではありませんが、達成して感じたことは皆さんのお陰。達成したみんなが同じようなコメントをしていますが、まさにそのとおりだと思いました。
次の目標は1001勝。初勝利、999勝、1000勝も同じ1勝ですから、勝つことの重みを大事に、今後も騎乗したいと思っています」
おそらく吹っ切れたのだろう。続く第6R、ベニコウライでも1着。目標だった1001勝をアッサリ達成した。
高松亮騎手は9月4日時点で79勝、第3位。冬期間には南関東騎乗も決定している。これからさらに勝ち星を積み重ね、上位2人を脅かす存在になることを期待している。
9日メインは牝馬重賞「第5回ヴィーナススプリント」。舞台は水沢1300m。
昨年はミラクルフラワー1番人気、スマートアレンジ2番人気だったが、3コーナーから動いたミラクルフラワーに対し、ワンテンポ遅らせてスマートアレンジがスパート。直線半ばで一瞬のうちにスマートアレンジが交わして6馬身差。転入3戦目で初重賞を手にした。
続くハーベストカップ(盛岡芝1000m)6着後、スマートアレンジは戦列離脱。6ヵ月あまりの休養に入り、今年4月に復帰。初戦2着にまとめたが、以降は2戦3着。栗駒賞7着、岩鷲賞4着、クラスターC10着。まだ本来のシャープさを取り戻していない印象だ。
ただ、盛岡回りが合わなかったのも事実。クラスターC後は、ヴィーナスS連覇に向けて調整を進めてきた。
正直、昨年ほどの迫力はなく、半信半疑なところがあるが、それでも昨年の6馬身差は強烈。距離とコース適性で連覇をできると判断した。
コウユーココロザシの転入初戦には驚いた。新潟芝1000mで1勝マークしたが、ダートでは7着最高。500万下からいきなりA級に格付けされた上、地方ダート初めて。
牝馬で520キロ前後と体には恵まれているが、ガッサンプレイらを相手にいきなり勝ち負けは厳しいと思った。
ところが好スタートを決めてそのまま押し切って完勝。牡馬の追撃をあっさり封じた。ガッサンプレイはダート4勝・準オープンに在籍。これだから競馬は分からない。格下でも水沢が合ったという他はなかった。
今度は1400mから1300mへ短縮。もちろん望むところだろうし、牝馬同士が相手。移籍2戦目で重賞を制し、新風を吹き込む。
ミラクルフラワーは尻上がりに調子を上げてフェアリーカップが今季初勝利(2連覇)。牝馬交流・ビューチフルドリーマーカップでも3着に善戦し、前年8着の汚名挽回をした。
昨年はスマートアレンジに完敗だったが、調子は間違いなく昨年以上。過去に重賞6勝の実績を誇り、距離許容範囲。首位奪回あって当然。
アリッサムは中央0勝2着4回3着2回から南関東へ移籍。B3・船橋1200mで初勝利を飾った。ミラクルフラワーも南関東B3だったことを考えれば勝ち負けに持ち込めるはず。
ニードアフレンドは入れ込みグセと逃げ一辺倒のため好、凡走の落差が激しかったが、近走は控える競馬もこなせるようになった。これが成長の証。3歳馬で54キロのアドバンテージも見逃せない。
◎①スマートアレンジ
〇⑧コウユーココロザシ
▲⑨ミラクルフラワー
△⑦アリッサム
△③ニードアフレンド
<お奨めの1頭>
4R スズマッカートニー
転入初戦は勝った相手を誉めるべき。コース2度目で今度は首位を譲れない