今年、3歳特別から重賞へ格上げされたレースが3つあり、その一つが今回のウイナーカップ。また3歳の新設重賞が「ハヤテスプリント」(7月13日 盛岡ダート1000m)、「イーハトーブマイル」(9月21日 盛岡ダート1600m)の2レース。この2重賞の新設により、各陣営はローテーションを組み直した。
30日メイン、「第37回ウイナーカップ」も昨年までとは様相が変わった。水沢1400mを舞台に実施されて以降、岩手ダービー・ダイヤモンドカップ出走組が6頭もいるのは過去に例がない。
極めつけは岩手ダービー・ダイヤモンドカップを優勝したヴイゼロワンが出走したこと。来年以降の3歳戦線にも大きく影響を及ぼすこと必至。その意味でも非常に興味深い。
ヴイゼロワンは門別1200m戦でデビュー2着だったが、1着馬はカイカヨソウ。後に重賞5勝をマークして東京ダービーでも牝馬ながら4着の実力馬。今を考えれば仕方なしの結果だった。
2戦目を3着にまとめ、3戦目の1700m戦で初勝利を飾ったが、続く一戦7着後、脚部不安が発生して7ヵ月半の休養を経て岩手へやってきた。目的はずばり、岩手ダービー・ダイヤモンドカップを獲ること。転入2戦目でそれを見事実現させた。
当初、ジャパンダートダービーの登録もあったが、当面は地元競馬でパワーアップに専念することを決断。結果、今回のウイナーカップへ出走する。
実は課題が結構ある。1つ目は1400mの忙しい競馬に対応できるか。2つ目は小回り水沢に対応できるか。普段、調教では走っているが、実戦となると話は別。530キロの大型馬で跳びが大きく、うまくコーナーを回れるか。そして内枠2番枠に入り、砂を被る競馬を我慢できるか。
以上のことを考えるとウイナーカップをスキップした方が得策だが、水沢はダービーグランプリの舞台。是が非でもクリアーしなければならない。
逆にコース、距離、内枠などを克服できれば冒頭に記した新設重賞にも駒を進めることが可能となり、選択肢が大幅に増加。その意味でも今回のウイナーカップはヴイゼロワンに重要な一戦となった。
ヴェルシュナイダーはダイヤモンドカップ5着。村上忍騎手が押せども押せどもまったく反応なし。いつもの鋭さが見られず、後方から差を詰めただけに終わった。「ズブくてまったく動かない」と村上忍騎手が語っていたとおり、ほとんどレースに参加していなかった。
原因はいまだ分からないが、それゆえダイヤモンドCだけで判断するのは早計。水沢1400m2戦1勝2着1回。その1勝はロックハンドパワーをハナ差で差し切った価値ある勝利だった。ここで真価が問われる。
コウギョウデジタルは今季成長ぶりが目につく1頭。牝馬ながら480キロ台の馬格を誇り、牝馬交流・留守杯日高賞で岩手最先着3着。初芝のはまなす賞でハカタドンタクのクビ差2着と善戦。ダイヤモンドCは守備範囲を大きく越えた距離がこたえて6着だったが、ヴェルシュナイダーとは0秒1差だった。
コウギョウデジタルは本質的にマイラーで1400m短縮は望むところ。牝馬だからと言って軽視すると痛い目に遭う。
リュウノタケシツウは園田1勝だったが、2最重賞・園田若駒賞(1400m)で2着確保。転入初戦のダイヤモンドカップは果敢に逃げたが、3コーナーで失速。大差しんがり負けに終わったが、マイル短縮の前走を逃げ切って圧勝。走破タイムも出色だった。
こちらも1400mは大歓迎。マイペースの逃げに持ち込めばアッサリのシーンまで十分考えられる。
ラブソングも侮れない。日高賞トライアル・あやめ賞で2着確保。本番では大きく体重を減らして7着だったが、はまなす賞、ダイヤモンドCと連続4着。何より強調できることは北海道時代に1000m、1200m、1800mと違う条件で3勝をマークしている点。繊細な牝馬ゆえ輸送の課題を抱えているが、ハイペースになれば自慢の末脚がさく裂する。
ブラックタイガーは盛岡3戦して8着、落馬、7着と精彩を欠いたが、これは左回りが合わなかった。その証明が水沢に替わった前走2着。堅実な差し脚で上位入線を狙っている。
◎(2)ヴイゼロワン
○(6)ヴェルシュナイダー
▲(9)コウギョウデジタル
△(7)リュウノタケシツウ
△(8)ラブソング
△(3)ブラックタイガー
<お奨めの1頭>
9R ラブリーホープ
水沢コースは2勝2着2回と連対パーフェクト。レース運びのうまさが最大の武器。メンバー骨っぽくなったが、適性で一歩リード
先週23日、古馬伝統の「第41回一條記念みちのく大賞典」(水沢2000m)は驚異の上がり馬コスモフィナンシェが見事な逃げ切りを決め、岩手の頂点に立った。名古屋から騎乗に駆けつけた岡部誠騎手の腕も冴え渡った。
コスモフィナンシェは昨年8月、JRA札幌・3歳未勝利でデビュー。2戦未勝利から岩手転入後、最下級スタートからアッサリ4連勝をマーク。C1昇級戦で2着に敗れ、その後、名古屋へ移籍し5戦3勝2着1回の成績を残して岩手へ里戻りした。
当初格付けはB1。メンバーが大幅に強化されたが2連勝を飾り、重賞・あすなろ賞へ挑戦。そこでも逃げて2着に粘って優先出走権を獲得してみちのく大賞典へ臨み、並み居る先輩を退けて快勝。前年の覇者トーホクキングの追撃を1馬身差封じ、栄光を手にした。
驚くのはわずか10ヵ月半で岩手伝統の重賞を獲得したこと。かつてトーホウエンペラーが中央未出走から1999年12月31日、岩手デビュー。それからちょうど1年、暮れのファン投票・桐花賞を制したことがあったが、その記録を大幅に短縮。岩手競馬史上最短で古馬重賞を制した。
コスモフィナンシェは現在4歳。これからどこまで成長し続けるのか、熱い視線で追いかけていきたい。
29日メインはB1・水沢1400m「こっとんこ市レース」。B2から3頭クシコスポスト、ビュレットライナー、マイネルピエノが短距離適性を求めて挑戦してきたが、負担重量のアドバンテージはなく牡馬56キロ、牝馬54キロ。それならばB1馬を重視するのがセオリーだろう。
主軸はタケノトレジャー。昨年、南関東A3から転入して2勝マーク。重賞にも駒を進めた古豪。今季スタートもA級だったが、白星こそないものの2着2回3着2回と安定度抜群。
前走は短距離重賞・早池峰賞(盛岡ダート1200m)へ出走2着。快速自慢が集結したが、直線で豪快な伸びを披露してスーパーワシントンの2着確保。低評価を覆した。
その実績を誇る馬が今回からB1へ降級ならメンバー有利は明白。距離1400mももちろん守備範囲とくれば絶好の勝機。シーズン初勝利の局面を迎えた。
タケノトレジャーに死角があるとすれば勝ち味の遅さ。そこに他陣営が付け入る余地がある。サーストンサブリナは開幕2連勝を飾り、これ以上ないスタートだったが、以降は伸びを欠いて入着止まり。
前走はその流れを断ち切るため、果敢に逃げたが直線一杯4着。当時、逃げ馬が圧倒的に有利の馬場だったが、それにしても飛ばし過ぎの印象。道中、後続を5馬身以上も離してオーバーペースだった。
今回の枠順は内枠2番枠。包まれるのを嫌って先行した際、ハイペースに巻き込まれる可能性あるのがネック。決して逃げにこだわるタイプではなく、流れが落ち着いた場合に本領を発揮する。
その展開のカギを握る1頭がモンテムーン。南関東から再転入後も1勝2着1回とマズマズの結果を出し、ねむの木賞では2番手追走からサーストンサブリナに先着2着。加えて水沢1400mは3戦3勝。C2、C1での成績とはいえ、適性高いのは間違いない。
あとは位置取りをどうするか。短距離なら控える競馬も可能だが、超ハイペースになったら持ち味が相殺。同型の出方と自身の戦法に勝敗の分かれ目がある。
ギシアラバストロは中央4勝・準オープンで格最上位。慢性的な脚部不安のため使い込めないのが痛いが、今季は月1回のローテーションを守り、1400m戦1本に絞って出走。前走6着に終わったが、これは1枠が災いしたか。そう解釈すれば流れを見ながらレースを進める外枠は好材料。このまましぼんでしまうのか、真価問われる一戦。
レッドヴェレーナは中央未勝利ながら芝1500m、ダート1200mで2着2回。B1格付けが微妙だったが、4、2、3着と毎回上位争いを演じ、前走はオープン・水沢1400mへ挑戦して3着。大外からいい脚で伸びてきた。B1条件でさらに上を狙える。あとは距離短縮歓迎クシコスポストは前崩れの展開になったら怖い存在だ。
◎(5)タケノトレジャー
○(2)サーストンサブリナ
▲(4)モンテムーン
△(11)ギシアラバストロ
△(10)レッドヴェレーナ
△(9)クシコスポスト
<お奨めの1頭>
8R クロワッサン
デビューが遅れたが、5戦4勝2着1回。ようやくA級入り直前まで迫った。未完の大器がはばたくか注目
23日・日曜日に行われた重賞『一條記念みちのく大賞典』は岡部誠騎手騎乗のコスモフィナンシェが優勝して幕を閉じました。
つい二戦前はまだB1級で、昨年の在籍時はC2級をようやく脱したくらいだった同馬ですが、前走のあすなろ賞2着を踏み台にして一足飛びに重賞を、それも大幅に数が増えた重賞競走の中でも"格上"と見なされるみちのく大賞典を制したのは見事という他はありませんが、手綱を取った岡部誠騎手の騎乗ぶりもまたお見事でした。
これで意外に折り合いが難しく距離にもまだ確証がないコスモフィナンシェをうまく折りあわせ、最後はすっかり脚が止まったパートナーをゴールまで保たせた。さすがは名古屋の、いや今や全国レベルの名手の腕っ節だと思わせてくれました。
今回は重賞騎乗を含むスポット参戦という形の岡部騎手でしたが、日曜日は7鞍乗ってみちのく大賞典を含む3勝。人気馬あり人気薄あり、そんな騎乗馬で3勝というところもさすがですね。また岡部騎手の騎乗を岩手で見てみたいものです。
●10Rの買い目
馬単(3)=(1)、(3)=(10)、(3)=(7)、(3)=(6)
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今年で41回目の歴史を誇る岩手古馬の最高峰「一條記念みちのく大賞典」。舞台は水沢2000m。旧盛岡競馬場(緑ヶ丘)時代から盛岡で実施されてきたが、1996年(優勝ヘイセイシルバー)。そして2009年、2010年。そして昨年2012年は水沢が舞台。今度で5度目となる。
スイフトセイダイvsグレートホープ。トウケイニセイvsモリユウプリンスはみちのく大賞典を頂点にライバル対決が繰り広げられ、また岩手のヒーローホース・メイセイオペラは史上初の3連覇(1998年~2000年)の快挙を果たした。
みちのく大賞典はいかに時代が変わろうとも、グレード制が導入されようとも価値は不変。岩手ホースマンにとって最高の栄誉がみちのく大賞典制覇である。
昨年はトーホクキングが前年の年度代表馬カミノヌヴォーとのマッチレースをハナ差で制し、悲願の重賞タイトルを獲得。第3回、カネヒエイ以来、37年ぶりに青森産馬の優勝となった。
今年のトーホクキングは迫力が薄れてしまった感もあるが、シアンモア記念7着後はわき目も振らず、みちのく大賞典に照準を絞って調整。これで負けたら仕方ない―と陣営が言うほど究極の仕上げで臨んできた。心情的には奇跡の復活をと願わない訳にはいかない。
とは言っても昨年のメンバーとはガラリ様変わり。2年連続でみちのく大賞典主そうにこぎつけたのは、当のトーホクキング1頭のみ。これには正直驚いたが、栄枯盛衰を如実に物語っている。
主軸をロッソコルサか、ダノンボルケーノか最後まで迷ったが、立ち直ったとなればロッソコルサが総合力で一枚上。水沢2000m2戦2勝の実績もあり、年度代表馬の貫禄を見せつける。
ダノンボルケーノが岩手初戦(盛岡ダート1600m)で見せたパフォーマンスも強烈だった。テン良し、中良し、終い良しで2着に2秒差の大差で圧勝。鞍上・村上忍騎手はまだまだ余力があった。しかし、あくまでも一線級が不在の一戦。2000mの距離も若干不安が残る。
スーブルソーは中央準オープンをから転入初戦を完勝。トライアル・あすなろ賞で1番人気に支持されたが、勝負どころからもたついて4着。案外の結果に終わった。それでも地力上位は明らか。地元水沢ならアッサリあって不思議はない。
トライアル・あすなろ賞を優勝したザドライブは引き続き好調キープ。岩手2戦2勝と勢いに乗っているのも魅力だが、今度は小回り水沢。調教で走り慣れているとは言え、実戦は別もの。ここで勝つようなら王座は確定する。
あとは驚異の上がり馬コスモフィナンシェも侮れない。名古屋から再転入後、アッサリ2連勝をマークし、格下B1からの挑戦・あすなろ賞でも先行策から2着に粘った。依然、底を見せていない。
他にもダートで巻き返しを図るドリームクラフト、シアンモア記念大敗でもバトルドンジョンはレースに集中できれば勝つ資格十分。まさにどの馬が勝っても納得がいく一戦となった。
◎(3)ロッソコルサ
○(6)ダノンボルケーノ
▲(4)スーブルソー
△(5)ザドライブ
△(9)トーホクキング
△(10)コスモフィナンシェ
<お奨めの1頭>
2R ボンジュールノゾミ
中央未勝利馬が顔をそろえた前走を完勝。砂の深かった盛岡ダート1200mで1分14秒8には舌を巻いた。3歳C2では能力の違いが明白
先週から舞台が盛岡から水沢に替わったが、波乱に次ぐ波乱。開催替わりは荒れるとよく言われるが、まさに高配当の嵐が吹き荒れた。特に顕著だったのが逃げ馬と直線で内に進路を取った馬たちの活躍。多少、いや、かなりハイペースで逃げても直線でもうひと伸びをするケースが目についた。
ただ中間に雨が降り、ある程度は乾くとしても先週と同じ傾向になるのか。申し訳ないが、これは実際のレースを見ないことには判断つきかねるので、まずは馬場傾向をしっかりと把握してほしい。それは自分にも言い聞かせている。
22日メインはオープン馬による水沢1400m戦「ハクサンチドリレース」。大きなファクターとなるのは開催替わりと1400m適性。またA級在籍馬は58キロ、B1以下は56キロ(牝馬は2キロ減)。これも影響は少なくないはずだ。
距離適性、実績など総合力で一歩リードはスーパーワシントン。休み明け初戦を快勝し、赤松杯2着、シアンモア記念5着。まったく崩れを知らず、前走・早池峰賞を圧勝。10歳にしてついに悲願の重賞タイトルを手に入れた。
今回の水沢1400mも2度使われて昨年の重賞・岩鷲賞で3着確保と実績も申し分ない。加えて緩急自在の戦法を採れるのが最大の強み。ハイペースでも流れ落ち着いても対応でき、軸はスーパーワシントンに落ち着く。
カギを握るのは新参エーシンブラン。前走・シアンモア記念は笠松から参戦して9着。結果だけを見ると実力不足と思ってしまうが、コンプリートと競り合って前半35秒2の超ハイペースを作った張本人。大敗も仕方なしだった。レースを使ったあと、そのまま岩手へ残って転入した。
過去実績は申し分ない。中央デビュー2戦を勝ち上がり、新潟2歳ステークス4着。3歳時に兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ・園田1870m)で重賞制覇を果たした。
その後、園田へ転籍して1400m戦で1勝。名古屋でも1400m・名古屋記念で3着などの実績を誇る。あとは水沢コースが合うかどうかだが、アッサリ首位か凡走かの極端なケースが考えられる。
ギシアラバストロは順調に使い込めないのが痛いが、今季は短距離に照準を絞ってローテーションを組んで連続3着。前々走では同じ1400m・オープン戦で3着を確保した。B1在籍ゆえ2キロのハンデさもあり、底力でアッサリのシーンまで。
コンプリートは転入2戦目の水沢マイル重賞・赤松杯を見事逃げ切った。前後で大敗を喫しているが、これは逃げ馬の宿命。今度も先行馬がそろって楽な競馬はできないが、先手さえ取れれば好勝負に持ち込める。
マイネルレーサーは堅実な差し脚が武器。A級入り後はなかなか勝てず、1400mに活路を求めてきた。ただ白星こそないが、5戦2着2回のほかもすべて入着。ハイペース必至なら台頭も十分ありえる。
ティムガッドは同型との折り合いがポイントだが、早池峰賞では果敢に逃げて4着に粘った。水沢1400mが微妙だが、先手さえ取れれば粘り切るシーンまで。
◎(10)スーパーワシントン
○(9)エーシンブラン
▲(1)ギシアラバストロ
△(7)コンプリート
△(5)マイネルレーサー
△(4)ティムガッド
<お奨めの1頭>
6R ベルモントオメガ
岩手C2スタートと格付けに恵まれて初戦を圧勝。南関東7勝の底力を見せつけた。同じく転入戦を快勝メイショウグレイトと一点勝負 5-7