25日メインはA1級馬による「岩手競馬奥州サポートクラブ杯」エクセレント競走(水沢1800m)、9頭立て。
この「岩手競馬奥州サポートクラブ」は相原奥州市市長が地元の経済団体などに呼びかけ、岩手競馬支援グループを今年1月に発足。その第一弾のイベントが今回の冠協賛となった。
昨年終盤から県内は岩手競馬存廃問題で揺れ動いていたが、奥州市はいち早く岩手競馬存続をアピール。そして街ぐるみで各方面に様々なアクションを起こし、廃止から一転、存続にこぎつけた大きな力となった。それら一連の行動に心から敬意を払いたい。
さて本題。今回、トミケンマイルズ、ニューベリー、タイキリオンの大物3頭が転入してきた。まずトミケンマイルズは北海道でデビューし、中央、南関東、東海を経て通算10勝。南関東時代にはアフター5スター賞、マイルグランプリの2重賞(いずれも大井)を制している。
ニューベリーは中央9勝、ダート6勝、芝で3勝をマークし、オールラウンドプレイヤーで鳴らしてきた。惜しくもグレードタイトルには手が届かなかったが、昨年1月の金杯(京都)で2着(1着はビッグプラネット)に入った実績がある。今年、9歳の高齢となったが、まだまだ若々しい馬体を誇っている。
タイキリオンは中央4勝(うち障害2勝)馬で3歳時にG?・ニュージーランドトロフィーを優勝。03年から障害1本に絞り、今回は同8月、関屋記念以来の平地レースだが、岩手の顔になれる可能性は十分にある。
迎え撃つ岩手勢の大将格はヤマニンエグザルト、ゲイリーエクシードの2頭となる。ヤマニンエグザルトは一昨年、最下級C3から快進撃を続け、一気にオープン入り。昨年途中までは頭打ちのレースを繰り返していたが、終盤戦に入ってオープンの壁を突破。駒ケ岳賞、そして重賞・早池峰賞(いずれも水沢1400m)と連覇した。
続くトウケイニセイ記念では1番人気に支持され、明け4歳馬テンショウボスに屈したものの、2着を死守し、シーズンを終えている。
一方、ゲイリーエクシードは真っ白な馬体を唸らせ、昨年は<6.7.2.0>。好メンバーがそろった暮のグランプリレース・桐花賞でもオウシュウクラウンの0・1秒差2着と気を吐いた。
以上が今回の有力馬だが、ここはニューベリーを主軸に推してみたい。過去、勝ち星はすべて1600m以下だが、小回り水沢なら1800mも無難にこなすはずだし、何といってもこれまで戦ってきたメンバーが違いすぎる。
逆転筆頭はゲイリーエクシード、流れ関係なしの豪快なマクリを身上とする。以下は1800mが若干微妙だが、昨年の勢いを駆ってヤマニンエグザルト、そして2月末まで実戦を使ってきたトミケンマイルズ、9ヶ月ぶりでもグレードウィナー・タイキリオン、当距離が合うベルモントシーザーの序列。
◎ ?ニューベリー
○ ?ゲイリーエクシード
▲ ?ヤマニンエグザルト
△ ?トミケンマイルズ
△ ?タイキリオン
△ ?ベルモントシーザー
3連単は2、8、1のボックス。あとは3、6、5を3着押さえ
馬複は2−8、1−2、2−3、2−6、2−5
<お奨めの1頭>
3レース ノーウォーリーズ
B3級でも勝ち負けを演じてきた馬が今季は最下級へ降格。水沢コースの適性も高く、信頼の軸
1月15日、水沢開催の終了後、約2ヵ月半の冬期休養に入った岩手競馬だが、この冬期間に重大な「事件」が発生した。
慢性的な財政難に陥った岩手競馬を再生するため岩手県、盛岡市、奥州市(旧・水沢市)の構成団体に融資案を盛り込んだ「新しい岩手県競馬組合改革計画」を策定したが、融資を巡って県議会が紛糾。岩手競馬の存続にこの融資は必要不可欠だったが、県紙による批判報道も拍車をかけ、賛否両論が県民も巻き込んで様々な議論が交錯。
その結果、最後の最後まで融資の是非でもつれ込み、県議会最終本会議で議員の記名投票による採決をした結果、賛成22票、反対22票と可否同数。最終的に伊藤勢至議長の採決に委ねられたが、同議長が融資案を否決。
それによって融資スキームを盛り込んだ改革案が実行不可能になったため、議会後の共同記者会見で増田知事が「今年度をもって廃止の方向を決断せざるを得ない」と増田知事が発表。昭和39年に始まった岩手県競馬組合、43年間の歴史にピリオドを打たされそうになった。この間、連日にわたって多くの競馬関係者が議会に詰めかけ存続を訴えてきたが、その願い、叫びもむなしく「廃止」宣告を受けてしまった。
しかし、4日後に奇跡が起こった。
3月15日の県議会決定を受けた2日後、盛岡競馬場で岩手県競馬組合議会を開いたが、議員から「存続のための方法を模索すべき」との意見が続出。そのため構成団体が非公開で協議に入り、盛岡市、奥州市の負担分をさらに10億円ずつ増額するという案が競馬議会で出された。
その修正案は19日、臨時県議会で政和・社民クラブから提出され、再びそれを審議、記名による採決となり、賛成22票、反対21票で可決。一転、岩手競馬の存続が決定した。その瞬間、傍聴の関係者から拍手が巻き起こり、議会終了後には涙を流しながら存続を喜びあった。
以上、駆け足で一連の存廃騒動を報告したが、ひとまず来期も岩手競馬は継続。当初から予定どおりされていた今回の平成18年度特別開催も無事に開催するまでこぎつけた。
さて本題。今週24日(土)から27日(火)までの4日間連続開催となるが、その初日メインはA1・2級馬による「奥州市職員奥馬(おうま)の会会長杯・エクセレント競走(水沢1600m)、12頭立て。
主軸にマチカネダイキチを指名する。同馬は一昨年12月、中央3戦未勝利から岩手へ転入し、最下級C3からスタート。メンバーにも恵まれて昨シーズンは4戦2勝2着1回3着1回。また今シーズン(06年)も着外に沈んだのはわずか1回のみで6勝2着6回。とりわけ水沢コースでは<4.6.3.0>と抜群の安定感を誇っている。
マチカネダイキチの身上は展開構わず直線シャープに伸びてくる末脚。休養前の前走(12月25日)でも鮮やかな3コーナーまくりを決めた。今回からA1級に編入したが、さほどメンバーが強化された感はないし、得意の水沢戦なら信頼の軸と言えるだろう。
逆転筆頭格はマルカクール。12月のB1戦で2連勝をマークし、昇格初戦のA2・六華賞に挑戦。エブロス産駒で2000mの距離が不安視されながら、中団キープから直線ジワジワ伸びて3着を確保した。今回の舞台は守備範囲の水沢1600m、アッサリ好位抜け出しの可能性も大きい。
単穴はジュリアを抜擢したい。逃げ同型にベルモントサファリ、インターサウンド、ルーキーナカヤマがいて展開は決して楽ではないが、精神的にも落ち着きが出てきたし、右回り1600mがベストの条件。うまく折り合いをつけて好勝負に持ち込むか。
以下、格上馬スウィープザボード、水沢11戦9勝トーホウライデン、差し堅実グラスホープを連下で押さえたい。
◎ ?マチカネダイキチ
○ ?マルカクール
▲ ?ジュリア
△ ?スウィープザボード
△ ?トーホウライデン
△ ?グラスホープ
3連単は4、5の折り返しから9、12へぶつけ、10、8を3着押さえ少々
馬複は4−5、4−9、4−12、4−10、4−8
<お奨めの1頭>
3レース スプリングダイド
中央4戦0勝で今年1月に転入。距離850m戦で痛恨の出遅れを喫したが、それをモノともせずに豪快に抜け出して快勝。これは間違いなく出世する器だ
当ブログについて、3人交代で週イチ更新という予告をしたにもかかわらずほとんど更新することができず、誠に申し訳ありませんでした。
存廃問題で岩手に激震が走ったことは皆さまも各メディアやネットのニュース等でよくご存じと思います。この間、編集長は存続派の力になろうと関係者や有識者の間を飛び回っていたらしく、テシオ編集部のある社内ではほとんど姿を見ませんでした。また、よこてん氏は当テシオホームページ内にあります自身のブログに県議会の経過を詳しくアップしておりますので、そちらもご覧下さい。
ところで、県外の方々にはこのニュースはどのように伝わったのでしょう?一般の人の耳には入ったのでしょうか?私の地元・宮城県の友人からは「岩手競馬廃止だって!?」(廃止が決定した訳ではない段階での早とちりでしたが)というメールが届きましたので、なんらかの報道はあったようですが、私が全国放送のニュースを見ている間には一言も触れられていませんでした。またインターネット上でも、岩手競馬に関心を持つ方は積極的にニュースを探してお読みになったでしょうが、例えばポータルサイトのトップ画面にあるニュースのような形で一般の人が受動的に目にする機会はほとんど無かったように思います。
もしかして、益田から続く一連の地方競馬廃止にはもう慣れっこになってしまい、たとえ岩手のような規模の大きな競馬場が消滅しても、もう一般大衆の関心事にはなりえない。そういうことなのでしょうか?
まぁこれでもし本当に廃止となっていたら、債務処理負担で財政的に苦しくなった自治体を「第二の夕張」などと言って報道したのでしょうが…
一方県内では、ローカルニュースで毎日のように長い放送時間を割いて大きく取り上げられていました。その中で、街頭インタビューを行って県民の意見を聞くというのをどの局もやっていたのですが、多く言われたのは「ギャンブルなのに県税を投入するのはけしからん」というものでした。歴史的に馬を愛し続けてきたはずの岩手県民でさえこれなのですから、やはり競馬へのマイナスイメージは相当根深いものがあります。そういう私も、テシオの撮影を始める以前は競馬には近寄りがたい感覚を持っていました。
多くの人は幼いころから“ギャンブルは悪”というイメージを刷り込まれ、「ギャンブルなんてやっちゃぁ、わがんねよ。だって競馬で会社を潰したり、首吊った人もいるんだがらな!」と言い聞かせらる家庭が多いでしょうから無理もありません。しかし皆さんならお解りになっているように、何度か競馬場に足を運べば、競馬は素晴らしい観戦型スポーツであり、人と動物が力を合わせる美しさがあり、馬を育てる沢山の人達のロマンがあることが分かってくるはずです。金を賭けるのは競馬を楽しむことの一側面でしかありません。問題は広く多くの人に、いかにしてギャンブルへの抵抗感を減らし競馬に興味を持つきっかけを持ってもらうか。これは永遠の課題となるでしょう。
また、インタビューにこのように答えたご婦人もおりました。「赤字の競馬なんかやめて早く他の仕事を探せばいい。どうしても続けたいなら他の地方に行けばいいんですよ!」と。この方はもし自分の主人や息子が競馬関係者だったなら、同じ事を言えるのでしょうか?自分の大事な人が競馬に携わっていたらと想像するだけでも、そんなことは言えなくなると思うのですが…
このご婦人だけでなく、「俺は競馬やらないから関係ない」という声も多くあり、このような競馬と直接間接で関わりがなく関心も薄い人たちが、いきなり巨額の税金投入を聞かされればおいそれとは賛成できない気持ちも当然と言えるでしょう。しかし、彼らが少しでも競馬に関心を持ち、僅かでもそこに生きる人や馬のことを想う気持ちを持ってもらうことが出来たなら、世論はもっと違ったものになるかもしれません。
岩手では馬が身近にいることを、競馬が岩手の誇れる文化であることをもっとたくさんの人々、特に岩手県民に理解してもらうことは、この先とても重要なことだと思います。
20日の競馬議会で、岩手県競馬の存続が正式に決定しました。とりあえず開幕を目前にしての廃止という非道な事態は避けられました。しかし赤字を出さないことを大前提とした以上、背水の陣での開催が続いてゆくわけです。相当な改革を求められると思いますが、この先も岩手で競馬が営まれていくかどうかはこの一年にかかってきます。
これからの生まれ変わった岩手競馬にご注目下さい。
(文/写真・佐藤 到)
p.s.
3月21日の高知競馬で行われた全日本新人王争覇戦で、岩手の山本聡哉騎手が見事優勝しましたね。岩手ジョッキーによる制覇は村上忍騎手以来2人目。村上騎手は、現在ではリーディングトップ3に入る実力を身につけて活躍しています。聡哉君、暗いニュースが飛び交ったこのタイミングで嬉しい知らせを届けてくれましたね。実況の「みちのくに届いたか岩手の希望!」にも泣かされました。
記録的に暖かで、まるで春先のような冬を過ごした岩手ですが、いよいよ3月。ホントの春がもうすぐそこまで来ていますね。このあいだは“バッケ“(ふきのとう)が地面から顔を出しているのを見つけてしまいました。早いです。この調子で一ヶ月ぐらい季節が早まってやってくるのではないでしょうか。昨年4月のこのブログに、テレビでよくある「入学式に満開の桜」という図式は東北以北ではイメージ出来無いということを書いたのですが、今年は岩手あたりでそんな構図が見られるかもしれません。
さて、2月26日には盛岡と水沢で競馬場に春の訪れを告げる「安全祈願祭」と「調教開始式」が行われました。盛岡・水沢両競馬場には、馬たちの健康を願い、また事故や故障などで不運な運命をたどった馬たちを供養するため「馬頭観音」の石碑が建てられています。この日は朝9時から競馬組合の職員や調教師・騎手・厩務員などたくさんの関係者が碑の前に集まり、神主さんを招いて祭事がとりおこなわれました。
そういえばこの行事、3月の追加開催が初めて実施された昨年には行われませんでした。今年の参列者のなかには「去年はこれをやらなかったからあまりいい年でなかったのかも…」と漏らした方がいましたが、みな心のどこかでは、「今年は拝んだからきっといい年になる。いや、なって下さいよ」と思っていたのでしょうね。
神主さんはその後、業務用の1BOXカーに乗って本走路を一周。ところどころで下車しては御神酒を振りまき、特にスタンド中央では入念に拝んでいました。
お清めが終わるといよいよ馬たちの調教が始まります。このときいつも決まって真っ先に姿を現すのは、桜田勝男厩舎の所属馬。今日も桜田浩樹調教師補佐と佐々木忍騎手が、桜の花に「勝」の一字が入った厩舎の馬服でばっちり決めた2騎にまたがって先頭コースインしました。例年の調教開始の日にはコース上の雪を除雪して走路を確保するのですが、今年はその必要も無かったと思われ、いつもより多めの十数頭の馬が次々と走路に出て元気に駆け始めました。中には久しぶりの広い走路に興奮したのか暴れ出してしまう馬もいましたが、馬も人も2ヶ月ぶりのダートコースの感触をしっかりと味わったようです。
(文/写真・佐藤 到)
3月下旬までしばしの冬休みに入っている岩手競馬なのですが、そのシーズンオフを利用して、高松亮騎手と高橋悠里騎手の2名が佐賀競馬場に遠征しています。先週までの時点で高松亮騎手が28戦3勝、高橋悠里騎手は15戦1勝の成績。
高松亮騎手の方は騎乗数が多いですし、佐賀も2度目とあって安定した内容といっていいでしょう。高橋悠里騎手の方は本格的な他地区での騎乗は初めて。騎乗数もそれほど多くないながらも次第に佐賀のレースに慣れてきたな、という印象です。
なにより、どちらの騎手も勝率だけで言えば地元以上の結果ですからね。よくがんばっていると思います。
この、冬の佐賀競馬での武者修行は05年から始まって今年が3度目。受け入れは減量のある騎手に限られる上、まるまる1ヶ月以上行ったきりという条件があるため誰でもいけるというものではありませんが、若手騎手たちにとってはあこがれの的のようです。
他場での短期所属制度を目指すのはハードルが高いし、馬と一緒の遠征というのもなかなかチャンスがないですから、腕を磨きたい若手騎手にとっては佐賀遠征は一番身近な「他所の釜の飯を喰ってくる」機会。実際、佐賀に行ってきた騎手たちは皆、仕事の内容の違いに驚きかつ苦労しつつも、異口同音に「また行きたい」と言っていたものです。
現地佐賀の皆さんもいろいろな都合をやりくりして受け入れて下さっている事でしょう。来シーズンの冬は減量騎手が少なくなりますが、この遠征、ぜひ続けてほしいですね。
あ、ふと思いつきましたが、来シーズンよりデビューすると思われる菅原俊吏騎手の減量はどういう扱いになるのでしょう?俊吏騎手はオーストラリアで騎手経験があり、全くの新人では無いんですよね。よく似た経歴だったJRAの横山義一元騎手の場合、JRAデビュー戦では減量がありませんでしたから、やはりそれと同じ事になるのでしょうか。
高松亮・高橋悠里両騎手の佐賀遠征も今週末と次週で終了となります。今週は、今の時点で決定している土・日分だけでも高松亮騎手が13鞍、高橋悠里騎手が8鞍の騎乗があり、勝ち星追加に大きな期待がかかります。
私もできれば佐賀まで行って現地で応援したかったのですが、残念ながらそれは果たせずじまいになりそう。その替わりといってはなんですが、岩手での佐賀競馬場外発売やオッズパークで両騎手の馬券を購入して応援したいと思います。皆様もぜひ。