
岩手競馬で最も長い歴史を誇るレースといえば駒形賞(現在はA2特別)、岩鷲賞(同3歳短距離重賞)、そしてこの不来方賞の38回だが、駒形賞、岩鷲賞は何度かクラス、血種などの条件が変更されており、純然に38回の歴史を数えるとは言い難い。
しかし不来方賞だけは一貫してサラブレッド3歳、舞台もその名のとおり盛岡(不来方=こずかたは旧南部藩、盛岡城の別称)で実施されてきた。先人達の話によると、この回数は便宜上のもので実際はもっと古い歴史があるのだそうだ。
今年、『ダービーWeek』創設に合わせて「ダイヤモンドカップ」が“岩手ダービー”と銘打たれたが、岩手のホースマン、そしてファンにとって、この不来方賞が岩手3歳最強馬を決める岩手版ダービーであることに変わりない。おそらく今後も。
(写真はダイヤモンドカップのゴール 1着オウシュウクラウン 佐藤到)
本題に入る。今年の不来方賞には、久々にファンの胸をときめかしてくれる期待の星が登場する。もちろんオウシュウクラウンのことである。このブログでも何度か記してきたが、南関東から里帰り後、サマーカップまで4連勝をマーク。陣営はせっかく立て直しに成功し、無理をさせたくないと一旦はG?・ジャパンダートダービーを自重すると決めた。実際、きついローテーションに加え、暑さ対策、輸送などリスクは少なからずあったが、調教師、オーナーが話し合って最終的に遠征を決断。その結果、オウシュウクラウンはジャパンダートダービーで地方馬最先着の3着に健闘するに到った。
スタッフはこの善戦にホッとしながらも同時に不安もあった。オウシュウクラウンは気のいい馬で多少、体調が悪くても全力で走るタイプ。元々、腰に弱いところがあり、遠征の反動を心配していた。
しかし、それは杞憂に終わった。反動がなかっただけではなく、不思議なもので馬に風格が出てきたのだ。実際、小生が厩舎にお邪魔して午後運動をぼんやり眺めていたら、前以上に強いオーラを出している。それは管理する櫻田浩三調教師も感じたそうで、馬に『自信』が出ると貫禄が備わってくる。
これはオープン馬に良く見られるケースだが、かつてトウケイニセイが初めてオープン重賞・みちのく大賞典に出走し、レコード勝ちを決めた後、洗い場でガラッと雰囲気が変わっていた。それまでグレートホープが我が物顔で大将を張っていたが、そのみちのく大賞典から主客が逆転。トウケイニセイが厩舎のボスに替わっていた。
岩手にもいきなり暑さが襲い、担当厩務員は調整には苦労しているが、ひとまずオウシュウクラウンは順調そのもの。左回りに若干不安は残るものの、今回は勝負付けが済んだメンバー。大一番・ダービーグランプリにも向け、同じ盛岡ダート2000mでどんなレースを見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
相手はこの2頭に絞られる。テンショウボスとブラックショコラだ。
まずテンショウボスだが、不来方賞トライアル・ミルキーウェイカップ(盛岡ダート2000m)は、強敵不在で当然のように完勝した。ダイヤモンドカップ、サマーカップと2戦連続3着で足踏みを続けていたが、そのうっ憤をようやく晴らした格好だった。しかし、これは水沢の小回りが合わずに3着と解釈したほうが妥当で、馬場の広い盛岡で本領を発揮したものだった。またテンショウボスは輸送が入ったほうが体が絞れるようで、実際、ミルキーウェイカップは520キロで出走。その前の2戦は525キロ、526キロと太目残りでもあった。
一方、ブラックショコラは前走、芝重賞・オパールカップを貫禄の優勝。3つめの重賞タイトルを手にし、今後も芝ダート兼用で活躍するに違いない。唯一の不安点は父がブラックホークだけに本質的には短距離血統。距離2000mは守備範囲外だが、それは前々走・サマーカップ(水沢1900m)で道中、出遅れもあったが最後方を進んでラスト800mからロングスパート。その戦法がズバリ当たり、オウシュウクラウンの2着を確保した。つまり2000m戦でも前半をセーブし、ラスト800mから600mでスパートをかければ長い距離でも持つことを証明した。馬券の対象はおそらく以上の3頭しかいないと見てほぼ間違いないだろう。
3連単は9を1着固定に2、3着は4、8の折り返し
馬複は4−9、8−9の二点勝負
<お奨めの1頭>
11レース インターサウンド
前回は直線で一旦、レタセモアに交わされながら驚異的な二枚腰で再度、内から延びて1着。これには周囲もビックリ
さあ今週はいよいよ不来方賞。GI3着という素晴らしい実績を手にしたオウシュウクラウンも、この歴史ある地元重賞をパスすることなく参戦してきます。全国区になったオウシュウクラウンと、地元で抜けた存在となっているブラックショコラ、サイレントエクセルらが再び相まみえ、誰に軍配があがるのか…
と、その前に。オッズパークを通して今年度から岩手に興味を持っていただいたファンの皆様は、この「ふらいほう」とやらが何なのか解らない方が多いでしょう。
これは正しくは「こずかた」と読み、盛岡地方の古い呼び名とされています。かつてこの地に羅刹という鬼が現れ、里を荒らし回ったので、困った人々が三ッ石の神様(現・盛岡市名須川町の三ツ石神社)にお願いしました。すると神様は鬼を捕らえ、二度とこの地に来ないという約束の手形を神社の境内にある岩に残させました。…という伝説があり、この「二度と来ない」が「不来方」という名の由来とされています。
さらに、岩に押したという手形が「岩手」という県名のいわれであり、この巨岩は現在でも神社の境内にそびえ立っていて、ちょっとした観光名所になっています。また、鬼が退治されたことを喜んだ里人たちが神社で祝いの踊りを踊ったのが、盛岡周辺に伝わる「さんさ踊り」の起源なのだそうです。
ちょうど8月1日から、盛岡市では市内中心部の中央通を会場に「盛岡さんさ祭り」が開催されていまして、踊り手、太鼓、笛の行列が通りを埋め尽くし踊りまくっています。なんでも東北5大祭りに数えられるのだそうで、特に、太鼓が伴奏ではなく、祭りの主役としてかなりの人数が太鼓を叩きながら踊るので、なかなかの迫力ですよ。
<次走へのメモ>
7月29日 第24回ビギナーズカップ
1着 パラダイスフラワー
好スタートを切ったというより、スピードの違いで楽に先手を取って4コーナーでボスアミーゴに肉薄されるシーンもあったが、それは一瞬だけ。直線を向いてさらに加速して盛岡ダート1200mを1分12秒2の驚異のタイムで圧勝した。この時期に1分12秒台をマークできる馬はそういない。レースレコードを大幅に塗り替え、ダート戦2連勝を飾った。
「こういう速い馬場が合うし、出たなりで行かせただけで、ほとんど追っていない。まだ状態も本物でないのに、こんなタイムをマークできるのだからスケールは大きい。体がしっかりすればもっと走るはず。それに道中、かかる感じでもないので、距離が伸びても大丈夫なのでは」と小林騎手。いずれにせよダートでは牡馬も含めて一歩抜きん出た存在となった。「認定競走を取っていないので、まずはそれを取らせてから今後を考えたい」と櫻田浩三調教師。
2着 ボスアミーゴ
デビュー戦(水沢850m)で出遅れながらも2歳馬離れしたレース内容で完勝。今回は道中3、4番手を進んで4コーナーでパラダイスフラワーを射程圏に入れたが、そこから離される一方。マイナス14キロの体重減も影響したと思うが、それ以上に相手が強すぎた。「初コースにはそれほど戸惑わなかったが、中間の攻め馬がきつかったかも。それでコツコツした歩様になった」と菅原勲騎手。
3着 マツリダランラン
スタートセンスがよく2番手を追走したが、直線一杯。このタイムで走られては如何ともし難い。例年ならば1分14秒0でも勝ちタイムだったが…。
7月30日 第28回せきれい賞
1着 ジェーピーバトル
「中団ぐらいの位置取りかと思っていたが、スタートが良かったので2番手からの競馬となった」(菅原勲騎手)が、ペースが落ちた1、2コーナーで南関東のウエノマルクン、アンフィトリオン、そしてケージーチカラが前に進出。「逆にそれで目標ができてレースがしやすくなった」と菅原勲騎手が語ったとおり、あわてることなくジックリ待機。5番手まで一旦下げ、3〜4コーナーでスパート。直線はウエノマルクン、アンフィトリオンを交わせる態勢に入り、ラスト100mで先頭。そのまま押し切って待望の重賞タイトルを獲得した。これで盛岡芝は6戦4勝2着2回とした。
「チャンスがあれば中央へも行ってみたいが、当面はOROカップ(9月24日、盛岡芝1600m9を目標にしたい)と佐藤浩一調教師。
2着 サイレントグリーン
終始、中団インをキープして3コーナーから徐々にスパート。4コーナーではジェーピーバトルに並びかけて直線勝負に持ち込んだが、瞬発力の差でジェーピーバトルに先着を許す。「今日は完敗です」と板垣騎手。
3着 ヤマニンランスタン
後方で我慢して脚をため、直線勝負にかけたのが功を奏して3着に善戦した。中央未勝利から南関東8戦0勝から今年5月に岩手転入。これまで4戦を消化して4着が最高だったが、その4着は同条件で行われたかきつばた賞(0・4秒差)。中央時の2着4回も芝でマークしたもので、芝適性が結果につながった。
4着 アンフィトリオン
一周目スタンド前では6番手を進んだが、1コーナー過ぎにウエノマルクンとともに先頭へ立つ。あとは馬の行く気にまかせて直線半ばまで粘ったが、ラスト100mで力尽きる。中央芝で6勝。昨年4月、メトロポリタンS4着後、1年の長期休養後に南関東へ移籍。2戦とも大差負けを喫していたが、今回は走り頃の3戦目と得意の芝で4着。往時の頃に比べるとかわいそうだが、芝なら今後も目が離せない存在となった。
6着 ヤマヨダイナミック
後方3番手を進み、3コーナー手前からスパートをかけたが6着止まりまで。トライアル・かきつばた賞を快勝し、1番人気に支持されたが、その時のようなハイペースにならず、自慢の切れを出せなかった。