7月29日、小雨が降る中おこなわれた8レースにエメラルユーキという馬がいまして、通常通りパドックを周回した後、阿部英俊騎手が騎乗して馬場へと向かいました。ところがこのとき、たまたま左側の手綱がハミの近くから切れてしまい、阿部騎手が右の手綱だけで必死に制御しようとしたものの、ラチに接触して騎手を落とし放馬してしまいました。
人馬とも大事には至らず良かったのですが、エメラルユーキはトラックを半周ほど走り、今度はUターンしてコースを逆走。スタンド側まで来るとレース後の馬が引き上げる出口のところから馬場を出て、職員の制止もきかずそのままの勢いで厩舎地区の方へ走って行ってしまいました。
今は水沢の厩舎から参戦しているエメラルユーキですが、実は昨年までは、盛岡の小笠原義巳厩舎にいました。このとき小笠原厩舎にいたのは、昨シーズン、エメラルユーキを担当していたN君。N君は、イマドキの若者らしいこなれた感じがなく、寡黙でまじめな青年で、馬の仕事がしたいがために単身、岩手競馬の世界に飛び込んできた人物。私と彼とは乗馬練習を一緒に受けた時に話をするようになったのですが、「自分はユーキに馬というものを教えてもらった」と良く言っていました。しかし残念ながらとある事情により7月を最後に厩舎を退職し、実家へ帰ることがこのとき既に決まっていました。
そんなN君が厩舎の番をしていた午後。残り少ない競馬場で過ごす時間。そのときなぜか表に馬の気配を感じて出てみると、そこには、いるはずのないユーキが…!
放馬でパニックになったエメラルユーキが、記憶の断片に従って自分がもといた寝床への道を辿っただけなのかもしれません。でも、競馬場をあとにするかつての担当者に、別れの挨拶をしにきた…ようにも思えて、ちょっと泣ける話ですよね。
8月6日 第38回不来方賞
(写真・佐藤到)
1着 オウシュウクラウン
7月12日、G?・ジャパンダートダービーに参戦して3着に健闘。その遠征の反動が唯一の不安材料だったが、さらに気配アップ。堂々、オープンの貫禄を身につけ、今回、496キロの馬体重で出走。盛岡は4、5日前からいきなり暑さが襲ったが、その影響もほとんどなく、パドックでも落ち着いて周回していた。
レースでも好スタートから逃げたミステリーゴットの2番手を追走。距離が2000mで前半、ややスローだったため掛かり気味になるシーンもあったが、小林騎手はそれをなだめて折り合いをつける。
向正面では馬群が一団で固まり、3コーナーからペースアップ。テンショウボスが外につけるとオウシュウクラウンは馬なりのまま、4コーナー手前で先頭。直線でも余力があり、ちょっと気合いをつけるとあっと言う間に後続を突き放し、2着テンショウボスに5馬身差。さすがG?でも3着に入った馬、地元同士では役者が違いすぎた。
「直線でササり加減だったが、気のいい馬だから追えばもっと伸びたはず。今回は負けられない一戦だったので、内容的にも満足している。ダービーグランプリでもいい競馬をしてほしい」と小林騎手。
「本番(ダービーグランプリ)に向けて弾みがついた。暑い季節が到来したし、その本番まで40日あまりなのでジックリ調整をし、ぶっつけで臨みたい」と櫻田浩三調教師。
有力視される馬が相次いでリタイヤの噂もあるが、あとはオウシュウクラウン自身との戦い。左回りは若干不安だが、一戦ごとにパワーアップが明らかな今、岩手勢の期待は膨らむ一方となった。
2着 テンショウボス
1週前(7月27日)、3日前(8月3日)と2本、一杯に追い切りを消化しながら、プラス11キロの531キロで出走。正直、パドックでも太めに見えたが、それは違ったか。スタートでややあおったため1周目スタンド前は後方3番手の追走だったが、ペースが遅くなった向正面で3番手まで進出。3コーナー過ぎでオウシュウクラウンと馬体を併せようとして勝ちに行ったが、直線で突き放される。「並ぼうとしたらすぐ離された。こちらも力を出し切ったが、完敗です」と阿部英俊騎手。
この結果2着から、馬体重増は成長分かも知れないが、個人的な意見としてベストは520キロを割るぐらいだと思っている。
それにしてもトライアル・ミルキーウェイカップ完勝、そして今回2着からも馬場の広い盛岡の方が断然合うだけに本番でも楽しみにしている。
3着 ブラックショコラ
マズマズのスタートを切り、想定どおり後方2番手からの競馬。向正面でテンショウボスがスパートをかけたのを見て徐々に先陣に進出し、テンショウボスを交わしにかかったが、ラスト100mで脚色がいっしょになった。やはり本質的にはマイルまでの馬で、距離が2000mでは前半ハイペースの展開から直線勝負に持ち込めないと、ちょっと苦しいか。
先週のこのブログで「今年は暑くならないですね」と書いたら、早速梅雨が明けて、夏らしい暑い日差しがやってまいりました。
暑いか涼しいかどっちが良いかといわれれば、それは涼しいのがいいんですけど、そうそういつまでも夏らしくない日が続くのはすっきりしないですからねえ。暑い日差し、大歓迎です。
月曜メインの御所湖特別、ここはラブラブサンヒコを本命に推しましょう。最近は芝・ダート問わない安定感を見せていますが、やはり本来は芝でのしぶとい走りが持ち味の馬。ここ2戦のタイムも悪くなく、今回のメンバー中では一つ下のB3級の馬ではありますが、タイム比較で見て格下感はありません。
やや気になるとすれば最内枠に入った事でしょうか。最近の盛岡の芝は以前ほど最内枠の有利さがなく、外枠の差し馬が台頭する例が多くなっています。ですが、比較的柔軟な戦法が取れる馬ですし、芝コースは手の内に入れている鞍上でもありますし、そこは心配しなくて良いでしょう。
対抗はゲイリーザスカイを。前々走は7着、前走は4着と着実に芝で前進を見せており、やはり芝で走る馬だと再確認。前走などは強い相手に囲まれてあそこまで走っているのですから、ここなら十分に主力級でしょう。展開ひとつで初勝利も。
芝での安定株といえばビクトリームワンも外せません。前走はやや展開向かずに7着と崩れましたが、5月には芝で3連続連対したくらいの芝巧者。B級3戦目でクラス慣れも見込めるでしょう。
単穴評価したいのがキタノソナタ。芝はJRA時代の1戦(16頭立ての12着)のみですが、血統的には十分こなせるはず。この馬、砂をかぶると苦しがるタイプだそうですが、そういう馬ってえてして芝で好走するんですよね。
あともう一頭、穴っぽいのでアリアンロッド。近走はピリッとしませんが、5月の芝特別・岩洞湖特別では11番人気で2着に突っ込んでサプライズを演出。もともと人気の逆を行く穴馬ですから、今回も人気がなければないほど狙ってみる面白さが出てきそうです。
買い目は1枠1番ラブラブサンヒコを含めた3、6、7、9のBOXで。今度の月曜日は好天が予想され、久々に良い状態のコースでレースができるでしょう。
それから、御所湖特別は9Rとなっています。通常の10Rではありませんので、オッズパークで購入される方はレース番号をよくご確認の上、ご購入下さい。
◇注目この1頭
10R、1枠1番のハセノコンドル。いずれオープンまでたどり着けるだけの逸材。今シーズン6連勝中の勢いはまだまだ止まりません!
頭が断然人気になりそうなので、相手は穴っぽく2,3、11あたりへ。
岩手競馬で最も長い歴史を誇るレースといえば駒形賞(現在はA2特別)、岩鷲賞(同3歳短距離重賞)、そしてこの不来方賞の38回だが、駒形賞、岩鷲賞は何度かクラス、血種などの条件が変更されており、純然に38回の歴史を数えるとは言い難い。
しかし不来方賞だけは一貫してサラブレッド3歳、舞台もその名のとおり盛岡(不来方=こずかたは旧南部藩、盛岡城の別称)で実施されてきた。先人達の話によると、この回数は便宜上のもので実際はもっと古い歴史があるのだそうだ。
今年、『ダービーWeek』創設に合わせて「ダイヤモンドカップ」が“岩手ダービー”と銘打たれたが、岩手のホースマン、そしてファンにとって、この不来方賞が岩手3歳最強馬を決める岩手版ダービーであることに変わりない。おそらく今後も。
(写真はダイヤモンドカップのゴール 1着オウシュウクラウン 佐藤到)
本題に入る。今年の不来方賞には、久々にファンの胸をときめかしてくれる期待の星が登場する。もちろんオウシュウクラウンのことである。このブログでも何度か記してきたが、南関東から里帰り後、サマーカップまで4連勝をマーク。陣営はせっかく立て直しに成功し、無理をさせたくないと一旦はG?・ジャパンダートダービーを自重すると決めた。実際、きついローテーションに加え、暑さ対策、輸送などリスクは少なからずあったが、調教師、オーナーが話し合って最終的に遠征を決断。その結果、オウシュウクラウンはジャパンダートダービーで地方馬最先着の3着に健闘するに到った。
スタッフはこの善戦にホッとしながらも同時に不安もあった。オウシュウクラウンは気のいい馬で多少、体調が悪くても全力で走るタイプ。元々、腰に弱いところがあり、遠征の反動を心配していた。
しかし、それは杞憂に終わった。反動がなかっただけではなく、不思議なもので馬に風格が出てきたのだ。実際、小生が厩舎にお邪魔して午後運動をぼんやり眺めていたら、前以上に強いオーラを出している。それは管理する櫻田浩三調教師も感じたそうで、馬に『自信』が出ると貫禄が備わってくる。
これはオープン馬に良く見られるケースだが、かつてトウケイニセイが初めてオープン重賞・みちのく大賞典に出走し、レコード勝ちを決めた後、洗い場でガラッと雰囲気が変わっていた。それまでグレートホープが我が物顔で大将を張っていたが、そのみちのく大賞典から主客が逆転。トウケイニセイが厩舎のボスに替わっていた。
岩手にもいきなり暑さが襲い、担当厩務員は調整には苦労しているが、ひとまずオウシュウクラウンは順調そのもの。左回りに若干不安は残るものの、今回は勝負付けが済んだメンバー。大一番・ダービーグランプリにも向け、同じ盛岡ダート2000mでどんなレースを見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
相手はこの2頭に絞られる。テンショウボスとブラックショコラだ。
まずテンショウボスだが、不来方賞トライアル・ミルキーウェイカップ(盛岡ダート2000m)は、強敵不在で当然のように完勝した。ダイヤモンドカップ、サマーカップと2戦連続3着で足踏みを続けていたが、そのうっ憤をようやく晴らした格好だった。しかし、これは水沢の小回りが合わずに3着と解釈したほうが妥当で、馬場の広い盛岡で本領を発揮したものだった。またテンショウボスは輸送が入ったほうが体が絞れるようで、実際、ミルキーウェイカップは520キロで出走。その前の2戦は525キロ、526キロと太目残りでもあった。
一方、ブラックショコラは前走、芝重賞・オパールカップを貫禄の優勝。3つめの重賞タイトルを手にし、今後も芝ダート兼用で活躍するに違いない。唯一の不安点は父がブラックホークだけに本質的には短距離血統。距離2000mは守備範囲外だが、それは前々走・サマーカップ(水沢1900m)で道中、出遅れもあったが最後方を進んでラスト800mからロングスパート。その戦法がズバリ当たり、オウシュウクラウンの2着を確保した。つまり2000m戦でも前半をセーブし、ラスト800mから600mでスパートをかければ長い距離でも持つことを証明した。馬券の対象はおそらく以上の3頭しかいないと見てほぼ間違いないだろう。
3連単は9を1着固定に2、3着は4、8の折り返し
馬複は4−9、8−9の二点勝負
<お奨めの1頭>
11レース インターサウンド
前回は直線で一旦、レタセモアに交わされながら驚異的な二枚腰で再度、内から延びて1着。これには周囲もビックリ
5日メインはB1級馬による芝1700m戦「第7回パストラルバーデンカップ」、10頭立て。このレースの馬券検討に直結するのが4回盛岡、7月10日に行われた同じB1級条件のジュライカップ。距離は芝1600mだったが、今回、出走10頭中7頭までがジュライカップを使っている。
優勝はタイキスペクトル、2着ロストプロパティー、3着ユウワンテイオー。以下はナイキプレジャー4着、ロイヤルプレミアム5着、ヘライカントリー6着、アドマイヤウイング10着という結果だった。
タイキスペクトルは盛岡芝が初めてということで11頭立てブービーの10番人気に過ぎなかったが、中団待機策から直線で馬群を割って快勝。3連単17万円の高配当演出の主役となった。しかし、中央時代は未勝利ながら福島芝1800m戦で0・6秒差3着に入った実績もあり、元々、芝適性があったということだろう。今回、距離が100m延長されたが、芝コースで願ってもない絶好の1枠。それも生かしてジュライカップの再現濃厚と見る。
相手もジュライカップ2着ロストプロパティーが演じる。こちらも中央未勝利からの転入で、移籍当初はダートで凡走を繰り返していたが、芝に替わって動きが一変。5月27日、B1級・石桜杯(芝1700m)でシラバスの0・2秒差3着を皮切りに、前記ジュライカップ、0・1秒差2着。そして前走、A2以下芝1700m戦でも0・3秒差3着と安定した成績を残している。芝1本に絞ったローテーションが功を奏し、待望の初勝利も目前に迫った。
単穴はヘライカントリー。ジュライカップの6着が気になるところだが、これは昨年9月以来、久々の芝に戸惑ったものと解釈したい。それでもタイム差は0・2秒の僅差負けで、芝がダメだったという訳でもなかった。本質的にはダート向きだろうが、総合力でカバーしてくれるのではないか。今シーズンはすでに3勝をマークし、本格化を迎えたのは間違いない。
ユウワンテイオーを上位に採るのが妥当かもしれない。ジュライカップではヘライカントリーに先着3着。この馬も中央3勝がダートコースで、芝はどうかというタイプだが、前々走・ジュライカップは格でこなしていた。
以下は岩洞湖特別(B2 芝1600m)10着だったが、昨年、重賞・OROカップ(芝1700m)で4着ゲンパチコジーン、ジュライカップ4着ナイキプレジャーあたりに注目。
3連単は1、2着1、4の折り返し。3着流しで10、2、6、9
馬複は1−4、1−10、1−2、4−10
<お奨めの1頭>
11レース マイネルクレスタ
前走は3着に敗れたが、ここではタイムが抜けている。順当に勝機を掴む