23日の日曜日、3Rで水沢所属の沢田盛夫利騎手が地方競馬通算1000勝を達成しました。
沢田盛夫利騎手はもともとは高崎競馬でデビューし、そこで342勝を挙げた騎手でした。しかし怪我を機に実家のある岩手競馬移籍を目指し、その当時は騎手の移籍なんていうと競馬場が廃止された時くらいしかありませんでしたので、いったん騎手免許を返上し、3年間厩務員として働いた後、もう一度騎手免許を取ったという苦労人です。
こちらで騎乗し始めた当初は他の騎手たちとレースでの動きがかなり異なっていて、ファンから“レースを壊す沢田”なんてありがたくないあだなをつけられた事もあります。が、今では重賞・特別でも有力馬に騎乗する、岩手の中心的ジョッキーの一人になりました。
999勝からなかなか勝てずにいて「まわりから慰められてばかりだよ〜」とぼやいたりしていましたが、日曜の最初のチャンスをあっさりとものにしたあたり、さすが勝負師だなと思いましたね。
月曜のメイン・南昌山特別。出走馬の力量差少なく大混戦だなと思うのですが、私はやはりこの馬に期待します。7枠9番ヤマニンシンバル。1800m戦ながらよく粘った前走を見るに、調子の方は好調サイクルに乗っているなという印象。ここ数戦は同型の出方もあって思い通りの展開を得られなかったのですが、今回は単騎逃げが期待できますし、相手も同じ牝馬同士。今度こそ、の期待がかかるレースになるでしょう。
対抗はキタノソナタ。前走・三陸リアス特別は2番人気10着と人気を裏切った格好ですが、この馬には時計が速かったのが影響したのではないかと思います。盛岡1800mも経験済みですし、ここは雪辱の一戦。
もう一頭はアリアンロッド。このクラスで牡馬と戦ってもそこそこの成績ですし距離も長いのは好都合。着順が安定しないので狙いづらいですがこの辺が買い頃では。
三陸リアス特別で2着だったコンゴウココロマチは、調子も安定してきていますがそれ以上に牝馬同士なら力上位だなと改めて思わされました。周りは格上の存在とはいえそれほどの差はないでしょう。グラスコールは盛岡をやや苦手にしているだけにそれほど強気にはなれませんが、前走で1800mを勝った点が魅力になりそうです。
穴ならマイディザート。今回は枠順も手頃。距離は苦にしないだけに、馬のスイッチさえ入れば上位突入を期待できる力を持っています。
買い目は9番ヤマニンシンバルから12、1、2、11、そして7。かなりの混戦になりそうですし、手広く狙って置きたいところです。
23日(日)メインは3歳馬による地方競馬全国交流「第7回オパールカップ」。舞台は盛岡自慢の芝1700m戦で、1着馬には菊花賞トライアル・神戸新聞杯、セントライト記念への優先出走権が与えられる。そのステップ競走を狙って南関東から4頭、笠松から2頭、そして迎え撃つ岩手勢8頭の計14頭で覇を競い合う。
カギを握るのは盛岡芝への適応力。一周1400mの小回り芝で1700mのスタート地点は4コーナーを回って50m。1コーナーのカーブに入るまで450mの直線を走るが、その1コーナーのカーブは結構きつい。マイル芝ほどではないが、そこに入るまである程度減速しなければ、外にふくれてしまうケースも多く、1コーナーでペースは落ち着く。
これを頭に入れ、最優先するべきなのは盛岡芝のレースキャリア。とすると、盛岡芝5戦2勝2着3回と連対パーフェクトを誇る地元ブラックショコラを主軸視するのが妥当だろう。今シーズンは5戦して短距離重賞・岩鷲賞の1勝のみだが、これは巡り合わせによるものが大きかった。
(写真は岩鷲賞ブラックショコラ 撮影・佐藤到)
開幕2戦七時雨賞、スプリングカップは反応ひと息の水沢コースだっただけではなく、ダンディキングの強さが抜けていた。とにかく春当時のダンディキングの勢いは際立っており2、3着も仕方なしだった。
しかしコース替わりの盛岡ダート1400m戦・岩鷲賞でダンディキングに雪辱。しかし続くはまなす賞(芝1600m)、サマーカップ(水沢1900m)2着はオウシュウクラウンに屈したもの。それらを考えれば今季1勝も納得の結果だ。付け加えるならサマーカップは距離1900mが懸念されて4番人気だったが、村松騎手がラスト800mまで脚をため、向正面からロングスパートをかけたのが功を奏しての2着確保だった。
また1ヶ月の余裕を持ったローテーションにも好感が持て、ここに照準ぴたり。唯一の不安材料はスタートでの出遅れ癖だが、芝1600mほど前半は忙しくなく、鮮やかな直線抜け出しを決めてくれるだろう。
一方、未知の魅力たっぷりなのが船橋ジェスターズコートだ。ドバイ生まれのジェイドロバリー産駒といえばオウシュウクラウンと同じ。残念ながら南関東クラシックには間に合わなかったが、これまで<3140>とすべて3着以上にまとめ、目下2連勝中と上昇一途。しかも前走・あじさい特別では出遅れて後方2番手からの競馬だったが、直線ごぼう抜きを決めて快勝。上がり37秒1というすばらしい破壊力を披露した。
今回のポイントは初の芝レースに尽きるが、ダートで見せる切れ味、オウシュウクラウンも芝ダート兼用のように、ジェイドロバリー産駒なら難なくこなしてくれると踏んだ。そして母父ビーマイゲストはアサート、ペンタイアなどを輩出し1982年、英愛のリーディングサイアー首位にも輝いている。
笠松シホウネリは地元<2.1.2.1>。昨年10月26日、ジュニアクラウン2着(1着はオグリアラシ)後は一貫してJRAへ挑戦。芝のみを使って7戦0勝ながら、3走前の500万下特別(芝2400m)では上がり34秒4の末脚で0・1秒差3着に食い込んだ実績もある。層の厚いJRAで揉まれたキャリアを前面に、大勢逆転を狙う。
他ではトライアル・ガーベラ賞を勝って2連勝マークのツルマルオーカン、400キロを割る小柄な牝馬ながら、盛岡芝は2戦1勝2着1回のステイゴールド産駒グリーントマトにも注意が必要だろう。
3連単は9、13、8のボックス。そして押さえに7、12だが、8を1着固定も考えたい
馬複は9−13、8−9、8−13、9−12、7−9
<お奨めの1頭>
9レース インターサウンド
岩手初戦は大幅に馬体重を減らして4着だったが、プラス4キロの前回は逃げ切り圧勝。これは本物だ
競馬界で「鉄人」というと、川崎の7000勝ジョッキー、佐々木竹見元騎手や、岩手であれば千田知幸騎手(現調教師)らが思い浮かびますが、裏方に徹する人々の中にも彼らに負けず劣らず、鉄人と呼ばれるのに相応しい人たちがいるはずです。
その一人がK.O.さん(本人希望によりイニシャルで)。私と同業のカメラマンですが、Oさんは優勝馬の口取り写真をはじめとする馬主向け記念写真用の撮影をなさっています。盛岡・水沢の競馬場で競馬のある日は、1レースから必ず撮影ポジションに入っていますので、本場で観戦したことのあるファンならば、(あまり目立ちませんが)間違いなく見たことがあるハズです。しかしこの方が山形県から毎週々々通っていることを知る人は少ないのではないでしょうか。
Oさんの実家は、上山競馬場で記念撮影をしていた写真館の親類で、昭和48年からはOさんのお父上が岩手で撮影を始めました。このときOさんは中学生。ところがわずか4年後の昭和53年に父上が病に伏し、当時高校3年生だったOさんは内定していた就職先を蹴って父の跡を継ぎ、岩手に通うようになったのだそうです。
以来28年間、岩手競馬の全てのレースを撮り続けているというのですからスゴイとしか言いようがありません。土曜の朝は、途中で何かあっても1レースに遅れないよう朝早くに出発し、月曜は夜遅くに帰宅する。これを毎週繰り返すのは並大抵のことではないでしょう。まして仕事を始めた昭和50年代には山形自動車道がなかったのですから、上山からの道のりは、今以上に遠かったはずです。
しかし当のOさんは、毎日「あ〜ぁ、もう疲れた。眠てぇ〜」とか言いながらユルユルと仕事をなさっています。
見るからに頑張っている人ももちろん偉いのですが、こんなふうに表に出さずに努力している人は、尊敬に値すると思うのです。
22日のメインは3歳牝馬による特別「第7回ひなげし賞」(盛岡ダート1800m)。このレースはあやめ賞(6月24日 水沢1600m)と並ぶ地方競馬全国交流重賞「第20回ひまわり賞」(8月20日 水沢1900m)のトライアル戦。
(写真はあやめ賞 優勝サイレントエクセル 写真・佐藤到)
参考となるレースはそのあやめ賞で、サイレントエクセルが2着ゴールデンパンジーに1・4秒差の大差勝ちを決めており、しかもあやめ賞と同様、全馬53キロの同ハンデ。メンバーもその時とほとんど変わらず、まさに勝って下さいの一戦となった。
サイレントエクセルは昨年2歳時、牝馬重賞・白菊賞を制し、牡馬相手の南部駒賞3着、金杯4着。今季はシーズンイン直前に順調さを欠いて重賞・留守杯日高賞(4月29日、水沢1600m)へぶっつけで臨んだが、出遅れながらも貫禄で1着。続くやまびこ賞では馬体重が436キロまで減りながら(理想馬体重は450キロ前後)、テンショウボスの2着を死守した。
その後、ひと息を入れて岩手ダービー・ダイヤモンドカップへと駒を進め、馬体重が442キロまで回復。馬体の張りも見違えるほど良くなり、のちのジャパンダートダービー3着馬オウシュウクラウンの2着に気を吐いた。元々、牡馬相手にも互角の勝負を演じてきたが、本調子を取り戻せば鬼に金棒。案の定、牝馬同士のあやめ賞ではケタ違いの強さで順当勝ちを収めた。
以降はこのひなげし賞に照準を合わせて調整し、態勢も万全。父ウイングアロー譲りの豪快な決め手で圧倒的なヒロインを演じてくれるに違いない。
1着不動。2着争いが焦点となったが、これもゴールデンパンジーで大丈夫だろう。サイレントエクセル不在の初戦・菜の花賞を快勝し、続く重賞・留守杯日高賞は前記サイレントエクセルの2着。やまびこ賞、ダイヤモンドカップは4、5着に沈んだが、牝馬同士のあやめ賞では離されたにしても2着を確保している。つまり3歳牝馬?2の座は決して譲っておらず、初の1800mも無難にこなしてくれるはずだ。
次位候補も順当にあやめ賞3着ピグレットが演じてくれるだろう。デビューが昨年11月と遅れたが、それを当然のように快勝し、2戦目は3着。それでシーズンを早めに終了させ、陣営は今シーズンの飛躍に賭けた。しかしキャリア不足を露呈し、菜の花賞10着、やまびこ賞9着。それでも体勢を立て直して平場戦で力を蓄え、臨んだ前走・あやめ賞。道中は中団をキープし、直線じわじわ伸びて3着入線。サイレントエクセルには離されたが、ゴールデンパンジーとの2、3着争いで0・3秒差まで肉薄した。
ピグレットの魅力は何と言っても父アジュディケーティング、母父パークリージェントという典型的なダート血統に加え、470キロ台の恵まれた馬格。いまだ1勝のみだが、陣営の期待どおり今後、大きく飛躍する可能性を秘めている。
以下はさらに離された印象で、重賞・岩鷲賞3着ディアブロハンター、復調すれば怖い存在パワフルビクトリあたりだが、これは押さえ程度だ。
3連単は8を1着固定に2、3着9、2折り返し。3着10、3を少々
馬複は8−9、2−8、8−10、2−8
<お奨めの1頭>
11レース ハセノコンドル
岩手転入後はワンサイドで5連勝中。クラスも一戦ごとにあがりながらアッサリ克服と能力断然。オープンまで上り詰める器だ
<次走へのメモ>
7月17日 第10回マーキュリーカップ・G?
1着 クーリンガー
抜群のスタートを切ったが、レッドストーンがハナを譲らない構えを見せたので、3番手インにつける。昨年は逃げたが、マークされる流れとなって5着。それもあって無理をしなかったと解釈できるのではないか。道中は坦々とした流れとなり、追走も楽だったが、3コーナーでレッドストーンが一杯となって代わってスターキングマンが先頭。それを見て有力各馬がスパートをかけ、クーリンガーは一瞬もたつく場面もあったが、和田騎手が手をしごいて遅れを取り戻す。しかし直線を向いてからは手応えが抜群でラスト200m、スターキングマンが一杯になったのを見て最内から進路を変更。内スターキングマン、外グラッブユアハートの間を割って抜け出し、あとはセーフティリードを取ったままゴールに入った。
「スタートが良かったので先行策を取った。直線を向いてもまだ手応えがあったので、これなら前の馬(スターキングマン)を捕らえきれると思った。盛岡は勝ちたいコース、このレースも勝ちたかったレースなので勝つことができてうれしい」と和田竜二騎手。
クーリンガーは3歳時、ダービーグランプリで盛岡初参戦。その時はゴールドアリュールの3着に敗れ、4歳以降は3年連続でこのマーキュリーカップに参戦。03年ディーエスサンダーの5着、04年スナークレイアースの首差2着、そして昨年05年はピットファイターの5着に敗れていたが、今回、盛岡訪問5度目で初勝利を飾るとともに、自身6度目のG?タイトル獲得となった。
装鞍所で馬体重を量ったところ前走・灘ステークスからマイナス6キロの530キロ。元々が芦毛で見栄えのする馬ではなく(失礼)、輪郭がぼんやりとした印象があったが、今回は白さが増したこともあったのか馬体がすっきり見えた。それも好走要因だったかもしれない。
2着 グラッブユアハート
前回(スパーキングレディーカップ)はほとんど最後方追走で競馬にならなかったが、今回は3、4番手の積極策。スターキングマンとほぼ同じタイミングでスパートをかけ、レマーズガールが外からじわじわ伸びてきたが、最後は脚色がいっしょになった。結果的に前につけた分、レマーズガールに先着する格好となった。これでレマーズガールとの直接対決を8勝9敗とした。今後もこの2頭は同様のローテーションを歩むことになりそうで、調子、展開、馬場などにより先着をしたり、後塵を拝する形が続くことになりそうだ。
3着 レマーズガール
7月5日、スパーキングレディーC(川崎)から中11日の連闘となったが、プラス5キロで臨めた。道中の位置取りも前レースとほぼ同じで、直線大外からじわじわ伸びてきたが、最後はグラッブユアハートとの差は詰まらなかった。
4着 ベルモントシーザー
1周目スタンド前は5、6番手のインで折り合いを欠きながら追走。これはみちのく大賞典でも見せていたが、それでも気力は衰えることなく地方所属馬で最先着の4着に入る。南関東ではA2で頭打ちだったが、岩手転入後は2勝2着1回3着1回(着外1回)。そして今回、初グレード挑戦で4着なら大健闘と言っていいだろう。
5着 スターキングマン
2番手を追走し、3コーナー過ぎに早々と先頭。4コーナーを回ったときは勝てる勢いに見えたが、ラスト200mで失速。「レース間隔が開いたことと59キロのトップハンデも影響したのかも。でも次走は良くなるはず」と武豊騎手。