昨年はキャリアハイとなる126勝を挙げ、今年はさらにペースアップして勝ち星を挙げている加藤聡一騎手(愛知)。アップテンペストでの重賞連勝も含め、最近のことを伺いました。
赤見:まずはアップテンペストでの重賞連勝、おめでとうございます。梅桜賞は初の1800mでしたが、逃げて圧勝でしたね。
加藤:ありがとうございます。メンバー的にもチャンスだと思っていましたし、馬の力は抜けていると感じていました。距離関係なく、控えて2,3番手よりも思い切って強い競馬をしようと。ただ、僕はまだ名古屋で重賞を勝ったことがなくて、チャンスがある馬に乗せていただいても人間が入れ込んでしまって負けた経験があるので、とにかく人間が落ち着いていれば大丈夫だろうと思っていました。アップテンペストにはライデンリーダー記念で乗せていただいたことがあって、素直で大人しい馬だということはわかっていましたから、胸を借りるつもりで乗りました。強いとは思っていましたが、まさかあそこまでぶっちぎるとは思わなかったですね。馬にとっても初タイトルでしたし、増田兼良オーナーにはデビュー前からお世話になっているので、ものすごく嬉しかったです。
赤見:加藤騎手が名古屋で重賞を勝ったことがなかったとは、意外でした。
加藤:これまでは笠松で3つ(2017年くろゆり賞/ヴェリイブライト、2020年岐阜金賞/ダルマワンサ、2020年東海ゴールドカップ/ウインハイラント)と金沢で2つ(2018年北國王冠/アサクサポイント、2019年日本海スプリント/エイシンテキサス)だったので、地元で勝てて嬉しかったです。移設前にどうしても勝ちたいと思っていて、もう期限がなかったですから。
赤見:続くスプリングカップも逃げて圧勝でした。こちらはどんなお気持ちでしたか?
加藤:ここもメンバー的にはチャンスが大きかったですし、梅桜賞から期間があまりなかったので、馬の状態と枠順を一番考えました。2着だったイイネイイネイイネには僕も乗せていただいたことがあって、もし絡まれたりしたらズバっとやられる可能性があるなと。ただ外枠に入ったので、思い切った競馬をしました。
赤見:これまで重賞では2着が多かったアップテンペストですが、逃げて2連勝。やはり逃げがベストですか?
加藤:切れるタイプではないので、リズムよく運んで行ってという競馬が合っていると思います。ここ2戦はどうしても逃げたいという馬がいなかったですし、現状はハナの方が競馬がしやすいと思いますが、2,3番手でも競馬は出来る馬なので、そこは相手次第という感じですね。
赤見:距離に関してはいかがでしょうか?
加藤:牝馬で1800m戦を連勝ってなかなか出来ないことだと思いますし、砂を被っても大丈夫なことはわかっていますから、2000mはこなせると思います。今後も順調に行ってくれたら嬉しいです。
赤見:そして加藤騎手ご自身のことも伺いますが、昨年はキャリアハイの126勝、今年はそれを上回るペースで勝っています。
加藤:すごくいいリズムで来ていますね。これも頑張ってくれる馬たち、周りの方々のお陰です。
赤見:何が変わったのでしょうか?
加藤:自分としては何が変わったということは感じないのですが、一昨年ダルマワンサで岐阜金賞を勝たせていただいてから、笠松でもけっこう乗せていただくようになって、名古屋とは違う馬場や流れを経験したことが大きいかなと思います。いろいろな経験をさせていただいて、少しずつ引き出しを増やしている段階なので、もっと上手くなりたいですね。
赤見:名古屋はもうすぐ競馬場が移転しますね。
加藤:新しい競馬場が誕生するので、歴史的な瞬間に立ち会えるのは貴重な経験だと思います。少しコースが大きくなりますから、あと10m、50mあれば勝っていたという馬が台頭して来るのではないでしょうか。僕は割と先行して勝つことが多いので、そればかりでは勝てなくなるなと。ナイターも始まりますし、今までにはなかった要素が増えて来るので、楽しみが大きいです。
赤見:他地区ですが飛田愛斗騎手など若手の活躍も目立っていますね。
加藤:すごくいい刺激を受けています。自分より年下年上とか関係なく、活躍する人はどういう思考なのかということを知りたいので、ヤングジョッキーズシリーズで飛田くんが名古屋に乗りに来た時に少し話をしました。近くの存在で言えば(渡邊)竜也にもいい刺激をもらっています。
赤見:名古屋には絶対王者・岡部誠騎手がいらっしゃいますが、岡部さんの存在はいかがですか?
加藤:それはやっぱり大きいですね。一緒に乗っていて、本当に上手いなと思いますよ。これまでマカオや韓国、南関東などとにかく経験値が多いですから、持っている引き出しもけた違いですよね。全国を見てもJRAのジョッキーを含めても、技量的にトップクラスの方ですから。そういうジョッキーが近くにいるというのは大きいですし、やっぱり若手が活躍して競馬場自体が盛り上がる部分もあるので、少しでも岡部さんに近づいて、いつかは越えられる日が来るよう努力を続けます。
赤見:では今後の目標をお願いします。
加藤:今年は本当にいいリズムなので、このリズムを崩さないよう、怪我なく一年過ごせるように頑張ります。その先に数字がついてきたら嬉しいです。
12月30日笠松のライデンリーダー記念を勝って、重賞4勝目を挙げた金沢のエムティアンジェ。生後間もなく鹿に襲われ、命の危険もあったそうですが、今ではバリバリの重賞ウイナーになりました。パートナーを組む栗原大河騎手に、普段の様子や今後の目標を伺いました。
赤見:ライデンリーダー記念、おめでとうございます。今回も強い勝ち方でしたね。
栗原:ありがとうございます。遠征でもまったく動じないですし、本当に強いですよね。いい馬に巡り合うことが出来て、馬にも関係者の方々にも感謝の気持ちでいっぱいです。
赤見:性格はどんな馬ですか?
栗原:調教も乗っているんですけど、普段からすごく乗りやすくて、2歳の女の子なんですけど古馬みたいに落ち着きがありますね。少しの物音とかは気にしないしですし、ダクを踏んでいる時に近くをキャンターで走って行く馬がいても驚かず、堂々としています。北海道から来た当初からそういう感じでした。
赤見:初めて跨った時の印象はいかがでしたか?
栗原:最初からすごい馬だと思いました。平坦な場所で乗っているんですが、坂道を下っているような感覚がして。後ろ脚が発達しているので、1歩1歩の推進力がすごいなと。北海道の最後のレースでは未勝利戦とはいえ1100mでレコード勝ちしているんですよね。なかなか勝てなかったのはやはり生後2日で鹿に襲われて大怪我をしたことが影響していたのではないかと思います。
赤見:相当大きな怪我だったそうですね。
栗原:今も右トモのところが大きく凹んでいます。当時のことは僕も聞いた話ですけど、生きるか死ぬかというくらい、大きな怪我だったみたいです。そこから立ち直って競走馬になるわけですから、この馬の生命力は本当にすごいと思います。
赤見:現状、課題というのはありますか?
栗原:強いて上げるとすれば、右トモの怪我の影響なのか、少しささるところがあります。特に苦しくなるとささるので、そこをカバー出来るようにしていきたいですね。
赤見:距離はいかがでしょうか?
栗原:折り合い面をクリアすれば、馬自身は2000m前後でもまったく問題ないと思います。この馬と一緒に石川ダービーを目指したいです。
赤見:今は休養中ですか?
栗原:そうですね。牧場で休養していると聞いています。ここまで一戦ごとにどんどん成長して強くなってくれたので、ここでひと息入れて、さらにパワーアップしてくれたら嬉しいです。
大晦日に笠松競馬場で行われた第50回東海ゴールドカップ。
1番人気に応えてウインハピネスが久しぶりの重賞制覇を果たしました。
笠松・森山英雄厩舎に移籍して3戦目での重賞勝ち。森山調教師に喜びの声を伺いました。
赤見:東海ゴールドカップ制覇、おめでとうございます。
森山:ありがとうございます。実績のある馬を預からせていただきましたので、3戦目で重賞を勝ててホッとしています。ウインハピネスのオーナーの山邉浩さんには高崎時代から長くお世話になっているので、少しでも恩返しが出来て嬉しいです。
赤見:1番人気に支持されていましたし、レース内容も後方からロングスパートで強かったですね。
森山:強かったですね。普段はとても大人しい馬なんですが、直線の競り合いになると勝負根性を発揮してくれるんです。距離の融通も利きますし、本当に頭が下がります。鞍上の大原浩騎手はうちの所属なんですけど、重賞を勝つのが10年ぶりだったので、大原くんで勝てたことも嬉しかったです。
赤見:次走の予定は決まっていますか?
森山:馬の様子を見てオーナーと相談しますが、ちょっと疲れが残りやすいところがある馬なので、少し間隔を開けて疲れをしっかり取りながら使いたいと思っています。馬の状態が良ければ2月10日のウインター争覇を目指す予定です。
赤見:森山厩舎にとっても久しぶりの重賞制覇となりました。どんなお気持ちですか?
森山:一番は競馬をさせてもらっていることに感謝しています。僕は高崎が廃止になって笠松に移籍して来たという経緯がありますし、笠松はしばらく開催中止になって、いろいろな想いがありました。改めて競馬が開催出来ることに感謝の気持ちでいっぱいです。
現在全国リーディング第1位を独走する打越勇児調教師(高知)にお話を伺いました。
赤見:まずはデビューから無敗の4連勝を飾ったマリンスカイのことを伺いたいのですが、初めての遠征となった川崎の全日本2歳優駿では13着でした。振り返っていただけますか。
打越:ゲートの中でそわそわする馬で、そこが課題の一つなんですけど、今回はスタートで大きな不利がありましたから、あそこで集中力が切れてしまうかと思いました。でも向正面で上がって行く脚もありましたし、大きく離れることなく走り切ってくれましたね。負けたことは残念ですが、こういう競馬をしたことがないですし、初めての場所でいろいろといい経験になったと思います。
赤見:地元では無敗の4連勝で、しかもものすごく強い勝ち方ですね。
打越:高知デビューの馬で、ここまで強い馬にはなかなか出会えないですから。先ほども言ったようにゲートの中は課題で、スタートはいつもそれほど速くはないんですけど、二の足が速くてスピードの乗りが速いんですよね。それから、心肺機能がとても高いと思います。黒潮ジュニアで重賞を勝った後も、口取り写真を撮っている時にはもう息が整っていましたから。
赤見:今後のご予定は?
打越:オーナーと馬の様子を見ながら相談しますが、金の鞍(12/28)はさすがに日程が詰まっていると思うので、ひと息入れて来年に備えるという形になりそうです。地元のダービーも獲りたいですし、またこうして他地区にも遠征に行きたいです。
赤見:そして今年の打越厩舎は199勝(2021/12/16現在)で、1位独走ですね。
打越:ありがとうございます。いい馬たちを預けてくれるオーナーの皆さん、応援してくれるファンの皆さん、そしてスタッフたちのお陰です。このまま1位を守ってリーディングを獲りたいですね。それに今年は所属の宮川実騎手が今現在勝率27.9%で1位なんですよ。一緒にNARグランプリに行けるよう、これからも一生懸命頑張ります。
トウケイニセイ記念を勝ったヒガシウィルウィンについて、管理する菅原勲調教師にお話を伺いました。
赤見:トウケイニセイ記念おめでとうございます!休み明けでも強かったですね。
菅原:ありがとうございます。そうでしたね。休む前はちょっと動き悪かったりしたんですけど、休んだらリフレッシュして動きが良くなりました。
赤見:いつもより後ろからの競馬でしたが、レースを振り返っていかがですか?
菅原:ちょっと後ろ過ぎるなと思ったけれど、結果的には今までの休み明けで一番いい走りでしたから、こういう競馬もありだなと思いました。
赤見:この後は桐花賞を目指すそうですね。
菅原:ですね、一本の予定です。それでお休みに入ります。
赤見:トウケイニセイ記念のレース後に、時計が掛かる馬場は厳しいとコメントされていましたね。
菅原:去年の桐花賞は不良だったんですけど、寒くて馬場が凍る感じでものすごく重くなったんですよ。時計が掛かる状態で。ああいう馬場にはなって欲しくないなと思っています。
赤見:同じ重や不良発表でも違うんですね。
菅原:冬の水沢は全然違いますよ。その時その時で違うので難しいんですけど、あの時期になると雪が降って、それが馬場に積もるわけじゃないですか。もちろん除雪はしますけど砂と混じるのでいつもより深い馬場になって、それが凍って来るということだと思います。そうするとパサパサになって、どうしても時計が掛かるタフな馬場になるんですよ。
赤見:ヒガシウィルウィンにとっては、タフな馬場はキツいと。
菅原:今回みたいに脚抜きのいい馬場だと、ああいう走りが出来るんですけどね。ヒガシウィルウィンて意外と小さい馬なので。馬体重自体は470~480キロくらいありますけど、コロンとした体型で体高が低いんだと思います。
赤見:そこまで小さいというイメージはなかったです。
菅原:レースの時を見ているとそんなに小さくは見えないかもしれないですけど、うちの2歳馬たちよりもずっと小さいですよ。
赤見:それであれだけ走るというのはすごい馬ですね。
菅原:すごい馬ですよね。それで性格は最高にいい馬です。まったく悪いことしないし大人しくて、レースに行けば一生懸命走りますから。厩舎にこういう馬がいると若馬たちにもいいお手本ですし、扱う側としても最高です。
赤見:桐花賞の最大のライバルはエンパイアペガサスということになりそうですね。
菅原:去年負けていますし、今年のみちのく大賞典でもハナ差で負けていますから、今回は勝ちたいですね。あの馬も強いですけど負かしたいです。休み明けの走りが良かったですし、一叩きしてさらに状態は上がって来ると思うので、大晦日までにいい状態に持って行けるよう頑張ります。
赤見:もう1頭伺いたいのですが、マツリダスティールの予定は決まっていますか?
菅原:ちょっと脚元がモヤモヤしていて、休養する予定です。このままお休みして来年の春ですね。能力の高い馬ですから、この休養でさらに成長してくれると思いますよ。