笠松のミツアキタービンが、いよいよ復帰する。
一度は4月に能検(能力検査)を受ける予定だったものが延期となり、あらためて5月19日の能検に登場。1400メートルを1分28秒3という実戦並みのタイムで駆け抜け、合格した。
ミツアキタービンは、もともと上山競馬でデビュー。2歳時に2戦して笠松に移籍してきた。3歳前半は重賞にこそ出走していたものの、それほど目立つ存在ではなかった。最初に注目を集めたのは重賞未勝利のまま出走したダービーグランプリ(盛岡)。6番人気ながら、ユートピア、ビッグウルフの3着に入った。
今考えてみれば、この年の3歳世代は中央も地方も高いレベルで上位拮抗のメンバーが充実していた年だった。ジャパンダートダービー(大井)は、この年のダートグレードの中でも1、2位を争う名勝負と言われたレース。ビッグウルフ、ユートピア、ナイキアディライトの直線で叩き合いは見事だった。
そしてダービーグランプリでは、この1、2着が入れ替わり、出走しなかったナイキアディライトに代わり、地方勢で台頭したのがミツアキタービンだった。
ユートピアは、あらためて書くまでもないが今年、ドバイ・ナドアルシバ競馬場のゴドルフィンマイルを制し、その後ゴドルフィンにトレードされた。
ビッグウルフは残念ながらジャパンダートダービーが最後の勝ち星。昨年兵庫に移籍し、3戦目となった12月の園田金盃では向正面で競走中止。大事には至らなかったものの、脚部不安が解消せず、5月はじめに登録抹消となった。
ナイキアディライトは、GIにこそ手が届いていないものの、現在に至るまで常に中央の一線級と互角に戦っている。
そしてミツアキタービンだが、全国のファンにその存在を知らしめたのは、4歳時のフェブラリーステークスだろう。直線では一瞬あわやというレースぶりで、勝ったアドマイヤドンからわずか0.2秒差の4着と好走した。
そしてGIIのダイオライト記念(船橋)とオグリキャップ記念(笠松)をいずれも堂々の1番人気で圧勝して見せた。GI制覇に大きな期待がかけられたものの、脚部不安での戦線離脱はほんとうに残念だった。
昨年6月には、地元の準重賞で約1年ぶりの復帰戦を勝利するも、再び休養入り。以来、再度1年の休養をはさんで戦線に復帰することになった。
近年のダートグレード戦線は、地方勢が完全に劣勢。2歳戦を除けば、互角に闘い続けているのは、船橋のアジュディミツオーとナイキアディライトくらいしかいない。
5月31日の準重賞・ローレル争覇(笠松1800メートル)に出走予定のミツアキタービンには、再びGIやGIIで上位をにぎわす存在としての期待もかかっている。
仕事がら、たまにではあるが、地方競馬全主催者のホームページを順番にチェックしたりすることがある。
昨日は笠松競馬のところで「あっ」と目が止まった。
「坂口重政騎手引退について」
引退すること自体についてもだが、その伝えられ方が、あまりにもなにげなくされていることにちょっと寂しさを感じた。
地方競馬通算12,855戦1,812勝。
笠松にはきわめて近い年代に、安藤光彰・勝己兄弟、兵庫に移籍した川原正一騎手、昨年10月に2,000勝騎手の仲間入りを果たした濱口楠彦騎手がいる(いた)。坂口重政騎手を含めたこの5名は、いずれも1959年か60年の生まれ。これほど優秀な騎手がまとめて出た年代というのも珍しいのではないか。
地方騎手としてのひとつの大きな区切りである2,000勝には届かなかったものの、同世代のこれらのライバルと勝ち星を奪い合いながら残した成績としてはきわめて優秀なものだろう。
坂口重政騎手といえば、何と言ってもルイボスゴールドだ。
ルイボスゴールドは95年の3歳(旧4歳)時、金沢のサラブレッドチャレンジカップと、盛岡のダービーグランプリを連勝。普通の年ならNARグランプリの3歳最優秀馬に選ばれただろうが、この年は「交流元年」と言われた年で、幸か不幸か同じ3歳世代には中央の牝馬3冠すべてに出走したライデンリーダーがいた。
ダービーグランプリは翌96年から、サラブレッドチャレンジカップは99年から中央との全国交流となるのだが、ともに地方のみの交流だった時代、10月に行われていたサラブレッドチャレンジから11月のダービーグランプリへという路線は、地方の3歳チャンピオンを決める王道だった。
ぼくはたまたまこの年、両レースとも現地でレースを見ていたので、特に印象深い。
そしてこの両レースと同じくらい印象に残っているのが、96年の阪神大賞典だ。
GIIながら、歴代の名勝負として必ず投票などでベスト10に入る、ナリタブライアンとマヤノトップガンの、あのレースだ。
4コーナーでルイボスゴールドは好位に上がってきた。しかし直線では、前の2頭が後続をどんどん突き放し、3着争いははるか後方。テレビの画面にはまったく映ることがなかった。
しかしルイボスゴールドは、前の2頭から9馬身も離されはしたが、見事に3着。鞍上はもちろん、坂口重政騎手だった。
あれからもう10年もたった。
機会があれば、あのレースのこともご本人から聞いてみたいのだが。
14日に盛岡競馬場で行われる3歳馬による重賞・岩鷲(がんじゅ)賞は、一応は全国交流だが他地区からの遠征馬はなく、地元岩手所属馬による争い。
この時期は地方競馬でも各地でダービーに向けた重要なレースが行われるためか、さすがに遠征する余裕がないのだろう。いきなり余談だが、たとえ他地区からの遠征がなくても、重賞レースくらいは門戸を開いておくという姿勢は、ほかの主催者にも見習ってほしいもの。
さて、今年の岩鷲賞は、4月23日のスプリングカップ組と29日の留守杯日高賞組の対戦というメンバー構成。
ここはスプリングカップを圧勝し、今シーズン2連勝と力をつけたダンディキングが断然。母は現役時重賞12勝を挙げたアラブの女傑、ミスハクギンということでも2歳時から注目されていた。2歳時の若駒賞は2着、年明けの金杯は8着と惨敗したが、レースぶりも安定し、ようやく重賞制覇を果たせそうだ。
相手はスプリングカップ3着のブラックショコラ。
留守杯日高賞を勝ったサイレントエクセルはここには出走せず、その日高賞6着以下のメンバーでは、前記2頭とは差がありすぎる。別路線組のディアブロハンターやエスエスブライアンも、よほどの変わり身がない限り実績的には厳しい。
ここはダンディキングとブラックショコラの1点勝負だが、さてその組み合わせの馬券がいくらになるだろう。ブラックショコラが捨て身でダンディキングを負かしにいったりした場合は伏兵の台頭もあるだろうが、素直に実績を評価するなら、この2頭が抜けている。
オッズを見てどんな馬券を買うかだが、3連単の3着馬を見つけるのはちょっと難しいかも。
7日に盛岡競馬場で行われたシアンモア記念は、好位の外を追走したエアウィードが直線で抜け出し重賞3勝目を挙げた。直後を追走したタイキシェンロンが2着に入り、大井から遠征したインターセフォーが3着という結果となった。
上位人気3頭での決着だが、この3頭は単勝がいずれも3倍台という混戦だった。
ひとつ前のエントリーでも書いたとおり、現在の岩手は上位の何頭かが拮抗していて、重賞でも勝ったり負けたりが続いている。
一時は中央から上山、兵庫を経由して岩手に移籍してきたタイキシェンロンが岩手を代表する存在になるかと期待されたが、ダートグレードで入着というあたりが精一杯だった。
岩手には、少し前にはトーホウエンペラーという絶対的な存在がいた。しかし02年末の東京大賞典(8着)を最後に引退してからは、その後スター的な存在はなく、今に至っている。
トーホウエンペラーの前には地方馬として初めて中央のGI(フェブラリーS)を制して話題になったメイセイオペラがいた。それ以前のスターはというと、43戦39勝、うち重賞15勝という成績を残したトウケイニセイなのだが、トウケイニセイが95年限りで引退してからはやはりスター不在の空白期間が長かった。そしてスター出現が待ち望まれる中で登場したのがメイセイオペラだった。
岩手のすごいところは、これらの歴代スターたちがすべて生え抜きだということだ。地方競馬の活躍馬には、中央で芽が出ず、地方に来て実力を発揮するような活躍馬も少なくないが、トーホウエンペラーもメイセイオペラもトウケイニセイも、さらにはその前のスイフトセイダイも、すべてデビューは岩手の地だった。
そういう意味では、タイキシェンロンは岩手でスターになる条件を備えてなかったのかもしれない。
トーホウエンペラーが引退してからすでに3年半近くが過ぎた。そろそろ岩手から生え抜きのスターが出てきてもいい時期だろう。
5月7日に行われるシアンモア記念は、南関東から5頭、笠松から2頭が遠征してくる。
いきなり余談だが、現在岩手競馬ではごく一部を除いてほとんどの重賞が地方全国交流となっている。来る来ないは別として、地方競馬も重賞くらいは岩手を見習ってもっと全国に門戸を開くべきだと思う。
さて、シアンモア記念だが、きわめて難解な一戦。南関東勢はA2以下のメンバーで勝ったり負けたり。地元岩手勢は出走7頭すべてが前走トライアルのまんさく賞出走馬(そのうちブラーボウッズは取消だったが)。そのまんさく賞は、好位追走の10番人気ローランボスコが先に抜け出して粘り込み、1番人気タイキシェンロンが2着を確保したものの、接戦の3着争いはレストオブセールが制して今シーズンから導入された3連単は86万馬券の大荒れだった。
比較の基準となるのは昨年の青藍賞に川崎から遠征して4着だったシンプウオペラと、昨年一時期船橋に所属していたタイキシェンロン。
シンプウオペラが岩手のこのメンバーで好走できるなら、南関東では格付けが上のインターセフォーやハツラツで十分勝ち負けになるはず。タイキシェンロンは、南関東でのレース内容からこの2頭よりも格下と言わざるをえない。ただし今回は舞台が岩手。地の利で逆転の可能性も十分ある。
そのタイキシェンロンにはシアンモア記念3連覇がかかっている。しかし今年は舞台が盛岡に変わることに注意したい。岩手では実績ナンバー1とも思えるタイキシェンロンだが、不思議なことに盛岡コースでは重賞勝ちがない。
ならば岩手勢ではエアウィードを筆頭にとりたい。まんさく賞は5着だったが、最後は差を詰めてきた。冬季休催明け後ここが3戦目で力を出せるだろう。
しかし中心は大井のインターセフォー。昨年秋に京成盃グランドマイラーズ2着の実績があり、その後も一線級との対戦を続けている。
印をつけるなら、このようになる。
◎インターセフォー
○エアウィード
▲ハツラツ
△タイキシェンロン
△ローランボスコ
しかし岩手同士でも勝ったり負けたりのメンバーだけに、これ以外のメンバーにもチャンスはある。2着や3着に伏兵が来て3連単が大荒れという可能性も十分考えられる。冒頭にも書いたが難解な一戦。