岩手2歳の二枚看板レースは9月16日に行われた芝のジュニアグランプリと、このダート戦・南部駒賞。昨年まで若駒賞も重賞で行われていたが、今年は特別へ変更。それによって南部駒賞が俄然、クローズアップされることになった。
元々、南部駒賞の歴史は古く今年で35回目の歴史を数える伝統のレース。ダートグレード競走を除くと古馬のみちのく大賞典、3歳・不来方賞、そして2歳・南部駒賞が岩手の最後方レースに位置づけられていた。もちろんレース体系の整備が進み、額面どおりではなくなったが、岩手のオールドファン、競馬関係者は以上の三大競走を制することが最大の栄誉だと受け止めている。この伝統はいかに時代が変わろうとも、ずっと守っていきたいと思っている。
本題に入る。今回、ホッカイドウ競馬からカーリヒルズ、ライトオブマリアの牝馬2頭が参戦してきた。今年の同地区のレベルは例年と同等、もしくは例年以上に高く、エーデルワイス賞がマサノミネルバ、北海道2歳優駿(両レースともJpn)をディラクエがレコードで制したことでも明白だ。
この2頭の実績比較ではライトオブマリアが断然上位。これまで8戦を消化してデビュー戦の1勝のみだが、新設重賞・ブリーダーズゴールドジュニアカップは6着ながら0・6秒差、前記エーデルワイス賞では12番人気の低評価を覆し、4着に善戦した。また重賞では後方待機策に徹しているが、マズマズの先行力もあり2番手の競馬もこなしている。
ただ、いかにハイレベルを誇る北海道とは言え、通算1勝のみ。昨年3着に入ったトランプは南部駒賞出走時で5勝をマークしていたことを考えれば正直、物足りなさも残る。加えてアウェーのハンデもあり、結論は△。
(ジェベルロバーツ 写真・佐藤到)
本命にジェベルロバーツを推す。3戦目・ビギナーズカップで初勝利を飾るや、重賞を含めて圧巻の4連勝中。芝ダート、コースも問わないオールラウンドプレイヤーで、完成度の高さは他を一歩も二歩もリードしている。
前開催を休養にあて、南部駒賞へ直行は当初の予定どおり。水沢マイルは初めてだが、9月時点で水沢1400m戦1分30秒を切っているし、何よりも自在の脚質が心強い。
相手筆頭にテンショウベストを指名。ジェベルロバーツが4連勝中に対し、こちらは4戦連続で2着。前回・若駒賞はジェベルロバーツが不在で絶好のチャンスかに見えたが、スタートで後手を踏んだ上、コンバットキックの大外強襲に遭ってまたもや2着と白星から見放されてしまった。
しかし逆の見方をすれば、2着を4連続で確保できるのが底力の証明と解釈でき、並みの馬には決してできない芸当だ。なおかつジェベルロバーツ以外の有力馬はそろって差しタイプで、先に行ける脚が今回は最大の武器となるに違いない。
コンバットキックの若駒賞には度肝を抜かされた。道中は後方2番手を進み、3コーナーからロングスパート。これが見事に決まって目にも鮮やかな直線一気を披露した。それまでの3戦(1勝)とも芝が舞台だったが、陣営はダート向きだと見ていた。その目利きはズバリ的中した。
続く評価はライトオブマリアだが、シェロの存在も不気味だ。前走・若駒賞では出遅れを喫しながらも積極的なレース運びを見せて3コーナー手前で2番手まで進出。直線はさすがに一杯となったが、前が総崩れの中にあって4着に粘ったことは特筆できる。あとはダートに戻ってフジプライドが巻き返しなるかにも注目したく、岩手2歳の看板レースにふさわしい一戦となった。
◎ ?ジェベルロバーツ
○ ?テンショウベスト
▲ ?コンバットキック
△ ?ライトオブマリア
△ ?シェロ
△ ?フジプライド
3連単は10を1着固定に5、3、4のフォーメーション。あとは3着押さえで8、2
馬複は5−10、3−10、4−10、8−10、2−10
<お奨めの1頭>
4レース オンワードオウガ
2ヶ月ぶりのハンデがありながら、転入初戦をアッサリ快勝。叩かれてさらにシャープさを増した
17日(土)メインはB2級「第31回ひいらぎ賞」(水沢1800m)、10頭立て。主軸はヒドゥンアジェンダで不動だろう。中央6戦0勝3着2回の成績から今年10月に岩手転入。初戦・盛岡芝1600m戦は2ヵ月半ぶりとレース間隔が開いた影響で2着に敗れたが、その一戦を叩かれて気配一変。前々走は2着に1・9秒差もの大差をつけて圧勝した。
(手前がヒドゥンアジェンダ 写真・佐藤到)
前走・若手ジョッキーとのカップリングレース・シルバーステッキ賞では自厩舎の菅原俊吏騎手(伊藤和厩舎)が引き当て、単勝1・2倍の圧倒的な1番人気に支持され、3番手の好位を追走。いつでも抜け出せる態勢かに見えたが、3コーナー過ぎから反応がひと息。周囲を一瞬、ヒヤッとさせながらも直線でようやくエンジン全開。ダンストンリアル以下をキッチリ振り切って2連勝を飾った。
以上の内容からどんな枠順に入っても本命視されるヒドゥンアジェンダだったが、さらに恵まれたことに絶好の1枠。水沢1800mは内枠が断然有利で勝つ条件がほぼそろったと断言して差し支えない。
軸は確定。焦点は2着争いに絞られ、その一番手にダンストンリアルを指名。デビューから着外知らずのまま今春の3歳特別・スプリングカップに挑戦し、そこでも3着に善戦。以降の飛躍を期待されたが、続くレース後に脚部不安が発生して3ヶ月の休養を余儀なくされた。このリタイアが痛かったが、7月に戦列復帰後は徐々に体調アップ。前々走は逃げ切り、前回・シルバーステッキ賞でもヒドゥンアジェンダに渋太く食らいついて0・1秒差2着で完全復活をとげた。
ハナケンロマンは今シーズンの躍進ぶりが目につく1頭。前々走は実績の薄い芝1700m戦で大差しんがり負けを喫したが、ダートでは3勝2着3回。前走も逃げてタイム差なしの2着に粘った。身上とするのは軽快な先行力と粘り強さ。初の1800mがネックだが、勢いに乗る今なら十分克服できるだろう。
ワールドジャーニーは9月の芝2400m9着後、約2ヶ月の休養明けとなるが、当距離3戦2勝2着1回と連対パーフェクト。距離適性は見逃せない。
以下、抜群の安定度を誇り、待望の白星マークで弾みがついたミルウイニング、前回2着ながら豪快なまくりで2着オースミエンドレスも軽視できない。
◎ ?ヒドゥンアジェンダ
○ ?ダンストンリアル
▲ ?ハナケンロマン
△ ?ワールドジャーニー
△ ?ミルウイニング
△ ?オースミエンドレス
3連単は1を1着固定に4、5の折り返しが本線だが、10、7、2も2着圏内にいる
馬複は1−4、1−5、1−10、1−7、1−2
<お奨めの1頭>
6レース ネイチャーマインド
前走は直線で鋭く追い込んできたが、3着止まりに終わって連勝は3でストップ。ここは仕切り直しといきたい
<次走へのメモ>
11月12日 オッズパークグランプリ2007(3歳以上オープン・地方競馬全国交流 水沢1600m)
(オッズパークグランプリ・ゴール 写真/佐藤到)
1着 テンショウボス
ミツアキタービンが果敢に逃げ、前半3ハロンが36秒2。大幅レコード更新の予兆はこの時点ですでにできていた。テンショウボスは「最近はスタートがもう一つ」(小林騎手)だったこともあって後方4番手を進んだが、これで力を出せるタイプなのでジックリ待機策を採る。
向正面、最後方にいたダイワフォーチュンが一気にまくって2番手まで台頭し、先陣の隊列が崩れたが、テンショウボスはそれからワンテンポ遅らせてスパート。3コーナーでは4番手まで進出し、4コーナーで早々とミツアキタービンを射程圏に入れる。直線ラスト200mは内ミツアキタービン、外テンショウボスとの叩き合いとなり、内のミツアキタービンが渋太く粘ったが、ラスト50mでテンショウボスが徐々に突き放して快勝。従来のレコード(02年 トーヨーリンカーン1分39秒3)をコンマ8秒も短縮、1分38秒5の驚異レコードを樹立した。
「今回は連闘の疲れが残っていないかだけが心配だったが、返し馬の感触で行けるなと思った。夏場の頃は並んでも踏ん張りが利かなかったが、今回は最後までしっかり伸びてくれた。全体のペースが速いとは思っていたが、まさかレコードが出るとは思わなかった」と小林騎手。
次走は馬の状態を見ながらだが、問題がなければ当初の予定どおり北上川大賞典(11月25日 水沢2500m)へ向かいたいと佐々木修一調教師。
2着 ミツアキタービン
メンバーに逃げ馬が不在と陣営が判断し、果敢に先手を奪う。2番手エフテークリニック、外にニシノグレイシャ、内にサイレントエクセル。流れは先にも記したとおり、ダイワフォーチュンの早めまくりもあってペースは落ち着かず、12秒台のハイラップが刻まれる。その影響で3コーナーから東川騎手の手は動いていたが、ミツアキタービンもその期待に反応。4コーナーを回っても脚色は鈍ることはなかった。
直線は内ミツアキタービン、外テンショウボスとの激しい叩き合いとなり、一旦テンショウボスが抜け出したが、内からミツアキタービンが再び差し返して根性を発揮。しかしラスト50mではさすがに力が尽き、0・2秒差に敗れる。こちらも従来の水沢マイルレコードを0・6秒短縮、ハイレベルの戦いを証明した。
「予定どおりのレースができたが、調子が良かった時のようにスッとしていける脚がない。それで3コーナーから追いどおしとなったが、自分の競馬はできたのでこれで負けたのなら仕方がない。ここ3戦ともスタートで後手を踏んでいたが、今回はいいスタートを切れたし、レース内容にも納得。これで今後のメドも立った」と東川騎手。
3着 タイキリオン
終始、サイレントエクセルの直後につけて3コーナーからスパート。馬群の中で我慢させたのと芝並みの速い時計勝負になったのが功を奏し、2頭から4馬身離されたが、3着に大健闘。3連単86860円の高配当を演出した。
「2戦(盛岡芝2400m)は距離の壁だったが、今回は距離が合ったし、芝向きの馬が走るコースだったことも幸いした」と村松騎手。
4着 サイレントエクセル
1枠に入り、3番手インを追走。これは想定どおりだと思うが、向正面から手応えが怪しくなってジリジリ下がる一方。それでも直線で盛り返して4着に入ったが、勝った馬とは1・2秒差。
毎年のことだが、どうも寒い時期に入ると動きがひと息。当日の馬体重も地元競馬ながらマイナス9キロ。冬毛が出てきたことも敗因に挙げられるかもしれない。
いよいよやってきました『オッズパークグランプリ2007』。地方他地区から2頭、地元岩手から9頭の計11頭が覇を競います。他地区からはG2ウイナーミツアキタービンが登場。地元の“強い4歳”勢が迎え撃つ形になりました。
ところで、このレースが1着賞金1000万円も有りながら重賞にならなかったのは、アラブ馬の出走も可能にするためでした。というのは、岩手競馬の規定では重賞レースにはアラブの出走ができないけれど特別レースならOKという事で、未だ頑張り続けるアラブの強豪にも門戸を開くということで特別レース扱いになったわけです。
今回は残念ながらアラブの出走がありませんでしたが、サラ対アラブの、おそらく最後となるだろう決戦を、次のこのレースに期待したいですね。
さて、特別とはいいながら重賞並みの好メンバー、あれこれ触手は動くのですが、私の本命は1枠1番サイレントエクセルにしました。
前走の赤松杯はテンショウボスに完敗の形。しかしあの時は冬シーズンを前に言ってみれば“一休み”、ローテーションの谷間だったのも確か。今回は前走以上の状態が期待できます。そしてこの馬にとっては輸送が無い水沢でのレースなのもプラス材料。前走の雪辱濃厚と見ます。不安材料は、最近少しズブくなっていてマイル戦の流れがどうか?という点。しかし南部杯でも先行できたし、あれだけ行けるのなら気にする事は無いかも。
対抗はテンショウボス。今年の勝ち星は4勝ですが、いまや岩手のNo.1なのは誰もが認めるところ。赤松杯の結果からも今のこの馬にサイレントエクセル以外のライバルはいません。ではなぜ対抗かというと、やはり水沢はレースぶりがぎごちなく、取りこぼしの可能性が残るから。あすなろ賞のように勝ったも同然のところから足下をすくわれる様な事があるのが怖いところ。そこを考えて2番手という評価にしました。
もう一頭は、これも4歳勢の一角・ダンディキングでいかがでしょうか。先の2頭ほどは華々しくないものの、この馬も堅実な活躍をしてきています。以前よりもねばり強さが増し、脆さがなくなった近走。いまなら先の2頭とも互角のレースができるはずです。
実績最上位のミツアキタービンですが、度重なる故障休養で以前ほどの勢いがない近況。ただ、今のところは順調に来ているようですし、地方勢同士の戦いでなら好走可能でしょう。
さらにもう一頭選ぶとなると悩むのですが、金沢のエフテークリニックは相手なりに走るタイプのようですが強い相手と戦った経験が少ないし、タイガーマスクも前走の勝ちタイムは優秀とはいえ経験値の点ではまだまだ。であればニシノグレイシャを押さえるのはどうでしょう。もともと右回りダートの方が好成績。前走は距離も長すぎましたし、穴で面白い存在では。
買い目は1番サイレントエクセルから・8番テンショウボスへ、まずこの2頭の裏表を本線として、他は3連勝式の3着の相手でいいのでは。(1=8)→4・7・11と行きましょう。
◇お奨めこの一頭
8R:マツノメガミ
水沢1800mの1枠1番という絶好枠を逃げ馬が手にした。これは狙わない手はない。
12日(月)、1着賞金1000万円を争う「オッズパークグランプリ2007」(水沢1600m)の枠順が確定した。
? サイレントエクセル
? エアウィード
? タイキリオン
? ミツアキタービン
? タイガーマスク
? エフテークリニック
? ニシノグレイシャ
? テンショウボス
? トーホウライデン
? ダイワフォーチュン
? ダンディキング
注目は笠松ミツアキタービンvs岩手二強テンショウボス、サイレントエクセルの対決。ミツアキタービンは04年、ダイオライト記念、オグリキャップ記念のG?2勝と断然の実績を誇るが、その後は脚部不安が発生、何度かの長期休養をはさみながら自己との戦いを続けている。
しかし今季は4度の実戦を消化して地元の準重賞・ローレル争覇で1勝。2ヵ月半ぶりの前走・姫山菊花賞(園田1700m)は本来の動きに程遠く5着に敗れたが、その一戦を叩かれて「前回とは比べ物にならないぐらい、動きも息づかいも良くなった」(田口調教師)。当日の気配が最大のカギを握るが、持っている能力の8割を出せれば勝てるメンバーだと言えるだろう。
対する岩手勢はテンショウボス、サイレントエクセルに期待がかかる。テンショウボスは今季大躍進を遂げ、古馬伝統のみちのく大賞典を優勝。また岩手で実施したダートグレード競走3レースで地元最先着を果たし、マーキュリーカップ(4着)、クラスターカップ(3着)のJpn?では地方最先着に健闘し、トライアル・赤松杯でもパーフェクトの内容でサイレントエクセルを切って捨てた。
サイレントエクセルは今季、テンショウボスと6回の直接対決があり、4度先着を許しているが、2度の先着あすなろ賞、青藍賞ではいずれも見事優勝を果たしている。加えて水沢戦に限ればサイレントエクセル通算8勝、テンショウボス4勝とコース適性で若干リードが過去のデータだ。
下級条件C2だったとは言え、2着に3・1秒差の大差をつけて衝撃の岩手デビューを飾ったタイガーマスク、水沢マイル戦なら黙っていないダンディキング、エアウィードなど伏兵も散在。詳細は明日報告するが、これは見逃せない一戦となった。
11日(日)メインはイーバンク銀行株式会社協賛「第10回三陸リアス賞」(B3 水沢1600m)、10頭立て。前回1着組が10頭中6頭と実力伯仲のメンバーがそろったが、主軸に目下4連勝中のステキナリングを推す。
(ステキナリング 写真・佐藤到)
格上馬が復活の2連勝ゴールデンパンジー、抜群の安定感を誇るシルクセレクション、好枠を引き当てたミズサワゲンキ、決め手強烈ガッサンアポロ、前回2着ながらタイム上位マイネルスペランザなども軽視できず激戦必至。
◎ ?ステキナリング
○ ?ゴールデンパンジー
▲ ?シルクセレクション
△ ?ミズサワゲンキ
△ ?ガッサンアポロ
△ ?マイネルスペランザ
3連単は6、9の1、2着折り返しから8、3、10、7へ流したい
馬複は6−9、6−8、3−6、8−9、6―10
<お奨めの1頭>
6レース シンボリカッシーニ
C1昇級後は3戦3着2回2着1回だが、今回から5戦3勝2着2回と連対パーフェクトの水沢戦。反撃に転じる