ばんえい競馬情報局とは?

ばんえい競馬の最新情報を提供します。重賞を中心に予想や回顧のほか、ばんえい競馬に関するコラムなどもご覧いただけます。
カレンダー
リンク
おすすめコンテンツ

« 2010年7月26日 | メイン | 2010年7月30日 »

2010年7月27日 アーカイブ

1

ばんえい名馬ファイル(3) アンローズ

2010年7月27日(火)

気まぐれ夏のお嬢様 アンローズ

 帯広競馬場の入口を入ってすぐのところにある「リッキーハウス」。ここで売られている多くのばんえいグッズの中、ひときわ目立つのが鹿毛馬の写真が描かれたマグカップ。美人顔の鹿毛馬に付されたキャッチコピーは、

 「名門令嬢 アンローズ」

 その生い立ちはまさに華麗そのものといえよう。これまでに幾多の名馬を生んだ帯広市・三井宏悦牧場の生産馬。父は、ばんえい競馬史上最良の種雄馬の一頭であるマツノコトブキ。全兄は、ばんえい競馬史上3頭目の3歳三冠馬ウンカイ。母父は、こちらも大種雄馬マルゼンストロングホース、牝系を遡ると十勝種畜牧場で代々培われてきた純血ペルシュロン。近親には重賞8勝の偉丈夫コーネルトップ。さらには、父マツノコトブキにそっくりとも評されたきれいな白斑が印象的な美人顔。血筋も容姿も文句なし、まさに「名門令嬢」と呼ぶにふさわしい。

enrose2.jpg

 そのアンローズ。2001年のデビュー戦は5番人気で4着、2戦目は1番人気に推されながらシンガリ負け、初勝利を挙げたのは5戦目と、超良血馬としては若干物足りない滑り出しとなった。しかし、7番人気で臨んだ初めての重賞・白菊賞(2歳牝馬)を制して重賞ウイナーの仲間入り、青雲賞(オープン特別)では牡馬の一線級を相手に最低人気の評価を覆しての勝利と、夏の岩見沢で一気に良血開花! しかし、その後は旭川→北見→帯広と転戦するも連対は一度もなくシーズンを終える。このお嬢様、どうやら少々きまぐれなところがあるようだ。

 アンローズが本格化したのは3歳シーズン。旭川から北見に転戦し、ばんえいプリンセス賞で同年齢牝馬を、クリスタル特別では4歳馬を相手に特別戦を2勝、岩見沢へと乗り込んだ。1番人気に推されたばんえい大賞典では8着(やはりお嬢様は気まぐれである)に大敗するも、続くクインカップでは並みいる4歳牝馬をまとめて負かして重賞2勝目。9月下旬に旭川に舞台を移してばんえいオークスとばんえいダービーを連勝、1998年のハイトップレディ以来史上2頭目となる「ダービー&オークス馬」となった。しかし、この後は収得賞金の関係もあって、自己条件では古馬の強いところを相手にすることになってやや苦戦、また同世代相手ではハンデ差もあって勝ちきれないレースが多くなっていった。4歳時は結局重賞勝ちはゼロ。とはいえ、クインカップとヒロインズカップで重賞2着が2回、3着が3回(はまなす賞、オールスターカップ、銀河賞)は立派な成績だと言えるだろう。

 アンローズがさらなる飛躍を遂げたのは5歳、得意としていた岩見沢シリーズに移ってからである。2004年9月20日の岩見沢記念。出走取消馬が出て6頭立てのレースだったが、スーパーペガサスにミサキスーパーという牡馬2強を相手に、見事に勝利を成し遂げたのである。牝馬がいわゆる「開催4市記念重賞」を制したのは1997年のヨウテイクイン(北見記念)以来の快挙であった。そしてアンローズは返す刀で同年11月の北見記念にも勝利、一気に古馬戦線の中核を担う存在へ。この後、アンローズは岩見沢記念3連覇を達成、まさに「夏の女王」として君臨したのである。

enrose3.jpg

 そのアンローズ、実は帯広競馬場を苦手としており、帯広コースでは未勝利という状況が続いていた。名門のお嬢様はお膝元の競馬場がお気に召してなかったのだろうか?

 時は流れて2007年。4市の開催で行われていたばんえい競馬は、帯広単独での開催として新しく生まれ変わることとなった。8歳となったアンローズは7月から戦線に復帰、これまで44戦して未勝利の帯広競馬場での戦いに赴くことになった。ファンにとっては「苦手な帯広コースでは勝てないのでは」という思いの反面「得意の夏競馬なら帯広も克服、初勝利を挙げられるのではないか?」という思いが交錯していた。初戦となった北斗賞では4着、平場戦(4着)をはさんで臨んだばんえいグランプリでは1番人気(!)に推されるも、結果は8着(お嬢様は気まぐれだし)。グランプリの後3カ月の休養を入れて11月からレースに戻るもどうしても勝てないレースが続く。

 年は明けて2008年、アンローズも9歳となった。年齢が年齢だけに「そろそろ引退では?」との声も聞こえてくる中で迎えた2月17日、牝馬オープンのたちばな賞。サダエリコや頭角を現してきたフクイズミらが出走する中、4番人気のアンローズはここで見事に勝利! 56戦目にしてついに、お膝元での初勝利を達成した。

 数日後、陣営はアンローズの引退を表明。その後はオープン特別で、今度は1番人気に応えて帯広コースでの連勝を果たし、引退レースとなるばんえい記念を無事完走(7着)。ところどころでファンを翻弄したお嬢様は、繁殖牝馬として生家である三井牧場に戻っていった。初年度のお相手は同い年、同じ牧場で生まれたトウカイシンザン。順調なら産駒は来春(2011年)デビューとなる。

文/高野直樹
写真/斎藤友香

アンローズ
1999年5月27日生 半血 牝 鹿毛
父 半血・マツノコトブキ
母 半血・ミハル
母の父 ベルジ・マルゼンストロングホース
北海道帯広市生産
競走成績/145戦33勝(2001~08年)
収得賞金/38,670,000円
主な勝鞍/06北見記念(北見)、岩見沢記念(岩見沢)、05岩見沢記念(岩見沢)、04北見記念(北見)、岩見沢記念(岩見沢)、02ばんえいダービー(旭川)、ばんえいオークス(旭川)

1
Copyright (C) OddsPark Banei Management Corp. All Rights Reserved.