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2009年3月 9日 アーカイブ

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ばんえいジョッキーファイル(26) 大河原和雄

2009年3月 9日(月)

第26回 溢れ出る勝負人魂 大河原和雄

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--- 騎手になられたきっかけから教えてください。ご出身は別海町ですね。

 ああ、別海。実家が牧場。

--- 昔から牧場をされていたのでしょうか?

 いや、親の時代から。
 ばん馬だけではなくて乗馬もいた。サラブ(レッド)はいない。牛もいたな。

--- ところで、大河原騎手は双子だそうで。かなり似ているとか。大河原さんは兄ですか、弟ですか?

 弟。兄貴は牧場やってる。一卵性。
 騎手になった頃でも間違えられた。電話なら、いまだにおふくろでもわからん(笑)。

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--- 見てみたいです! お兄さんは牧場で、大河原さんは騎手という道に進まれたのは……

 中学生くらいのときかな、近くにたまたま中央競馬の馬主さんがいて、そこに遊びに行ったり、サラに乗せてもらったりしているうちに騎手になりたくて。 でも体が大きくなったから……

--- それでばん馬の騎手を目指されたのですね。学校を卒業してからでしょうか?

 高校終わって家に2、3年いたのか。競馬場に来たのは、嫁もらったからかな……21の時か。
 自分でちょっと牧場やってたから。

--- 奥様と一緒に競馬場に来られたのですね。当時も厩務員経験が必要だったのでしょうか?

 うん、2〜3年かかった。騎手になったのが25の時か。人に紹介してもらって競馬場に入った。
 当時(の開催は)は4月から11月中頃まで、20開催くらい。

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--- それでは、多くの名馬に乗られている大河原さんですが、思い出に残る馬を教えてください。

 思い出に残ってるのは、リキミドリ。
 いつでも、持ってる100%以上の力をレースで出す。そんな馬、めったにいない。
 ばんえいの場合、1頭の馬でも騎手が途中で乗り替わったりなんだりって多いけれど、リキミドリにはデビューからずっと(乗っていた)。
 途中で死んじゃったけど……
 勝った時も負けた時も、自信持って乗れた。

--- リキミドリの素晴らしいところはどこでしょう。

 いい筋肉をしていた。……すごい。
 俗に言う柔らかい、っていうか。もち肌っていうか。

--- 他にもコーネルトップや、ばんえい記念を制したサカノタイソンなどもいますが……

 やっぱり、リキミドリだね。

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JRA Dayに石橋騎手と。似たもの同士ですね

--- 大河原さんといえば、普段も体に気を使っているそうですね。

 ストレッチ程度だ。10分くらいだよ。
 以前は腹筋だなんだってやったけど、今はもう次の日に残さんように。
 大事なのはやっぱり腰だ。痛めないようなストレッチをしている。

--- 毎日やっている方は騎手でもそう多くはないのでしょうか。後輩にアドバイスしていることはありますか?

 後輩にはさ、最低限体力つけろ、体を鍛えろって。
 あと……観察力。たまに聞くんだ、どこをしくじったと思う? どう思った? とかさ。
 気がついてて次に生かすならいいけど、気がついてて呆然としているようじゃ……

--- 服部厩舎には、所属騎手が大河原さんの他にも、鈴木恵介騎手、細川騎手、新人の長澤騎手と多くの騎手がいますね。

 他の3人に負けないように頑張ってます(笑)。
 ジャンケンで負けたらもう乗れんからな(笑)。

--- トップジョッキーばかりですよね。

 先生の人望だね。

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--- 大河原騎手は、たまにそりに座っているシーンを見かけます。あれは馬に見えないように隠れているのでしょうか?

 レースに慣れてない馬に多いんだけどね。見えないようにっていうより、馬が騎手を見ておっかながってるから、座って手綱と声でなだめて、大丈夫だよってシグナルを送る。
 練習では、降りてなだめたりするけどレースは降りられないから。

--- そうでしたか。また、レースの時に笑っているように見えるというか、余裕を感じる顔つきの時がありますよね?

 余裕はなくて、冷や汗たらたらでやってるけど……(笑)
 馬と気持ちが通じ合った時は笑えるっていうか。わかってんな、こいつって。
 まずは勝たなきゃならないんだけど、クセのある馬は不安をひとつひとつ取り除いていこうとするから、俺はそれができた時に笑っていることが多いね。
 馬と一緒に楽しんで乗ろうというか、出来るだけ会話しようとする気持ちを大切にしてる。

--- レースで大事にしていることは馬との会話でしょうか。

 それと、スタートだね。出遅れだけは……。ゲートが開いたのと一緒に、ひと息で出るのが理想だから。

--- 開くのと同時に馬を出すコツがあるのでしょうか?

 癖、わかるからね。スターターの。
 あのスターターなら、最後の厩務員がゲートから離れてから5秒後とか。
 要は、自分の乗ってる馬がきちんと立ってるか。
 馬が、(ゲートが)開くよ、っていうのがわかっているか。

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--- これからの期待馬について教えてください。

 今年能検受ける馬かな。
 3歳かい?……キタノタイショウ。
 レース覚えてくれたら、結構乗れるかなと思っている。

--- イレネー記念に期待ですね。さて、大河原さんから見るばんえいの魅力はなんでしょうか。

 子どもの目線でレースを見れる。
 下手に(馬場が)軽くならん限り、子どもでも走って間に合う。展開も見れる。

--- さて、イベントなどでいつもばんえいの盛り上げに一役買っている大河原さんですが、これからのばんえいについて一言お願いします。

 1にも2にも、俺も含めてだけど、厩舎人がお客さんの目線に立ってほしい。
 そして、ばんえいを見たことのない人に見てほしい。
 見るだけじゃなくて、競馬場に足を運んで、馬の大きさ、騎手のかけ声、馬そりの音、馬の鼻息……それらを確認してください。

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 一言一言、かみしめるように答えてくださいました。どんな時でも騎手としての自覚と誇りを持ち続けているその姿に、自分もしっかりしなきゃ、と人間として尊敬させてくれます。大河原騎手がばんえいのことを話す時の強い眼光を忘れず、私もばんえいの良さをもっとアピールしていければな…と思います。
 いつも魅せるレースをしてくれる大河原騎手、3月9日に通算2400勝を達成しました。大河原騎手にしてみたら小さな通過点かもしれませんが、おめでとうございます。


取材・文・写真/斎藤友香

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