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2008年8月20日 アーカイブ

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馬券おやじは今日も行く(第48回) 古林英一

2008年8月20日(水)

ミサキテンリュウの重大使命

 8月上旬のとある日、小生は富山市ファミリーパークを訪問した。富山市ファミリーパークと聞いて、すぐにミサキテンリュウの名前を思い出した貴方、かなりのばんえいファンですな。

 ミサキテンリュウとハヤトリキは2005年3月、富山市ファミリーパークにやってきた。ミサキテンリュウは1995年5月に北見でデビューし、2003年2月に引退するまで200戦21勝という成績をあげている。ハヤトリキは2001年4月にデビューし、2004年11月に最後のレースを走っている。なかでもミサキテンリュウは競馬場内で馬車リッキー号を曳き、みんなに愛された馬であった。

 富山にトレードされたミサキテンリュウとハヤトリキに科せられた任務は動物園の単なる客寄せではなかったのである。実は彼らには重大な任務を担うべく富山に転勤したのであった。今回、富山市ファミリーパークの山本茂行園長にいろいろをお話をうかがい、彼らに期待されている任務がわかった。それは現代における動物園の使命に関わる重大任務だったのである!

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ミサキテンリュウ・ハヤトリキが曳く馬車

 以下は園長にうかがった話である。動物園という施設が果たしてきた役割は歴史のなかで変化してきた。まずは世界各地から珍獣を連れてきて見せるという役割である。この流れは1970年代のパンダやコアラまで続く。次に科せられた役割は絶滅に瀕している希少生物の繁殖である。希少生物の絶滅を防ぐために世界各地の動物園が果たしている役割は大きい。またその延長に在来種(トキやコウノトリなど)の復活もある。

 山本園長らはさらに新しい役割を提起・実践しようとしている。それは人と動物の歴史を文化として継承する拠点としての役割である。ペット(昨今ではコンパニオンアニマルという)としての動物ではなく、人間社会をつくってきたパートナー(家畜)としての動物に注目した試みである。

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放牧地でくつろぐミサキテンリュウ。右側が馬車のコース

 山本園長は富山ファミリーパークを、擬似的な自然空間ではなく、里山のある動物園として、人間以外の生物と人間の関わりを考える最前線として位置づけている。ついでにいえば、山本園長にご教示いただき改めてわかったことだが、わが国には国立の動物園はない。国立の動物園がないということは、文化的もしくは教育的観点から考えるという政策がわが国にはないということの現れであろう。ここでパートナーとしての動物として最適だと考えられたのが馬、なかでも農用馬であった。

 これまで動物園にはいわゆる家畜、特に大家畜はあまりいなかった。牛や馬はわざわざ動物園で見るものではなかった。私事であるが、小生、この8月に無事生誕50周年を迎えたのであるが、その小生が小学校の低学年の時代まで大阪近郊でも牛が田を耕す光景がみられた。だが1970年頃には田を耕す牛はほぼ姿を消していた。

 富山市ファミリーパークには現在ばん馬の他に木曽馬が2頭いる。この木曽馬を使って水田を耕作しようという試みもおこなわれている。今では農村部でも田に入ったことのない子供たちが殆どだという。彼らにとって貴重な経験となるだろう。農業・畜産業の理解なくして「食育」もへったくれもあったものではない。

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農家から寄贈された耕作用馬具

 全く当然のことながら、家畜にはそれを飼養し、御する人が必要である。産業現場から家畜の姿が消えて久しい。もちろん富山にばん馬を御することの出来る人はすでにいない。

 ばん馬にふれたこともない職員にばん馬の飼養管理と制御技術をレクチャーしたのは大河原和雄騎手であった。大河原さんご本人によると、ただ付いていくだけと思って富山に行ったら、「しばらく居れ」と服部師といわれ、そのまま滞在することになったのだという。大河原騎手はそのまま10日間富山に滞在し、ばん馬にふれたこともない動物園の職員たちに飼養管理と御者の訓練をおこなった。ちなみに、詳細を調査したわけではないので確たる証拠はないが、おかげで大河原騎手は富山の飲み屋街に最も精通した北海道民になった模様である。

 大河原騎手の指導の甲斐あって、ミサキテンリュウとハヤトリキは富山で無事に大役を務めている。飼育担当の沢井さんにもすっかり懐いている様子であった。心配された夏の暑さも慣れたようである。馬車は富山市ファミリーパークの呼び物のひとつとなっており、彼らに科せられた任務を十分に果たしている。もし富山に行かれることがあれば、ぜひミサキテンリュウとハヤトリキに会いに行っていただきたい。

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飼育担当の沢井さんとミサキテンリュウ

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