先週末で“今年度の”盛岡開催が終了しました。はい、“今年度の”を強調させていただきます。
岩手競馬の存廃問題についてこの場で私が語るのはどうかとも思いますが、この機にちょっとだけ言わせて下さい。今は存続を信じているファンや関係者誰もが、心の底にこの問題が重く澱んでいます。当然、私も例外ではなく、普通に使われる「最後の盛岡開催」という言葉や、北上川大賞典の場内告知CMがやけに哀愁漂う作りだったことなど、ちょっとしたことに胸がズキッと痛んでしまいます。
県税のカネ食い虫は潰せ−過去には県財政に多大な貢献をしてきた−現状赤字の公営ギャンブルに存在価値はない−潰すのにも巨額のカネが必要で借金だけが残る……
とかく経済で語られることが多い存廃問題。それはもちろん大事なことですが、私は岩手の文化について考えずにはおれません。私は県外の出身なのですが、小学生の時、教科書で見た「南部曲がり家」は、人と馬が支え合って暮らす馬産地岩手のイメージを強烈に印象づけました。時代が移り形は変わりましたが、岩手競馬は岩手と馬の繋がりをイメージさせる最後の砦なのではないでしょうか。私はチャグチャグ馬コという祭りも大好きですが、年に一度開催される祭りよりも、毎週やってる馬コ競走の力は大きいと思います。
こう言うときっと「文化やロマンでメシが食えるか!そんなものにカネはかけられない」という反論が起こるでしょう。そこで誤解を恐れず極論をぶつけます。「平泉の文化財にはお金を使っても誰も反対しないでしょ」と。断っておきますが、日本歴史上において平泉の存在価値の大きさは良く分かっていますし、岩手県民として私も誇りを感じています。それと同じように、「岩手と馬」について県民みんなが誇りを持って欲しいと思うのです。
“今年度の”盛岡最後のレースが終わり薄暗くなってきた夕方、きっとファンも関係者も、口には出さずとも「これで最後にならないでくれよ。なってたまるか」そう思って家路に着いたことでしょう。来年も必ずここに帰ってくる…私もそう信じて競馬場を後にしました。
振り返ると、東の山から満月近い月が昇っていました。
<次走へのメモ>
11月5日 第29回北上川大賞典(盛岡ダート2500m)
(写真・佐藤到)
1着 コアレスハンター
「専門紙の中には2番手からの展開もあったので、ちょっと迷って先に行ったほうがいいか(高橋三郎)調教師に聞いてみたら、“大丈夫、行かなくていい。いや行けないから(笑)”と言われたので、スローでもあそこでじっくり待機した」(関本淳騎手)
これは関本淳騎手のレース後コメントだが、あそことはスタンド前は後方2番手、そして向正面でも中団より後ろ(後方4番手)。前半は超スローペースに落ちていたが、あわてることなくじっくり控える。
ジワジワと前に進出したのは3コーナー手前からで、3コーナー過ぎにスパートをかけたが「追い出してからスッと行けないのが年齢的なものでしょうね。でも加速がついてからの伸び脚がすばらしく、さすがだと思った」のコメントどおり、前のエアウィードよりワンテンポ遅れたスパートだったが、4コーナーでは逃げるミサキノハンターを射程圏に入れる。
直線、ミサキノハンターが最内で渋太く粘ったが、ラスト100mでコアレスハンターが捕らえると、あとは後続を引き離す一方。2着エアウィードに2馬身半差をつけ、6月のみちのく大賞典に続いて2つ目の岩手ビッグタイトルを手に入れた。
「(コアレスハンターに)乗るのは初めてでしたが、レースは見ていたので感じは掴んでいました。折り合いがつくので長い距離が合うんでしょうね。どこからでも大丈夫だと信じて臨みましたが、9歳とはとても思えないほど乗り具合のいい馬ですね」と関本騎手。
今回、コアレスハンターは8月2日、サンタアニタトロフィー以来、3ヶ月ぶりの実戦となったが、万全に乗り込んだのを証明するようにキッチリ仕上がり、馬体の張りも文句なし。またトモ(後肢)も9歳とは思えないほどの張りがあり、「自信を持って連れてきた」の陣営コメントも納得。
1周目1コーナーから14秒台というまるで調教並みの超スローの流れとなりながら、まったく掛かる仕草も見せず、ラスト1000mから12秒台の上がりの競馬になったが、それにアッサリ対応できるのはさすがだ。「今後は厩舎に戻って適当なレース(長距離戦)をゆっくり見つけたい」と高橋三郎調教師。
2着 エアウィード
10月9日、南部杯11着から直行。4番手外の絶好のポジションにつけ、3コーナーから早めにスパート。ミサキノハンターはひとまず捕らえたが、その外コアレスハンターにはアッサリ交わされ、2着確保がやっとだった。
昨年、この北上川大賞典でコアレスハンターの追撃をハナ差封じたが、今シーズンはシアンモア記念の1勝のみ。青藍賞2着でなんとか格好をつけたが、「本調子ではない。走っていない」との村上忍騎手のコメントがすべてを物語っていた。
3着 ミサキノハンター
8月の特別・すずらん賞(水沢1600m)で高松亮騎手が金星をあげ、以降も同騎手のお手馬になる。スタート直後はトウカイトニーも先に行くポーズを見せたが、譲らず先手を取り、あとはガクンと超スローペースに落とす。それで脚に余力が残って直線でも粘っていたが、最後は距離適性と底力の差が出て3着。
これまで主戦場は水沢コース1本。岩手での勝ち星4勝はすべて水沢でマークしたもので、マイル前後で抜群の実績を残していたが、盛岡では前回・赤松杯の4着が最高。その時、見せ場は十分に作っていたが、2500mの長丁場でこの3着は大健闘と言っていいだろう。今後の舞台はシーズン終了まで得意の水沢。距離も我慢できるようになった今なら、重賞タイトル獲得も決して夢ではなくなった。
4着 ブラーボウッズ
例によってスタートで出遅れて後方3番手を追走。前回・赤松杯1着の再現を狙ったが、ラスト5ハロン12秒前後の競馬にはついていけなかった。
11月4日 エクセレント競走(盛岡ダート1800m)
(写真・佐藤到)
1着 オウシュウクラウン
9月18日、ダービーグランプリ以来の実戦となり、馬体重がプラス9キロの502キロとデビュー来、初めて500キロ台での出走で見た目にも腹回りに余裕があった。その影響と、元々が掛かり気味に競馬をするタイプで1周目スタンド前、ルーキーナカヤマに外から被せられてまず折り合いを欠く。続いてペースが落ち着いた向正面でも掛かったが、小林騎手が必死になだめて3番手外を追走させる。
直線では逃げたカシマハヤトをアッサリ交わしたものの、やはり手応えが本物でないのだろう、小林騎手が気合いを入れて追った結果、2着に2馬身半差をつけて完勝した。反応が本物でなくても、この着差が実力の証だろう。
以上のように課題もいろいろ残ったが、久々を考えれば上々。次走に3歳重賞・阿久利黒賞(11月19日)を使い、その後は遠征を予定している。
10開催・59日間にわたって行われてきた盛岡競馬場の開催も今日がラスト。早いものですねえ。つい先日、5月のゴールデンウィークから盛岡開催が始まったと思ったのですが、あっという間に4つのグレードレースも終わり、今シーズンの盛岡開催も最終日。気がつけば冬が目の前にやってきてしまいました。
“時間の経つのが早い早い”というのは年を取った証拠なんだそうですが(^^;)、しかし、地方・中央問わずこうも毎週ビッグレースが続くと、時間の経つのも早くなろうというものです。
岩手競馬は来週からは水沢での開催になります。冬の水沢、寒いけれど趣があるし、競馬場の食堂の暖かい系メニューもおいしいし、で嫌いではないんですが、なにぶん遠くなるのが辛いんですよね。
普段は盛岡から水沢へ通いですので、高速道を使いつつ片道1時間強。まとまった雪が降った日などは高速といえど圧雪になっている事もあり、なかなか気が抜けません。ま、その辺のお話しは水沢に通いつつおいおいと。
盛岡開催ラストを飾るのは、ダート2500mの長距離戦・北上川大賞典です。今年は9頭立て、重特の勝ち馬がレース毎に変わった今年を象徴するかのように、確とした軸馬が見あたらず、馬券的にはかなり難解と感じます。
いろいろと悩みつつ、今回の本命は大井から遠征のコアレスハンターに期待する事にしました。昨年のこのレース2着馬、そして今年は6月のみちのく大賞典でも遠征して勝利しており、9歳馬ながら岩手のオープンを向こうに回して堂々とした立ち回りを見せました。盛岡コースとの相性の良さもかなりのもので、これまで盛岡では5戦1勝2着2回、連に絡んでいないのはダートグレードレースで、地方馬同士の戦いなら非常に堅実な成績です。
気になる点としては、距離は昨年のこのレースで問題ない事を示していますから、やはりここは8月以来の実戦になる事でしょうか。休み明けは基本的に問題ない馬ですが、年を取った最近は前ほど走らない印象。ただ、今シーズンは昨年などと比べても状態が良いそうですし、この中間も馬は元気だったという事。実戦のカンが鈍るほどの長期休養でもないので、その点はそれほど気にしなくて良いのかもしれません。
地元馬にがんばってほしいのはやまやまですが、なにせみちのく大賞典馬。地元の奮起を期待しつつ、今回はこの馬が本命です。
対抗は、これまた悩むんですが、少しヒネってジェーピーバトルでどうでしょう。今年芝でブレイクした馬ですが、昨年まではダート中心で出世してきたからダートがダメではないし、距離も芝2400mのせきれい賞を勝っているからまず大丈夫。ちょっとズブい所があるので、スローになりがちなこのレースは意外と合いそうな気がします。鞍上はこのレース過去10回年で4勝している菅原 勲騎手。そこも魅力大です。
もう一頭は、やはりエアウィードに期待。やはり昨年の覇者、今シーズンの成績はどうもムラがあるんですが、やはり抑えないわけには行かないでしょう。できれば当日、あまりイレ込んでないかどうかを確認しておきたいですね。あんまりイレ込むようでは期待薄かも。
この他となると、距離的な不安もあってあまり大きな差がないという感じですが、挙げるとするとまずミサキノハンター。父アフリートに母父Lyphardでは、同じアフリート産駒のブラーボウッズよりもずっとマイラーっぽい血統ですが、この秋からの充実ぶりが魅力ですし、何となればハナに立てる点も、これといった逃げ馬がいないここでは面白い展開に持ち込めそう。
愛知から遠征のタカオライアンも、ここのところ勢いがついてきました。南関時代に大井記念・東京記念という彼の地の長距離重賞に出た経験もありますし、鞍上もベテラン吉田稔騎手なら穴として面白いのでは。
買い目は7枠7番コアレスハンターから2、3、4、9。休み明けがやや不安な分、頭を限定せず裏表柔軟に狙っておきたいですね。
4日(日)メインはA1級・エクセレント競走、1800m戦。翌日に重賞・北上川大賞典を控え、普通ならば手薄なオープン戦になるのだが、長距離2500mに適性ないと見た有力馬がこぞってこちらへ登録。非常に興味深いメンバーが顔をそろえた。
その中でも注目はダービーグランプリ(9月18日)以来、久々に戦列復帰を果たしたオウシュウクラウンだろう。
(写真は不来方賞ゴール 優勝オウシュウクラウン 佐藤到)
今年5月、南関東から再転入後、破竹の4連勝を飾ってG?・ジャパンダートダービー(大井)へ挑戦。そこでフレンドシップの3着に善戦し、一躍話題の馬へ。岩手帰郷後も伝統の3歳重賞・不来方賞を貫禄で制し、いよいよ決戦の舞台・ダービーグランプリへと駒を進めた。
オウシュウクラウンは実績、臨戦過程、仕上がりなどあらゆる面で強豪JRA勢に見劣りせず、地の利も後押しして当日はナイキアースワークの2番人気に支持された。
ところがいつもの反応の良さが見られず、3コーナーで早くも手応えが怪しくなり、マンオブパーサーから1・8秒差7着に惨敗。悲願の岩手勢ダービーグランプリ制覇はもろくも夢に終わった。オウシュウクラウン陣営もこれにはショックを隠せなかったが、上がりで脚をかばう仕草を発見。レース中、蹄叉に外傷を負うアクシデントがあった。
そのため次走に南部杯への出走予定も考えていたが、すべて白紙。まずは治療と回復に専念させることになった。そしてダービーグランプリから1ヵ月半後の今回、ついに再始動するに到った。
もちろんハイレベルを誇る現3歳世代でもトップに君臨する実力馬だから、この古馬オープンなら当然の主軸となるが、不安材料がない訳ではない。出走に際し、中間に2本の追い切りを消化したが、最終追いではラスト14秒0で一杯。元々、気のいいタイプでテンからガンガン飛ばして終いが一杯になってしまうパターンが多いが、今回は半マイルも52秒0と明らかに平凡なタイム。
当然だが、ここをピークに仕上げてしまっては以降が続かないので、おそらく6分か7分程度の状態での出走。このレースに限って言えば絶対の本命とは言えないだろう。
逆転筆頭はベルモントシーザーだ。前回・赤松杯で1番人気に推されたが、しんがり10着に沈んだ。敗因は戦前の予想どおり逃げの手に出たが、ミサキノハンターの執拗なマークにあい、息のつけない流れとなって直線失速したもの。ラップ以上に厳しい展開となってしまった。
この影響がどう出るかだが、過去、盛岡ダート1800m戦は3戦3勝とパーフェクトの成績を収めているように、条件はベスト。前回のうっ憤を晴らしたいところだ。
無類のタフさと抜群の安定度を誇っているのがマツリダブロッコ。今シーズンもすでに14戦を消化し、6勝2着3回3着2回。前回・赤松杯でも直線ジワジワ伸びて0・2秒差3着と気を吐いた。着外に沈んだのはあすなろ賞6着の一度のみで、あとはすべて電光掲示板に載っている馬主孝行の典型だ。
シンボリスナイパーは9月24日、OROカップ以来だが、そのレースで後方待機策から大外一気を決め、待望の重賞タイトルを手に入れた。その前のすずらん賞では人気の一角を形成したが、折り合いを欠いて8頭立て8着。そのためOROカップでは評価を下げていたが、見事に覆した。今回は芝からダートへ替わったが、岩手転入初戦(盛岡ダート1600m)をハイタイムで快勝し、適性はまったく不安なし。久々だけがネックとなるだろう。
他では牡馬とも互角の競馬を披露するタカエイチフジ、9歳ながら徐々に状態アップしている格上馬カシマハヤトも軽視できない。
◎ ?オウシュウクラウン
○ ?ベルモントシーザー
▲ ?マツリダブロッコ
△ ?シンボリスナイパー
△ ?タカエイチフジ
△ ?カシマハヤト
3連単は7、2、5のボックス。そして12、11、3を3着押さえに
馬複は2−7、5−7、7−12、7−11、2−5
<お奨めの1頭>
9レース ロイヤルアリダー
前走は豪快に直線一気を決めて岩手初勝利をマーク。馬場の広い盛岡でもう一丁いきたい
今週は11月3日(金)から5日(日)までの変則開催となり、今シーズンの盛岡競馬もこれですべて終了する(次週から水沢競馬)。3日メインはA2級馬によるマイル特別「第7回秋嶺賞」(盛岡ダート1600m)、11頭立て。このレースの1着馬には12月3日、水沢1600mを舞台に行われるオープン特別・第16回白嶺賞への優先出走権が与えられる。
主軸はゲイリーエクシードで動かないだろう。昨年10月、中央ダート5勝オープンから転入して2勝マークし、重賞・北上川大賞典でも4着。冬期間は佐賀で4戦使って4月から再び岩手入り。格付け賞金の関係でA2級へ編入と恵まれたスタートを切り、これまで10戦5勝2着4回3着1回と抜群の連対率を誇っている。
前回・赤松杯ではA2格下からの挑戦だったが、岩手オープン馬を相手にブラーボウッズの0・1秒差2着。自慢の末脚が冴え渡った一戦となった。
このゲイリーエクシードは芦毛といっても白馬に近く、一際目立つ白い馬体の持ち主で遠目にもどこを走っているのかがはっきり。おそらく今回も後方待機策から3コーナースパートをかけると思うが、生でも画面越しでも躍動する白い馬体に注目して欲しい。
相手筆頭格にサンシャインヘイロを指名する。前走・白神賞は久々の短距離戦(盛岡ダート1200m)で追走にてこずり5着確保するので一杯。持ち前の破壊力を発揮できずに終わった。しかし今回は守備範囲のマイル戦に加え、盛岡ダート1600mは2戦1勝2着1回と連対パーフェクトの実績。
白神賞以前のレースでも前がふさがる不利が多々見られたし、スタートで後手を踏んで取りこぼすケースが多かったが、今度こそこれまでのうっ憤を一気に晴らして欲しいところだ。
サージェリーも首位圏内に位置する。前回はゲイリーエクシードと同様、A2から赤松杯に挑戦。さすがにメンバーが強く、いつものまくり脚が見られず8着だったが、タイム差は0・7秒と勝ち馬から1秒以内にはまとめた。
3走前の岩手日報杯では、今回も人気の中心となるゲイリーエクシードを切って捨てて見事1着。また、続くM&Kジョッキーシリーズ第一戦では出遅れを喫しながら、前記ゲイリーエクシードに0・1秒差2着と一進一退の攻防を演じており、前走の雪辱を期待したいところだ。
逃げの手に出るのは快速チェリーフォティだが、すんなり2番手の競馬ができるのがメタモルキングだろう。前走は鮮やかな逃げ切りを決めて快勝し、前々走も逃げ粘って3着と充実ぶりが目を引く。もちろん控えるレースも可能で、有力馬に差しタイプが多い今回、カギを握る1頭となりそうだ。
他では3歳牝馬ゴールデンパンジーも前回・白神賞(ダート1200m)で0・3秒差4着に食い込み、ここも軽視はできない。
3連単は7を1着固定に8、5を2、3着折り返しと3頭ボックス。そして4、2を3着押さえ
馬複は7−8、5−7、4−8、5−8
<お奨めの1頭>
5レース トミケンアプローズ
前回は2ヶ月ぶりの実戦で最後は伸びきれず3着に敗れたが、一度叩かれた今回はきっちり白星飾る