“Mr. PINK”こと内田利雄騎手が、今週24日から8月15日の約2ヶ月間にわたって岩手で騎乗する。早速22日、騎乗前の内田騎手に抱負を聞いてみた。「昨年は馬にもレースからも離れていたので、体が元に戻るまでに時間がかかりましたが、今回はその点にかんしてはまったく問題ありません。ただ、あの時は廃業寸前の崖っぷちでしたが、今回は気迫不足の感じがします。もう少し気を引き締めなければな、と思っています」
騎乗初日となる24日は第7レース、マイネパトリシアを皮切りに8、9、11レースの4鞍を予定しており、また華麗なプレーと“百万ドルの流し目”でファンを魅了して欲しい。
その24日のメインは3歳牝馬による特別「第32回あやめ賞」(水沢ダート1600m)。このレースは7月22日、第7回ひなげし賞(盛岡ダート1800m)と並ぶ3歳牝馬全国交流重賞「第20回ひまわり賞」(8月20日、水沢ダート1900m)の地元トライアル戦。
(写真は日高賞 優勝サイレントエクセル)
主軸はサイレントエクセルで断然だろう。シーズン入り直前に順調さを欠いて菜の花賞を自重。ぶっつけで重賞・留守杯日高賞に臨み、スタートで出遅れながらも早め先頭に立ったゴールデンパンジーをゴール前でキッチリ差し切って快勝。白菊賞に続く牝馬重賞2勝目をマークし、牝馬では役者の違いを見せつけた。
ただ気になったのは休み明けだったにもかかわらず、マイナス9キロでの出走。見た目にも馬体が寂しく映った。その影響は続く5月13日、特別・やまびこ賞に出て、さらにマイナス9キロ減って436キロ。盛岡への輸送があったにせよ、2歳時に比べると20キロ以上も減っているのには驚いた。それでもテンショウボスとのマッチレースに持ち込み、2着を死守し、改めて底力の高さに感服した。
しかし前回・ダイヤモンドカップでは地元水沢の競馬で輸送もなかったこともあって、442キロまで回復。実際、装鞍所でサイレントエクセルをゼッケンなし(裸馬)で見たのだが、馬体の張りが見違えるほど良くなっていた。それがレースにも直結。好スタートから好位を追走し、オウシュウクラウンにはかなわなかったが、テンショウボスとの競り合いを制して2着を確保。これで本来の姿に戻ったとファンにアピールした。
レース後のインタビューでも「勝った馬が強すぎたが、この馬のレースはできた。牝馬同士なら絶対負けない」と板垣騎手が断言。サイレントエクセル復活の手応えを十分感じ取ったようだ。しかも今回は全馬53キロの別定戦で、これまでの実績を考えれば裸同然の負担重量。よほどのことがない限り、負けることはないだろう。
そうなると軸は確定、相手捜しの一戦となった。その一番手にゴールデンパンジーを指名する。シーズン初戦の牝馬特別・菜の花賞を快勝し、重賞・日高賞は前記サイレントエクセルに0・1秒差2着に惜敗。それでも3角先頭の積極的なレース運びを見せ、ゴール直前まで粘った。
続く2戦、牡馬に混じった特別・やまびこ賞は4着、重賞・ダイヤモンドカップは5着と牡牝馬との差が出た格好となったが、今回は牝馬同士の戦い。メンバー的にも2着は譲れないところだ。
ここにきてキヨシンピュアが急成長を遂げている。日高賞、やまびこ賞と連続5着にまとめ、前走は平場A2戦とはいえ、2番手抜け出しを決めて快勝。パワフルビクトリに0・6秒差をつける横綱相撲を見せつけた。父がパラダイスクリークなら奥手血統だし、何と言っても牡馬顔負け500キロ前後の雄大な馬格が魅力だ。
パワフルビクトリもようやく立ち直り気配をうかがわせている。一時、減っていた馬体重も前走・ダイヤモンドカップでは440キロ台まで回復した。元々、芦毛で見映えのするタイプではないのだが、それにしてもシーズン当初は冬毛が残って、馬体の張りもひと息だった。しかし叩かれながら徐々に馬体も回復し、ここ2戦はレース内容もグーンと良化した。決め手勝負になればサイレントエクセルと同等の破壊力を秘めている。
3連単は8を1着固定に2、3着5、9、6流しで決め打ち
馬複は5−8、8−9、6−8の3点勝負
<お奨めの1頭>
9レース ツルガオカケッセン
内田利雄騎手、よろしゅう頼まっせ!
中央競馬の勝負服は馬主を表すが、地方競馬の勝負服は騎手固定、という話題を以前ここで取り上げました。そのかわりという訳ではないのですが、出走馬が装着するメンコのデザインには様々なものがあり、厩舎や厩務員さんのこだわりが感じられることもあります。
よくあるのは騎手の勝負服とおそろいのメンコ。みなさんに一番おなじみなのは、トニージェントが装着していた白地に赤たすきのメンコではないでしょうか。トニージェントの主戦・村上忍騎手の勝負服と同じデザインのこのメンコは、彼が出走する際にはほとんど装着していました。また、小林俊彦騎手や菊地康朗騎手らの騎乗馬も、よく勝負服デザインのメンコを使っていますね。
他にもブルーオスカーやかつてのメイセイオペラのように馬名が刺繍された専用メンコや、子供たちが喜びそうなキャラクター入りのメンコ(厩務員さんが作っているとの噂)などもみかけます。
しかし最もよく目にするのは、黒字に赤のラインが入ったメンコでしょう。あの渋いデザインは濃いめの鹿毛馬が装着するとよく似合います。このメンコは櫻田勝男厩舎所属の出走馬のうち、スズカミシルらブリンカー装着馬以外にほぼ例外なく使われています。以前、先生に「何か由来とかいわれがあるのですか?」と聞いてみたら、「揃っていた方がカッコイイんだよ」というシンプルなお返事でした。多くは語らない櫻田勝男先生ですが、実は調教や厩舎内で使う馬服にも桜の花びらに「勝」のマークを入れたオリジナルのものがあり、なかなかオシャレな厩舎なのです。そういえば所属騎手の佐々木忍騎手も、ヒョウ柄の鞍を愛用していますね。
馬の顔というものは人間の目ではなかなか区別が難しく、よほど目の肥えた人でないと、出馬表などもなくただ見ただけで馬を特定するのは困難です。メンコや、あるいはその他にも鬣(たてがみ)の編み込み、飾りなどトレードマークを持っていれば馬が判りやすく、親しみが湧いてファンになるきっかけともなるのではないでしょうか。
(文・写真/佐藤到)
1着 タイキシェンロン
「先に行きたい馬が多かったので、出たなりのポジションで構わなかった」(菅原勲騎手)とレース後、コメントしたとおり無理せず中団8番手を追走。3コーナーでペースが上がり、うまく外に出してからニッショウウララを射程圏内に入れる。ゴール前は3頭の叩き合いとなったが、最後は貫禄の差で2頭の猛追を退ける。「向正面でスッと反応したので楽かなと思ったが、2頭も渋太く粘った」(菅原勲騎手)。
これで水沢1400m5戦4勝3着1回とし、本番・栗駒賞へと臨む。今季は3戦連続で2着だったが、待望の白星をあげ、地元大将格として他県勢の強豪を迎え撃つことになる。得意の水沢なら好勝負になるだろう。
2着 ベルモントシーザー
1枠に入り、外からトキオパーフェクト、デュークファースト、グローリサンディが先陣を切ったため、5番手インに控える。道中もずっとインで囲まれたため、なかなか外に出せなかったが、4コーナーで内がポッカリ開いたところを突き抜ける。岩手3戦は1800mを2度、前走2000mからいきなり1400mの競馬。その影響でダッシュがつかず道中も苦しんだが、最内を突いて2着を死守。最後まで気力が薄れなかったのはさすがだ。「1枠がきつかった。せめて4、5番枠だったら、もう少し楽に競馬ができたのでは」(阿部騎手)
3着 ニッショウウララ
前半、3頭が競り合うのを見て大外4番手を進む。道中の手ごたえもすばらしく、4コーナー手前で早くも先頭。最後の最後で力尽きたが、今季の充実度を前面に積極的なレース運びをし、見せ場も十分に作った。「水沢でもこの競馬で持つから今年は一味違う。盛岡だったら勝てたかも」(村松学騎手)
4着 オリエントボス
中団6番手を進み、直線もマズマズの伸びを見せて4着。ただ、上位3頭とは3馬身離された。これはキャリアの差とも言え、今後、レースを使っていけばペースにも慣れるのではないか。1400mから1600mが合いそうだ。
5着 トキオパーフェクト
果敢に逃げたが、2頭に絡まれて直線一杯。やはり年齢的な衰えは隠せないが、それでも電光掲示板に載るのだから、距離適性の高さは見せた。
6着 ハヤブサ
後方3番手待機策から3コーナーで徐々に進出。4コーナーで一瞬見せ場を作り、復活の兆候があったと解釈。
この15日、札幌競馬場で行われた北海道スプリントカップの取材に行ってきました。このレースはここ何年か連続で現地で見ていまして、いつも初夏の北海道らしい良い天気に恵まれていたんですけれど、今年は曇り空。そのうえレース直前には土砂降りの雨になるという、運の悪い事になってしまいました。
レースの方はというと、優勝したのはJRAのアグネスジェダイ。2着もJRA、そして勝ち馬と同厩舎のシーキングザベストという結果でした。地方所属馬は、ベルモントファラオが3着に入ったけれど勝ち負けにはちょっと手が届かない、という感じでしたね。
アグネスジェダイの次走はクラスターCの予定。シーキングザベストもメンバーによってはクラスターC出走の可能性があります。シーキングザベストは1000mでは持ち味がでなかっただけに、1200mでの走りを見てみたいものです。
さて、今週の月曜日は重賞・特別戦が無く、メインレースはA1級のエクセレント競走となっています。8頭立てとちょっと寂しいんですけれど、その分狙いを絞りやすいという事でいきましょう。
このレースの本命はローランボスコを推します。4月のまんさく賞を圧勝した後、盛岡の2戦がふるいませんでしたが、これはやはりローランボスコは左回りがもうひとつだという事に尽きるでしょう。今度の舞台は右回りの水沢、ここ2戦とは違ったスムーズなレースができるはずです。
また、シアンモア記念の時は強力な遠征馬がいたせいもあってか、流れに乗り損ねてレースにならなかった印象がありました。前走のあすなろ賞では早め早めに先行していくレースを心がけて5着に粘り込んでいますから、調子の方も決して落ちてないと判断できます。今回のメンバーならオープン特別勝ちの実績も武器になりますし、なによりオープンで揉まれてきた経験を効かせたレースを見せてくれるでしょう。
対抗は思い切ってツインズジョーカーを。この馬、以前は船橋所属で左回りを中心に走ってきましたが、基本的に平坦コース向き、かつ右回りは巧者といっていい巧さだと思います。ここ2戦は度外視して、狙い直すならここでしょう。馬体重が絞れてくればなおプラス材料。
以下となるとまずはマツリダブロッコ。エクセレント競走では6勝を挙げている“エクセレント競走の鬼”です。今シーズンは中一週・実質連闘・中一週・中一週、そして今回も中一週と強行軍で来ていてそろそろ疲れが見え始めたのが気になりますが、エクセレント競走では殆ど掲示板を外したことがない堅実派だけに狙いを外しきれないですね。
もう一頭はタカエイチフジ。転入初戦の前走では、前地で5月まで走っていただけのことはあると思わせる好仕上がりで強豪相手に2着でした。今回はその時ほどうまくはいかないと思いますが、前走だけの走りができれば十分上位に食い込めるでしょう。
ということで買い目は、4枠4番ローランボスコから3番ツインズジョーカー、8番マツリダブロッコ、1番タカエイチフジへ。ツインズジョーカーの体重がしっかり絞れているようならそちらを頭で狙ってみるのも面白いかも。
18日メインは短距離特別「第32回姫神賞」(水沢ダート1400m)。このレースの1、2着馬には7月2日、同じ条件で行われる重賞・栗駒賞への優先出走権が与えられ、その先にはG?・クラスターカップ(盛岡ダート1200m)と続く短距離路線が敷かれている。先日15日、G?・北海道スプリントカップ(札幌ダート1000m)が行われ、JRAアグネスジェダイ、シーキングザベストと森秀行厩舎が1、2フィニッシュを決めたが、地方競馬もダート短距離戦線が本格的に始動した。
さて姫神賞。主軸にタイキシェンロンを指名する。前走・みちのく大賞典ではコース適性ひと息の盛岡、そして距離2000mも不安視されたが、2番手追走からコアレスハンターの2着に粘り、地元の意地を見せてくれた。
これまでタイキシェンロンは通算22勝をマークしているが、その勝ち星のうち16勝が1400〜1600mまでに集中。右回りになると、さらに顕著で<19.3.3.4>。水沢に限れば<9.3.2.1>。唯一の着外は船橋から遠征した昨年の青藍賞6着のみと、恐ろしいまでの水沢巧者ぶりを見せてきた。
もっとデータを探ってみよう。水沢1400mは4戦3勝3着1回。一昨年、栗駒賞を制し、冬の重賞・早池峰賞2勝。3着敗戦は一昨年の早池峰賞でトキオパーフェクトを捉え切れなかった一戦だったが、それでもクビ、頭差の僅差だった。
今回は地元同士の戦いで勝負付けの済んだメンバーでほぼ死角なし。断然の主役を演じてくれるだろう。
(写真はみちのく大賞典出走時のタイキシェンロン)
タイキシェンロンの軸は確定。ヒモ捜しの一戦となり、その一番手はニッショウウララだ。大勢はベルモントシーザーだろうが、今シーズンのニッショウウララは一味違う。驚いたのは前々走・あすなろ賞2着。好スタートを切ったが、先行争いがごちゃごちゃとなり、一旦5番手まで下がる。これまでのニッショウウララならそのまま失速するパターンだったが、直線で盛り返して2着に食い込んだ。
ニッショウウララはデビュー戦で水沢850m51秒1のレコードをマークし、その記録はいまだに破られていないのだが、常に気性難と背中合わせ。ゲートで暴れてみたり、外からかぶせられるとズルズル下がったり。時に強いレースを見せるのだが、好走が続かず信頼性に乏しかった。しかし厩舎スタッフいわく『今年はズブさが出て、それが良い方に向いている』の言葉どおり、年齢を重ねて落ち着きが出てきたのが、目下の充実度につながっている。もちろん身上とするのは天性のスピード。ニッショウウララにとって今回の水沢1400mはもってこいの条件となる。
一方、2番人気に支持されるであろうベルモントシーザー。南関東から5月に転入し、A級戦、あすなろ賞と2連勝。続くみちのく大賞典では2000mは長すぎると言われていたが、それを跳ね除けてタイキシェンロンとの2着争いの末、首差3着に惜敗した。
この岩手3戦とも道中、掛かるところを見せ、折り合いに苦労するシーンがあった。となると折り合いを気にしなくていい今回の1400mは合うだろうし、右回りは旧地・大井で経験豊富。やはり2番手は譲れない。
しかし勝手な見解だが、ベルモントシーザーは本質的にマイラーではないだろうかと思っている。逆にニッショウウララはスプリンター。とすれば距離適性の差が出るのではないか…と推理してみたのだが。
以下は4歳馬オリエントボス、芝が主戦場だったが、1400m戦で3勝ゲイリーファントム、古豪トキオパーフェクトらが続くが、上位3頭とは開きがあり、押さえ程度になるだろう。
3連単は3を1着固定に12、1を2、3着折り返し。穴で6、7、4を3着押さえ
馬複は3−12、1−3の2点に絞る
<お奨めの1頭>
11レース キタノソナタ
転入2戦目の5着以外、すべて連対と抜群の安定感を誇っている。ここも信頼の軸