3歳ベストスプリンターを決める一戦・1400mの短距離戦。そこに前走ではスピードにまかせてぶっちぎったダンディキング登場、という事で興味津々のレース。結果はダンディキング2着、勝ったのはブラックショコラとなったのだが、レース内容は期待に違わず、3歳馬のレースとは思えない、ハイラップでの高速決着となった。
レースの結果から見れば、やはりブラックショコラとダンディキング、この上位2頭の力が抜けているという事になるが、掲示板に入った他の3頭も、それぞれに自身の良さを発揮しながら短距離に対応する走りをしており、それなりに能力の片鱗も見せている。いずれの馬も短距離戦では今後とも注目すべき存在と見ていいだろう。
1着:ブラックショコラ
このレースの前半3ハロンのラップは34秒9、ハロン11秒台も2つ並ぶような“超”がつくハイペース。それをついて回ってなお、上がり3ハロン37秒台の脚を繰り出すのだから強いとしか言いようがない。
「前走はスタートが悪くてレースにならなかった。今回はスタートだけに気をつけ、うまくいったので“これなら”と思った(菅原 勲騎手)」との事だが、今回のレースを見る限り明らかな短距離の差し馬タイプ。距離短縮が大きなプラス材料になっている。
次走は未定ながら、岩手ダービー・ダイヤモンドカップ(6/11 水沢競馬場)を念頭に置きつつ、馬の状態を見て考えると千葉博調教師。
2着:ダンディキング
劇走後のレースでも特に調子落ちなく挑み、最後まで自慢のスピードを発揮したのだが、またしても念願の重賞タイトルに一歩手が届かず、の結果に終わる。
スタートダッシュが今ひとつだったのが応えたかに見えたが、鞍上が言うには「前走ほどポンとダッシュがつかなかった。けれど、この距離では周りも速いから、簡単に前に出て行けない」ということで、距離短縮の1400mという条件が意外と影響したのかも。
それに、レース終盤も決して脚が上がっているわけではない。今回は距離や盛岡コースという条件が勝ち馬に味方した、と見るべきだろう。
3着:ディアブロハンター
この馬の見せ場は3〜4コーナー、ダンディキングを楽に追い上げて2番手に上がったあたり。この馬にしても前半からハイペースについて行って、それでこれだけの走りをしているのだから立派。「距離はマイルくらいでも走るが、短い方がずっと良さそう。芝も合うのでは」と須田英之騎手。しかし、レース中に鼻出血発症のため6/12まで出走できないのが残念な所。
4着:ナイキザフォース
取り消し明けのレースという点が気になったが、馬の状態の方は特に問題なかったようだ。前半の手応えに比べて後半勢いを欠いたのは、やはりこの距離でもまだ長いという事なのかも。次走、陣営の意向では芝を走らせてみたいとの事で、はまなす賞(5/28 盛岡芝1600m)になりそう。
5着:ムーンプライド
最後はさすがにバタバタでなんとか5着を守りきった、という感じになってしまったが、注目すべきはテンのスピード。決して出ムチを入れたりしたわけでなく、むしろ内のダンディキングの出方を窺うような所もありながら、それでいてハロン11秒台の高速ラップを刻んでいる。もっと距離が短いレースでの走りを見てみたいものだ。
(文/横川典視 写真/佐藤 到)
先日、青森県のサラブレッド生産牧場を訪ねてきました。ちょうど今頃は、今年生まれたとねっ仔達が跳ね回っている時期。ぱたぱたとしっぽをふりながらお母さんを追いかける姿があちこちで見られました。
今は一生懸命お母さんのおっぱいにかぶりついている仔馬が、1年も経つとすっかり若駒に成長し、2年もすればレースに出るようになるのですから、馬というのはたいしたものですよねえ。1歳の夏や秋頃にはもう「古馬じゃないか!?」というくらい立派な体になる馬だっていますからね。あのとねっ仔達が大きくなったら、一体どんなレースをしてくれるのでしょうか。
ところで、とねっ仔のしっぽって、なんでカモノハシのしっぽみたいに平たいんでしょうね?あれがまた、かわいくて仕方ないポイントで・・・。
さて、月曜メインの岩洞湖特別は今シーズン初の芝の特別戦。ということで出走各馬の芝適性と枠順などを考えつつ、今回は本命に6枠8番タイキミスティを指名したいと思います。
タイキミスティはJRA未勝利から岩手に転入してきた馬ですが、すでに岩手の芝では昨年の田沢湖特別優勝をはじめ5戦2勝2着1回4着2回と堅実な成績を残しています。そもそもJRA時代にも、芝の未勝利戦を2戦して5着・6着とそこそこの結果を残していますから、もともと芝適性が高い馬なんですね。
芝は問題ない、B1級というクラスも問題ないとして、気になるのは6枠8番という枠順。盛岡の芝コースは基本的に外枠が不利ですからこの位置は微妙ではあります。しかし、以前勝った時はいずれも6枠からスタートしての逃げ・先行。内の馬の出方を見ながら行けるこの枠はむしろ都合がいいと言えるでしょう。
対抗格は思い切ってエイシンミランダを。前走を見るに「左回りがどうか?」と思うものはありますが、最近のこの馬の先行力からはいかにも好調さがうかがえますし、最内枠を引いたのもラッキー。少々絡まれても枠差を活かせます。
ゲンパチコジーンは外枠に入ってしまったのがちょっと残念。ですが、昨年のOROカップで4着という実績はメンバー中最右翼といえますし、前走を勝った勢いもありますから、引き続き警戒が必要です。
穴で面白いのはアリアンロッドとレタセモア。特に後者でしょうか。前走、レタセモアにとっては長い1800mで3着に粘った走りが妙に印象に残っています。ほとんど短距離ながら芝経験もありますし・・・。
ということで買い目は、今回はかなり力量が接近していると踏んで馬番8を含む1、3、7、11のBOXで。馬単・3連単はBOXをメインに使いつつ、できる限り手広くいきたいところです。
(文/テシオ編集部 横川典視)
4月29日、日高賞に続く3歳重賞は盛岡ダート1400mを舞台に行われる短距離戦「第38回岩鷲賞」。昨日も紹介したように、前日13日に「岩手ダービー ダイヤモンドカップ」トライアル・やまびこ賞があり、有力馬が分散。
とりわけダンディキングが早々と出走表明したため、逆転の目がありそうな有力馬は前日のやまびこ賞へ回った。
確かにダンディキングが七時雨賞、スプリングカップで見せた強さはけた違いだった。奇しくも2戦ともに大外枠へ入りながら、強引に先行策を取った。
特に七時雨賞では内に入った馬がハナを譲らない構えを見せたが、ダンディキングも徹底抗戦。前半3ハロン35秒台の超ハイペースを自ら形成して力で後続の追撃をねじ伏せた。
それがあったから続くスプリングカップでは12番枠から楽に先手を取り、そのまま逃げ切って圧勝。
よほど玉砕的な逃げタイプがいない限り、ダンディキングのスピードに立ち向かうのは難しいだろうと他陣営に思わせるに十分の内容だった。
そんなダンディキングに恐れをなした訳でもないだろうが、フルゲートにはならず10頭立て。しかも互角に戦えそうな相手はごくわずか。いかにもダンディキングに勝って下さいの一戦となった。
(写真・七時雨賞を快勝したダンディキング)
そんなダンディキングに死角がまったくなしなのか―。実は一つだけ不安材料がある。それは左回りへの適性だ。右回りがササり気味に走るのに対し、左回りになると外にモタれる傾向があるのだ。
思い出して欲しい。母ミスハクギンが現役時代、盛岡で走った時、3コーナーから外方逸走し、外ラチにぶつかって周囲をはらはらさせたことを。血は争えないもので、強弱はあるにせよダンディキングも左回りに不安を残している。
いや、昨年に若駒賞でアテストとタイム差なしの接戦を演じているではないか、と反論するかも知れない。
しかし、あの時も逃げたがずっと外に何かしらの馬がいて、モタれる仕草を派手に見せなかっただけだったとも言える。
まぁ、終わってみれば要らぬ心配に終わると思うし第一、ダンディキングはここでは絶対能力が違う。断然の主役であるのは間違いない。
あえてダンディキングの死角を探してみたが、唯一、そこに付け入れる可能性があるとすればブラックショコラだろう。
七時雨賞はタイム差なし2着、スプリングカップは2・7秒3着に破れ、勝負付けは済んだ格好だが、持ち味の末脚は盛岡でより生きるはず。意外にも盛岡ダートは初めてだが、盛岡芝は4戦2勝2着2回とパーフェクト連対を誇っている。ダート適性も問題ない。
他の8頭はこの2頭から大きく離されてしまった感じだが、日高賞で案外の8着に沈んだパワフルビクトリはこのまま終わってしまうとは到底思えない。復活の期待を込めた3番手候補。あとはダンディキングと折り合いをつけ、スロー条件でムーンプライドあたりまでだろう。
3連単は1、3の1、2着固定。3着も10、9へ絞りたい
馬複は1−3の一点勝負
(文・松尾康司/写真・佐藤到)
13日のメインは3歳マイル特別「第25回やまびこ賞」。1着馬には「岩手ダービー ダイヤモンドカップ」への優先出走権が与えられる。
翌日14日にも同じ3歳馬による短距離重賞「第38回岩鷲賞」もあり、有力馬がそれぞれ適性を求めて二つに分かれた格好となった。
牝馬重賞・留守杯日高賞の上位3頭サイレントエクセル、ゴールデンパンジー、モエレタキシードはやまびこ賞を選んできた。
一方、スプリンカップ組では同レース2着テンショウボスがこちらに回り、留守杯日高賞とスプリングカップのレベル比較が重要なポイントとなる。
まず留守杯日高賞だが、サイレントエクセルは1月2日、金杯以来、3ヵ月半ぶりの実戦だったにもかかわらず、馬体重が金杯比マイナス9キロ。しかもスタートで出遅れを喫し、道中ハラハラさせたが、3コーナーからエンジンが全開となり、早め先頭に立ったゴールデンパンジーをゴール前でキッチリ捕らえて快勝。牝馬?1の底力を改めて誇示した。
2着惜敗したゴールデンパンジーの粘りもなかなかのものだった。逃げたムーンプライドを向正面で交わして先頭。そのまま押し切るかとも思ったが、前半のハイペースでスタミナをロスした分、最後の最後で伸びを欠いた。
日高賞はこの2頭のマッチレースとなったが、菜の花賞と同様に3着に突っ込んできたのがモエレタキシード。サイレントエクセルから1・1秒、ゴールデンパンジーから1秒差だったが、とにかくこの馬は末脚が切れる。
対するスプリングカップ。テンショウボスはダンディキングの2番手を追走したが、完敗と言える1秒差2着。しかし、3着ブラックショコラはさらに1・7秒差での入線で、大型牡馬が使うたびに力をつけていることを印象づけた。
以上を踏まえた上で主軸をどちらにするか迷うところだが、ここはサイレントエクセルを指名してみたい。
先にも記したが、日高賞は急仕上げだったため、中間に飼い葉が落ちてマイナス9キロ。確かにパドックでは馬体が寂しく見えたし、行き脚も途中までは本来のものではなかった。
それでも勝利をもぎ取ってしまうのだから、今回は牡馬相手でも中心に据えるのが妥当だろう。ただ、馬体重が前回よりさらに減っていた場合は要注意だ。やはり体がふっくらしないことには力を出し切れない可能性がある。
逆転首位まであるのがテンショウボス。スプリングカップはダンディキングが水沢マイル1分42秒7という驚異的なタイムで圧勝したが、テンショウボスが出したタイム1分43秒7も非常に優秀だった。
それに対し、日高賞=サイレントエクセルの走破タイム(同じ水沢1600m)は1分45秒0。馬場差を考えても机上ではテンショウボスが上回っている。しかも良化一途の大型牡馬でもある。
もちろんレース運びで一日の長ゴールデンパンジー、末脚が生きる盛岡に替わってモエレタキシードの一発も十分に考えられるだろう。他ではキヨシンピュア、ミステリーゴットを押さえ少々。
3連単は7、11を1、2着折り返しに3着流しで12、6、10、3
馬複は7−11、7−12、11−12、6−7、6−11
(文・松尾康司)
いわわししょう… 県外のほとんどの方は「ガンジュ賞」とは読めないのではないでしょうか? 岩鷲山(ガンジュサンあるいはガンシュウザン)とは、我が岩手県のシンボル、岩手山の古い呼び名なのです。岩鷲という名の由来は、春に山の積雪が解けて黒い地面が見えてくるとき、毎年決まって頂上付近に鷲が翼を広げたようなパターンが現れることにあります。このような「雪形」は全国に多くあり、各地で「これが現れたら田んぼに水を引く」などと農業の目安になったりもしています。そういえばJRAのレース名にもある福島県の吾妻小富士ではウサギの形が見られるといいますね。
岩手山は、分類で言えば成層火山に属し、あの富士山と同型の美しい裾野をもつ円錐状の山。しかし山体の西側に新火口が噴出したため、「南部“片”富士」と言われる女性的なボディラインと男性的な荒々しい山容をあわせもち、眺める方向によって大きく表情を変える山になっています。これがまた岩手山の魅力なのですね。ちなみに山岳信仰では岩手山は男の神様とされており、北上川をはさんで向かい側にある姫神山はその奥さん、そして南西の早池峰山は浮気相手との伝説があります。
私が岩手山に強い印象を受けたのは、受験を機に初めて盛岡を訪れ、岩手山と初対面したそのときです。3月のまだ冷たい風吹く中、地図を頼りに中央通りを試験会場へ向かっていくと、道の正面に、青空に真っ白く輝きそびえ立つ岩手山の姿が目に飛び込んできました。私の実家も蔵王山のふもと(旧上山競馬場の反対側です)でしたから雪山の美しさは見慣れているつもりでしたが、この景色はかなり感動しましたね。そして岩手山が盛岡の街なみと一体になり、欠かせない存在としてこの街の雰囲気がつくられていると感じました。
そのとき私は盛岡駅で列車を降りてまだほんの2〜3時間でしたが、駅前をとうとうと流れる北上川を渡り、そして街を見守るようにそびえる岩手山と向きあって、盛岡という街がすっかり好きになってしまいました。その後、私は念願かなって盛岡に住むようになり、そして様々な巡り合わせを経てこうして岩手競馬に深くかかわるようになりました。いま思えば、運命はあの白い岩手山からつながっているのだなぁと考えたりなんかして…。
(文・写真/佐藤到)