史上初のばんえい記念4連覇 スーパーペガサス
Photo●OPBM
ばんえい記念の歴代勝ち馬を見ると、93年のマルゼンバージ以降は、いずれの馬もばんえい記念を複数回勝利している。このことは、1トンのソリを曳くばんえい記念が、いかに特殊なレースであるかを示してもいる。昨年ばんえい記念初制覇となったニシキダイジンも、今年、もしくは来年以降にこの記録を継続できるかどうか。
そうした中で、達成されそうでなかなか達成されなかった記録が「ばんえい記念3連覇」だ。スーパーペガサス以前にばんえい記念(旧農林水産大臣賞典)を3勝した馬は、キヨヒメ、キンタロー、フクイチと3頭いたが、3年連続での制覇はなかなか達成されることがなかった。しかしスーパーペガサスは、その3連覇という壁を打ち破ったばかりか、4連覇を達成。ばんえい史上に残る屈指の名馬、最強馬といっていいだろう。
スーパーペガサスは98年5月3日にデビュー。当時は、その後に調教師になる大友栄人騎手が手綱をとっていた。初勝利を挙げたのは7戦目の岩見沢開催で、その後も掲示板を外さない堅実な走りを見せていたものの、結局デビューの年はその1勝のみに終わった。
99年1月付けで大友栄人騎手が調教師免許を取得すると、主戦を任されたのは岩本利春騎手。年明けの初戦でようやく2勝目を挙げると、それからは快進撃。3歳一冠目のばんえい大賞典で重賞初制覇を果たした。
本格化したのは01年の5歳時。10月の旭王冠賞で重賞2勝目を挙げると、年明けのチャンピオンカップも制した。初めて挑戦したばんえい記念では、先頭で障害を越えると、最後はサカノタイソンに差し切られたものの、2着と健闘した。
02年度は上げ潮に乗って、シーズン最初の重賞・北斗賞からばんえい記念まで重賞5勝。これは、89年に重賞体系が整備されて以降の1シーズン重賞最多勝記録となった。
そして03年度のシーズンも重賞5勝を挙げ、ばんえい記念連覇を果たした。
04年度には、それまで逃していたばんえいグランプリと帯広記念のタイトルを獲得。これで古馬の主要重賞を総ナメにし、さらには史上初のばんえい記念3連覇という快挙を達成することとなった。
04年度(05年)ばんえい記念。ミサキスーパー(4)との一騎打ちを制した
4連覇を目指した05年度は、脚元との戦いでもあった。秋の北見開催は一度も実戦をつかえず、地面に脚をつけられないほどの時期もあったという。そしてようやく間に合ったばんえい記念で4連覇を果たすとともに、史上7頭目の獲得賞金1億円馬ともなった。
ばんえい記念5連覇の偉業も期待された06年シーズンだが、以前から不安を抱えていた脚元が完治せず、結局は06年5月28日のオープン戦(6着)が最後のレースとなった。
その後も復帰に向けて懸命の治療が続けられたものの引退が決定。ファンからは引退式を望む声が多数寄せられたが、07年5月1日、デビュー時の管理調教師であり、大友栄人調教師の父でもある大友榮司元調教師の牧場で、蹄葉炎悪化のため最後を迎えることとなった。
2歳時の主戦騎手で、3歳以降は調教師としてスーパーペガサスを管理:大友栄人調教師
最初のばんえい記念でサカノタイソンに負けたときは、展開もあったし、力負けだとは思っていません。あれで1000キロでも勝てそうな手ごたえを感じました。ばんえい記念は、馬場が軽いときも重いときもあったけど、よく走ってくれたと思います。脚元があそこまで悪くなる前に引退させてあげればよかったかなという思いもあります。馬自身が体を気にせずに力を出すので、それで脚元に負担がかかっていたんだと思います。
騎手(当時)として、03、04年のばんえい記念連覇に導く:岩本利春調教師
レースの前半に行きすぎる感じはありましたが、スピードがあったし、乗りやすい馬でした。最初のころは、あそこまでの馬になるとは誰も思っていませんでした。最初のばんえい記念でサカノタイソンに負けましたが、来年は勝てるだろうという手ごたえはありました。思い出のレースは、最初に勝った旭王冠賞ですね。種牡馬としての期待もありましたが、産駒が残せないのは残念です。
05、06年のばんえい記念を勝利に導き、4連覇を達成:藤野俊一騎手
行く気が強い馬なので、いかになだめながらレースができるかということを考えていました。何度でもあきらめずに障害に挑んでいくようなところが、この馬のいいところです。さまざまな重量と、馬場に対応できて、力とスピードを兼ね備えていました。先行もできるし、自分から息も入れるし、自分でレースがつくれる馬でした。産駒が残せなかったのが一番残念ですね。
文/斎藤修
スーパーペガサス
1996年5月3日生 半血 牡 栗毛
父 半血・ヒカルテンリユウ
母 半血・アサヒシヤルダン
母の父 ベルジ・マルゼンストロングホース
北海道帯広市 三井宏悦氏生産
競走成績/155戦42勝(1998~2006年)
収得賞金/100,739,000円
重賞勝ち鞍/99年ばんえい大賞典(北見)、01年旭王冠賞(旭川)、02年チャンピオンカップ(帯広)、北斗賞(旭川)、北見記念(北見)、岩見沢記念(岩見沢)、03年チャンピオンカップ(帯広)、ばんえい記念(帯広)、旭王冠賞(旭川)、北斗賞(岩見沢)、岩見沢記念(岩見沢)、北見記念(北見)、04年ばんえい記念(帯広)、北斗賞(旭川)、ばんえいグランプリ(岩見沢)、05年帯広記念(帯広)、ばんえい記念(帯広)、旭王冠賞(旭川)、ばんえいグランプリ(岩見沢)、06年ばんえい記念(帯広)
「ハロン」2007年秋号より一部抜粋